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奴隷竜とSランク冒険者16

「勇者?」

「そうじゃ。異界の勇者、平子真子と一緒に、Sランクダンジョンにもぐり、勇者の実力をはかってほしいのじゃ」

ある日、ギルドマスターの山じいに、京楽と浮竹は呼び出された。

「平子真子・・・・・聞いたことのない名前だね」

「勇者として召還されて間もないからの」

「そんな子を、いきなりSランクダンジョンに挑ませて大丈夫なの?」

「勇者なら、大丈夫じゃないのか」

京楽と浮竹の意見が食い違うのは、珍しいことだった。

「何、帰還スクロールがあるじゃろ。危なくなったら、それで逃げればよいのじゃ」

「うーん、山じいの頼みだし、仕方ないねぇ」

「先生、このクエスト受けます」

「うむ。十四郎はよいこじゃな。それに比べて春水は・・・・・」

「はいはい。受けるって言ってるでしょ」

京楽は溜息をついた。

次の日、勇者の平子真子と会った。

「なんや、Sランク冒険者がくるいうから、どないなツワモノ思ったら、案外普通やないか」

「これでも、Sランク冒険者では上のほうだよ」

「俺は浮竹十四郎。こっちは京楽春水。よろしくな」

「おう、よろしゅうな」

さっそく、Sランクダンジョンにもぐることになった。

実力を図るためなので、難易度は簡単なものにすることにした。

さっそく、敵のゴーレムが出てくる。

「カラミティファイア!」

平子真子は、召還されたばかりとは思えない、魔法を使う。

剣の腕もあるようで、ゴーレムを真っ二つに斬ってしまうほどだった。

「これくらいなら楽勝やな。ドラゴンでも倒せるで」

びくりと、浮竹が強張る。

「なんや、どうしたんや」

「いやね、浮竹は実はドラゴンなんだよ。ムーンホワイトドラゴンっていって、希少種で今は人化で人の姿をとってる」

「ごめんなぁ。そうとは知らずに、仲間を殺したいようなこと言うて」

「いや、いいんだ」

浮竹は首を横に振った。

Sランクダンジョンでは、時折ドラゴンが出る。

人の話を理解する真竜なら争わない時も多いが、ただのドラゴンは倒すしかない。

それでも、同じドラゴンなので浮竹は気乗りしないようであるが。

「次、フロアボスだね」

「何がでるんかいな。楽しみやな」

「10階層だから、そんなに強いモンスターは出ないんじゃないのか」

出てきたのは、地獄の門番と呼ばれるケルベロスだった。

「な、ケルベロス!?もっと下の階層のフロアボスでしょ!」

「俺に任せろや。カラミティアイシクルチェーン!」

平子は、氷の鎖を作り出すと、ケルベロスに巻き付ける。

しかし、ケルベロスは炎のブレスでそれを溶かしてしまった。

「きかんのかいな。仕方ない、ワールドエン・・・・・」

「わぁわぁ。こんなダンジョンの10階層で、そんな禁忌使わないの!浮竹、任せれる?」

「ああ。アイシクルブレス!」

浮竹は何度もアイシクルブレスをはいて、ケルベロスの炎の吐息を相殺し、ついには体を凍らせることに成功した。

「最後は勇者の出番やろ」

平子は、そう言って剣で氷ついたケルベロスを細切れにしてしまった。

「ふむ。今回の勇者は、魔法、剣ともにSランク高位レベルと」

浮竹が、メモをとる。

「なんや、俺の実力はこんなもんやないで?もっと下層にいって、邪神でも倒そうや」

「いや、この世界に邪神はいるが、ダンジョンにいたりしないからね」

「つまらんなぁ」

「邪神に挑みたいと・・・・φ(..)メモメモ」

「なぁ、あんたら強いな。どうや、俺の勇者パーティーに入らへんか?」

「いや、遠慮しておく。僕は浮竹と二人でパーティーを組んでるから」

「じゃあ、浮竹を口説けばいいんかいな?」

「俺も遠慮しておく。勇者は魔王討伐が任務だろう。俺たちSランク冒険者はあくまで冒険者。魔王討伐は、国王直々の命令でもない限り、動かない」

「なんや、つまらんなぁ。力あるのに、もてあましとるやんか」

「だから、Sランクの高難易度ダンジョンに挑んで、命のやりとりをして財宝ゲットするんだよ。モンスターの素材とか」

「へぇ。冒険者って、儲かるんやな」

「Sランクになれば、白金貨が転がり込むよ」

「俺は白金貨2千枚を支度金にってもらったけど・・・・・おたくら、いくらくらい稼いどるん?」

「んー。こもる期間によるけど、難易度の高いSランクダンジョンに2週間もぐったら、白金貨15万枚はいくね」

「あの王様、ケチやんか!」

平子は、買ったばかりという剣で地面を切る。

地面が裂けた。

「出世払いで、白金貨10万枚ほどかしてくれん?」

「いいぞ」

「ちょっと浮竹。お金のトラブルは・・・・・」

「白金貨2千枚なんて、ろくな装備揃わないじゃないか。勇者なのに。魔王討伐にいくんだろうから、それなりの装備でいかないと」

浮竹は、アイテムポケットから白金貨10万枚の入った袋を取り出すと、平子に渡した。

「ありがとな。恩にきるわ。必ず返すさかい」

「ああ、まずは勇者パーティーの募集からだな」

「ああ、Aランク冒険者やけど、黒崎一護っていうのに目をつけとるん。あと、その妻の朽木ルキアと、なんかしらんがもう一人の夫の阿散井恋次、あとそのパーティー仲間の朽木白哉」

「白哉や一護君やルキア、恋次君までもか。これまた、知り合いばかりだな」

浮竹が、不思議そうな顔をする。

「勇者パーティー募集って冒険者ギルドで紙はったけど、この4人しか反応せぇへんかった・・・・・」

「そりゃ、魔王討伐は命に関わるからね」

「今の魔王は、藍染惣右介。以前の勇者だった人物だ」

「うはぁ、勇者が魔王?人生波乱万丈やなぁ」

「勇者として性格に難ありでね。人体実験したりで、追放されて、魔王を勝手に討伐して魔王に成り代わったんだよ」

京楽が説明する。

「藍染か・・・・強いんかなぁ」

「強いよ。魔王を単身で葬るくらいだからね」

「はぁ。俺、倒せるんかなぁ」

「パーティ―を組むんだろう。倒せるさ。俺たちの知る一護君たちは強い」

「まぁ、ぶっちゃけ藍染ってぼっちだしね」

京楽が笑う。

「偉そうにしすぎて、配下の者に逃げられて、残った侍女に強くあたってモレ草とかいうすごい下剤の薬もられて、金のおまるに座ってたって有名だよ」

「モレ草・・・・・名前からしてやばそうや」

「モレ草はそこそこするぞ。白金貨3枚だ。侍女は、白金貨30枚だして、藍染を殺すつもりでモレ草を10倍盛ったらしいが、藍染は体が強いのか腹が強いのか、普通なら死ぬのに2週間おまるを利用し続けるですんだらしい」

「モレ草、襲るべし・・・・・」

「モレ草には気をつけろ。勇者でも、モレ草を盛られると、トイレに2日は閉じこもることになるぞ」

「きぃつけるわ。そもそも、勇者にモレ草もるってどんな人物やねん」

「藍染が金で雇った人物とか?」

「ありそうで怖いね。新勇者の誕生は藍染も知っているだろうし」

「モレ草って、やばいんやろ。トイレに閉じこもるなんていややで」

「モレ草は独特の苦みがある。多分、料理に入れられても飲み物に入れられても気づく」

浮竹の言葉は、藍染は気づかなかったバカということだ。

「藍染は、それに気づかなかったただのバカだな」

「うんうん」

京楽も頷いた。

新しい勇者、平子真子がパーティーメンバーと冒険をして、藍染を倒すのはこれから2年先のことになる。

らしい。

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