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堕天使と天使外伝

フェンリルの浮竹とヴァンパイアの京楽のところに、天使の浮竹と堕天使の京楽が遊びにいった。

「ペット用の犬用のシャンプーを買ってきたんだ」

すでに、浮竹はうずうずしていた。

もっふもふなフェンリルの浮竹の毛皮は綺麗だが、長い間水でしか洗っていないので、少しだけごわごわしていた。

ちゃんと長毛用の犬用のブラシも買ってきた。

「フェンリルの俺!俺に洗われてくれ!」

いきなりの言葉に、フェンリルの浮竹が頭に?マークを浮かべた。

「フェンリルの姿になったとき、もっともっふもっふのいい匂いがするようになりたいと思わないか?」

『それは思う。でも、これ犬用シャンプーって書いてある。俺は犬じゃないぞ』

「細かいことは気にしない。京楽はその辺でありでも数えてろ。ヴァンパイアの京楽は手伝ってくれ」

『はいはい。まぁ、確かにフェンリル姿で水浴びをさせたことはあるけど、ちゃんとしたシャンプーなんてしたことないからね』

ヴァンパイアの京楽は、フェンリルの浮竹にフェンリルの姿になるように頼んだ。

ぼふんと音を立てて、小柄なフェンリルが姿を現す。

大型犬くらいの大きさだった。

「ありさんを数えて・・・1匹、2匹・・・・」

ありでも数えてろと言われた堕天使の京楽は、本当にありを数え出した。

広い浴場に湯をはり、その中にフェンリル姿の浮竹を入れる。

「ていっ」

犬用シャンプーを取り出して、フェンリルの浮竹に塗っていく。

そして、ブラシでわしゃわしゃと洗い出した。

毛皮が長いので、けっこうな重労働になるが、仕上がりが楽しみなので、ヴァンパイアの京楽もまた天使の浮竹を真似て、ブラシでわしゃわしゃと洗った。

「かゆいところはないか?」

『んー。おなかがかゆい。後右足』

「任せろ!」

ごしごしと洗ってやると、気持ちよさそうにフェンリルの浮竹は目がとろんとなった。

『眠くなってきた・・・・・』

「寝ててもいいぞ。洗っておくから。お湯をかけるときに起きてくれれば」

『じゃあ、ちょっとだけ寝る・・・・』

フェンリルの浮竹は、魔狼とされる巨大なフェンリルなのだが、幼い頃に成長が止まってしまい、大型犬か狼くらいしかの大きさしかなかった。

隅々までをシャンプーで洗うと、犬用のシャンプーは半分近くなくなっていた。

「フェンリルの俺、起きろ。流すぞ」

『んー。起きた』

しゃあああと、お湯のシャワーを浴びせる。

『ああ、気持ちいい』

全身の泡を洗い流されて、フェンリルの浮竹は水を含んだ毛皮を思わずぷるぷるして、天使の浮竹とヴァンパイアの京楽はずぶ濡れになった。

『あ、すまない!』

『いいんだ。これもまた、醍醐味の一つだ』

「なんの醍醐味だ?」

「ペットずっと飼いたかったんだよな。犬を」

『むう。俺は犬じゃない。フェンリルだ』

「分かっている。でも、今日は一日フェンリルの姿でいてくれないか。もふもふで癒されたい」

『堕天使の僕はどうするの?』

「適当に放置しとく。ありさんでも数え続けてるだろ」

フェンリルの浮竹はまたぶるぶると体をふるわせて、水分を吹き飛ばす。

「今、バスタオルで細かい水分もふいてやるからな」

『乾きにくい場所はドライヤーで乾かそう』

綺麗に水分をふきとると、真っ白でつやつやな毛皮になっていた。

金木犀の甘い香りがして、傍にいるだけで落ち着いた気分になれた。

「綺麗になったな」

『ありがとう、天使の俺。毛皮なんて水浴びするだけで、こうやって洗ってもらうのは初めてだ。まぁ、京楽が似たようなことをしたことはあるが、こちらの世界の石鹸は泡立ちが悪いからな』

「この犬用シャンプー追加で買ってまたもってくる。月に1回くらいは洗ってもらえ」

浮竹は、ヴァンパイアの京楽を見た。

『うん、そうする』

『仕方ないねぇ。愛しい浮竹のためだ。フェンリル姿の君の美しさを保つために、洗ってあげよう』

『ところで、堕天使のあいつは何をしているんだ?いないようだが』

「ああ、外でありを数えさせてる。そろそろ飽きて昼寝でもしてるんじゃないのか」

実際、ありを300匹まで数えたところで、飽きて中庭の日当たりのいい場所で、堕天使の京楽は寝ていた。

「おい、京楽、帰るぞ」

「ええ、もう!?僕、なんにもしてないんだけど。夕食も食べてない」

「家についたら、適当に作って食え。俺はヴァンパイアの京楽の出してくれた飯を食った。けっこう美味だったぞ」

「ずるいー」

「ずっと寝ているお前が悪い」

「しくしく・・・・ねぇ、浮竹、君、ちゃんと僕のこと愛してくれてる?」

その言葉に、天使の浮竹は顔を真っ赤にした。

「何を言い出す!」

「うん、その反応は僕を愛していてくれる証だね」

スパーン。

天使の浮竹にハリセンで頭をはたかれながらも、堕天使の京楽は嬉しそうにしていた。

「今度は、僕が君を洗ってあげる」

「卑猥な意味にしか聞き取れない」

「まぁ、内容はさておき、日も暮れるし帰ろうか」

「ああ」

その日の夜、浮竹は京楽に体を洗われたついでに、おいしくいただかれたそうな。

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