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堕天使と天使10

京楽にしつこくまとわりついてくる女がいた。

天使だった。20年ほど前に付き合っていた天使の女で、見た目はふわふわした髪の可愛い少女だったが、中身も幼く、京楽のことが好きだ好きだとうるさかった。

「悪いが諦めてくれ。京楽は俺のものだ」

「アンナ信じらんなーい。アンナのほうかかわいいのにー。春ちゃん、両刀なのは知ってたけど、好み変わった?前は、もっと女の子っぽい男の子のほうが好きだったじゃない」

「げふげふ。アンナ、僕たちはもう終わったんだ。君と復縁する気はないよ」

アンナは、ふてくされた。

「ひどーい。やっぱり、アンナの体だけが目的だったのね」

「いやいや。それよりも、片翼のもげた天使の話は本当かい?」

「うん。アンナ見たよ。片方の翼がもげた天使。なんか、堕天使になるとか言って、天界の外に飛び出していちゃった」

アンナの言葉に、ヴァンパイアの京楽の駆除を求めてきた、片翼の天使のことを思い出す。

「とどめ、さしておいておいたほうがいいのかな?」

「やめておけ。同族争いになる」

浮竹の言葉に、京楽も頷いた。

「アンナになびかない春ちゃんのバカ!この浮竹っていうのが悪いのね!アンナの春ちゃんたぶらかして!」

アンナは、鋭いナイフをもちだしてきて、あろうことか浮竹の胸を刺した。

「ぐ・・・」

「浮竹!」

「春ちゃんが悪いのよ!」

「ヘルインフェルノ」

「きゃあああああああ」

京楽は、躊躇もなくアンナに炎の上位魔法をぶつけた。

アンナは、灰となって消えていった。

「今、癒してあげるから。セイントヒール」

浮竹は傷は深かったが、すぐに回復魔法をかけたことで出血も大量でなくてすんで、浮竹はでも困った顔をしていた。

「天使を殺したんだぞ」

「別にいいよ。僕は堕天使だ。天使や人間や悪魔を殺そうと、何も言われない」

「元、神の12使徒だろう」

「僕らの父である神は、自分のことしか頭にないよ」

「確かに、神は何を考えているか分からない。ハーフの子供を親から引き離してガブリエルに育てさせるのも意味不明だ」

浮竹もまた、人間と天使のハーフで、幼い頃に両親から神に引き離されて、母親役であったセラフのガブリエルに育てられた。

そして、ガブリエルはある程度の年齢まで育てると、神の命令で人間界にハーフの子供を置き去りにした。

神が何を考えているかなぞ、大天使長ミカエルでさえも分からないだろう。

神に一番近い場所にいるミカエルの子である浮竹も、ハーフであるということから両親から引き離されて、ガブリエルに育ててもらい、そして人間界に置き去りにされた。

孤児院で育った浮竹は、バイトをしながら大学にも通い、出版会社に就職して、ドイツ語の翻訳家をしている。

今は、神の命令で祓い屋というか退治屋というか、冒険者ギルドからあぶれたモンスター駆除を行ったりしていた。

浮竹と京楽は、その日の討伐の対象を選ぶ。

なるべく人が困っている、死者が出るような依頼を重点に選ぶが、最近は少しモンスターの活発化がましになって、セイレーンの歌声が船人を惑わすから駆除してくれという依頼を引き受けた。

車で、4時間走った場所に、セイレーンは出た。

港町で、セイレーンの歌声が聞こえた。

「綺麗な声だ。惑わすというか、ただ歌っているようにしか聞こえないが」

「船乗りには、これが魅了の声に聞こえるんだ。セイレーンは人を惑わして魅惑するが、食うわけじゃないが、たまに溺死させることがあるから、駆除しよう」

浮竹と京楽は、船を借りてセイレーンのいる岩場に近づいた。

「ららら~~~~~~♪」

セイレーンは、6体ほどいた。

「悪いけど、退治させてもらうよ。サンダーボルテックス!」

「ぎゃあああああああ!!」

セイレーンたちは黒こげになった。

「ちょっとかわいそうなことしちゃったかな?」

「いや、セイレーンは船乗りを溺死させるから、駆除しておいたほうがいい」

浮竹は、他にセイレーンがいないかどうか船で港の近くを行ったり来たりした。

「他にセイレーンはいないようだ・・・・なんだ、歌声がする」

それは、セイレーンの歌声だった。

京楽も浮竹も魅了されて、その歌声をする方に向かう。

セイレーンでも、とびぬけた美人がいた。

「ああ、たまらないね、君」

京楽のその一言で、浮竹は我に戻った。

「この浮気者!」

「あべし!」

「セイレーンなんかと浮気するのか!」

「びでぶ!」

京楽の股間を思い切り蹴り上げると、京楽も正気に戻った。

「君・・・・僕たちを、食おうとしただろう?」

「なんのことかしら。分からないわ」

「その姿・・・・人を食ったのか」

「あら、悪い?人は魚を食べるじゃない。それみたいに、セイレーンは人間をたまに食べるだけよ」

「人に害を成せば人に駆除される。それくらい、分かっているだろう?」

浮竹が、進化したセイレーンを見た。

ハイ・セイレーンというところだろうか。

保有している魔力が高く、歌声でまたこちらを誘惑してきた。

「ららら~~~~~~~♪」

浮竹は耳を手でふさいだ。

京楽は、また魅了されてそのセイレーンを抱きしめていた。

「浮気は、許さないと、言っているだろう!エターナルフェニックス!」

セイレーンもろとも、京楽も一緒に焼いた。

「もぎゃあああああ」

その熱さに、我に返った京楽が魔法のバリアを自分にだけ作り、人を食ったセイレーンは丸焼き状態になって、灰となり魔石だけを残してこの世から消え去っていった。

「セイレーンになんて、鼻の下伸ばしやがって」

「違んだよ、誤解だよ。あれは歌声に魅了されただけで、別にセイレーンを好きなわけじゃないよ」

「過去にセイレーンと関係をもったことは?」

「う・・・・・4回、くらいかな」

正直にいう京楽に、浮竹はハリセンでその頭を叩いた。

「5回目になってたら、別れてたからな」

「はい、すみません。僕がもっと魅了に気を付ければ」

「とりあえず、報告に戻ろう。もうここいらのセイレーンは全部駆除し終えたようだ。さっきの親玉ってところで、もう増えたりもしないだろう」

町の町長から報酬の金貨10枚をもらい、王都に戻って冒険者ギルドに魔石を買い取ってもった。

金貨6枚になった。

「浮竹、まだ怒ってるの?」

「別に怒ってなんてない」

つーんとした態度をとり続ける浮竹を、京楽は抱きしめた。

「僕が愛しているのは、今は浮竹だけだよ」

「そうか。それなら、いい」

自分の家に戻ると、京楽は浮竹を求めてきた。

久しぶりだったので、浮竹にも欲はあるので、応じることにした。

「んあっ」

ディープキスを繰り返されて、舌が絡みあう。

口づけの合間に服を脱がされて、平らな胸を撫でられ、先端をつままれた。

「んっ」

そのまま、ズボンをぬがされて、ボクサーパンツの上から触られた。

「あっ」

すでに染みをつくっていたそこは、京楽に触られると硬く勃ちあがり、京楽がボクサーパンツの上から執拗に愛撫すると、白濁した液を出していた。

「ああああ!!」

「ふふ、かわいい」

「ばか、服が」

「洗濯すればいいだけだよ」

浮竹は、ついには全裸にされて、京楽も裸になった。

ローションを後ろに塗り込まれて、前立腺を指がかすめる。

「あああ!」

前立腺を刺激されて、また浮竹は精液を放っていた。

「いくの早くない?」

「うるさい」

「ごめんごめん」

京楽は、熱く滾ったものを浮竹の蕾に宛がい、一気に引き裂いた。

「ひああああああああ!!」

衝撃に、涙がこぼれる。

その涙を吸い取って、京楽はゆっくりと動き出した。

「んああああ!」

わざと前立腺をかすめて、奥を貫く。

奥をゴリゴリされると、浮竹の手が京楽の背中に回り、爪を立てる。

「やあああああ!!」

ぐりっと奥まで侵入してきた熱は、しめつけられて京楽は浮竹の胎の奥に子種をびゅるびゅると注ぎ込んでいた。

「やああ、いっちゃう!」

浮竹は、ドライのオーガズムでいっていた。

「もっといっていいよ?」

浮竹のものをしごぎあげると、浮竹は呆気なく白濁した液体を京楽の手の中に放っていた。

「あ、春水、もっとお前をくれ。お前の子種で、俺の胎を満たしてくれ」

ぱちゅんぱちゅんと音をたてて、京楽のものが出入りする。

浮竹は何度目かも分からない精液を吐き出して、それ以上もう出るものがなくなり、先走りの蜜だけをたらたらと零していた。

「あ、ああああ!」

ごりごりと、奥を抉られて、浮竹の視界が真っ白になる。

オーガズムでいくことを覚えた体は、貪欲に京楽を求めた。

「あ、いい、もっと、もっと」

「十四郎・・・・愛してるよ」

「俺も愛している、春水・・・あああああ、もっと奥まで!」

ぐりっと奥を抉られて、浮竹はまたいっていた。

「いやぁ!」

「最後の一滴まで、注いであげるからね?」

「あ、やああ、やあ、あああ」

浮竹は快感でぐずぐずに溶けていく。

京楽も、浮竹の中に全てを放って、満足した。

濡れたタオルをもってきて、体を清めて中に出したものをかき出すと、とろとろと白濁した京楽の液体が浮竹の太ももをつたってきた。

「たくさん出したな」

「うん。だって、十四郎が求めるんだもの」

浮竹は真っ赤になって、クッションを京楽に投げた。

「シーツを変えてくれ。もう、このまま一度寝る」

「うん。分かったよ」

夕飯まではまだ時間があったので、シーツを変えたベッドの上で、浮竹はすぐに眠りに落ちていった。

「ねぇ、十四郎。僕は、このまま君の傍にいてもいいのかな?」

京楽は堕天使だ。堕天使に愛された天使は、やがて堕天使へと落ちる。

「君が望むまで傍にいるけれど、もしも君が堕天しそうになったら・・・・」

京楽は言葉を区切って、夕飯を作りにキッチンに行くのだった。


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「それで、堕天した君は私に何の用かな?」

「力をください!血を、ください!」

ヴァンパイアの京楽に片翼をもがれたその天使だった、堕天使は、男にとり入ろうとしていた。

「私には、関係のない話だ。君程度の雑魚に、期待もしていないし、血をあげるなんてまっぴらだからね」

男は、炎の魔法を放った。

片翼の堕天使は、灰となって世界から消えいった。

「どうして・・・・・」

「どうしてもこうしても、君など始めから必要なかったんだよ」

男は笑う。

「堕天使になるか・・・・・浮竹?大天使長ミカエルの子は、堕天しにくいがこのままいけば、あるいは・・・・・・」

男はワインを開けて、ワイングラスに注ぐと、一気にあおった。

「熟するのを待つのも、また一興」

男は、そう言って静かに笑うのだった。



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