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始祖なる者、ヴァンパイアマスター47

「けほっけほっ」

「大丈夫か、浮竹?」

「ああ、大丈夫だ・・・・・」

浮竹は風邪を引いた。

ヴァンパイアとて、病になるものはなる。

京楽は、浮竹の額に額を当てた。

「熱があるね。食欲はあるかい?」

「ないな・・・・」

「お粥を作るから、それだけでも食べてよ。風邪薬は、確か錬金術で君が作ったやつが、館のほうにあったよね」

「ああ、そういえばあったかもしれんな」

「エリクサー使いたいところだけど、浮竹は嫌でしょ?」

「当たり前だ。エリクサー1つで大金貨3万枚にはなるんだぞ。勿体ないとは言わないが、成功の確率を考えると使いたくない。風邪くらい、風邪薬で治せる」

京楽は、お粥を作りにキッチンに行ってしまった。

「熱を出すなんて、何十年ぶりだろう」

そもそも、ヴァンパイアは病にかかりにくい。そういう種族だ。

「俺が風邪になるなんて、なんだか悪い予感がする・・・・」

「浮竹、できたよ。熱いから気をつけてね」

「ああ」

京楽は、白粥に鮭をいれたものをもってきてくれた。

正直、食欲はほとんどなかったが、少しだけ口にした。

「うまいな・・・・鮭の味がきいていて、ほどよい味だ」

結局、浮竹は食欲がないと言いつつ、全てを平らげてしまった。、

「これ、風邪薬」

青緑に輝く液体を出される。

「自分で作っておいてなんだが、飲みたくない色をしているな」

小瓶の蓋をあけると、なんともいえない匂いが漂った。

「ええい、一気に飲めば大丈夫だ!」

浮竹は中身を飲み干して、リバースしそうになっていた。

「激まず・・・でもこれを作ったのは俺だ」

水を受け取り、ごくごくと飲んでいく。

口の中はまだじゃりじゃりしていた。

風邪薬はよく売れるので、時折作りだめしては市場に流していた。

そう高くもないだけあって、人気は高いが、味をなんとかしてほしいという苦情がけっこう殺到していた。

無視していたが、いざ自分が服用することになると、味の改善をと思った。

「少し眠る」

「うん。ここにいてもいい?」

「どうした、京楽」

「君が熱を出すなんて、何十年ぶりだろう」

「多分、30年くらいじゃないか」

「ヴァンパイアは病気になりにくいけど、一度かかるとなかなか治らないから、心配だよ」

「薬も飲んだ。自分で作った薬だ。効果もよく分かっている。そんな、心配そうな顔をするな」

「うん・・・・・」

魔神であるのに、京楽は浮竹が心配のあまり、不安そうな顔をしていた。

「お前は神喰らいの魔神だろう。もっと堂々といていろ。俺は眠るぞ」

「おやすみ・・・」

浮竹の長く白い髪を、京楽は飽きもせずに撫でていた。

浮竹は夢を見ていた。

京楽が神々や精霊や人々を殺して、数十万の命を奪い、邪神になる夢だった。

邪神になった京楽は、浮竹を手にかけた。

「どうして・・・京楽何故だ」

「僕は邪神だよ。あはははは」

邪神の浮竹は、創造神ルシエードの手で殺されて、封印された。

「京楽、京楽!」

浮竹は涙を零しながら、封印された京楽をただ抱きしめていた。氷の呪文で封じ込められて、クリスタルの中に閉じ込められた京楽の生命活動は、完全に停止していた。

「京楽!」

がばりと起きると、古城のいつもの寝室のベッドの上だった。

「夢か・・・目覚めの悪い夢だ」

「どうしたの、浮竹」

隣でさも当たり前のように寝ている京楽に、浮竹がどなった。

「京楽、風邪がうつるかもしれないから、ゲストルームで寝ろと、俺は言っただろう!」

「大丈夫だよ。浮竹の薬は変な匂いがして味は悪いけど、効能は素晴らしいから。ほら、もう熱も下がったし、咳も出ないでしょう?」

「言われてぬればそうだな。一晩で治るのか。流石は俺だ」

自画自賛する浮竹に、京楽は毛布をかける。

「夜は冷え込むから。朝までまだ時間はあるから、もう一回寝よう」

「お前は、もっとこっちにこい」

浮竹は京楽の体を抱き寄せて、重なり合うようにぴったりくっついて寝た。

--------------------------------------------------------

朝起きると、本当に熱が出たことが嘘のように体が軽かった。

覚えている間に、風邪薬の味をもっといいものにしようと、ドラゴンの血に生きたマンドレイクをぶちこみ、他にもいろいろぶちこんで、薔薇水と砂糖、苺ジャム、バニラエッセンスをいれて、釜の中のものをかき混ぜた。

「なんだろう。何か、凄い甘い匂いがする」

錬金術の館に様子を見に来た京楽は、甘い匂いに釣られて釜の中をみるが、生きた生のマンドレイクが「ぎやああああああ」と悲鳴をあげながら煮られていた。

「マンドレイクが悲鳴あげてるんだけど」

「それがいいんだ。生きたまま放りこんで、エキスだけ抽出する」

「そういうものなの。ところで、何を作っているの?」

「風邪薬だ。効果はあると人気は高いのだが、味が悪すぎた。昨日飲んで、味を改善しようとしている。京楽、少し味見してくれ」

「え、でも薬でしょう?」

「風邪薬なんて、少量飲んだところで毒になるわけでもない」

京楽は、釜からお玉で薬をすくいあげて、恐る恐る一口飲んでみた。

「甘い!かすかに苺の味がするよ。これなら、子供でも飲めるんじゃない?」

「そうか。薬の味の改良には成功だな。あとは色だが・・・・・・」

液体の色は、やっぱり青緑色をしていた。

「まぁ、見た目はいいか。効能よし、味よし、これで前より更に売れるようになるだろう」

「そういえばさ、浮竹はどうして錬金術で薬を作って、人間の市場になんて流すの?人間のこと、大嫌いなんでしょ?」

「ああ、大嫌いだ。でも、人間の全てが嫌な存在ではない。冒険者ギルドに所属していると、他の冒険者やギルドマスター、受付嬢なんかと会話する時がある。そういう時、人間が嫌いでも心を開いてしまう」

「そうかい。君が傷つかないなら、僕は別に君の行動を制限する権限はないからね」

京楽は、人間が嫌いなのに人間の世界に薬を流す浮竹の心が、いまいち分からなかった。

「一応、血の帝国にも流している。子供のヴァンパイアは免疫力が低くて風邪にもなりやすいし、ヴァンピールに至っては、人間並みに弱い」

「血の帝国で薬買った人から、まずいって苦情はあったの?」

「ない。ブラッディ・ネイがそこらへんは気を遣ってくれているんだろう」

あの妹は、兄である浮竹の薬に苦情なんかきても握りつぶしそうだ。

「他にも流している薬がある。この機会に、味の改善を試みよう」

浮竹は、中庭から生きたマンドレイクをひっこぬいて、水で綺麗に洗ったあと、釜にぶちこんだ。

それにドラゴンの血を入れる。

どの薬にも、ドラゴンの血と生きたマンドレイクは必須だった。

「次は花粉症を治す薬だ。といっても、完全に治してしまうと売り上げが伸びないので、症状を緩和する薬だな。かなり効能があって、これも人気の商品だ」

ぬるぬると蠢く小瓶の中の薬は、黒かった。

「これ、飲むには勇気いるね」

「だろう。俺は味見したことないから知らんが、服用した薬屋の店主から涙ながらに、薬はもっといい味にしてくれれば3倍くらい売れると言われた。味の改良だ」

生きたマンドレイクをぶちこみ、ドラゴンの血をぶちこんで、これまたいろいろぶち込んで、薔薇水、砂糖、ブルーベリージャムをぶち込んで煮ること数分。

「完成だ。味見してくれ」

「うん、これも美味しいよ。まるでブルーベリー味のジュース飲んでるみたい。後は色かなぁ」

液体は真っ黒だった。

「色はどうしようもない。次は胃薬、その次は鎮痛剤、その次は下剤だ」

「浮竹の作る胃薬、まずいから僕は乱菊ちゃん特製の胃薬飲んでるんだよね」

「今日から、俺の胃薬を飲め。味はりんご味にしといてやる」

できあがった胃薬は、りんごジュースのような味だった。

ただ、紫色でボコボコと沸騰していた。

「お次は鎮痛剤・・・・」

今度はオレンジジュースの味の薬ができあがった。

色はショッキングピンクだった。

最後に下剤を作った。

下剤はさすがに飲むわけにはいかず、バナナ・オレの味がするということにしておいた。

バナナ・オレを大量にぶちこんだからだ。

「ふう、これであらかたの薬の味の改良は終わった。あとは錠剤ものの薬だが、これは作るのに日数がかるので、後回しというか、錠剤の薬なんて味はどうでもいいだろうし、今度にするか・・・・・・」

浮竹はよろめいた。

「危ない!」

がつん。

音を立てて、何かの瓶が割れて、中身が二人に降りかかった。

「わ、まじか!」

「え、どうしたの。って、ええ、僕がもう一人!?」

「違う。中身が入れ替わったんだ」

「何それ!なんて危険な薬を・・・・・」

浮竹は京楽の姿をしていて、京楽は浮竹の姿をしていた。

「この渦巻く魔力・・・・これが、魔神か・・・・・」

「これが、魂に神格のある者の魔力」

お互い、波長の違う魔力に戸惑いがちだった。

「でも、なんか面白い。解毒薬はここにあるから、今日一日、お互い入れ替わったままで過ごそう」

「ええ!」

「だめか?」

「いや、別にいいけど・・・・・・」

そんな日に限って、ブラッディ・ネイがやってきた。

「愛してるよ兄様!!」

「もぎゃあああああ!!」

押し倒され、弄られて京楽は浮竹の姿で、カエルが踏みつぶされるかのような悲鳴をあげていた。

「兄様?」

「ブラッディ・ネイ。その中身は京楽だ」

「ええ!じゃあ、こっちのひげもじゃが兄様!?いやだあああ、こんなひげもじゃの兄様なんていやだあああ!ボクの美しい兄様を返せ!」

浮竹の姿の京楽の髪を、ブラッディ・ネイは引っ張った。

「浮竹、解毒剤!」

「分かった」

浮竹は、オレンジ色に輝く解毒剤を飲み、残りを京楽に与えた。

「こら、いつまで俺の髪を引っ張っているつもりだ!」

「あれ?兄様、元に戻ったの?」

「そうだ。だから、どけ」

「兄様はやっぱりそうじゃないと!ああ、ツンデレが愛しい」

浮竹に思い切り抱き着いてきたので、浮竹はハリセンでブラッディ・ネイの頭を叩いた。

「痛い」

「お前、魂のルビーはどうした?もう身に着けていないのか?」

「ううん、ここに」

胸には、魂のルビーの結晶を半分にした首飾りをつけていた。

「あの結晶を砕いたのか」

「そうだよ。大きすぎたから、3つに分けて、首飾り、ブレスレット、髪飾りにしてみたんだ」

「まぁ、競り落としたのはお前だし、好きなようにするといい」

「兄様、ほらこの首飾り、ボクに似合ってるでしょ!?」

胸元を開いて、見せつけてくるブラッディ・ネイを押しやる。

「はいはい、そうだな。用がないなら帰れ」

「酷い!でもそんな兄様が大好き!」

ブラッディ・ネイは結局その日は朝がくるまで居座った。

ゲストルームで寝ることになったブラッディ・ネイは文句を言っていたが、帰ってもいいんだぞと言われて、しぶしぶ、ゲストルームで寝た。

次の朝になると、ブラッディ・ネイは浮竹に抱きつきまくり、頭をハリセンではたかれながらもスキンシップを楽しむと、血の帝国に帰っていった。

「台風みたいな奴だな」

「それ言うなら、嵐じゃないかな」

「どのみち、周囲を巻き込む」

「そうだね」

「今日は冒険者ギルドに行こう。式で、ギルドマスターが依頼したいクエストがあると知らせてきた」

「ギルドマスターからねぇ。なんかきな臭いな・・・・」

---------------------------------------------

二人は、冒険者ギルドにやってきた。

ギルドマスターが現れて、すぐに二人を二階のゲストルームへ通した。

「これを」

渡されたものは、手紙だった。

「次の月が欠ける時、神の貴族はガイア王国を滅ぼすだろう。始祖浮竹と、神喰らいの魔神京楽を引き渡せ・・・・・場所はデリアの花園にて」

「君たちがヴァンパイアなのも知っているし、魔族の藍染と敵対しているのも知っている。この手紙を渡してきた自称神の少年は、Aランクの冒険者五人をいきなり殺した。敵に仲間を売り渡すようで悪いが、この自称神の少年をなんとかできないだろうか」

「神の貴族・・・神に貴族なんていないぞ。まぁいい、その依頼引き受けた」

「報酬は大金貨30万枚。殺された冒険者たちの遺産だ」

「名前は名乗っていなかったのかい?」

「名乗っていた。リン・フォン・ハルザード。神の貴族というが、あれは確かに人外の者だ」

「リン・フォン・ハルザード。浮竹、聞いたことある?」

「確か、俺の父である創造神ルシエードが、ルシエード・フォン・ハルザートというのが正式名称だった記憶がある。フォン・ハルザートは上位神の一部の血族しか名乗らない名前だ。俺たちを呼び出す限り、神である可能性は高いだろうな」

「じゃあ、そのデリアの花園に行けばいいんだね。日時は書いてないの?」

「デリアの花園で待つとだけで、日時の指定はなかった」

ギルドマスターはがっくりと項垂れた。

「あんな存在、そこらのSランクの冒険者じゃだめだ。君たちが頼りなんだ、行ってくれるか?」

「じゃあ、今からいってぶっ倒してくる」

「僕も」

「ええ、今から!?もっと準備とか・・・・・」

「次の月が欠けるまであと三日もない。早いほうがいいだろう」

「そうだね。じゃあ、ギルドマスターは報酬の大金貨30万枚用意して、待っていてね」

「自信満々だな」

「そりゃね。僕は神喰らいの魔神だから」

「君たちの存在がなんでもいい。このガイア王国と敵対しない限り、手を出すことはない」

「それを聞いて安心したよ。じゃあ浮竹、神様討伐でもしますか」

「ああ、そうだな。あと、死んだ冒険者の遺族に、一枚ずつこれをやってくれ」

「これは白金貨!こんな大金、いいのか!?」

白金貨は、一枚で大金貨10万枚に匹敵した。

「報酬は大金貨30万枚。つまりは白金貨3枚だ。5枚だと、大金貨20万枚の赤字になるぞ?」

「俺たちの問題に巻き込まれてしまった。遺族に、せめてものお詫びだ」

「分かった。そうなるように、手配しておこう」

「遺族がいない場合は、育った孤児院にでも寄付してくれ」

冒険者の中には、孤児だった者も多い。手に職をつけれなくて、食うために仕方なく冒険者になる者も多かった。

デリアの花園に向かう途中で、京楽がこう言った。

「僕は驚いたね。嫌いな人間のために白金貨5枚も出すなんて」

「俺たちの戦いに巻き込まれたんだ。仕方ないだろう」

「気をつけてね、浮竹。尋常じゃない気配がする」

デリアの花園は、美しい花を満開に咲かせていた。

そこを歩く京楽の傍から、花が枯れていく。

魔人としての魔力に宿る瘴気にやられて、花は次々と枯れていった。

ふと、京楽は東洋の浮竹からもらった瘴気を消すお札を身に着けた。

すると、それまで渦巻いていた瘴気が消えた。

「出てこい、自称神の貴族とらやらのリン」

「自称じゃないよ。僕は本当に神で、貴族なんだから!」

枯れていた花を満開にさせて、リンは神喰らいの京楽を見た。

京楽は、魔剣ラグナロクを構えた。

「ふん、魔神なんて所詮は低級神。それに、そっちはただ神格が魂にあるだけ。僕の敵じゃあないね」

「それはどうだろうね?」

京楽は、禍々しい魔力を放つ。

浮竹も、神々しいまでの魔力を放った。

「ふん、魔力なんてあげる方法はいくらでもある!」

リンは、まず浮竹を亡き者にしようと、聖剣エクスカリバーで斬りかかった。

「その剣は女神アルテナのもの!やはりお前は、女神アルテナと藍染の子か!」

「正確には、母様は二人だけどね。僕は、二人の赤子をくっつた存在だ」

(オイシソウ)

京楽の本能がそう答えた。

「く、神喰らいが!まずは始祖の浮竹からだ!ゴッドフェニックス!」

「カイザーフェニックス!!」

出された不死鳥は、同じ不死鳥とぶつかり合う。

浮竹の唱えた魔法のほうが威力があり、リンをカイザーフェニックスが包み込んだ。

「ああああああ!!」

体を燃やされながらも、凄まじい再生スピードで体を再生させていく。

「く、エターナルアイシクルワールド!」

「エターナルアイシクルワールド!」

あえて、同じ呪文をぶつけた。

お互い凍り付きながら、けれど浮竹は氷が自然に溶けていき、リンは凍り付いたままだった。

「僕より魔力があるというのか!ふざけるな!!」

神のプライドを刺激されて、リンは凍った足を捨てて、新たに足を再生しながら、浮竹に聖剣エクスカリバーで斬りかかった。

「僕を忘れてもらっちゃ、困るね?」

「うわあああ!!なんだその魔剣は!なんて禍々しい!」

「魔剣ラグナロク。魂を吸い取る魔剣だそうだよ」

聖剣エクスカリバーは、魔剣ラグナロクと切り結び、火花を散らした。

「うわあああ!!!」

半ば半狂乱んなって、リンは聖剣エクスカリバーで京楽の体を貫いた。

「・・・くすっ」

「なんなんだ、お前は!何故、聖剣エスカリバーで貫かれて滅びない!魔神だろうが!」

「魔神でも、ヴァンパイアロードだからね。浮竹の血族である限り、邪悪な存在にはならないし、聖剣エクスカリバーとやらも、おいしそうだ」

京楽は、魔神の咢(あぎと)を開いた。

ぼりぼりと、聖剣エクスカリバーを食べていく。

「やっぱり、魂が宿っている剣だったね」

「僕の聖剣が!!」

「僕の魔剣ならあげるよ」

魔剣ラグナロクで、リンの体を貫いていた。

「ぎゃあああああ!」

「エターナルフェニックス!」

貫かれた体の内側から、炎の不死鳥がリンの体を焼いていく。

普通の再生では間に合わず、リンは空間を歪めて転移し、逃げようとした。

「おっと、君の魂は僕がもらうよ」

魔神として、リンの魂を食べていく。

でも、二人を一つにしたというだけあって、魂はもう一個あった。

「覚えてろ!」

そう言い残して、魂の半分を食われたリンは、逃げていった。

「倒せなかったか・・・・でも、あれだけダメージを与えたら、そうそう現れないだろう。神喰らいのお前に、魂の半分を食われたしな」

デリアの枯れ果てた花園を、浮竹がその魔力で花を開花させていく。

「俺の血を飲め、京楽」

「うん」

浮竹の血を吸うと、魔神独特の禍々しさが消えていたし、浄化のお札のおかげで花は満開のままだった。

京楽は器用に花冠を作ると、それを浮竹の頭に乗せた。

「僕の姫君。帰ろうか」

「誰が姫だ!うん、帰ろうか」

冒険者ギルドに、倒せなかったが危険は排除しておいたと式を送った。

報酬金は、いらないと言ったのだが、けじめだと、ギルドマスターから大金貨30万枚をもらった。

--------------------------------------------------------------------------


「ああああ!!」

浮竹は、京楽に血を吸われながらいっていた。

「やああ、奥はやあああ」

最奥をごりっと削り上げて、京楽のものが入ってくる。

「あああ!」

京楽は、熱を浮竹の最奥に弾けさせていた。

「んああああっ」

ドライのオーガズムでいくことを覚えた体は、女のように刺激だけでいってしまうようになっていた。

「ひあっ」

京楽のものが、一度外に出て、浮竹は不安そうな瞳で京楽を見た。

「自分で入れてごらん?」

「あ・・・・・・」

騎乗位になれということだった。

浮竹は、とろとろと太ももを逆流してくる京楽の精液に気づきながら、京楽の上に跨り、京楽のものを飲みこんでいく。

「あああん」

啼くことしかできない浮竹を下から突き上げて、京楽は意地悪そうに笑った。

「ねぇ、自分でいじってみて?」

「あ、や・・・・・・・」

京楽の手が、先走りの蜜を零す浮竹のものに、浮竹の手を誘導する。

「はあああ、ああ!」

浮竹は、自分で自分のものをいじりだした。

「ああ、気持ちいい、でも春水のが欲しい」

唇を舐める浮竹に、京楽は突き上げながら、浮竹の首に噛みついて、血をすすった。

「やあああん」

最奥をごりっと抉られて、浮竹は自分自身を自分でいじりながら、精液を放っていた。

「あああ!」

浮竹は京楽の方に体を傾けて、京楽の肩に噛みつき、血を啜る。

「ン・・・・甘い・・・・・」

「はぁ、気持ちいいよ浮竹。もっと吸って?」

「ん・・・・」

京楽の血を飲み下していく。

血に染まった唇を舐めて、浮竹は京楽の耳元で囁く。

「もっと、もっと、お前の子種が欲しい」

妖艶でエロティックな浮竹に、視覚と聴覚でやられてしまう。

「本当に、君って子は」

京楽は、最後の一滴までを浮竹に注ぎ込む。

浮竹は妖艶に微笑み、満足そうにまた唇をペロリと舐めるのだった。


---------------------------------------------------------------------------------------


「それで逃げてきたというの、リン」

女神アルテナは怒っていた。

自分を貴族であると言い出して、我がままに振舞う我が子でもあるリンを、自由にさせていた。

結果、聖剣は食われるし、リンは2つある魂のうちの半分の魂を食われて、体を焦げさせがら逃げてきたというのだ。

「もう一度だけチャンスをあげるわ。始祖浮竹と、神喰らいの魔神京楽を屠るのよ!」

「でもアルテナ母様、敵があんなに強いなんて聞いてない!」

女神アルテナは、リンの頬を叩いた。

「あんな風になりたいの?」

女神アルテナが指さした方向には、ぶよぶよとした肉塊があり、それは生きていた。

女神アルテナが、他の寵姫たちに生ませた赤子の、実験の失敗作だった。

「いやだ!あんな風にはなりたくない、アルテナ母様!」

「じゃあ、これを飲みなさい」

「これは何、アルテナ母様」

「邪神ディアブロの血よ」

「ひっ!」

リンは、差し出されたコップに並々と注がれている、どす黒い液体を見た。

「邪神ディアブロは、封印されたはずじゃあ・・・・・・」

「その封印を、藍染様が解いたの。あの方は、本当に素晴らしい・・・・」

「この血を飲むとどうなるの?」

「精神的にも肉体的にも強くなるだけよ。さぁ、生きていたいなら飲みなさい!」

強制的に飲ませられて、リンはぐるんと白目をむいて倒れた。

「おでの肉体。新しいの、手に入れた。おで、藍染様のいうことなら、なんでも聞く」

「邪神ディアブロになんて用はないわ!」

「ぎゃあああああああああ」

邪神ディアブロの意識は、女神の怒りで散っていた。

「さぁ、起きなさいリン」

「アルテナ母様・・・・凄いよ!凄い魔力が漲ってくる!」

「それなら、始祖浮竹も神喰らい京楽も、怖くないでしょう?」

「怖くない。もう一度、あいつらを殺しにいく!」

リンの言葉に、女神アルテナは笑った

「ほほほほほ!魔人ユーハバッハのものより凄まじい、邪神の血よ。今に見てなさい、浮竹、京楽・・・・血の海に沈むお前たちの姿が塑像できるわ。ほほほほ!」

藍染は、そんな風に笑い自分の妻を、つまらなそうに見ていた。

「私こそが、神にふさわしい」

邪神ディアブロの血を取り込んでいく。

藍染は、それでも神になれずに、自分の頭をかきむしるのだった。

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