始祖なる者、ヴァンパイアマスター24
ミミックのポチの餌のドラゴンステーキが切れたので、浮竹と京楽は、ドラゴン類ばかりが出る、S級ダンジョンにきていた。
今回は、ルキアが一緒だった。
一護と冬獅郎に守られてばかりは嫌だと、同行したいと申し出できたのだ。
正直、ルキアをS級ダンジョンに連れていくのは、気乗りしなかった。
ルキアは聖女だ。その癒しの力があればいいので、強くなる必要はない。守護騎士である一護と冬獅郎の存在もある。
「私は、守られるだけの存在でいたくないのです。私も、誰かを守る存在でありたい」
そんなことを熱弁するルキアに折れて、浮竹と京楽は、ルキアを連れて、難攻不落ともいわれるドラゴンばかりがでる、S級ダンジョンに挑んだ。
水と食料を、3人分で1週間分用意して、アイテムポケットにいれる。
一階層は、プチドラゴンが出た。
ルキアは、かわいいと言っていたが、狂暴なので噛みつかれる前に、浮竹がファイアアローの魔法で倒してしまった。
「かわいいけど、狂暴なのか・・・・・」
ルキアは、残念そうにしていた。
「ルキアちゃん、守ってあげることもできるけど、強くなりたいなら自分からモンスターを討伐しなきゃ!」
「はい、京楽さん!」
ルキアは、聖なる槍、ホーリーランスでプチドラゴンたちを退治していく。
プチドラゴンは、素材になるのは瞳なので、浮竹は瞳をくりぬいて、アイテムポケットに入れていた。
ルキアもアイテムポケットを渡されてはいたが、素材は必要ないので、自分の分の水と食料、あとテントと寝袋、薬の類をいれていた。
「ホーリーランス!」
ルキアが倒したプチドラゴンの数は、優に100体を超えた。
ルキアが使える魔法は、聖属性で、攻撃魔法の数はあまり多くない。その分、魔力をこめて魔法を唱えた。
「ほら、ルキア君も解体してみるといい」
かわいいプチドラゴンの瞳をくりぬいていく、スプラッタな浮竹に、ルキアは首を振って顔を青くして、遠慮した。
血は、浮竹が自分の血を操る能力を生かして、血を蒸発させる。
プチドラゴンの瞳は、一応ドラゴンであるので、錬金術の材料なんかになった。
鱗はもろいので、防具の材料にはならない。牙も爪も小さいので、武器の素材にもならない。
「しばらくは雑魚ばかりだろうが、仕方ない。ルキア君がレベルアップするためにも、あえてワープ魔法は使わず、最深部まで攻略しよう」
一度攻略したことのあるダンジョンは、クリアしたことのある階層はワープ可能であった。
素材を集めて金銭を稼ぐのも目標にしていたので、浮竹も京楽も、一階層から攻略をはじめた。
5階層につくと、宝箱が5つほど並んでいた。
「宝箱ですね!」
「あ、ルキア君、それミミックだから、触らないほうがいいぞ」
浮竹の指摘に、箱を開けようとしていたルキアの手が止まる。
「俺が代わりにあけよう」
浮竹は、ミミックに食われていた。
「暗いよ怖いよ狭いよ息苦しいよ~~~」
ミミックにかじられる浮竹をはじめて見るルキアは、おろおろしていた。
「ああ、ルキアちゃん気にしないで。浮竹は、わざとミミックに噛まれるのが好きなんだよ」
「怪我を、しないのですか?」
「ミミックは、そこまで攻撃的じゃないからね。かじって相手を脅かせるくらいだ。よいしょっと」
京楽は、じたばたしている、ミミックに噛まれていない浮竹の下半身に力をこめて、ミミックに押しつけると、ミミックはおえっとなって浮竹を吐き出した。
「ファイアアロー」
「きゅううう」
断末魔を浴びて、ミミックは消えていった。
残されたのは、金の延べ棒。
浮竹は、嫌そうな顔をして、アイテムポケットに入れた。
「せっかく金が出たのに、何故浮竹殿はあんなに嫌そうなのですか」
「浮竹はねぇ、魔法書をドロップしなかったから、機嫌を損ねているんだよ。浮竹は魔法コレクターだからねぇ」
浮竹は、残りの4つの宝箱をあけた。
全部、ミミックだった。
ミミックにかじられて、倒した後に4連続で魔法書が出て、浮竹は機嫌がよさそうだった。
「どんな魔法だったんだい?」
「水をお湯にする魔法、風邪を引きやすくなる魔法、祈りをこめれば聖杯に聖水がわく魔法、頭をモヒカンにする魔法だ」
「1番目と3番目は使えるけど、2番目と4番目は使えなさそうだね」
「4番目の魔法を試したい・・・・」
じっと、浮竹が京楽を見た。
京楽は、首を振った。
「僕はいやだからね」
「じゃあ、自分にかけてみる」
「ちょっと待って!浮竹がモヒカンになるくらいなら、僕がなるから!」
「浮竹殿、京楽殿?」
二人の展開についていけず、ルキアは首を傾げるのであった。
数分後、頭がモヒカンになった京楽がいた。
「うぷぷぷぷ、似合うぞ、京楽」
「京楽殿・・・・ぷふっ」
「ああもう、ルキアちゃんにまで笑われたじゃない!治したいから、早く血をちょうだい!」
ちなみに、京楽の血は、東洋京楽の札により、猛毒になっている。浮竹だけには無害だが、他の者には有害であった。
「んっ」
浮竹は血を啜られて、甘い声を出していた。
「浮竹殿・・・・・」
妖艶なその姿を見て、ルキアは頬を赤くしていた。
「浮竹殿と、京楽殿は恋人同士でしたね。私はお邪魔むしでしょうか」
「そんなことないぞ、ルキア君」
「そうだよ。そんなことないって。それにダンジョンに潜る間は、吸血の他はキスとハグだけだよ」
「キスとハグだけでも、見ていて恥ずかしいです」
「俺は気にしない」
「僕も気にしてないよ。ルキアちゃんの見てないところでするから、大丈夫だよ」
「はい。見ていないところでしてください」
浮竹は、東洋の妖にもらった札を使って、蛇を召還して、ドラゴンに巻き付かせて、噛みつかせてその毒で倒したりしていた。
「僕が東洋の僕からもらったのは、僕の血を猛毒にするものだったけど、君がもらったのは蛇を使役できる札なんだね」
京楽は、ミスリル銀でできた魔剣を使わず、猛毒となった自分の血でドラゴンたちを倒していく。
ドラゴンといっても、知能の低い、恋次のような竜族ではないドラゴンだ。数は多く、竜族は世界に200匹くらいしかいない。普通のドラゴンは、地域によって異なるが数千匹はいる。
階層が深層に近付いていくほどに、でてくるドラゴンは強くなっていった。
「ホーリーランス!ホーリーアロー!ホーリーブレス!」
ルキアは、自分がもちうる攻撃魔法の全てを使って、一人でドラゴンを退治した。
「ルキアちゃん、やるじゃない」
「ドラゴンを聖属性の魔法で倒せるなんて、凄いぞ」
「いえ、浮竹殿と京楽殿には遠く及びません」
「でも、一人でドラゴンを倒せるようになってる。強くなったな、ルキア君」
「はい!」
ルキアは再度褒められて、目を輝かせた。
6日かけて、深層の最下層に到達した。
出てきたボスは、カイザードラゴン、恋次だった。
「何をしているんだ、恋次君」
「バイトっす。ドラゴン迷宮のラスボスのバイト」
「白哉の傍にいなくていいのか?」
「白哉さんの傍には、分身体を出しているので大丈夫っす」
「では、この前覚えた、ドラゴンの肉をおいしく加工する魔法で、恋次君を・・・・」
「うわあああああ!!ギブアップです!だから倒さないでください!」
「恋次、バイトなんだろう。きちんと、戦わないのか」
「戦ったところで、倒されるのがおちだ。だからギブアップする」
自動的に勝利ということになって、宝物庫への扉が開く。
「魔法書魔法書。ミミックミミック」
浮竹の頭は、金銀財宝ではなく、魔法書とミミックで支配されていた。
ゴゴゴゴゴ。
重い扉が開き、金銀財宝が姿を現す。
「うわぁ、宝の山ですね」
「ミミックは・・・・いた!」
金銀財宝の右に、ミミックが並んでいる列があった。
それに、順番にかじられていく浮竹に、もう慣れた様子でルキアが苦笑していた。
京楽は、浮竹をひたすら助けた。
浮竹は、財宝からも魔法書を発見して、全部で16冊の魔法書を抱えて、ほっこりしていた。
「お、この魔法、聖属性の攻撃魔法だ。ルキア君にぴったりじゃないか?俺も覚えるけど」
浮竹は、癒しの魔法こそ使えないが、全ての属性の魔法を使えた。
聖属性の魔法は苦手だったが、禁呪じゃないので覚えれた。
「ホーリーワールド・・・・」
聖なる空間に閉じ込めて、敵を圧縮してしまう魔法だった。
「浮竹殿、京楽殿、我がままにつきあっていただき、ありがとうございました。おまけに、新しい聖属性の攻撃魔法まで覚えられました。今回の経験を活かし、今後に励みたいと思います」
「ああ、戦わないで宝物庫まで案内したから、バイト代はでないな。まぁ仕方ない。浮竹さんと京楽さんが相手じゃな・・・・・」
恋次は、竜化を解いて、人の姿になっていた。
タトゥーが増えていた。
恋次はもともと南にある帝国の皇帝だ。よく毒殺されて、死んでは蘇り、タトゥーを増やしていた。
恋次また始祖竜であるので、不老不死の呪いをもっていた。
「恋次、何故始祖竜である貴様がバイトなどしておるのだ」
「いや、白哉さんが身に着けてる、あの薄い白いなんとかいう首に巻いてるやつを、くしゃみをし拍子に、炎を吐いてしまって、白哉さんは無事だったんだけど、着ているものがだめになっちまって。なんでも、一枚で屋敷が建つとかで、弁償することになって。帝国の金を使うわけにもかず、牙と爪を少しだけ抜いて売ったけど、まだ足りなくて、んでここでバイト募集してるの知って、給金がよかったからバイトしてた」
「兄様の銀白風花紗を焦がしたのか!」
「そうだ。すまん」
「あれは、兄様が皇族である証でもある。兄様にとってはとても大切なものであるから、今後は気をつけろ」
「ああ、分かってる。白哉さんの守護騎士なのに、白哉さんの衣服をだめにしちまった。反省も、している」
「ならば、よいのだ」
ルキアは、うんうんと頷いた。
恋次は、白哉のことが好きだったが、ルキアのことも好きだった。
でも、ルキアには最近一護という存在がいるから、ちょっかいをかけることをしていなかった。
「ルキア、白哉さんにお詫びに何を渡したらいいと思う?」
「そうだな、兄様は辛い食べ物が好きだから、貴様の南の帝国で出る辛い料理をなどを振る舞えば、そこそこ嬉しがるのではないか?」
「お、初耳だ。そうしよう。ありがとな、ルキア」
「恋次も、兄様を大切にするのだぞ」
「当たり前だ!」
そんなことを言い合っている二人を放置して、京楽は魔法書に夢中になっている浮竹を置いて、金銀財宝をアイテムポケットに収納するのに忙しかった。
「ああもう、浮竹も手伝ってよ」
「この魔法書が難解なんだ。古代エルフ語と、古代ドワーフ語でかかれてある。翻訳魔法を使いながら、今解読している」
十数分かけて、やっと浮竹は魔法書の解読を終わらせた。
「ファイアノヴァ。アイシクルノヴァ。ライトニングノヴァ。ウォーターノヴァ。ウィンドノヴァ。アースノヴァ。セイントノヴァ。ダークノヴァ。ノヴァ系の魔法全8種。習得完了」
「あ、セイントノヴァとは聖属性の魔法ですか?では、私も覚えれますか?」
「ああ、ルキア君にも教えてあげよう。現代語で、呪文と効果を書いてあげよう」
浮竹は、白い紙を取り出すと、自動的にインクが滲む魔法のペンで、ルキア用にセイントノヴァの魔法書を書いて、それをあげた。
「ありがとうございます、浮竹殿!」
「ノヴァば新星を表すそうだ。属性をこめた爆発の魔法だな」
「うわー、浮竹ってば、新しい魔法習得できて生き生きしてるね」
「そりゃそうだろう。8千年も生きているのに、また新しい、それも攻撃系の魔法を覚えれたんだ。嬉しくもなる」
「残りの魔法書は、どうするの?」
「いつまで財宝の間にいるわけにもいかんしな。アイテムポケットに入れて、古城ででも読むさ」
京楽は、最後の金貨と宝石細工をアイテムポケットに入れた。
「ルキアちゃん、金銀財宝いっぱいあるけど、いる?」
「いえ、それは浮竹殿と京楽殿で分けてください!私は、金には困っていませんので」
仮にも、ルキアは皇族だ。
金ははいて捨てるほどある。
「恋次クンは・・・ボスなのに、戦闘せずに負けて、おまけに財宝に手を出したらやばいよね?」
「やばすぎるっす。ダンジョンマスターの古代エルフたちに、ボコボコにされる」
この世界には、人間の他にも亜人種も存在する。エルフ、ドワーフ、有翼族、獣人族、羽耳族などだ。
「じゃあ、撤収だね。難攻不落のドラゴンS級ダンジョンクリアだよ!」
京楽が、魔剣を掲げて、ルキアと恋次が拍手をした。
浮竹は、魔法書を読んでいた。
「ちょっと、浮竹、こんな時くらい調子をあわせてよ」
「今、いいところなんだ。じゃあ、帰るか」
帰還の空間転送魔法陣に乗って、4人はS級ダンジョンの外に出ていた。
ちょうど、今からS級ダンジョンに挑もうとしているパーティーと遭遇した。
エルフの魔法使い、人間の剣士、獣人の盗賊、有翼族の神官のパーティーだった。
「S級ダンジョンを攻略したのか!?」
「そうだけど?」
「ラスボスは、ラスボスはなんだった?」
「カイザードラゴン」
「うわぁ。俺たちのパーティーでは、倒せないだろうな」
「まぁ、がんばれ」
「ちなみに、ラスボスはこの恋次クン。バイト中の身で、バイト辞めたから、今ならラスボスなしでクリアできるよ」
「よし、皆、がんばるぞ!」
パーティーは、一致団結して、ダンジョンに挑んでいった。
ちなみに、最後までクリアして財宝の間にくると、財宝はまた出てくる。
ダンジョンマスターである、古代エルフたちのしわざであるが、浮竹にも京楽にも、どうでもいいので、ダンジョンの財宝はおまけ程度にしか思っていなかった。
今回は、ルキアが一緒だった。
一護と冬獅郎に守られてばかりは嫌だと、同行したいと申し出できたのだ。
正直、ルキアをS級ダンジョンに連れていくのは、気乗りしなかった。
ルキアは聖女だ。その癒しの力があればいいので、強くなる必要はない。守護騎士である一護と冬獅郎の存在もある。
「私は、守られるだけの存在でいたくないのです。私も、誰かを守る存在でありたい」
そんなことを熱弁するルキアに折れて、浮竹と京楽は、ルキアを連れて、難攻不落ともいわれるドラゴンばかりがでる、S級ダンジョンに挑んだ。
水と食料を、3人分で1週間分用意して、アイテムポケットにいれる。
一階層は、プチドラゴンが出た。
ルキアは、かわいいと言っていたが、狂暴なので噛みつかれる前に、浮竹がファイアアローの魔法で倒してしまった。
「かわいいけど、狂暴なのか・・・・・」
ルキアは、残念そうにしていた。
「ルキアちゃん、守ってあげることもできるけど、強くなりたいなら自分からモンスターを討伐しなきゃ!」
「はい、京楽さん!」
ルキアは、聖なる槍、ホーリーランスでプチドラゴンたちを退治していく。
プチドラゴンは、素材になるのは瞳なので、浮竹は瞳をくりぬいて、アイテムポケットに入れていた。
ルキアもアイテムポケットを渡されてはいたが、素材は必要ないので、自分の分の水と食料、あとテントと寝袋、薬の類をいれていた。
「ホーリーランス!」
ルキアが倒したプチドラゴンの数は、優に100体を超えた。
ルキアが使える魔法は、聖属性で、攻撃魔法の数はあまり多くない。その分、魔力をこめて魔法を唱えた。
「ほら、ルキア君も解体してみるといい」
かわいいプチドラゴンの瞳をくりぬいていく、スプラッタな浮竹に、ルキアは首を振って顔を青くして、遠慮した。
血は、浮竹が自分の血を操る能力を生かして、血を蒸発させる。
プチドラゴンの瞳は、一応ドラゴンであるので、錬金術の材料なんかになった。
鱗はもろいので、防具の材料にはならない。牙も爪も小さいので、武器の素材にもならない。
「しばらくは雑魚ばかりだろうが、仕方ない。ルキア君がレベルアップするためにも、あえてワープ魔法は使わず、最深部まで攻略しよう」
一度攻略したことのあるダンジョンは、クリアしたことのある階層はワープ可能であった。
素材を集めて金銭を稼ぐのも目標にしていたので、浮竹も京楽も、一階層から攻略をはじめた。
5階層につくと、宝箱が5つほど並んでいた。
「宝箱ですね!」
「あ、ルキア君、それミミックだから、触らないほうがいいぞ」
浮竹の指摘に、箱を開けようとしていたルキアの手が止まる。
「俺が代わりにあけよう」
浮竹は、ミミックに食われていた。
「暗いよ怖いよ狭いよ息苦しいよ~~~」
ミミックにかじられる浮竹をはじめて見るルキアは、おろおろしていた。
「ああ、ルキアちゃん気にしないで。浮竹は、わざとミミックに噛まれるのが好きなんだよ」
「怪我を、しないのですか?」
「ミミックは、そこまで攻撃的じゃないからね。かじって相手を脅かせるくらいだ。よいしょっと」
京楽は、じたばたしている、ミミックに噛まれていない浮竹の下半身に力をこめて、ミミックに押しつけると、ミミックはおえっとなって浮竹を吐き出した。
「ファイアアロー」
「きゅううう」
断末魔を浴びて、ミミックは消えていった。
残されたのは、金の延べ棒。
浮竹は、嫌そうな顔をして、アイテムポケットに入れた。
「せっかく金が出たのに、何故浮竹殿はあんなに嫌そうなのですか」
「浮竹はねぇ、魔法書をドロップしなかったから、機嫌を損ねているんだよ。浮竹は魔法コレクターだからねぇ」
浮竹は、残りの4つの宝箱をあけた。
全部、ミミックだった。
ミミックにかじられて、倒した後に4連続で魔法書が出て、浮竹は機嫌がよさそうだった。
「どんな魔法だったんだい?」
「水をお湯にする魔法、風邪を引きやすくなる魔法、祈りをこめれば聖杯に聖水がわく魔法、頭をモヒカンにする魔法だ」
「1番目と3番目は使えるけど、2番目と4番目は使えなさそうだね」
「4番目の魔法を試したい・・・・」
じっと、浮竹が京楽を見た。
京楽は、首を振った。
「僕はいやだからね」
「じゃあ、自分にかけてみる」
「ちょっと待って!浮竹がモヒカンになるくらいなら、僕がなるから!」
「浮竹殿、京楽殿?」
二人の展開についていけず、ルキアは首を傾げるのであった。
数分後、頭がモヒカンになった京楽がいた。
「うぷぷぷぷ、似合うぞ、京楽」
「京楽殿・・・・ぷふっ」
「ああもう、ルキアちゃんにまで笑われたじゃない!治したいから、早く血をちょうだい!」
ちなみに、京楽の血は、東洋京楽の札により、猛毒になっている。浮竹だけには無害だが、他の者には有害であった。
「んっ」
浮竹は血を啜られて、甘い声を出していた。
「浮竹殿・・・・・」
妖艶なその姿を見て、ルキアは頬を赤くしていた。
「浮竹殿と、京楽殿は恋人同士でしたね。私はお邪魔むしでしょうか」
「そんなことないぞ、ルキア君」
「そうだよ。そんなことないって。それにダンジョンに潜る間は、吸血の他はキスとハグだけだよ」
「キスとハグだけでも、見ていて恥ずかしいです」
「俺は気にしない」
「僕も気にしてないよ。ルキアちゃんの見てないところでするから、大丈夫だよ」
「はい。見ていないところでしてください」
浮竹は、東洋の妖にもらった札を使って、蛇を召還して、ドラゴンに巻き付かせて、噛みつかせてその毒で倒したりしていた。
「僕が東洋の僕からもらったのは、僕の血を猛毒にするものだったけど、君がもらったのは蛇を使役できる札なんだね」
京楽は、ミスリル銀でできた魔剣を使わず、猛毒となった自分の血でドラゴンたちを倒していく。
ドラゴンといっても、知能の低い、恋次のような竜族ではないドラゴンだ。数は多く、竜族は世界に200匹くらいしかいない。普通のドラゴンは、地域によって異なるが数千匹はいる。
階層が深層に近付いていくほどに、でてくるドラゴンは強くなっていった。
「ホーリーランス!ホーリーアロー!ホーリーブレス!」
ルキアは、自分がもちうる攻撃魔法の全てを使って、一人でドラゴンを退治した。
「ルキアちゃん、やるじゃない」
「ドラゴンを聖属性の魔法で倒せるなんて、凄いぞ」
「いえ、浮竹殿と京楽殿には遠く及びません」
「でも、一人でドラゴンを倒せるようになってる。強くなったな、ルキア君」
「はい!」
ルキアは再度褒められて、目を輝かせた。
6日かけて、深層の最下層に到達した。
出てきたボスは、カイザードラゴン、恋次だった。
「何をしているんだ、恋次君」
「バイトっす。ドラゴン迷宮のラスボスのバイト」
「白哉の傍にいなくていいのか?」
「白哉さんの傍には、分身体を出しているので大丈夫っす」
「では、この前覚えた、ドラゴンの肉をおいしく加工する魔法で、恋次君を・・・・」
「うわあああああ!!ギブアップです!だから倒さないでください!」
「恋次、バイトなんだろう。きちんと、戦わないのか」
「戦ったところで、倒されるのがおちだ。だからギブアップする」
自動的に勝利ということになって、宝物庫への扉が開く。
「魔法書魔法書。ミミックミミック」
浮竹の頭は、金銀財宝ではなく、魔法書とミミックで支配されていた。
ゴゴゴゴゴ。
重い扉が開き、金銀財宝が姿を現す。
「うわぁ、宝の山ですね」
「ミミックは・・・・いた!」
金銀財宝の右に、ミミックが並んでいる列があった。
それに、順番にかじられていく浮竹に、もう慣れた様子でルキアが苦笑していた。
京楽は、浮竹をひたすら助けた。
浮竹は、財宝からも魔法書を発見して、全部で16冊の魔法書を抱えて、ほっこりしていた。
「お、この魔法、聖属性の攻撃魔法だ。ルキア君にぴったりじゃないか?俺も覚えるけど」
浮竹は、癒しの魔法こそ使えないが、全ての属性の魔法を使えた。
聖属性の魔法は苦手だったが、禁呪じゃないので覚えれた。
「ホーリーワールド・・・・」
聖なる空間に閉じ込めて、敵を圧縮してしまう魔法だった。
「浮竹殿、京楽殿、我がままにつきあっていただき、ありがとうございました。おまけに、新しい聖属性の攻撃魔法まで覚えられました。今回の経験を活かし、今後に励みたいと思います」
「ああ、戦わないで宝物庫まで案内したから、バイト代はでないな。まぁ仕方ない。浮竹さんと京楽さんが相手じゃな・・・・・」
恋次は、竜化を解いて、人の姿になっていた。
タトゥーが増えていた。
恋次はもともと南にある帝国の皇帝だ。よく毒殺されて、死んでは蘇り、タトゥーを増やしていた。
恋次また始祖竜であるので、不老不死の呪いをもっていた。
「恋次、何故始祖竜である貴様がバイトなどしておるのだ」
「いや、白哉さんが身に着けてる、あの薄い白いなんとかいう首に巻いてるやつを、くしゃみをし拍子に、炎を吐いてしまって、白哉さんは無事だったんだけど、着ているものがだめになっちまって。なんでも、一枚で屋敷が建つとかで、弁償することになって。帝国の金を使うわけにもかず、牙と爪を少しだけ抜いて売ったけど、まだ足りなくて、んでここでバイト募集してるの知って、給金がよかったからバイトしてた」
「兄様の銀白風花紗を焦がしたのか!」
「そうだ。すまん」
「あれは、兄様が皇族である証でもある。兄様にとってはとても大切なものであるから、今後は気をつけろ」
「ああ、分かってる。白哉さんの守護騎士なのに、白哉さんの衣服をだめにしちまった。反省も、している」
「ならば、よいのだ」
ルキアは、うんうんと頷いた。
恋次は、白哉のことが好きだったが、ルキアのことも好きだった。
でも、ルキアには最近一護という存在がいるから、ちょっかいをかけることをしていなかった。
「ルキア、白哉さんにお詫びに何を渡したらいいと思う?」
「そうだな、兄様は辛い食べ物が好きだから、貴様の南の帝国で出る辛い料理をなどを振る舞えば、そこそこ嬉しがるのではないか?」
「お、初耳だ。そうしよう。ありがとな、ルキア」
「恋次も、兄様を大切にするのだぞ」
「当たり前だ!」
そんなことを言い合っている二人を放置して、京楽は魔法書に夢中になっている浮竹を置いて、金銀財宝をアイテムポケットに収納するのに忙しかった。
「ああもう、浮竹も手伝ってよ」
「この魔法書が難解なんだ。古代エルフ語と、古代ドワーフ語でかかれてある。翻訳魔法を使いながら、今解読している」
十数分かけて、やっと浮竹は魔法書の解読を終わらせた。
「ファイアノヴァ。アイシクルノヴァ。ライトニングノヴァ。ウォーターノヴァ。ウィンドノヴァ。アースノヴァ。セイントノヴァ。ダークノヴァ。ノヴァ系の魔法全8種。習得完了」
「あ、セイントノヴァとは聖属性の魔法ですか?では、私も覚えれますか?」
「ああ、ルキア君にも教えてあげよう。現代語で、呪文と効果を書いてあげよう」
浮竹は、白い紙を取り出すと、自動的にインクが滲む魔法のペンで、ルキア用にセイントノヴァの魔法書を書いて、それをあげた。
「ありがとうございます、浮竹殿!」
「ノヴァば新星を表すそうだ。属性をこめた爆発の魔法だな」
「うわー、浮竹ってば、新しい魔法習得できて生き生きしてるね」
「そりゃそうだろう。8千年も生きているのに、また新しい、それも攻撃系の魔法を覚えれたんだ。嬉しくもなる」
「残りの魔法書は、どうするの?」
「いつまで財宝の間にいるわけにもいかんしな。アイテムポケットに入れて、古城ででも読むさ」
京楽は、最後の金貨と宝石細工をアイテムポケットに入れた。
「ルキアちゃん、金銀財宝いっぱいあるけど、いる?」
「いえ、それは浮竹殿と京楽殿で分けてください!私は、金には困っていませんので」
仮にも、ルキアは皇族だ。
金ははいて捨てるほどある。
「恋次クンは・・・ボスなのに、戦闘せずに負けて、おまけに財宝に手を出したらやばいよね?」
「やばすぎるっす。ダンジョンマスターの古代エルフたちに、ボコボコにされる」
この世界には、人間の他にも亜人種も存在する。エルフ、ドワーフ、有翼族、獣人族、羽耳族などだ。
「じゃあ、撤収だね。難攻不落のドラゴンS級ダンジョンクリアだよ!」
京楽が、魔剣を掲げて、ルキアと恋次が拍手をした。
浮竹は、魔法書を読んでいた。
「ちょっと、浮竹、こんな時くらい調子をあわせてよ」
「今、いいところなんだ。じゃあ、帰るか」
帰還の空間転送魔法陣に乗って、4人はS級ダンジョンの外に出ていた。
ちょうど、今からS級ダンジョンに挑もうとしているパーティーと遭遇した。
エルフの魔法使い、人間の剣士、獣人の盗賊、有翼族の神官のパーティーだった。
「S級ダンジョンを攻略したのか!?」
「そうだけど?」
「ラスボスは、ラスボスはなんだった?」
「カイザードラゴン」
「うわぁ。俺たちのパーティーでは、倒せないだろうな」
「まぁ、がんばれ」
「ちなみに、ラスボスはこの恋次クン。バイト中の身で、バイト辞めたから、今ならラスボスなしでクリアできるよ」
「よし、皆、がんばるぞ!」
パーティーは、一致団結して、ダンジョンに挑んでいった。
ちなみに、最後までクリアして財宝の間にくると、財宝はまた出てくる。
ダンジョンマスターである、古代エルフたちのしわざであるが、浮竹にも京楽にも、どうでもいいので、ダンジョンの財宝はおまけ程度にしか思っていなかった。
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