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堕天使と天使16

「ん・・・・・・・」

起きると、すっぱだかの京楽がいた。

京楽は、黒猫の姿になれる。

久しぶりに黒猫に変化していて、浮竹が猫好きということもあって構いまくっていたら、そのまま疲れて一緒のベッドで眠ってしまったのだ。

元から一緒のベッドで寝ているが、さすがにいつもは服を着ている。

「京楽、起きろ。それから服を着ろ」

「んーもうちょっと」

ごそごそと浮竹を探してくる手をつねってやると、痛みで京楽が目を開いた。

「ぐっどもーにんぐ。まいはにー」

「バカやってないで服着て朝食の準備しろ。コーヒーをいれてくる。黒猫ならかわいいのに、なぜ堕天使のなった京楽はかわいくないのか・・・・・・」

そんなことを呟きながら、浮竹はキッチンに移動した。

京楽も服を着て、キッチンに移動して、浮竹にいれてもらったコーヒーを飲んで、簡単だが朝食を作り始めた。

いい匂いがしてきて、浮竹はテレビをつけた。

「エキドナの異常繁殖が見られます。アナウンサーの佐藤さん、現場状況をどうぞ」

「はい、佐藤です。こちらは、冒険者ギルドの前にきています。ギルドマスターにお話しを伺いましたところ、エキドナ退治は毎日のように行っているそうですが、母体がいるのか完全に駆除できないようです。これがエキドナです」

TVの向こう側では、死んだエキドナの死体が映っていた。

「緊急依頼。エキドナの母体を退治せよ。金貨200枚」

浮竹が、魔法で依頼書を分別していると、緊急依頼でエキドナの母体を叩けというものがあった。

エキドナは美しい女性の上半身に蛇の下半身をもつ、ラミアに少し似ているが、ラミアより存在は上位で、ヒュドラやケルベロスの母と言われていた。

「冒険者ギルドだけでは対応できなくなったみたいだね。母体を叩けだなんて、無茶を言ってくれるね、新しいギルドマスターは」

ハイエルフのギルドマスターは2カ月ほど前に、ドラゴンマニアなので、ドラゴンを探す旅にでるとかいって、新しいギルドマスターがやってきた。

エルフだったが、少女のような美貌を持つ少年で、男の娘だった。

浮竹と京楽は、エキドナの母体の情報を得るために冒険者ギルドに来ていた。

「やあ、浮竹に京楽。今日はいい天気だね」

「ああ、そうだな。エキドナの件について聞きたい」

京楽は、ゴスロリファッションな男の娘のギルドマスターのスカートをめくった。

「何するんだい!」

「いやぁ、下着は男の子のものなんだと思って」

「浮気か!おいこら、冒険者ギルドのしかもギルドマスターに浮気か!」

京楽は、浮竹に首を締め上げられて、酸素不足で顔が蒼くになっていた。

「ほら、浮竹、そんなことしてると京楽が死んじゃうよ」

「こいつはいっぺん殺さないと、性根が腐ってる!」

「ギブギブ、浮竹、僕が悪かったから。ほんのでき心なんだよ。男の娘のギルドマスターの下着は女物か男物か気になっただけだから」

「だからってスカートをめくるな!立派な犯罪だぞ!」

「まぁ、僕は平気だけどね。それより、エキドナの母体は西のアルンデ地方の森にいると推測されている。アルンデまでは車で4時間ってとこかな。アルンデからエキドナが沸きだしてるから、アルンデ地方は冒険者以外は立ち入り禁止になっている。住民の避難は完了しているよ」

「そうか。さっそく向かうことにする」

「母体はきっと大きい。気を付けて」

「じゃあ、エキドナの母体の魔石を提出するのを待っていてくれな」

そう言って、浮竹と京楽は車でアルンデ地方に向かい、瘴気の濃い森の近くに車を停めると、清めの呪符を手に森の中に入っていった。

「瘴気が濃いな」

「エキドナだよ」

まだ生まれて幼体のエキドナが数体いた。

「ヘルフレイム!」

「アイスクラッシャー!」

「きゃああああ!!」

「ぎゃああああああ!!」

幼体だからと手加減していては、いずれ成長して人に害を成す。

幼体がいるということは、母体が近いことを意味していた。

清めの札をもっているが、瘴気が濃くて、浮竹は京楽の分まで体の周りに結界を張り、瘴気で体がおかしくなることを防いだ。

森の奥から声がした。

「誰。わらわのかわいい子供たちを殺した。わらわの子はやがて世界を満たす。わらわは絶対。わらわは君臨者」

「母体から声をかけてくれるなんて、居場所を教えてくれているようなものだね」

「気をつけろ。母体はでかいぞ」

森の奥の開けた場所に、普通のエキドナの10倍はあろうかという巨大なエキドナがいた。

母体であった。

卵がそこかしこにあった。

「グラビディ・ゼロ!」

京楽が、重力の魔法でまずは卵を破壊する。

これ以上エキドナの孵化を防ぐためだった。

「おのれ、人間め、わらわの子供たちを殺すのか!」

「正確には天使と堕天使なんだけどね。子供っていうか、母体である君に死んでもらう」

「わらわは世界の王になるのだ。たかが天使や堕天使ごときに・・・・・」

「アイスコキュートス」

「ぎゃあああああああ!!!」

下半身の蛇の部分を浮竹に凍らされて、エキドナの母体は暴れ狂った。

自分で自分が産んだ卵を破壊しながら、身をくねらせる。

「いたい、いたい、寒いのは嫌いだ、寒いのはいやだ」

「氷が弱点か。蛇のモンスターでもあるしな。京楽、いくぞ」

「うん」

「「アイシクルフィールド」」

氷の禁忌で、エキドナの母体は大きな氷の彫像になった。

「ダイヤモンドダスト!」

それを、さらに硬い氷で割っていく。

エキドナの母体は、死しても氷は溶けず、魔石は京楽がナイフで取り出した。

「依頼達成だな。これで、エキドナの異常繁殖は終わるだろう」

「そうだと、いいんだけどね」

「どうした、京楽?」

「町に溢れかえるほどのエキドナを、この母体だけが産んだとは思えないんだ」

事実、探してみると他に3体の母体を発見し、駆除した。

「京楽、お手柄だな」

「チューして、チュー」

「はいはい」

京楽の唇にキスをする。

吸い付いて離れない京楽を殴り倒して、浮竹は魔石を4つ手に、車に乗り込んで冒険者ギルドに帰還した。

「エキドナの母体を4体確認した。どれも駆除した。証拠の魔石だ」

「わお、大きな魔石だね。これは高値がつくよ」

エキドナの母体は、ハイクラスのエキドナであった。

エキドナの女王だ.。

「1個金貨300枚で引き取ることにするよ」

「報酬が金貨200枚で、魔石が金貨300枚×4の1200枚か。なかなかの収入だな、京楽・・・・・・・」

京楽は、ギルドマスターの男の娘のスカートをまためくっていた。

「あ、今日は女の子ものの下着はいてる・・・・・・」

「京楽~~~~~~~?」

にこにこした顔で、手をボキボキならしながら、浮竹はスマイルを浮かべて京楽の鳩尾に右ストレートを決めた。

「ごふっ」

「ボクはランゼ。あいにく、京楽みたいなもじゃもじゃのおっさんに興味はないから。恋愛対象はあくまで女の子。男の娘の恰好してるけどね」

「ランゼ。京楽がすまない。スカートめくりをやめさせるよう、徹底的に指導しておく」

「ほどほどにね。さっきから、京楽嬉しそうにしてるし」

罰が罰になっていない。

そんな京楽だった。

浮竹にどんな形であれ、構ってもらえてうれしいのだ。

「京楽!おいこら!」

「にゃあああん」

「わ、黒猫の姿とるなんてずるいぞ!怒れないじゃないか!」

「にゃああん。ごろごろ」

黒猫の京楽は、浮竹の肩に乗って、甘え出した。

「仕方ない。元に戻るときは、ちゃんと服を用意しておけよ」

「にゃあああん」

その後、黒猫の京楽は、猫缶詰を食べてカリカリを食べてチュールを食べて、ベッドの下にもぐって寝るのだった。

朝になり、ベッドの下から苦悶の声が出てくる。

「ベッドの下から出れないよ~~~~」

「自業自得だ、ばかが。また黒猫になればいいだけだろう」

「あ、そうだった」

黒猫になり、ベッドの下から出てきた京楽は、すぐに人型に戻った。

「朝っぱらから、なんちゅーもんを見せつけるんだ!」

浮竹は、まっぱの京楽に怒って、股間を蹴り上げた。

「ぬおおおおおおおおおお」

悶絶する京楽に、着替えの服を投げつけて、浮竹は朝食を作るためにキッチンに移動するのであった。

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