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天使と堕天使外伝2

「フェンリルの俺が言っていた。黒猫姿のお前は臭いって」

「ええ、それ、狼っていうか、犬の嗅覚での話じゃないの」

「実際、黒猫姿になったお前の匂いをかいでみた。少し臭かった」

「ガーン」

京楽は、黒猫姿になった。

「洗って」

「洗う。わしゃわしゃ洗うぞ。ちゃんと猫用シャンプーを使うし、ブラッシングもするから安心しろ。毛皮はドライヤーでかわかしてやる」

まだ、寒い時期なので、濡れたままの姿でいるのはきついだろうという、浮竹の判断だった。

黒猫姿になった京楽を抱き上げて、浮竹は衣服の袖をまくり、猫用シャンプーでわしゃわしゃと洗った。

3回洗った。

それからシャワーで泡を流して、ブラッシングもして、ドライヤーで乾かした。

ちょっとべたついていた毛皮が、ふわふわのもこもこになっていた。

「うん、フローラルないい匂いだ」

「そう?自分じゃわからないんだけど」

黒猫姿で、京楽はスンスンと自分の毛皮をかいでみる。



『遊びにきたぞー!』

ちょうど、フェンリルの浮竹とヴァンパイアの京楽が遊びにきた。

『あれ、お前黒猫姿なのにあんまり臭くない。どうしてだ?いい匂いがする』

「ふふん、浮竹に洗ってもらったからだよ。3回も洗ってくれた。愛だよ、愛」

『臭いから、3回洗われたんだろう?』

「ムキー、僕はもうそんなに臭くない!」

『彼、黒猫の姿のままだけどいいの?』

ヴァンパイアの京楽が天使の浮竹に話しかけると、天使の浮竹は堕天使の京楽の作ったマーブルクッキーを用意して、アッサムの紅茶を入れていた。

「今日はせっかくだから、1日あのままの姿でいるんだそうだ」

「そうだよ。僕はフローラルな黒猫。気高き黒猫」

『野良のアホ猫の間違いじゃないのか?』

フェンリルの浮竹は、天使の浮竹と同じ顔で堕天使の京楽をからかった。

『こらこら、浮竹。あんまり彼で遊ばないの』

『このマーブルクッキー美味しいな』

「僕が作ったんだよ」

自慢する堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は狼の耳をへなっと下げて、尻尾をたらした。

『まずい気がしてきた』

「キー!失礼な子だね!ちょっと、ヴァンパイアの僕、このフェンリルの浮竹のしつけ、なってないよ!」

『俺はペットじゃない!しつけなんてされてない!』

「京楽も、フェンリルの俺も、ほどほどにな」

『うん、ほどほどにね』

ヴァンパイアの京楽は、天使の浮竹とマーブルクッキーを食べて、アッサムの紅茶を飲んで、和んでいた。

『天使の俺の入れた紅茶はうまいな』

「何、その対応の違い!」

『近くに来るな。下品な匂いが移る!』

「フローラルな香りだよ!」

『お前の精神が臭い』

「精神が臭いって何それ!」

まるで漫才のようで、それを楽しそうにヴァンパイアの京楽と天使の浮竹が見守っていた。

「いいもんいいもん。僕は今日は猫缶の高級なの食べてやる」

『高級だと!お前にはメザシがお似合いだ!』

「何それ!どこの貧乏猫の話さ!」

『お前だ』

「僕はこれでも金はあるほうなんだからね!」

『嘘くさい』

「ムキーーー!!!」


フェンリルの浮竹は、大型犬くらいのフェンリルの姿になって、黒猫の京楽を追いかけだした。

「ここまでおいでー。ばーかばーか!」

『むう。高い狭いとこに昇るなんて、反則だぞ』

「あっかんべー」

『体当たりしてやる』

どしんとたんすが揺れて、黒猫の京楽がおっこちてきた。

「フェンリルの俺、家の中であんまり暴れないでくれ。一戸建てとはいえ、家が壊れる」

『むう、すまない』

「怒られてる。バーカバーカ」

『ばかはお前だ。バーカバーカ』

ヴァンパイアの京楽と、天使の浮竹は笑っていた。

「2人とも、ほどほどにな」

『うん、ほどほどにね』

『みろ、お前のせいで怒られた』

「僕だけのせいじゃないと思うんだけど!」

その日一日、京楽は黒猫姿のままで、フェンリルの浮竹もつられてかフェンリル姿のまま、黒猫の京楽を追いかけているのであった。





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