堕天使と天使12
浮竹と京楽は、天界を訪れていた。
浮竹はセラフであるので当たり前だが、堕天使である京楽が天界にきたのは、大天使長ミカエルの許しがあったからだった。
「ラファエルがな、お前たちに会いたいと言っていてな」
「ラファエルが?」
浮竹は首を傾げた。
ガブリエルは育ての親で、ミカエルは実の父親だ。
4大天使のうち、2人は知り合いということになる。それも、濃厚な。
「ラファエルか。どんな人物なんだろう」
「子供だよ。見た目はね。右目に眼帯をしている、綺麗な13歳くらいの子さ。一度誘惑したんだけど、拒否されたよ」
「京楽、お前は4大天使にまで手を出そうとしたのか」
「他にも、ガブリエルとウリエルも誘惑したよ。ミカエルも誘惑した」
浮竹は大きなため息をついた。
「4大天使みんな誘惑してるじゃないか!」
「だってかっこよかったりかわいかったりするんだもん」
「本当に、お前は変わっていないな。息子だけを愛すると誓ったのだ。他に手を出したら、私も容赦しないぞ」
ミカエルは、京楽の浮気を許さないようで、そもそも実の息子である浮竹だけを愛しているという言葉に、疑問を抱いていた。
「父さん、京楽はちゃんと俺だけを愛してくれてるから」
ミカエルの心を読んだように、浮竹はミカエルを安心させようとする。
「ラファエルは賢者の広間にいる。知識だけならどの天使も及ばないからな」
ミカエルに、賢者の広間のある建物にまで案内してもらった。
途中、今まで関係があった天使が京楽を見て、笑いかけてきたりしたが、浮竹も京楽も普通に自然に接した。
「ここがラファエルの館。通称賢者の館だ」
「大きいね」
「中には古今東西の書物がある。特に魔法関係が多い」
「魔法、教えてもらえないかな」
浮竹がややわくわくしながら、そんな声を出した。
「多分、教えてくれるはずだ。お前たちの魔力は類を見ないほどに高い。大天使長である私と同等かそれ以上か」
「父さん、買い被り過ぎだ」
「そうでもない。父の言葉を信用しなさい」
「はい」
ミカエルと別れて、賢者の館の大きな門の前に立つと、自動的に門と扉が開いた。
「入っておいでよ。ボクの久しぶりの客人だ・・・・京楽、お前を招いた覚えはないのだけど」
「いいじゃない。僕の一人や二人いても」
「お前のようなのが二人もいたら、天界は堕天使で溢れる」
扉の奥に入り、中を歩いていく。
まるで、図書館だった。
ほとんどが魔法に関するもので、古代魔法や禁忌の魔法書もあった。
図書館になっている一番奥で、13歳くらいの緋色の髪に瞳をもつ、美少女にしか見えないラファエルがいた。
「えっと、性別は女の子?」
確か、ラファエルは男で、4大天使にはガブリエルしか女性はいなかったはずなのだが、と思いながら聞いてみると、ラファエルは失礼な、という顔をした。
「どこを見ればボクが女に見える。立派な少年だろうが」
いや、美少女に見えるんですとは言えなくて、浮竹は困った顔をした。
「そこの色欲魔人の京楽の手に落ちたということは、そこそこ魔法の知識はあると思うが、まだまだ未熟だ。ボクが、禁忌や古代魔法について教えてあげよう」
「本当か!?」
浮竹は魔法が好きだった。
民間魔法なんかもけっこう覚えている。
「今日から1週間、浮竹、お前とそこの色欲魔人にも魔法を基礎から教えてやろう」
こうして、13歳の見た目のラファエルを師として、魔法を基礎から叩き込まれることになった。
3日経つ頃には、浮竹は詠唱破棄で聖以外の全属性の禁忌を発動できるようになっていた。
一方の京楽は、禁忌は教えられたが、ちんぷんかんぷんなようで、水の魔法の禁忌を発動させようとして雷の禁忌を発動していた。
「京楽、真面目にやれ。これは遊びではないのだぞ。最高神様が、お前たちの祓い屋としての腕を磨かせるためにわざわざ呼ばれたのだ」
「え、あの神様が僕まで呼んだの?」
「そうだ。あのお方は慈悲深い。お前のような歩く色欲魔でも、死なせてはかわいそうだと、魔法の手ほどきをしてやれと命令された」
ラファエルは納得がいかないようだったが、神の命令は絶対だ。
「京楽、お前は禁忌の魔法をできるだけ使うな。魔法構築がでたらめで、違う属性の禁忌が出ている」
「うーん、難しいなぁ」
「京楽、俺もいるんだ。無理に禁忌を覚える必要はないぞ」
「そうだな。京楽、お前は古代魔法が向いている」
2千年ほど前から生きているせいで、古代文明の魔法を元から覚えていたが、いろんな古代魔法を追加で覚えた。
「浮竹は、古代魔法が苦手のようだな」
「苦手というか、文字が読めない」
「勉学するしかないな。書庫を解禁しておいてやろう。ボクがいなくてても、人間社会からスマホを通じてアクセスできるようにしておこう」
「なんか意外とハイテク・・・・・・」
京楽の意見に、浮竹も頷いた。
「本当なら、1年ほどかけて学ばせるべきだが、時間がない。神は力を求められている。お前たちは、いずれ大きな敵と巡り会うだろう」
「何それ、予言?」
「そうだ。ラファエルであるボクの予言は当たると有名なんだぞ」
ラファエルは、えっへんといばった。
「本当ならもっと後で教えるべきだが、聖なる魔法の禁忌も教えておこう。堕天使である京楽には使えない魔法だ・・・・・」
ラファエルから、浮竹は聖なる魔法の禁忌を教え込まれた。
その威力の高さに驚く。他の属性の禁忌のように破壊するのではなく、無に返す魔法や闇属性の相手を即死させたりする魔法だった。
まだ、他の属性の禁忌のほうがかわいらしい。
無に返す魔法は、とにかく教えられたはいいが、極力使わないようにと念押しされた。
1週間が経った。
浮竹はみっちりと魔法を教え込まれて、魔法使いと言えるほどの腕になっていた。
京楽も教え込まれたが、使うこともほとんどないので、のらりくらりとしていた。
「ラファエル、ありがとう。お陰で魔法の腕が随分とあがった」
「感謝するなら、神に感謝しろ。あのお方の言いつけで、お前たちに魔法を教えたのだから」
「神は・・・その、うさんくさくてな」
天使と人間のハーフの子供を親元から取り上げて、ガブリエルに育てさせて、ある一定の年齢に達したら人間界に置き去りにする。
それは、神が決めたことだった。
ハーフの天使は魔力が高く、神に反旗を翻す可能性があるとかで、そうなったという。
「今のは、聞かなかったことにしておこう」
「ああ、すまない。京楽は?」
「古代の魔法書を読んでいるように見せかけて、居眠りしていたので図書館の掃除を命令しておいた。さぼったら、自動的に鞭が打たれる古代魔法をかけておいた」
クスリと、浮竹は笑った。
「そうして笑ってると、ミカエルに似ている。母親には似ていないな。アンヌは、元気だったか?」
「ああ、母さんは元気だ。この前、会いに行った」
「知っている。水晶玉で見た」
「ラファエルは、本当は何歳なんだ?」
「さぁ?創造神がこの世界をおつくりになって2千年。12使徒の天使が生まれた後に、ボクら四天王ともよばれる4大天使は生み出された。少なくとも、2千歳まではいっていないようだ。1800歳とくらいか?」
「ラファエル、掃除終わったよ。だからこの魔法といて。さっきからべしべし鞭うってくるんだよ。僕は、Sじゃないから鞭でぶたれても喜ばないよ!」
「あの広い図書館を、掃除し終えたというのか」
「うん。分身魔法で、10体の僕を作って魔力で動かした。やることはほとんど同じだったからできたことだけど」
「分身魔法・・・また変な魔法を覚えているな」
「これがあればね、10人の女の子と同時に・・びでぶ!」
最後まで言わせずに、浮竹が京楽の股間を蹴り上げた。
「お前も、どうしようもない相手と、恋をしているのだな」
ラファエルは、浮竹を憐みの瞳で見た。
「こんなでも、一応俺の恋人だからな」
「浮竹、マジ股間はやめてよ・・・・再起不能になる」
「いっそなるか?」
浮竹の笑顔が怖くて、京楽はそれ以上何も言えなかった。
そのまま、1週間が過ぎたが、急ぎの依頼もなかったので、賢者の館で更に1週間過ごした。
パソコンももってきていたので、ドイツ語の翻訳の仕事もできた。
天界にも機械はあり、電気や水道、ガスも通っていた。
今時、洗濯物を手で洗うような天使はいない。
衣類によっては手もみで洗う場合もあるが、ほとんどが洗濯機だ。冷蔵庫やらの必需品もあるし、テレビでは人間界の番組も見ることができる。
「なんか、地上の暮らしとあまり変化がないな」
「それだけ、天界も人間界に近づいたってことでしょ」
「モンスターが出ない。犯罪が起きない。違いはこれくらいか」
2週間が過ぎて、人間界に戻る日がきた。
「また、来るといい」
「またな」
ミカエルとラファエルに見送られて、浮竹と京楽は人間界に戻った。
浮竹も京楽も、いずれ出会う大な敵という言葉を、胸に刻んでいた。
浮竹はセラフであるので当たり前だが、堕天使である京楽が天界にきたのは、大天使長ミカエルの許しがあったからだった。
「ラファエルがな、お前たちに会いたいと言っていてな」
「ラファエルが?」
浮竹は首を傾げた。
ガブリエルは育ての親で、ミカエルは実の父親だ。
4大天使のうち、2人は知り合いということになる。それも、濃厚な。
「ラファエルか。どんな人物なんだろう」
「子供だよ。見た目はね。右目に眼帯をしている、綺麗な13歳くらいの子さ。一度誘惑したんだけど、拒否されたよ」
「京楽、お前は4大天使にまで手を出そうとしたのか」
「他にも、ガブリエルとウリエルも誘惑したよ。ミカエルも誘惑した」
浮竹は大きなため息をついた。
「4大天使みんな誘惑してるじゃないか!」
「だってかっこよかったりかわいかったりするんだもん」
「本当に、お前は変わっていないな。息子だけを愛すると誓ったのだ。他に手を出したら、私も容赦しないぞ」
ミカエルは、京楽の浮気を許さないようで、そもそも実の息子である浮竹だけを愛しているという言葉に、疑問を抱いていた。
「父さん、京楽はちゃんと俺だけを愛してくれてるから」
ミカエルの心を読んだように、浮竹はミカエルを安心させようとする。
「ラファエルは賢者の広間にいる。知識だけならどの天使も及ばないからな」
ミカエルに、賢者の広間のある建物にまで案内してもらった。
途中、今まで関係があった天使が京楽を見て、笑いかけてきたりしたが、浮竹も京楽も普通に自然に接した。
「ここがラファエルの館。通称賢者の館だ」
「大きいね」
「中には古今東西の書物がある。特に魔法関係が多い」
「魔法、教えてもらえないかな」
浮竹がややわくわくしながら、そんな声を出した。
「多分、教えてくれるはずだ。お前たちの魔力は類を見ないほどに高い。大天使長である私と同等かそれ以上か」
「父さん、買い被り過ぎだ」
「そうでもない。父の言葉を信用しなさい」
「はい」
ミカエルと別れて、賢者の館の大きな門の前に立つと、自動的に門と扉が開いた。
「入っておいでよ。ボクの久しぶりの客人だ・・・・京楽、お前を招いた覚えはないのだけど」
「いいじゃない。僕の一人や二人いても」
「お前のようなのが二人もいたら、天界は堕天使で溢れる」
扉の奥に入り、中を歩いていく。
まるで、図書館だった。
ほとんどが魔法に関するもので、古代魔法や禁忌の魔法書もあった。
図書館になっている一番奥で、13歳くらいの緋色の髪に瞳をもつ、美少女にしか見えないラファエルがいた。
「えっと、性別は女の子?」
確か、ラファエルは男で、4大天使にはガブリエルしか女性はいなかったはずなのだが、と思いながら聞いてみると、ラファエルは失礼な、という顔をした。
「どこを見ればボクが女に見える。立派な少年だろうが」
いや、美少女に見えるんですとは言えなくて、浮竹は困った顔をした。
「そこの色欲魔人の京楽の手に落ちたということは、そこそこ魔法の知識はあると思うが、まだまだ未熟だ。ボクが、禁忌や古代魔法について教えてあげよう」
「本当か!?」
浮竹は魔法が好きだった。
民間魔法なんかもけっこう覚えている。
「今日から1週間、浮竹、お前とそこの色欲魔人にも魔法を基礎から教えてやろう」
こうして、13歳の見た目のラファエルを師として、魔法を基礎から叩き込まれることになった。
3日経つ頃には、浮竹は詠唱破棄で聖以外の全属性の禁忌を発動できるようになっていた。
一方の京楽は、禁忌は教えられたが、ちんぷんかんぷんなようで、水の魔法の禁忌を発動させようとして雷の禁忌を発動していた。
「京楽、真面目にやれ。これは遊びではないのだぞ。最高神様が、お前たちの祓い屋としての腕を磨かせるためにわざわざ呼ばれたのだ」
「え、あの神様が僕まで呼んだの?」
「そうだ。あのお方は慈悲深い。お前のような歩く色欲魔でも、死なせてはかわいそうだと、魔法の手ほどきをしてやれと命令された」
ラファエルは納得がいかないようだったが、神の命令は絶対だ。
「京楽、お前は禁忌の魔法をできるだけ使うな。魔法構築がでたらめで、違う属性の禁忌が出ている」
「うーん、難しいなぁ」
「京楽、俺もいるんだ。無理に禁忌を覚える必要はないぞ」
「そうだな。京楽、お前は古代魔法が向いている」
2千年ほど前から生きているせいで、古代文明の魔法を元から覚えていたが、いろんな古代魔法を追加で覚えた。
「浮竹は、古代魔法が苦手のようだな」
「苦手というか、文字が読めない」
「勉学するしかないな。書庫を解禁しておいてやろう。ボクがいなくてても、人間社会からスマホを通じてアクセスできるようにしておこう」
「なんか意外とハイテク・・・・・・」
京楽の意見に、浮竹も頷いた。
「本当なら、1年ほどかけて学ばせるべきだが、時間がない。神は力を求められている。お前たちは、いずれ大きな敵と巡り会うだろう」
「何それ、予言?」
「そうだ。ラファエルであるボクの予言は当たると有名なんだぞ」
ラファエルは、えっへんといばった。
「本当ならもっと後で教えるべきだが、聖なる魔法の禁忌も教えておこう。堕天使である京楽には使えない魔法だ・・・・・」
ラファエルから、浮竹は聖なる魔法の禁忌を教え込まれた。
その威力の高さに驚く。他の属性の禁忌のように破壊するのではなく、無に返す魔法や闇属性の相手を即死させたりする魔法だった。
まだ、他の属性の禁忌のほうがかわいらしい。
無に返す魔法は、とにかく教えられたはいいが、極力使わないようにと念押しされた。
1週間が経った。
浮竹はみっちりと魔法を教え込まれて、魔法使いと言えるほどの腕になっていた。
京楽も教え込まれたが、使うこともほとんどないので、のらりくらりとしていた。
「ラファエル、ありがとう。お陰で魔法の腕が随分とあがった」
「感謝するなら、神に感謝しろ。あのお方の言いつけで、お前たちに魔法を教えたのだから」
「神は・・・その、うさんくさくてな」
天使と人間のハーフの子供を親元から取り上げて、ガブリエルに育てさせて、ある一定の年齢に達したら人間界に置き去りにする。
それは、神が決めたことだった。
ハーフの天使は魔力が高く、神に反旗を翻す可能性があるとかで、そうなったという。
「今のは、聞かなかったことにしておこう」
「ああ、すまない。京楽は?」
「古代の魔法書を読んでいるように見せかけて、居眠りしていたので図書館の掃除を命令しておいた。さぼったら、自動的に鞭が打たれる古代魔法をかけておいた」
クスリと、浮竹は笑った。
「そうして笑ってると、ミカエルに似ている。母親には似ていないな。アンヌは、元気だったか?」
「ああ、母さんは元気だ。この前、会いに行った」
「知っている。水晶玉で見た」
「ラファエルは、本当は何歳なんだ?」
「さぁ?創造神がこの世界をおつくりになって2千年。12使徒の天使が生まれた後に、ボクら四天王ともよばれる4大天使は生み出された。少なくとも、2千歳まではいっていないようだ。1800歳とくらいか?」
「ラファエル、掃除終わったよ。だからこの魔法といて。さっきからべしべし鞭うってくるんだよ。僕は、Sじゃないから鞭でぶたれても喜ばないよ!」
「あの広い図書館を、掃除し終えたというのか」
「うん。分身魔法で、10体の僕を作って魔力で動かした。やることはほとんど同じだったからできたことだけど」
「分身魔法・・・また変な魔法を覚えているな」
「これがあればね、10人の女の子と同時に・・びでぶ!」
最後まで言わせずに、浮竹が京楽の股間を蹴り上げた。
「お前も、どうしようもない相手と、恋をしているのだな」
ラファエルは、浮竹を憐みの瞳で見た。
「こんなでも、一応俺の恋人だからな」
「浮竹、マジ股間はやめてよ・・・・再起不能になる」
「いっそなるか?」
浮竹の笑顔が怖くて、京楽はそれ以上何も言えなかった。
そのまま、1週間が過ぎたが、急ぎの依頼もなかったので、賢者の館で更に1週間過ごした。
パソコンももってきていたので、ドイツ語の翻訳の仕事もできた。
天界にも機械はあり、電気や水道、ガスも通っていた。
今時、洗濯物を手で洗うような天使はいない。
衣類によっては手もみで洗う場合もあるが、ほとんどが洗濯機だ。冷蔵庫やらの必需品もあるし、テレビでは人間界の番組も見ることができる。
「なんか、地上の暮らしとあまり変化がないな」
「それだけ、天界も人間界に近づいたってことでしょ」
「モンスターが出ない。犯罪が起きない。違いはこれくらいか」
2週間が過ぎて、人間界に戻る日がきた。
「また、来るといい」
「またな」
ミカエルとラファエルに見送られて、浮竹と京楽は人間界に戻った。
浮竹も京楽も、いずれ出会う大な敵という言葉を、胸に刻んでいた。
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