堕天使と天使11
堕天使とは、元来、天使を誘惑して堕天させる存在だ。
けれど、京楽は神の元12使徒であった始まりの天使だったため、堕天使に落ちて天使を誘惑しても、堕天させることはなかった。
「浮竹、いい加減に起きないと」
「ん~。あと5時間寝る~」
「それじゃあ、夜の7時になっちゃうよ」
「昨日は翻訳の締め切りに追われて寝たのが朝の10時なんだ。もう少し、寝かせてくれ」
「もう、仕方ないねぇ」
京楽は、料理の他に家事もする。
元々は浮竹がやっていたのだが、浮竹の家に転がり込んできた形の京楽は、特に仕事ということもないので、暇なので家事をしていた。
「明日は卵の特売日だよ?一緒に行こうね」
「ああ・・・・・」
うつらうつらしていた浮竹は、適当に相槌を打って、そのまままた眠ってしまった。
翻訳家としての仕事はいつも締め切り前には終わらせているのだが、最近モンスターの退治が相次いでおり、なかなか仕事の時間がとれずに徹夜する羽目になった。
夜の7時になって、寝ぼけ眼で浮竹が起きてきた。
ぐ~。
日付が変わったあたりから何も食べていなかったので、浮竹はお腹がすいていて、腹が鳴ってしまい、顔を赤くする。
「今日はビーフシチューとカルボナーラだよ」
「うまそうだな」
浮竹は早速夕飯を口にした。
京楽の料理の腕はシェフ並みで、京楽の作る食事を浮竹はいつも心待ちにしていた。
「相変わらず、いい腕だな」
「いやぁ。まぁ、正直なところ三ツ星レストランで働いてたこともあったからね」
「さすがだな」
その日はシャワーを浴びて、浮竹は7時まで寝ていたためになかなか寝付けずに、結局深夜の1時頃になってようやく就寝できた。
次の日、急ぎの依頼がきていた。
森の守り手でもあるトレントが、人を攫って養分として取り込み、衰弱死させるというのだ。
金貨200枚の依頼だった。
トレント自体はそう強くないが、人の生気を喰らったモンスターは通常の数倍、力が増す。
トレントはCランクモンスターなので、Bランクあたりになっているだろう。
浮竹と京楽は、車での移動では限界があるので、あまり使わない空間転移の魔法で被害が出ている国にまでやってくると、早速聞き込みを開始した。
なんでも、少し町から離れたところにあるブナエの森という場所に、トレントがいて、薬草や花をつみにきた人々を攫い、養分として取り込むらしい。
早速、ブナエの森に出かける。
「静かだな」
「うん、そうだね。静かすぎる。動物の鳴き声や鳥のさえずりどころか、虫の音色さえ聞こえない」
さわさわと、揺れる緑の音だけがした。
「たす・・け・・・て・・・・・・」
森の奥のほうから、かすかな声が聞こえた。
その声を頼りに森を歩くと、トレントの群れと遭遇した。
捕らわれて養分を吸い取られているのは、若いエルフの少女だった。
「たすけて・・・・・・」
「エアリアルエッジ!」
「ファイアボール!」
浮竹がまず少女を戒めているトレントを風の精霊エアリアルに命じてカマイタチを出して、トレントをばらばらにする。
京楽が、ファイアボールでそのトレントを燃やし尽くした。
トレントは森を養分としており、再生能力がある。
「京楽、少女を頼む」
「あ、浮竹!」
浮竹は、自分を囮にトレントの群れに飛び込んだ。
「あーあ。トレントなむ」
京楽は、浮竹の心配ではなく、一方的に殺されるトレントの冥福を祈った。
「ボルケーノトライアングル、ヘルインフェルノ、エターナルフェニックス!!」
「ぎゃああああ!」
「うおおおおお!!」
干からびた人のなれの果てを抱いたトレントごと、3種類の魔法の業火でトレントを焼いていく。
干からびた人やまだ息のある人間には、炎の手は伸びなかった。
死んでしまっても、遺品があるかもしれないし、息のある者は救助して、適切な処置を施さないといけない。
「トレントだけでなく、ドライアドもか・・・・」
トレントの群れに交じって、ドライアドの姿もあったが、それも燃やし尽くした。
1匹のトレントを生き残らせて、どうして人を襲うのかと問いただした。
「それは、あのお方がおしゃったからだ。偉大なる賢者でもあられる、あの方が。堕天使だが、あのお方は天使だ。森の伐採で滅びゆく我らに救いの手を差し伸べてくれた・・・・」
それだけ言って、そのトレントは自害した。
「モンスターが自害?どういうことだ」
「いや、そのお方とやらの話を口にすると、最初から死ぬような呪いがかけられていたよ」
「ますますきな臭いな」
とりあえず、森のトレントは全部処理しようということになった。ドライアドも。
「そっちを頼む」
「じゃあ、君はあっちを」
森をしらみつぶしに歩いて、魔力探知でひっかかったトレントとドライアドは全部処分した。
助け出せた人間の数が4人。すでに事切れて干からびていた人間が5人。
一番古い死体は、骨になっており、密かに人を養分として昔から取り込んでいたらしい。
それが活発化して、今回の退治依頼となったのだ。
「4人、運べる?」
「そっちの死体も併せて、空間転移で町に運ぶ」
浮竹は、大規模な空間転移の魔法陣を描き、町に転移した。
始めは町の者も驚いていたが、生きていた行方不明者の顔見知りが近づき、本物だと確認すると、町をあげての騒ぎとなった。
死者となってしまった5人の身元も割れて、森のトレントどドライアドを全部処分したことを伝えると、町の住人たちは歓喜の声をあげた。
これで森に入って狩りができる。薬草やきのこ、木の実を収穫できると、喜んでいた。
町長から金貨200枚を報酬としてもらい、やや浮かれすぎな町の歓迎式に出てから、浮竹と京楽は自分たちの家に帰っていった。
トレントとドライアドの魔石は、今度換金することにした。
家に入ると、ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹がいた。
『やあ、勝手にあがらせてもらってるよ』
『お菓子を作ってたんだ。プリンアラモード』
「また、突然だな。しかもこったお菓子だな」
『うまくできたと思うんだ。食べてくれないか、天使の俺』
「うん、いただく」
「あの、俺の分は?」
すでに不法侵入は何度かあったので、目を瞑っておく。
『お前の分など、ない!』
「えええーー!酷くない!?」
『君はかつての行いが悪いから、反省しろって浮竹がね・・・・』
フェンリルの浮竹は、カップに水を入れて、砂糖をいれて堕天使の京楽に出した。
『これでも飲んでろ』
「これ、ただの砂糖水じゃないの」
『お前なんか、これで十分だ』
「ひどい。( ノД`)シクシク…」
堕天使の京楽は、ソファーで沈みこんだ。
『まぁ、別でクッキー焼いておいたから。それで我慢しなよ』
『京楽、こんな奴にクッキーをあげる必要はない』
『まぁまぁ。ほら、向こうの浮竹が哀しそうな顔をしているでしょ?』
『むーーー』
「あ、いや別にこれはそういうのじゃなくて!」
天使の浮竹は、いきなりのことで慌てふためいた。
『仕方ない。クッキーを食べてもいい。そのかわり、こっちの世界の俺を泣かせるなよ!そんなことしたら、骨にしてやる』
「いやあああ、食べる気満々だあああ」
『食べない。まずい、くさい、穢れてる』
「ひどいいいいいいいい」
そう言いつつ、フェンリルの浮竹に手を伸ばす堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は噛みついた。
「いたいいいいいいい」
『気安く俺に触ろうとするな!』
「京楽?浮気は・・・・・・」
「もぎゃあああああああああ!!!」
『南無阿弥陀仏』
そんな台詞をヴァンパイアの京楽は唱えて、堕天使の京楽の冥福を祈った。
死んでないけどね!
ちゃんと生きてるけどね!
天使の浮竹は、プリンアラモードを食べながら、向こう側の浮竹と京楽と楽しそうに話していた。
一方、堕天使の京楽は、その輪に入れてもらえずに、いじいじしていた。
「このクッキーぱさぱさ・・・・まだまだだねぇ」
『俺が作ったんだ。何か言ったか』
「いえ、なんでもないです」
フェンリルの浮竹は、ぱさぱさだというクッキーを堕天使の京楽の前から回収して、ドンと砂糖水をおいた。
『やっぱり、お前はこれで十分だ』
「ひどいいいい、浮竹、フェンリルの浮竹が僕をいじめる!」
「そうか、よかったな。もっといじめてもらえ」
「浮竹もひどい!化けて出てやるううううう」
京楽はキッチンにこもり、その日の夕食をやけになって作り始めるのだった。
無論、自分と浮竹の分だけだ。
ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹には、そうそうに帰ってもらうのだった。
けれど、京楽は神の元12使徒であった始まりの天使だったため、堕天使に落ちて天使を誘惑しても、堕天させることはなかった。
「浮竹、いい加減に起きないと」
「ん~。あと5時間寝る~」
「それじゃあ、夜の7時になっちゃうよ」
「昨日は翻訳の締め切りに追われて寝たのが朝の10時なんだ。もう少し、寝かせてくれ」
「もう、仕方ないねぇ」
京楽は、料理の他に家事もする。
元々は浮竹がやっていたのだが、浮竹の家に転がり込んできた形の京楽は、特に仕事ということもないので、暇なので家事をしていた。
「明日は卵の特売日だよ?一緒に行こうね」
「ああ・・・・・」
うつらうつらしていた浮竹は、適当に相槌を打って、そのまままた眠ってしまった。
翻訳家としての仕事はいつも締め切り前には終わらせているのだが、最近モンスターの退治が相次いでおり、なかなか仕事の時間がとれずに徹夜する羽目になった。
夜の7時になって、寝ぼけ眼で浮竹が起きてきた。
ぐ~。
日付が変わったあたりから何も食べていなかったので、浮竹はお腹がすいていて、腹が鳴ってしまい、顔を赤くする。
「今日はビーフシチューとカルボナーラだよ」
「うまそうだな」
浮竹は早速夕飯を口にした。
京楽の料理の腕はシェフ並みで、京楽の作る食事を浮竹はいつも心待ちにしていた。
「相変わらず、いい腕だな」
「いやぁ。まぁ、正直なところ三ツ星レストランで働いてたこともあったからね」
「さすがだな」
その日はシャワーを浴びて、浮竹は7時まで寝ていたためになかなか寝付けずに、結局深夜の1時頃になってようやく就寝できた。
次の日、急ぎの依頼がきていた。
森の守り手でもあるトレントが、人を攫って養分として取り込み、衰弱死させるというのだ。
金貨200枚の依頼だった。
トレント自体はそう強くないが、人の生気を喰らったモンスターは通常の数倍、力が増す。
トレントはCランクモンスターなので、Bランクあたりになっているだろう。
浮竹と京楽は、車での移動では限界があるので、あまり使わない空間転移の魔法で被害が出ている国にまでやってくると、早速聞き込みを開始した。
なんでも、少し町から離れたところにあるブナエの森という場所に、トレントがいて、薬草や花をつみにきた人々を攫い、養分として取り込むらしい。
早速、ブナエの森に出かける。
「静かだな」
「うん、そうだね。静かすぎる。動物の鳴き声や鳥のさえずりどころか、虫の音色さえ聞こえない」
さわさわと、揺れる緑の音だけがした。
「たす・・け・・・て・・・・・・」
森の奥のほうから、かすかな声が聞こえた。
その声を頼りに森を歩くと、トレントの群れと遭遇した。
捕らわれて養分を吸い取られているのは、若いエルフの少女だった。
「たすけて・・・・・・」
「エアリアルエッジ!」
「ファイアボール!」
浮竹がまず少女を戒めているトレントを風の精霊エアリアルに命じてカマイタチを出して、トレントをばらばらにする。
京楽が、ファイアボールでそのトレントを燃やし尽くした。
トレントは森を養分としており、再生能力がある。
「京楽、少女を頼む」
「あ、浮竹!」
浮竹は、自分を囮にトレントの群れに飛び込んだ。
「あーあ。トレントなむ」
京楽は、浮竹の心配ではなく、一方的に殺されるトレントの冥福を祈った。
「ボルケーノトライアングル、ヘルインフェルノ、エターナルフェニックス!!」
「ぎゃああああ!」
「うおおおおお!!」
干からびた人のなれの果てを抱いたトレントごと、3種類の魔法の業火でトレントを焼いていく。
干からびた人やまだ息のある人間には、炎の手は伸びなかった。
死んでしまっても、遺品があるかもしれないし、息のある者は救助して、適切な処置を施さないといけない。
「トレントだけでなく、ドライアドもか・・・・」
トレントの群れに交じって、ドライアドの姿もあったが、それも燃やし尽くした。
1匹のトレントを生き残らせて、どうして人を襲うのかと問いただした。
「それは、あのお方がおしゃったからだ。偉大なる賢者でもあられる、あの方が。堕天使だが、あのお方は天使だ。森の伐採で滅びゆく我らに救いの手を差し伸べてくれた・・・・」
それだけ言って、そのトレントは自害した。
「モンスターが自害?どういうことだ」
「いや、そのお方とやらの話を口にすると、最初から死ぬような呪いがかけられていたよ」
「ますますきな臭いな」
とりあえず、森のトレントは全部処理しようということになった。ドライアドも。
「そっちを頼む」
「じゃあ、君はあっちを」
森をしらみつぶしに歩いて、魔力探知でひっかかったトレントとドライアドは全部処分した。
助け出せた人間の数が4人。すでに事切れて干からびていた人間が5人。
一番古い死体は、骨になっており、密かに人を養分として昔から取り込んでいたらしい。
それが活発化して、今回の退治依頼となったのだ。
「4人、運べる?」
「そっちの死体も併せて、空間転移で町に運ぶ」
浮竹は、大規模な空間転移の魔法陣を描き、町に転移した。
始めは町の者も驚いていたが、生きていた行方不明者の顔見知りが近づき、本物だと確認すると、町をあげての騒ぎとなった。
死者となってしまった5人の身元も割れて、森のトレントどドライアドを全部処分したことを伝えると、町の住人たちは歓喜の声をあげた。
これで森に入って狩りができる。薬草やきのこ、木の実を収穫できると、喜んでいた。
町長から金貨200枚を報酬としてもらい、やや浮かれすぎな町の歓迎式に出てから、浮竹と京楽は自分たちの家に帰っていった。
トレントとドライアドの魔石は、今度換金することにした。
家に入ると、ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹がいた。
『やあ、勝手にあがらせてもらってるよ』
『お菓子を作ってたんだ。プリンアラモード』
「また、突然だな。しかもこったお菓子だな」
『うまくできたと思うんだ。食べてくれないか、天使の俺』
「うん、いただく」
「あの、俺の分は?」
すでに不法侵入は何度かあったので、目を瞑っておく。
『お前の分など、ない!』
「えええーー!酷くない!?」
『君はかつての行いが悪いから、反省しろって浮竹がね・・・・』
フェンリルの浮竹は、カップに水を入れて、砂糖をいれて堕天使の京楽に出した。
『これでも飲んでろ』
「これ、ただの砂糖水じゃないの」
『お前なんか、これで十分だ』
「ひどい。( ノД`)シクシク…」
堕天使の京楽は、ソファーで沈みこんだ。
『まぁ、別でクッキー焼いておいたから。それで我慢しなよ』
『京楽、こんな奴にクッキーをあげる必要はない』
『まぁまぁ。ほら、向こうの浮竹が哀しそうな顔をしているでしょ?』
『むーーー』
「あ、いや別にこれはそういうのじゃなくて!」
天使の浮竹は、いきなりのことで慌てふためいた。
『仕方ない。クッキーを食べてもいい。そのかわり、こっちの世界の俺を泣かせるなよ!そんなことしたら、骨にしてやる』
「いやあああ、食べる気満々だあああ」
『食べない。まずい、くさい、穢れてる』
「ひどいいいいいいいい」
そう言いつつ、フェンリルの浮竹に手を伸ばす堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は噛みついた。
「いたいいいいいいい」
『気安く俺に触ろうとするな!』
「京楽?浮気は・・・・・・」
「もぎゃあああああああああ!!!」
『南無阿弥陀仏』
そんな台詞をヴァンパイアの京楽は唱えて、堕天使の京楽の冥福を祈った。
死んでないけどね!
ちゃんと生きてるけどね!
天使の浮竹は、プリンアラモードを食べながら、向こう側の浮竹と京楽と楽しそうに話していた。
一方、堕天使の京楽は、その輪に入れてもらえずに、いじいじしていた。
「このクッキーぱさぱさ・・・・まだまだだねぇ」
『俺が作ったんだ。何か言ったか』
「いえ、なんでもないです」
フェンリルの浮竹は、ぱさぱさだというクッキーを堕天使の京楽の前から回収して、ドンと砂糖水をおいた。
『やっぱり、お前はこれで十分だ』
「ひどいいいい、浮竹、フェンリルの浮竹が僕をいじめる!」
「そうか、よかったな。もっといじめてもらえ」
「浮竹もひどい!化けて出てやるううううう」
京楽はキッチンにこもり、その日の夕食をやけになって作り始めるのだった。
無論、自分と浮竹の分だけだ。
ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹には、そうそうに帰ってもらうのだった。
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