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奴隷竜とSランク冒険者6

「パーティーを組む?」

「うん。今度のダンジョン遠征は冒険者ギルドの底上げを狙っていてね。Sランク冒険者は、みんなAランク冒険者のパーティーに入って、補佐するんだよ」

「俺は・・・・・京楽がパーティーを組むのなら、それがFランクでも構わない」

「浮竹、Fランクはなりたて冒険者だよ。まず大規模なダンジョン遠征には行けない」

京楽は苦笑して、浮竹の頭を撫でた。

「もっと撫でろ」

「はいはい」

よしよしと頭を撫で続けると、浮竹は満足したのか京楽から離れた。

「だから、僕のパートナーである君も、Aランクパーティーに混じることになる。いいね?」

「ああ、構わない。京楽がいくのなら、地獄にでも天国にでも、一緒に行く」

「大袈裟だねぇ」

浮竹は京楽からもらった翡翠のブレスレットをいじっていた。

「それ、お気に入りだね」

「京楽からもらったものだから」

浮竹の部屋には、京楽があげたがらくたのようなものまで大切に保管されている。

高級宿は、セキュリティに問題はないし、掃除や手入れを信用できる業者に任せられるので、浮竹と京楽はあえて居住をかまえず、高級宿に泊まり続けていた。

一泊大金貨50枚するのだが、白金貨を腐るほどもっている京楽には、困る金額ではない。

他の客は王侯貴族が多い。

マリーシュ姫のような輩がいないことが、安心できる材料でもあった。

貴族から直接依頼を受けることもある。

大抵が、他の貴族を殺せというものなので、受諾したことはない。

「さて、この住処とは1カ月おさらばだけど、持ち物はちゃんとアイテムポケットに入れたかい」

「衣服に調理道具、魔導書に安眠枕、目覚ましにパジャマ、ベッドに毛布」

アイテムポケットには何でも入ってしまうため、ベッドまで収納してしまっていた。

「ちょっと、ベッド収納してどうするの。遠征は明日からだよ」

「今日は、京楽のベッドで一緒に寝る」

「う・・・・理性もつかな、僕」

京楽と浮竹は、もう出会って半年以上になる。

男女と同じ交際をして、肉体関係があった。

「明日は遠征なんだろう?変なことはするなよ」

「もう、僕を試すような真似はよしてよ。でも、抱きしめてキスくらいならいいよね?」

「ん、許す」

京楽の長い黒髪をいじって、浮竹は京楽に口づけた。

「キスは、もうした。夜はいらない」

「はぁ・・・・君って淡泊に見えてけっこう性欲あるよね」

「う、うるさい!」

京楽に求められて、乱れる浮竹は妖艶で妖しかった。

「性欲があるのはお前だろう!1日に5回もするくせに!」

「う、ごめんなさい・・・・」

京楽も分かっているのだ。自分が性欲が強すぎることを。

花街に出入りしていた頃は、よく女にもてたが、回数が多いので息絶え絶えになる娼婦が多かった。

それを今は浮竹一人にぶつけているのだ。

多分、元がドラゴンでなければねをあげているだろう。

「風呂に入って飯も食ったし、今日は俺はもう寝るぞ」

「え、まだ夜の8時だよ」

「眠いんだ。京楽も寝ろ」

ぽんぽんとあいているベッドを叩いて、浮竹は添い寝を誘う。

「仕方ないなぁ。スリープの魔法かけて寝よう・・・・」

しっかりと浮竹を抱きしめて、京楽は自分にスリープの呪文をかけて、翌朝の7時まで寝た。

目覚ましをアイテムポケットに入れていたせいで、寝過ごした。

本当なら、6時半には起床しなきゃいけなかったのだ。

「ああ、朝食たべてる暇ないね。顔を洗ったら、冒険者ギルドに行こう」

「分かった・・・ふあああ~~~」

「11時間も寝たのに、まだ眠いの?」

「ドラゴンは、冬や寒い時期はよく冬眠に入る。今年は寒いから、眠い」

「ほら、この羽毛ジャケットきて。あったかくして。プチファイア!」

暖をとるための、体を暖かくする魔法を浮竹にかけてやると、浮竹は完全に眠気は冷めたようで、きびきびと動き出した。


冒険者ギルドに行くと、ギルドマスターの山じいに怒られた。

「30分の遅刻じゃ!団体行動をするときは、時間を厳守せよ!」

「はい、ごめんなさい」

「すまない」

京楽と浮竹は、ギルドマスターに怒られた。

「この4人が、お主ら担当のAランク冒険者じゃ」

「タフィーっていいます。弓使いです」

「俺はアルド。魔剣士だ」

「僕はジャスティン。魔法使いだ」

「あたしはサニア。神官よ」

一通り紹介を終えると、タフィーとサニアは浮竹の長い白髪を珍しげに見ていた。

「銀髪は見たことあるけど、ここまで見事な白髪は見たことないわ。染めてるの?」

「いいや、自前のものだが」

「やーんかわいくて綺麗。Sランクにいつかなれたら、いつか一緒に冒険してくれる?」

「京楽がいいと言うなら」

「京楽さん、浮竹さんといつかパーティー組ませてください!」

「はいはい。まずは、Sランク冒険者にならないとね。あと、浮竹は僕のものだから、僕がいないとパーティーには参加しないよ」

「「きゃあああああああ」」

二人の女性は、腐女子らしく、浮竹と京楽の関係にきゃあきゃあ言っていた。

「こら、タフィー、サニア。出発するぞ」

「はーい」

「あ、待ってー」

4人の冒険者のお守をしながら、Aランクのダンジョンを下っていく。

最下層に到達すると、真竜ではないが、ドラゴンがいた。

「ドラゴンだって!ここ、Aランクダンジョンだろう!」

魔剣士のアルドが、悲鳴に似た声をあげる。

「なんらかの手違いがあったようだね。ドラゴンはSランクダンジョンでしか出ない。最初は僕たちに任せて」

浮竹は、ドラゴンスイヤーを抜き放つと、見えないほどの速さで動き、ドラゴンの右足を切り飛ばしていた。

「ぎゃおおおおおおおおおお」

ドラゴンは、超速再生で足を癒す。

「浮竹、援護を頼むよ」

「任せろ。アイシクルブレス!」

「ぎぎゃああああああああ」

体を半分凍てつかせて、ドラゴンの動きが鈍る。

「ほら、君たちもみてないで攻撃を。ドラゴンと戦えることなんて滅多にないんだから!」

「い、いくぞ!」

「「「うん」」」

魔法や矢で攻撃をする。

タフィーという弓使いの腕はよく、ドラゴンの右目を射抜いた。

「ぐるるるるる!」

「ファイアブレスだ!下がれ!」

浮竹が、アイシクルブレスを放ち、相殺する。

戦うこと15分。

けが人を出すことも死者を出すこともなく、無事ドラゴンを倒した。

「ドラゴンの体は素材の塊だからね。僕たちはいらないから、君たちで分けなよ」

「え、いいんですか!白金貨になりますよ!」

「一度の依頼で白金貨2千枚くらいもらってるし、Sランクダンジョンに長くこもれば白金貨5千枚はいく」

「ひええええ」

「白金貨は見飽きた」

浮竹が、ドラゴンの素材などに興味なさそうにドラゴンの死体を見る。

「お前、なんでここにいたんだ?森に住んでいれば、退治されることもなかっただろうに」

真竜ではないとはいえ、同じドラゴン。

敵だったとはいえ、少し同情してしまう。

「浮竹、大丈夫?ドラゴン倒したこと、怒ってない?」

「大丈夫だ。それに2カ月前、Sランクダンジョンで邪竜を倒しただろう。あの邪竜は元々真竜だ。怒るなら、邪竜を倒した時にすでに怒ってる」

「そっか・・・・ドラゴンは素材になるから、弔えないけどいいよね?」

「ああ。素材として人の役にたてるのなら、そのほうがいい。ちなみに、生きてるドラゴンの血液はすごく高いんだぞ。俺は奴隷時代、よく血を抜かれていた」

「知ってる。賢者の石やエリクサーを作る材料になるからね」

「浮竹さん、京楽さん、ドラゴンの死体をアイテムポケットにいれました。解体は、冒険者ギルドに戻ってから、専門職の方にしてもらおうと思います」

「そうだね、そのほうがいいよ」

「まだ、30階層だ。このダンジョンは80階層まである。気を脱がずに進むぞ!」

浮竹が、先頭を歩き出す。

索敵をしながら、京楽もサーチの魔法で索敵をする。

「ドラゴンがいたせいか、この階層はもうモンスターはいないようだね。31階層に行こうか」

ぐ~~~~。

その時、タフィーがお腹を鳴らせた。

「あ、違うんです、誰もドラゴンのステーキ食べたいだなんて思ってません!」

「新鮮なドラゴンの肉は貴重だからね。休憩も兼ねて、ドラゴンステーキでも焼こうか」

京楽の言葉に、浮竹は少し引き気味になる。

「お、俺は食わんぞ。同族食いなんていやだ!」

「浮竹にはサンドイッチ用意してあるから」

「それなら、許す」

もしも満月で半竜人姿で尻尾があれば、ぶんぶんと振っていただろう。

パーティーはドラゴンステーキを食べて、そのおいしさにAランク冒険者たちは涙を流した。

何度か食べたことはあるので、京楽はまぁおいしいかなぁという感想。

浮竹は、サンドイッチを食べていた。

京楽が作ってくれたものだ。

「なんだ、こっちを見て。お前も食いたいのか?」

「ううん。ドラゴンステーキを僕たちが食べてるわりには平気そうだなぁと思って」

「この世界は弱肉強食だ。弱い者は強い者の糧になる。ドラゴンも例外じゃない」

「うん、そうだね。ちょっと早いけど、今日の冒険はここまでにしよう。テントを張って、寝る準備を。結界をはるので、見張りはいらないよ」

「ああ、俺たち京楽さんと浮竹さんと同じパーティーになれてよかった」

「ほんとだよね」

「ええ、そうね」

「ドラゴンステーキまでごちそうになったし、ドラゴンの素材までもらえるし。うはうはだわ~」

一向は、半月をかけて80階層まで踏破しきり、次のAランクダンジョンへと挑むのであった。

浮竹と京楽は、Aランクパーティーが成長していく様を見届け、1カ月のダンジョン遠征の、Sランク冒険者に課せられた任務を成功させるのであった。


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