新しい
新しく打ってる小説、はっきりいって意味不明。
現在のところ激しく意味不明。どんな物語にしたいのかも不明。
普通のファンタジーにしようと思って、いつもの如く異世界トリップになりそうだ。むしろギャグがないとやっていけないようだ。
3章、蒼の剣士(プロローグ、2章は携帯サイトにて公開しています)
あれから、どの位時が経っただろう。そう、もう気が遠くなるような程の時間。
氷の精霊の血は、レネを呪縛し続けた。不老不死に近いのだ。
レネは、17歳の姿のまま年を経ることがなくなり、老化は完全に止まってしまった。
隠れるように、人里離れた場所に住んだりもした。死にたいと傭兵になり、戦場に身を何度も置いた。何度も死んだ、はずだった。人間なら、とっくに死んだ傷を受けて、心臓を貫かれても、頭を潰されても傷は癒えてまた蘇る。
そんなことを、もう100年以上繰り返しただろうか。
氷の精霊がまだ生きている。人々がそう噂をしだしたのは、ここ数年のことだ。また冬が一段と厳しくなってきて、北の国では半数以上の民が凍死もしくは餓死したらしい。
薄い空を見上げて、レネは帯刀していた剣を撫でた。もう何十年も使っている愛刀だ。
世界は今日も冷酷に、日々を彩り、また明日がやってくる。また次の日も、次の日も。
「おい、蒼の剣士!」
名ではなく、すでに渾名となってしまったその音色を聞いて、レネは地面から顔を上げた。ついでに、空を見上げる。
子供の頃―――といっても、外見では未だに子供だが。あの頃は、よく夜空を見るのが好きだった。
あの頃の癖が抜けていないのか、未だにこうして空を見上げる。
透き通った、蒼い空。
自分の瞳の色と同じだと、流れていく雲を見上げた。
「こら、無視するな!」
名を呼んできたのは、ここ数年で友人となった人間の少女だ。少女といっても、18歳なのでそろそろ女性と呼ぶべきだろうか。
童顔な顔を彩る髪は赤。燃えるような、炎の色。揺らめく瞳は燃え終わった後の灰。
「無視すんなー!ボクの話を聞けーー!」
その少女、レイツァは、レネの周囲をぐるりと回って、染めた頬を隠しもせずにまくしたてる。
自分のことを、ボクという少しボーイッシュな変わった子だ。
年が経っても年齢を重ねようとしないレネの外見を気にすることなく、レネに接触してくる。
「レイツァ何かようか?」
レネの恐ろしい程に整った顔が、その唇が吐息が、触れそうなくらいに近づいて彼女は悲鳴をあげた。
「ぎゃーー!!」
レイツァは、赤い髪を振り乱して、伸びてきたレネの手を叩き落とした。
「そういう真似、やめろって!誤解されるからー!」
レイツァは、真っ赤になって言い繕う。
「誤解?何が?俺が何かしたか?」
レネは、自分より少し背の低いレイツァの頭を、あの頃より少し大きくなった手で撫でる。
「早くもっと強くなれ。そして俺を殺してくれよ」
「またそういうこという!」
レイツァは、三つ編みの赤い髪を風に遊ばせて、頬を膨らませた。
子供っぽい仕草がとても似合っていて可愛らしいと、レネは思う。
レネが、自傷行為のような傭兵稼業を止めて、人の町で住むようになって、知り合った、ギルド所属の少女だ。
ギルドといっても、前に所属していた傭兵ギルドではなくモンスターハントギルドである。どのみち、レネが死と隣り合わせになるかもしれない場所に今も身を置いていることに変わりない。
「今日も……行ってたの?」
「ん。ああ」
経った年月の分だけ大人びた口調になったレネは、懐かしそうにまた空を仰いだ。
「愛した人に、会いに」
「まだ愛してるの?」
レネは、レイツァと落ち合う前に、一人でサトラ村を訪れた。そして、そこで亡き母であったマーレシアの墓に花を添えた。
「ああ、まだ。きっと、これからも。最初で最後だろうから。俺を愛してくれた人は」
「悲しいこというなよ……」
レイツァは、足元の石を蹴る。
「また、誰かを好きになって愛するかもしれないだろ?」
「ああ―――そうだな」
その時は、死ぬときだ。
誰かを愛した時、それは死ぬ時。愛することで死ぬことができるのもいいが、愛されて死ねるならいっそ本望だ。
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