忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 27 28 29 30 12

忘れな草Ⅵ

「ワスレナグサ、ワスレナグサ」
「そうですよ、ハロさん」
「ワタシヲワスレナイデ、ワタシヲワスレナイデ」
「上手ですね、ハロさん」

ブリーフィングルームから、お気に入りの忘れな草の鉢植えをとってきて、テーブルの上に置く。
遺伝子操作された花々は、長く咲き続けることができる。

まるで、ティエリア。

水色の小さな花を咲かせるその花は、遺伝子操作をうけて可憐に咲き続ける。
遺伝子操作を受けて、老いることのないティエリアは、一度見たら忘れられない存在。
まるでティエリアは、忘れな草。

ピョンピョン跳ねるハロを、ティエリアが追いかける。
頭には、水色と蒼の忘れな草の髪飾り。

ティエリアのベッドの上で頬杖をついて、そんな様子をのんびりと見守るロックオン。
ティエリアとハロのいる姿は平和でかわいくて心が和む。

「ティエリアは、まるで忘れな草だなぁ」
「そうですか?」
「ティエリア、ワスレナグサ、ティエリア、ワスレナグサ」
ハロを捕まえたティエリアが、首を傾げる。

「今度、忘れな草の植え鉢じゃなくって、花畑見に行こうか」
「本当ですか?」
ティエリアが、身を乗り出してくる。
そのはしゃぎぶりに、ロックオンが苦笑する。

「ああ。アイルランドにある植物園に、忘れな草の花畑のスペースがあったんだ。思い出した」
「それはとても素敵です」
うるうると、目を潤ませるティエリア。
「できれば自然の見せてやりたいんだけど・・・・今は季節じゃないからなぁ。いっつも俺が自然で見ていた花畑は小さいものだったし、もう建物がたったりして、消えちまった」
「それはとても哀しいです・・・」
まるで自分のことのように、涙さえ滲ませる。

そっと、ジャボテンダー抱き枕を抱きしめるティエリア。
「忘れな草さん、きっと痛かったでしょうに」
「まぁ、植物にも感情があるっていわれてるからな。音楽を聞かせたりすると、普通より成長速度が違ったり・・・・」

「明日、その植物園いこっか」
「え。そんな急でもいいのですか?」
「いいってことよ。ティエリアを喜ばせたい」
「アシタイッショ、アシタイッショ、ハロモイッショ、ハロモイッショ」
「ハロさんも連れていっていいですか?」
「ああ、いいぜ」
こうして、ロックオンとティエリアはアイルランドにある植物園の、忘れな草の花畑へとやってきた。

「わぁ、なんて綺麗。地面が空だ」
くるくるまわるティエリアをおいかけるハロ。
「ミズイロ、ミズイロ」
「けっこうなスペースあるから」
「あ。でも、踏みつけてしまっては・・・・花が・・・・」
「平気だって。どれも遺伝子操作で強くされてるから、根っこからひきぬくくらいしないと枯れやしない」
「それを聞いて安心しました」
「ハロモアンシン、ハロモアンシン」

まるで、子供のように無邪気に微笑みくるくる回るティエリア。
ユニセックスな服を着せたが、それも水色で統一した。頭には、二つの忘れな草の髪飾り。
天井は特殊加工の硝子ばりで、空の蒼がそのまま見える。
水色に溶け込んでいきそうなティエリア。

「どうした?」
「くるくるまわりすぎて、気分が・・・・」
「はっはは。はしゃぎすぎだぜ」
ティエリアは、花畑に寝転がった。忘れな草に囲まれて、嬉しそうだ。
この花畑の展示スペースは特別料金を払ってかりたので、二人きりだ。いや、ハロも一緒だ。

「どうして、忘れな草の花はこんなにも小さいのでしょうか?」
「そりゃ、大きかったら忘れないからだろ。小さいから、忘れてしまいそうで・・・・だから、忘れな草」
「僕と同じ考えをするんですね」
「一緒か」
ティエリアの頭を撫でる。
ロックオンも、花畑に寝そべった。

水色に囲まれる。
ティエリアは、本当に溶けていきそうだ。
精霊のように。

「この花畑の空間・・・名前あるんだぜ?」
「なんですか?」
「あなたともう一度出会う、忘れな草」
「へぇ・・・・なんか、ロマンチックですね」
「枯れても・・・・多年草だから、また季節がくれば咲く。もう一度出会うために、何年でも咲き続ける」
「もう一度出会うために、何年でも咲き続ける・・・・・」
ティエリアとロックオンは、花畑でしばしののどかな時間を過ごす。
「ワスレナグサ、ワスレナグサ」
ハロが、水色の空間を跳ね回る。

忘れな草。
あなたともう一度出会うために、また花をつける。


拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/26)
(11/25)
(11/25)
(11/22)
(11/21)
"ココはカウンター設置場所"