奴隷竜とSランク冒険者7
「師匠!」」
浮竹は、冒険者ギルドで年若い子供の真竜のドラゴンから、師匠と呼ばれてまとわりつかれていた。
他のSランク冒険者、通称「暁の星」のセレニティという女性魔法使いがテイムし、パートナーとしている子ドラゴンであった。
名前はカイル。
「俺は師匠じゃあない。弟子なんてもった覚えはない」
「でも、師匠は俺より年上で、俺よりすごくて強くて何より希少なムーンホワイトドラゴンだ!」
「だからって、弟子にはせんぞ」
「もうすでに弟子だもんね~」
けけけと明るく笑うカイルを、浮竹は冷たいそぶりを見せるが、本心では同じドラゴンが冒険者のパートナーをしているというのは、実は嬉しかった。
「こらカイル、浮竹は僕のものだよ。セレニティのところに戻りなさい」
「やーだよーもじゃひげ京楽!浮竹さんのパートナーだからって、同じドラゴン同士の絆は消せない」
京楽は軽く嫉妬していた。
「ちょっと、セレニティ笑ってないでなんとかしてよ!」
「ふふふ、他のドラゴンと交流を深めるのも、また一興。ムーンホワイトドラゴンをパートナーにもつSランク冒険者がいると噂には聞いていたが、本当だったのだね」
「嘘ついてなんになるのさ」
「ふふふ。さぁね?」
浮竹は浮竹で、京楽とセレニティの仲の良さに軽く嫉妬していた。
カイルはブラックドラゴンだ。数はまぁまぁおり、それほど珍しいドラゴンではないが、ドラゴンをパートナーにするSランク冒険者は、セレニティ、京楽、他にあと3人いた。
ムーンホワイトドラゴン並みに希少な、サンシャインレイドラゴンをパートナーに持つSランク冒険者もいる。ムーンホワイトドラゴンの対になるようなドラゴンで、太陽竜と呼ばれていた。
一方、浮竹は冒険者ギルドでは月竜と呼ばれていた。
「月竜かぁ。憧れるなぁ。俺も月竜か太陽竜がよかったなぁ。なんで、そこらへんにいるブラックドラゴンなんだろう」
「ドラゴンの種族は関係ない。いかに強くいれて、パートナーを大切にし、力になれるかだ」
「おおー、師匠かっこいい」
「だから、師匠じゃない」
「師匠、ほらチョコレートあげる」
「むう。もらう」
浮竹は甘いものが好きだ。
チョコレートは特に好きで、カイルはその情報を手に入れて、事前にチョコレートを用意していた。
「師匠、俺を弟子にする気になった?」
「うーむ」
チョコレートをちらつかされて、浮竹が悩む。
「おい、そこで迷うな、バカドラゴン」
背の低い、銀髪の少年が浮竹にかつを入れる。
日番谷冬獅郎。最年少の12歳のSランク冒険者で、氷輪丸という特別な魔剣をもち、自身を一部氷の竜化することができて、意思のない氷の竜を操ることができた。
氷の精霊、アイシクルという種族だった。
精霊族が冒険者をしているのは珍しくなく、普通にエルフやドワーフと交じって亜人として冒険者をしている精霊族は多い。
「バカドラゴンとはなんだ、シロちゃん」
「あだなで呼ぶな。日番谷と呼べ」
浮竹と、冬獅郎は何故か仲が良かった。
同じ氷を司る者同士であるせいか、冒険者ギルドで浮竹の最初の友人になったのが冬獅郎だ。
冬獅郎はパーティ―を組んでおり、雛森というAランクの少女と二人でパーティーを組んでいた。
「シロちゃん、喧嘩はよくないよ」
「うるさい、雛森!シロちゃんて呼ぶな!」
「シロちゃんにも雛森ちゃんにもチョコレートあげる」
カイルは、持っていたチョコレートを浮竹、冬獅郎、雛森に全てあげてしまった。
チョコレートはけっこうな高級菓子である。
それをほいほい渡すということは、セレニティとカイルのパーティーは金があるということだ。
まぁ、大抵のSランク冒険者は金持ちだ。
「他の冒険者さんたちの邪魔になるから、いくよ、シロちゃん」
「おい待て、まだ話の途中・・・・・・」
雛森に連れていかれて、冬獅郎は冒険者ギルドを去ってしまった。依頼を受けていたようで、任務につくのだろう。
「セレニティ」
「なんだ、京楽」
「あの子ドラゴン、どうしてまたパートナーに。君の実力なら、大人のドラゴンでもテイムできたでしょう」
「ふふ、私はあの子がよかったのだよ。天真爛漫で、我儘で、手のかかる子供みたいで、それが実にいい。ふふふふ・・・・・・」
「あ、そう」
すでに違う世界に入っているセレニティを放置して、京楽は浮竹の傍にいく。
「帰るよ、浮竹。今日はめぼしい依頼がないから、少しだけSランクダンジョンにもぐろう」
「ああ、分かった」
「ずるい!師匠だけ、Sランクダンジョンだなんて!セレニティと一緒でも、俺はSランクダンジョンに行ったこと、数えるほどしかないのに!」
「お前はまだ若い。未熟だ」
「うっ」
ぐさぐさっと言葉の矢がささり、カイルはよろけた。
「強くなりたいなら、まずはパートナーとの連携を精密にとれるようにしろ。あと、俺の弟子になりたいとか、他人を困らせるような我儘は控えること」
「うぐっ」
カイルは、セレニティに泣きついた。
「師匠がいじめるーーー」
「ふふふ、泣くな。男だろう?」
「うん・・・・・・」
涙をふいて、カイルは顔をあげる。
「今に見てろ!師匠をこえるドラゴンになってやるんだからな!」
「そうか。楽しみにしている」
浮竹は、カイルの頭をぐしゃぐしゃに撫でて、京楽と共に冒険者ギルドを後にした。
軽くSランクダンジョンにもぐり、フロアボスのケルベロスを倒して財宝を手に入れる。
「浮竹、弟子にしてあげたらよかったのに」
「弟子にしたら、俺たちの住む高級宿に入り浸るぞ。二人でいちゃいちゃなんて、できないぞ?」
「ああ、弟子はいらないね。永遠にいらない。セレニティに、弟子になるのは諦めろって言っとこ」
ころっと意見を変える京楽が面白くて、浮竹はクスクス笑う。
「どうしたの?」
「いや、京楽は俺を独り占めしたいだなぁと思って」
「そりゃそうだよ。君は僕のもので、僕のパートナーだ。いつでも、僕の隣にいてね?」
「ああ。そうだな」
ケルベロスから大きな魔石だけを回収して、財宝をアイテムポケットに入れていく。
「お、古い魔導書か・・・・古代文字だな。おまけに竜語でかかれてある」
浮竹は、生まれた時から古代文字や竜語が読めた。
それはドラゴンの血のなせる技である。
「なんてかいてあるの?」
「究極の破壊。複雑すぎて、俺でも、俺以外でも・・・・たとえ、全てのドラゴンの母、マザードラゴンにさえ、使えなさそうな魔法だ。でも、あると危険かもしれないから、焼いてしまおう」
「うーん、究極の破壊か。物騒だね」
「京楽、火の呪文を」
「うん、ファイア!」
ぱちぱちと音を立てて、古代の魔導書は灰になった。
「他の魔法書は普通のものだ。売ればそれなりの金になるだろう」
「うん、そろそろ夜になるし、撤収しようか」
「ああ」
「そういえば、明日満月だね」
「あ、そうだな」
「ふふ、素直な君の尻尾が早く見たいよ」
京楽は、浮竹を抱き寄せた。
「ばか、ここはダンジョンだぞ」
「モンスターは全部退治した。次のモンスターが生まれるまで、数時間はある」
「ここでしたら、禁欲1カ月だからな!」
「それは困る!宿に戻ろうか」
京楽は浮竹から離れた。浮竹の手を握って、歩きだす。
「ダンジョンの中だけだから、いいでしょ?普段は手をつないだりできないから」
「仕方ないな・・・・・・」
明日は満月。
また、自分の言葉とは裏腹に、尻尾が揺れるのだろうかと思って、浮竹は少し不思議な気持ちになるのだった。
浮竹は、冒険者ギルドで年若い子供の真竜のドラゴンから、師匠と呼ばれてまとわりつかれていた。
他のSランク冒険者、通称「暁の星」のセレニティという女性魔法使いがテイムし、パートナーとしている子ドラゴンであった。
名前はカイル。
「俺は師匠じゃあない。弟子なんてもった覚えはない」
「でも、師匠は俺より年上で、俺よりすごくて強くて何より希少なムーンホワイトドラゴンだ!」
「だからって、弟子にはせんぞ」
「もうすでに弟子だもんね~」
けけけと明るく笑うカイルを、浮竹は冷たいそぶりを見せるが、本心では同じドラゴンが冒険者のパートナーをしているというのは、実は嬉しかった。
「こらカイル、浮竹は僕のものだよ。セレニティのところに戻りなさい」
「やーだよーもじゃひげ京楽!浮竹さんのパートナーだからって、同じドラゴン同士の絆は消せない」
京楽は軽く嫉妬していた。
「ちょっと、セレニティ笑ってないでなんとかしてよ!」
「ふふふ、他のドラゴンと交流を深めるのも、また一興。ムーンホワイトドラゴンをパートナーにもつSランク冒険者がいると噂には聞いていたが、本当だったのだね」
「嘘ついてなんになるのさ」
「ふふふ。さぁね?」
浮竹は浮竹で、京楽とセレニティの仲の良さに軽く嫉妬していた。
カイルはブラックドラゴンだ。数はまぁまぁおり、それほど珍しいドラゴンではないが、ドラゴンをパートナーにするSランク冒険者は、セレニティ、京楽、他にあと3人いた。
ムーンホワイトドラゴン並みに希少な、サンシャインレイドラゴンをパートナーに持つSランク冒険者もいる。ムーンホワイトドラゴンの対になるようなドラゴンで、太陽竜と呼ばれていた。
一方、浮竹は冒険者ギルドでは月竜と呼ばれていた。
「月竜かぁ。憧れるなぁ。俺も月竜か太陽竜がよかったなぁ。なんで、そこらへんにいるブラックドラゴンなんだろう」
「ドラゴンの種族は関係ない。いかに強くいれて、パートナーを大切にし、力になれるかだ」
「おおー、師匠かっこいい」
「だから、師匠じゃない」
「師匠、ほらチョコレートあげる」
「むう。もらう」
浮竹は甘いものが好きだ。
チョコレートは特に好きで、カイルはその情報を手に入れて、事前にチョコレートを用意していた。
「師匠、俺を弟子にする気になった?」
「うーむ」
チョコレートをちらつかされて、浮竹が悩む。
「おい、そこで迷うな、バカドラゴン」
背の低い、銀髪の少年が浮竹にかつを入れる。
日番谷冬獅郎。最年少の12歳のSランク冒険者で、氷輪丸という特別な魔剣をもち、自身を一部氷の竜化することができて、意思のない氷の竜を操ることができた。
氷の精霊、アイシクルという種族だった。
精霊族が冒険者をしているのは珍しくなく、普通にエルフやドワーフと交じって亜人として冒険者をしている精霊族は多い。
「バカドラゴンとはなんだ、シロちゃん」
「あだなで呼ぶな。日番谷と呼べ」
浮竹と、冬獅郎は何故か仲が良かった。
同じ氷を司る者同士であるせいか、冒険者ギルドで浮竹の最初の友人になったのが冬獅郎だ。
冬獅郎はパーティ―を組んでおり、雛森というAランクの少女と二人でパーティーを組んでいた。
「シロちゃん、喧嘩はよくないよ」
「うるさい、雛森!シロちゃんて呼ぶな!」
「シロちゃんにも雛森ちゃんにもチョコレートあげる」
カイルは、持っていたチョコレートを浮竹、冬獅郎、雛森に全てあげてしまった。
チョコレートはけっこうな高級菓子である。
それをほいほい渡すということは、セレニティとカイルのパーティーは金があるということだ。
まぁ、大抵のSランク冒険者は金持ちだ。
「他の冒険者さんたちの邪魔になるから、いくよ、シロちゃん」
「おい待て、まだ話の途中・・・・・・」
雛森に連れていかれて、冬獅郎は冒険者ギルドを去ってしまった。依頼を受けていたようで、任務につくのだろう。
「セレニティ」
「なんだ、京楽」
「あの子ドラゴン、どうしてまたパートナーに。君の実力なら、大人のドラゴンでもテイムできたでしょう」
「ふふ、私はあの子がよかったのだよ。天真爛漫で、我儘で、手のかかる子供みたいで、それが実にいい。ふふふふ・・・・・・」
「あ、そう」
すでに違う世界に入っているセレニティを放置して、京楽は浮竹の傍にいく。
「帰るよ、浮竹。今日はめぼしい依頼がないから、少しだけSランクダンジョンにもぐろう」
「ああ、分かった」
「ずるい!師匠だけ、Sランクダンジョンだなんて!セレニティと一緒でも、俺はSランクダンジョンに行ったこと、数えるほどしかないのに!」
「お前はまだ若い。未熟だ」
「うっ」
ぐさぐさっと言葉の矢がささり、カイルはよろけた。
「強くなりたいなら、まずはパートナーとの連携を精密にとれるようにしろ。あと、俺の弟子になりたいとか、他人を困らせるような我儘は控えること」
「うぐっ」
カイルは、セレニティに泣きついた。
「師匠がいじめるーーー」
「ふふふ、泣くな。男だろう?」
「うん・・・・・・」
涙をふいて、カイルは顔をあげる。
「今に見てろ!師匠をこえるドラゴンになってやるんだからな!」
「そうか。楽しみにしている」
浮竹は、カイルの頭をぐしゃぐしゃに撫でて、京楽と共に冒険者ギルドを後にした。
軽くSランクダンジョンにもぐり、フロアボスのケルベロスを倒して財宝を手に入れる。
「浮竹、弟子にしてあげたらよかったのに」
「弟子にしたら、俺たちの住む高級宿に入り浸るぞ。二人でいちゃいちゃなんて、できないぞ?」
「ああ、弟子はいらないね。永遠にいらない。セレニティに、弟子になるのは諦めろって言っとこ」
ころっと意見を変える京楽が面白くて、浮竹はクスクス笑う。
「どうしたの?」
「いや、京楽は俺を独り占めしたいだなぁと思って」
「そりゃそうだよ。君は僕のもので、僕のパートナーだ。いつでも、僕の隣にいてね?」
「ああ。そうだな」
ケルベロスから大きな魔石だけを回収して、財宝をアイテムポケットに入れていく。
「お、古い魔導書か・・・・古代文字だな。おまけに竜語でかかれてある」
浮竹は、生まれた時から古代文字や竜語が読めた。
それはドラゴンの血のなせる技である。
「なんてかいてあるの?」
「究極の破壊。複雑すぎて、俺でも、俺以外でも・・・・たとえ、全てのドラゴンの母、マザードラゴンにさえ、使えなさそうな魔法だ。でも、あると危険かもしれないから、焼いてしまおう」
「うーん、究極の破壊か。物騒だね」
「京楽、火の呪文を」
「うん、ファイア!」
ぱちぱちと音を立てて、古代の魔導書は灰になった。
「他の魔法書は普通のものだ。売ればそれなりの金になるだろう」
「うん、そろそろ夜になるし、撤収しようか」
「ああ」
「そういえば、明日満月だね」
「あ、そうだな」
「ふふ、素直な君の尻尾が早く見たいよ」
京楽は、浮竹を抱き寄せた。
「ばか、ここはダンジョンだぞ」
「モンスターは全部退治した。次のモンスターが生まれるまで、数時間はある」
「ここでしたら、禁欲1カ月だからな!」
「それは困る!宿に戻ろうか」
京楽は浮竹から離れた。浮竹の手を握って、歩きだす。
「ダンジョンの中だけだから、いいでしょ?普段は手をつないだりできないから」
「仕方ないな・・・・・・」
明日は満月。
また、自分の言葉とは裏腹に、尻尾が揺れるのだろうかと思って、浮竹は少し不思議な気持ちになるのだった。
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