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始祖なる者、ヴァンパイアマスター24

古城に戻ると、恋次は白哉の元に帰り、ルキアはしばらくの間古城に滞在するらしかった。

「ブラッディ・ネイが、ブラッディ・エターナルという、浮竹殿にそっくりの寵姫を新たに迎えたのだが、浮竹殿と血縁関係があるわけがないから、きっと他人の空似ですね」

「そりゃそうだよ。浮竹に子はいないんだから」

その、ブラッディ・エターナルが、女体化した時の浮竹と京楽の間にできた、受精した卵子から作られていることを、浮竹も京楽も知らなかった。

ブラッディ・ネイの寵愛は、今ブラッディ・エターナルが独占していた。

血を与えて、血族にしていた。

「そういえば、冒険者ギルドで、僕たち向けに依頼がきてたね」

「どんな依頼だ?」

浮竹が、魔法書を読みながら、京楽に尋ねる。

氷で冷やした麦茶を飲みながら、浮竹はS級ダンジョンで入手した魔法書を最後のページまで読み終えると、京楽に向き直った。

「なんでも、古代遺跡に出現する、機械じかけのゴーレムを倒してほしいらしいよ。他のSランク冒険者も討伐にいったけど、みんな負けて帰ってきたんだって」

「機械じかけの、ゴーレム。失われた古代文明の遺産か」

古代文明といっても、その間も浮竹は生きていたのだが。

人間世界に興味はなかったので、人間社会の文明がどうとかなんて、知らなかった。

おまけによく休眠していて、実に5千年の間眠っていた。実際に活動していたのは、3千年くらいだ。

「報酬が、古代文明の幻の魔法書らしいよ」

がたりと、浮竹は席を立った。

「京楽、退治しにいくぞ」

「ええっ!」

「じゅあ、私は留守番しておきますね」

「いや、ルキア君もきてくれ。古代のゴーレムを倒せるなんて、ドラゴン退治よりよっぽど珍しい」

「あの、私にはドラゴン退治も珍しいものなんですけど」

ポチのための、ドラゴンの肉は大量に手に入れていた。

アイテムポケットのドラゴンの素材を売るためにも、3人は冒険者ギルドに行くことになった。

冒険者ギルドに顔を出すために、認識阻害の魔法をかけていた。

浮竹はエルフの魔法使いに、京楽はハーフエルフの剣士に、他の人間から見たらそう見えた。

ルキアは、エルフの神官に見えるようにしておいた。

「おや、Sランク冒険者の浮竹さんと京楽さんじゃないか。今回は、一人仲間が増えているんだね」

ギルドマスターが、浮竹たちの対応に当たってくれた。

「うちのギルドの存在する、どのSランク冒険者でもだめだったんだ。残るは、あんたらしか、頼れる相手がいない。無理を承知で頼む。ゴーレムを、退治してはもらえないだろうか」

「報酬は、本当に古代文明の幻の魔法書なんだな?」

「ああ、そうだ。売れば、一生遊んで暮らせる」

「売らない。読んで、自分のものにする」

「魔法使いなら、それもありだろう」

この世界において、魔法は神が人間に与えた能力であった。人間社会で、魔法は研究され、増えていった。

それを、ヴァンパイアたちも覚えていった。

人間がいなければ、魔法は少なく、多彩な魔法は生まれなかっただろう。

ヴァンパイアは、その種族独特の魔法を持っている。

血の魔法と呼ばれる、自分の血を使って武器として使用したりするものだった。

他の種族には使えない魔法だ。

浮竹がもつ魔法のほとんどは、人間の文明が発明した魔法だった。

「引き受けてくれるか」

「ああ、引き受けよう」

「ありがたい!そっちのエルフの神官の女の子は、冒険者登録していないようだな?登録しないと一緒にいけないから、登録しておこう」

適性検査で、ルキアはAクラスの冒険者となった。

「Sクラス冒険者のパーティーにはAクラスのメンバーもいたこともあるし、お前さんたちなら大丈夫だろう」

浮竹は、この前クリアしたドラゴンのS級ダンジョンの素材を、解体工房で出して、大金を手に入れていた。

ドラゴンそのものをほいほいと出されて、受付嬢は失神寸前だった。

「ちょっと待て、まだあるのか」

ギルドマスターが、ストップをかける。

「まだ、半分だが?」

「すまないが、これ以上は買い取れない。資金が足りない。加工して売りさばかないと、続きを買い取れん」

「じゃあ、残りは隣国ででも売る」

「ああ、そうしてくれ」

ギルドマスターは、冷や汗をかいていた。

冒険者の最高ランクはSクラスであるが、Sクラスの中でも上位の者と下位の者がいる。

浮竹たちは、Sクラス以上の冒険者で、上位存在であった。

もしもSクラスの上に階級があるなら、そこに振り分けられていただろう。

冒険者ギルドから、直接馬車を出してくれた。

その古代遺跡まで、馬車を利用して移動した。

10日かかった。

途中に町で宿をとったりしていた。

目の前に浮かぶ光景に、京楽は目を見開いていた。

「大地が、浮かんでる!」

「大地そのものに、風の魔法がかけられている。半永久的な魔法だ」

「すごい遺跡ですね」

ルキアが、驚いていた。

「こんな遺跡をみるのは数百年ぶりだ。よく、荒されずに残っていたものだ」

馬車は最寄りの村に残して、徒歩で古代遺跡に向かったので、人間はいなかった。

遺跡を探索して、ワープ装置を利用して、浮いている島を移動する。

途中までくると、討伐依頼の出ていた機械じかけのゴーレムと遭遇した。

「ギギギギ。エラーエラー。侵入者を発見、これより掃討に移ります」

機械じかけのゴーレムの体は、ミスリルでできていた。

神の金属と呼ばれるミスリル製のために、魔法も剣も普通は効かないのだ。

京楽が、雷の魔法を纏わせたミスリル銀の剣で切りかかるが、傷一つ負わせれないでいた。

「浮竹、そっちにいったよ!」

「ライトニングノヴァ!」

浮竹は、雷系の魔法を使って爆発させるが、ミスリルでできたゴーレムには効いていなかった。

「浮竹殿、危なない!」

ゴーレムがレザービームで攻撃してきた。

それを、ルキアがシールドを張って、防いでくれた。

「ルキア君、防御を頼む」

「はい!」

「京楽は、俺に魔力を注いでくれ」

「わかったよ」

浮竹が呪文の詠唱に入る。

「我は神の子の焔。炎は踊り踊り、悲しみも怒りも飲みこむのである。我は神の子の焔。神の怒りの炎により、ここにきたれ、炎の精霊王、イフリート、フェニックス!トライアングルエクスプロージョン!」

ごおおおおおおおおお。

凄まじい火力の炎が燃えさかる。

浮竹は、炎の精霊王、イフリート、フェニックスの3体の炎を召還して、魔法としてゴーレムに浴びせた。

「ガガガピー。損傷を確認。これより、自動モードを手動モードニキリカエ・・・ガガガガピーーー」

ミスリル製のゴーレムは、半ば体を溶かされていた。

「ミスリルを溶かす炎・・・すごいね」

「禁呪だ。普段は、使わない」

「浮竹殿、その札は?」

「ああ、東洋の妖の友人からもらったものだ」

浮竹は蛇を召還して、その蛇からもミスリルを溶かす炎を吐かせていた。

「活動を、完全に停止、シマス」

ゴーレムは、半分体を溶かしたまま、その意思を失った。

京楽は、その溶けたミスリルのゴーレムに、まだ動かないか念のため血の刃を向ける。

札のせいで猛毒になっている京楽の血は、存在が生物であったならほぼ死んでいただろう。

機械仕掛けのゴーレム、人工生命体なので、京楽の血の毒はきかなかったし、すでに動きを停止していた。

「このゴーレムの体、持って帰ろう。ミスリルでできているから、いい武器防具ができそうだ」

「とりあえず、ミスリルが溶解したままだと危ないので、固まるのを待とうよ」

ミスリルの溶解が止まるまで、浮竹、京楽、ルキアは遺跡を探検し、出没するモンスターを倒した。

「東洋の僕の加護のお陰で、血が猛毒になるから、血の刃で切るだけでモンスターを倒せられて楽でいいよ」

「俺には、毒ではないのだがな」

「そりゃ、主である浮竹に血を吸われるんだから、僕の血が浮竹にとって猛毒であるはずがないよ」

浮竹は、札を使って黒い蛇を召還すると、炎を吐かせたり、戒めてその毒で殺したりして、東洋の友人からもらった札を大切そうに使った。

モンスターは後から住み着いた存在らしく、主にキメラが多かった。

「フレイムロンド!」

蛇も一緒になって、炎を吐いた。

キメラは、黒焦げになって倒れていく。

「あ、宝箱!」

きらんと、浮竹の目が光った。

「ちょっと、ここは古代の遺跡だよ。宝箱に、ミミックは・・・・」

でも、ミミックだった。

「暗いよ怖いよ狭いよ息苦しいよ~~~」

じたばたともがく浮竹を見て、京楽は苦笑いを浮かべる。

「浮竹殿、今助けます!」

ルキアも大分慣れたのか、ルキアが助け出してくれた。

「ウィンドノヴァ」

風の爆発を起こして、ミミックは消えていった。

後に残されれたのは、古代の魔法書だった。

「やった、魔法書だ。何々・・・・・古代エルフ語でかかれているな。翻訳魔法を使ってと・・・・」

浮竹は、魔法書の解読に取り掛かった。

周囲にはもうモンスターはいないようだったが、ルキアが念のために結界を張ってくれた。

そして、浮竹と京楽の魔力を回復するように、魔力回復の魔法を使ってくれた。

「ルキアちゃん、ありがとね。さっきのでごっそり魔力をもっていかれたから、助かるよ」

「ええと・・・・炎と雷の融合・・・・・ライトニングフレイムストーム。ふむふむ。新しい魔法をまた一つ覚えれた!」

浮竹は、顔を輝かせた。

そして、ルキアに結界を解いてもらい、移動して出てきたキメラにその魔法を使った。

「ライトニングフレイムストーム!」

まず最初に電撃が走り、同時に炎の嵐が起こる。

キメラは、体を黒焦げにした後、灰となった。

「ちょっとオーバーキルだな。禁呪ではないが、違う属性を組み合わせた魔法は珍しい。覚えてれよかった」

更に奥に進んで、右に曲がるとまた宝箱があった。

「宝箱っていうかミミック!」

浮竹の中で、宝箱はミミックになっていた。

でも、その宝箱は普通の宝箱だった。

「なんだ、ミミックじゃないのか。京楽、適当に中身をアイテムポケットに入れておいてくれ」

「浮竹、でも古代の魔法書だよ」

「何、それを早くいえ!」

浮竹は、京楽の手から魔法書をひったくった。

「浮竹殿は、本当に魔法書というか、魔法の収集が好きなのですね」

「まぁ、浮竹の趣味だからね。昔から収集が好きだったみたいで、今だと民間魔法も含んて2千以上の魔法を使えると思うよ」

「2、2千をこえる魔法・・・・凄まじいですね」

普通、魔法使いが使える魔法は10種類程度。Sランクの魔法使いでも、50種類がやっとといところだ。

チートもここまでくれば、もう呆れるしかない。

「浮竹、どんな魔法だったの」

「水中で呼吸できる魔法だった。攻撃魔法じゃないが、海や湖の地形のダンジョンで、使えそうだ」

「よかったね。使える魔法で」

「別に、しょうもない民間の魔法でもいい。新しい魔法なら、どんなものでも大歓迎だ」

何気に、ネクロマンサーが使うような魔法も覚えているが、使わないことにしていた。

死者の冒涜を、浮竹は嫌っていた。

大事な血族が反魂で蘇り、死していくのを目の当たりにして、余計に黒魔術と呼ばれる種類の、アンデットを操ったりする魔法は使わない。

するすると、黒蛇が浮竹の元にやってきた。ミスリルでできたゴーレムの熱が下がり、触れても大丈夫だと教えてくれた。

「黒蛇を置いてきていた。ミスリルの熱が下がって、アイテムポケットに入れても大丈夫なようだ」

来た道を戻り、ゴーレムのところにまでくると、京楽がアイテムポケットに収納した。

「さて、帰ろうか・・・・って何してるの」

「黒蛇たちに、お宝の場所を探してきてもらった。宝箱をあけに移動するぞ」

「はぁ・・・本当に君は、宝箱というかミミックが好きだね」

浮竹は、遺跡で残っていた全ての宝箱をあけた。

全部ミミックで、浮竹は嬉しそうにかじられていた。

「暗いよ怖いよ狭いよ息苦しいよ~~~」

じたばたもがく浮竹を、京楽とルキアが助ける。

浮竹は黒蛇を操って、ミミックを倒すと、ミミックは古代の魔法書をドロップした。

「なになに、熱がさらにあがる魔法・・・・使えないな。でも覚える」

古代の魔法書といっても、いい魔法ばかりではない。つまらない民間魔法がほとんどだった。

「京楽、今度熱を出したら、更に熱を出すようにしてやるからな」

「やめてよ、僕を殺す気なの?」

「ヴァンパイアは、熱が出たくらいじゃ死なない」

「浮竹殿、熱をあげる魔法であれば、低体温の危ない時とか、寒い時なんかに使えるのではないですか?」

「さすがルキアちゃん。変な魔法だけど、低体温の危ない時に使うのはいいかもね。寒い時には、僕の体温をあげて、浮竹を抱いて体温を分けてあげる」

その言葉に、浮竹は少し赤くなって、京楽の頭を殴った。

「なんで殴るのさ!」

「抱くとかいうからだ」

「あ、私は気にしていませんので」

ルキアは真っ赤になりながらも、聞こえなかったふりをすることにした。

「じゃあ、どうせだから堂々としよう」

「京楽?」

「愛してるよ、浮竹」

「んっ」

舌が絡むキスをされて、肩に噛みつかれて吸血された。

浮竹は、体重を京楽に預けて、お返しにと京楽の首筋に噛みついて、吸血した。

ルキアは真っ赤になって、あたふたしていた。

「ルキアちゃん、ごめんね。古城に戻るまで、馬車でまた10日も揺れると思うと、その、渇きがね・・・・」

人間社会に居る時に、人工血液を口にしていると、ヴァンパイアだとばれてしまう。

血の帝国は人間国家と国交をしているが、それでも人々はヴァンパイアを恐れ、人を襲い血を吸って殺すヴァンパイアがいるので、ヴァンパイアハンターがいた。

「ここは血の帝国から遥かに離れた人間たちが住む世界ですから。ヴァンパイアとばれるのは、危険です」

本当は、10日も馬車に揺れるのに、人間の御者を雇いたくなかったのだが、ギルドマスターに怪訝な顔をされるので、大人しく人間の御者を雇った。

「とりあず、することはもう終わった。帰ろう」

遺跡から一番近い村に待たせてあった馬車に乗りこみ、3人は冒険者ギルドのある、ガイア王国の街まで戻った。

「約束のゴーレムを退治してきた。ミスリルでできているから、武器防具になると思って、アイテムポケットに入れて持って帰ってきた」

解体工房で、機械仕掛けのミスリル製の、半分溶けたゴーレムを出した。

ギルドマスターは驚いた、受付嬢は、やっぱり規格外だと、顔を青くさせていた。

「ミスリルが溶けたのか。どんな魔法を使えば、そうなるんだ」

「鍛冶師だって、ミスリルを溶かして武器防具を作るだろう。それと似たようなものだ」

「鍛冶師は特別な炎を使う。まぁいい、依頼達成だ。報酬金金貨2千枚と・・・このゴーレムは、ギルドで買い取っていいか?」

「好きにしてくれ」

「では、金貨7千枚で買い取ろう」

「分かった」

「あと、ドラゴンの素材を打って莫大な額を手に入れたから、残っているドラゴンの素材があれば買いとるぞ」

「わかった」

浮竹と京楽は、アイテムポケットから10体のドラゴンの死体と、素材になる部分を出した。

ポチの肉は確保しておいたので、全てを売ることにした。

「金貨1万5千枚で買い取ろう」

少し買いたたかれている気もするが、買い取ってくれるだけありがたいので、その金額で売却した。

「また、ドラゴンを退治したら持ってきてくれ。買いとる」

「ああ、分かった」

「それじゃあ、僕らはこれで」

ルキアは、解体工房に入らず、ギルドの外で待っていた。

「なぁ、エルフのお嬢ちゃん、俺らと茶しようぜ」

「人を待っている」

「そんなつれないこと言うなよ」

「ごほん」

宇井竹が咳払いすると、ちんぴらに近いことをしていたBランク冒険者たちが驚く。

「Sランクの、浮竹さんと京楽さんの仲間でしたか。失礼しました。おい、お前らいくぞ」

「ちっ、Sランクだからって大きな顔しやがって。今に見てろ」









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