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奴隷竜とSランク冒険者49

「魔王候補?」

「そう。今の魔王藍染ではなしに、違う魔王をたてて、そこで魔族を統一したいらしい」

浮竹の言葉に、京楽は首をかしげる。

「で、なんでボクにそんな候補の手紙がきてるの?」

「お前が、魔族の血をひいているからだ」

「え」

浮竹の衝撃の事実に、京楽が固まる。

「ボク、魔族なの?」

「厳密には、遠い祖先が魔族だった。隔世遺伝して、魔族の血が濃い。だから、人間なのにあれだけの魔力を秘めているのも納得がいく」

「ガーン。ボク、人間じゃなかったの」

「いや、人間だが、魔族の血を引いているだけだ。遠い昔は魔族も人間と共存していた時代もあったから、けっこう魔族の血を薄くだがうけついでいる人間は多いぞ」

「そうなんだ」

京楽は、ほっとした。

魔族は褐色の肌に尖った耳に角をもつ。

京楽の姿は普通の肌に耳も尖っていなくて、角もない。

どこからどう見ても人間である。

「なんで、ボクが魔族の血を引いてるってわかったんだろう」

「純粋な魔族にはわかるんだ。同胞の血を継いでいるか継いでいないか」

「フローラちゃんを送り届けた村からの便りだね」

「で、どうするんだ、京楽。魔王として立候補するか?人間と共存するとちゃんと証明しておけば、今の京楽なら魔王になれないこともない」

浮竹の言葉に、京楽は首を横にぶんぶん振った。

「いやいやいや、いきなり人間だったのに次の日から魔王とか無理でしょ」

「藍染なんか、勇者だったのに魔王になったぞ。可能だ」

「いやー、魔王になりたくないです。忙しそう」

「そりゃな。魔族を統一して・・・・まぁ、人間でいう王様みたいなものだ」

「余計無理」

京楽は、お昼ご飯を作り出した。

浮竹の胃がプチブラックホールなので、とりあえず量をとにかく多く作る。

味は落ちないようにするので、結構大変だ。

浮竹は、その気になれば普通の量で生きていけるのだが、空腹はいやらしく、よく食べた。

「魔王になると藍染と対立して、アサシンとかさしむけられそう」

「そうだな。食事に毒を盛られるかもしれんな」

「余計になりたくない。はい、昼食のから揚げ」

浮竹は、唐揚げを食べながら、パンをちぎって食べた。

「スープは?」

「コーンポタージュスープ今作ってるから」

「まぁ、京楽が魔王になりたいなら、俺は守護者としてお前を守るがな。でも、さすがに藍染相手だと少しきついか」

「少しって・・・・藍染の力は絶大だよ」

京楽は、コーンポタージュスープをかき混ぜる。

「俺たちには仲間がいるだろう。勇者の平子もいる。その気になれば、討伐できなくはない・・・・と、思う?」

「なぜに疑問形」

「いや、魔王なんて倒したことないからな」

「そりゃね。魔大戦も経験したこともないし」

「京楽が魔王かぁ。少しいいな」

「何を想像してるんだい」

浮竹は、考え込む。

「でも、性欲の強いアホ魔王になりそうだ」

「ボクは確かに性欲は強いけどアホじゃないよ!」

「人間として暮らしてきたから、魔族の常識が通用しない、痛い魔王になりそうだ」

「だから、魔王になんてならないってば」

京楽がそういうと、扉がバンと開かれた。

「そやで。魔王になんてならんといてな。京楽はんを退治せなあかんくなる」

「平子!?どっからわいて出た!」

突然と現れた今の勇者、異世界召喚でやってきた平子真子は、京楽のもっている魔王推薦状をとりあげて、破り捨てた。

「わあ、何するんだい」

「この推薦状、もってると魔王候補として自動的に名前が登録される。そこから、魔王にふさわしい人物を探し出して、無理やり魔王にさせられるで」

「うわぁ、怖い推薦状だね」

「念のため、俺が平子に頼んでおいたんだ。魔王の推薦状が届いたことを」

「勇者の力で推薦状を破棄すれば、近くに勇者がいるってわかるからな。京楽はんが魔王候補になることは限りなくゼロに近い」

「それは助かるねぇ」

「ということで、報酬の白金貨2000枚」

「ええええ、書状を破り捨てただけなのに!?高くないかい!」

京楽が叫ぶが、浮竹はできあがったコーンポタージュスープを飲みながら、からあげとパンを食べていた。

「悪い虫がつかないようにするためだ。白金貨2000枚くらい、いいだろう」

「でも・・・・・」

「なんや、京楽はん、魔王候補になりたいんか?なるなら俺が切り捨てるんけどなぁ」

「うわぁ、怖い怖い!!魔王にも魔王候補にもならないよ!ボクはただのSランク冒険者の京楽春水だよ」

「だ、そうだ。これ、報酬の白金貨2000枚」

「毎度あり~」

浮竹は、アイテムポケットから白金貨2000枚の入った袋を取り出して、平子に渡した。

「勇者って、暇なの?」

京楽が、平子に問う。

「あほ、めっちゃ忙しいわ!ダンジョンのスタンピード止めるためにモンスター駆除しまくったり、魔王候補を倒したり・・・・」

「仲間はいないのか?」

「それがなぁ。朽木白哉をはじめとする、阿散井恋次、朽木ルキア、黒崎一護とパーティー組んだんやけど、はちゃめちゃで1日で解散になったわ!」

「ご愁傷様」

京楽が拝む。

「どっかに勇者の仲間として有能が人物はおらんかいな。例えばフルムーンドラゴンとか」

「いないな。そんなドラゴン聞いたこともない」

「あー、嘘ばっかし」

平子は浮竹を睨む。

浮竹は、気にせず唐揚げを食べる。

「ま、昼食の時間に邪魔してわかったわ。ほな、またな」

勇者平子は、突然現れて窓から去っていった。

「普通に、登場した時のように扉から出ていけばいいのにね」

「いや、扉は閉めてあった。ピッキングで開けたな」

「勇者あああああああ!!それでいいのかああああ!!!」

「なんでも、勇者は他人の家に忍び込んで、たるやたんすをあさり、金品をちょろまかしていく職業らしいぞ」

「勇者ああああ!それでも勇者かあああああああ!!」

京楽が、去っていった平子に叫ぶが、平子はもういない。

「勇者って、ろくな職業じゃないね」

「まぁ、魔王討伐が最終目的だからな。ダンジョンにこもってお金稼いでる暇ないから、人様の家に堂々と忍び込んで、エッチな本とかとっていって売ったりしてるらしい」

「平子おおおおお!!」

もはや、京楽はつっこむことしかできなかった。

5人前はあった唐揚げが全て浮竹の胃に消えて、京楽は自分の分も食べる。

普通の1人分だ。

「ああ、キッチンにバナナパフェ作って冷蔵庫で冷やしているから、食べていいよ」

「言ったな。全部食うぞ」

「え、ボクの分は残しておいてよ!」

「いやだ、俺が全部食う」

京楽が色欲魔なら、浮竹は食欲魔であった。


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