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最後の冬 ルキアとのデート

ルキアと一護が、学校に通い出して1週間が過ぎた。

ルキアは私服がないので、一護の服を借りていた。

一度、風呂上がりで、一護の上着だけを羽織った姿を見た一護は、「悩殺するつもりかお前!」と鼻血をだしながら、ぶかぶかだがボトムのズボンをはかせた。

「今日は土曜だし、服買いに行くぞ!」

「うむ。流石に遊子の服を借りっぱなしというわけにはいかぬしな」

外に出るにあたって、一護の服はあまりにもぶかぶかなので、遊子の服を借りたのだ。サイズはほぼぴったりで、ルキアは中学生になった遊子と同じサイズかと、少し悲し気だった。

シマムラにやってきた。

「これとこれとこれ。後これも」

「おい、金は大丈夫なんだろうな?」

「任せろ。兄様から、300万をもらった。足りなければ、尸魂界に戻り現世の金と変えて戻ってくる」

「お前ら義兄妹は、ほんと金の感覚がおかしいな」

「そのようなことはないぞ!300万は大金だ!シマムラは安いので、たくさん買っても5万以内には収まるであろう?」

「まぁそうだけど・・・・・」

一護は、荷物持ちをさせられていた。

当分の間の着る物を買うのだ。長袖のワンピースが色違いで10着。上着も10着。さらにその上から着るコートを2着。あとは靴下だの、靴だの・・・・最後にランジェリーのところに着て、一護が朱くなる。

「適当に選んでこい!俺はここで待ってるから!」

「何を照れておるのだ」

「男が女のランジェリーのところにいることの恥ずかしさを、お前に言ってもわかんねーだろ!」

「ほう、恥ずかしいのか」

ルキアがぐいぐい腕を引っ張ってくる。

「勘弁してくれよ」

「貴様でも、情けない声を出すのだな」

ルキアは弱点を見つけたとばかりに、嬉し気だった。

結局一護は、ルキアはどんなパンツが、一護の好みなのかとか聞いてきたので、一護が選んだ。

「ほう、このような幼いデザインが好きか・・・」

「悪かったな!」

一護が真っ赤になっていた。

「まぁ良い。貴様を下着で悩殺などせぬが、貴様が好きなものを着ていたい」

「だから、ワンピースばかりなのか?」

「そうだ。一護も、私のワンピース姿を似合っていると、昔言ってくれたであろう」

一護が、ワンピース以外の服を手にとって、ルキアに渡そうとする。

「もっと他の服も買えばいいだろう。お前に似合いそうな服、いくらでもある」

「よいのだ。私はワンピースが好きなのだから」

それを、ルキアは拒絶した。

「でも冬だぞ?上は上着でなんとかなるけど、足が寒いだろう」

「そんな時のこれ!二ーソックスだ」

「う」

二ーソックスに、膝上のスカートとか、もう悩殺ものだ。そういえば、ルキアの買ったワンピースのうち3着ほどが、スカートが短めだった。

さては俺を悩殺する気か。

そう思いながら、会計を済ませる。いくら安いといっても、買った量が量で、4万を超えた。

ルキアは背中にしょったチャッピーのリュックから、300万をとりだして、レジに置いた。

店員が引き攣った顔をしていた。

その中から一護が5万を取り出して、会計を終えた。

「うわ、すげー荷物の量。一度、家に戻るか」

「そうだな。このような荷物をもったまま、どこかへは行けまい」

ルキアも頷く。

「ま、一応これデートだしな」

「な、なんだと!?こ、これがデートというものなのか」

「彼女の買い物に付き合う。立派なデートだろ」

「ううむ・・・・・」

ルキアは納得がいかなさそうだったが、とりあえず黒崎家に帰り、リビングに大量の荷物を置いて、また外に出た。

「腹減ったな。ファミレスでもいくか」

「うむ」

近くのファミリーレストランにより、一護はパスタを、ルキアが海老のグラタンを頼んだ。

それだけでは物足りないので、ルキアはジャンボパフェを注文した。

「おい、これ一人で食べきれるのか?」

「よく見ろ。スプーンが2ついておるであろう」

「あ、ほんとだ」

一護も、反対側からジャンボパフェを食べだした。

チョコレートの塊を前にして、どちらが食べるか争い、ルキアがちょっと目を離した隙に、一護が食べてしまった。

「貴様、ずるいぞ!」

「いいじゃねーか。チョコレートくらい、後でいくらでも買ってやるよ」

「その言葉、本当だな?」

「ああ」

会計は、一護が持った。

それから、不思議がるルキアを連れて、宝石店に入る。

「なんなのだ?」

「いや、前に見かけた・・・・あ、まだあった」

アメジストのネックレスだった。

金額は高くもないが、安くもなった。

「すみません、これ下さい」

「はい。こちらの商品で間違いはございませんでしょうか?」

「はい」

お金を払う。一護の財布から、一万円札が3枚ほど飛んでいく。

「では、包装を・・・・・・」

「いえ、つけていくのでいいです」

「一護?」

そのネックレスを、ルキアの首に飾ってやった。

「一護、このような高いもの・・・貴様の財布が!」

「いいんだよ。17カ月の間に、このネックレス買って、いつかルキアに送りたいと思ってバイトしてたし。まぁ、大学生になったら、一人暮らし貯める資金でもあるんだけどな」

「そのような大切な金で、何故私にネックレスなど・・・・」

「アメジストだからだ」

「え?」

「お前の瞳と同じアメジスト。ハート型で、中にダイヤモンドが入ってる」

「本当だ・・・・キラキラしていて、綺麗だな・・・・・」

ルキアはネックレスが気に入ってくれたようで、一護も嬉し気だった。

その日の夜は、マクドナルドにいってジャンクフードを食べた。

「体に悪い分かっているが・・・・美味いな」

「ああ。一時期は凄く安かったんだが、最近どこも物価が高くなって、この店もこの前値上げしやがった」

「それでも、ファミレスよりは安いであろう?」

「そうだな」

ルキアは、何かの錠剤を水と一緒に飲み干した。

「薬?どうしたんだ、ルキア?どこか悪いのか?」

「いや・・・義骸との連結を強くするだけの薬だ・・・・・・・」

「そっか・・・・・・・」

食事を食べ終えた二人は、誰もいない公園にきていた。

「なぁ、キスしてもいいか?」

「む、いいぞ」

一護は、ルキアに唇に唇を重ねた。

始めは触れるだけ。次に深く。

舌が絡まり合い、そのようなこと体験したことのないルキアは、震えていた。

ルキアを抱き締めた。

「ふあっ・・・・・・」

舌を引き抜かれると、怒ると思っていたのだが、ルキアは怒らなかった。

「兄様がくる。私は、先に帰っておく。兄様から説明がある。どうか、落ち着いて、心して聞いて欲しい」

「おい、ルキア!?」

ルキアは、走り出して見えなくなってしまった。

「黒崎一護・・・・」

代わりに声をかけてきたのは、少し懐かしい霊圧。朽木白哉だった。

「兄に、知らせておかねばならないことがある」

「なんだよ、改まって」

「ルキアのことだ」

「ルキアが、どうかしたのか?」

一護は首を傾げた。

「妹さん下さいって言ったこと、怒ってるとか?」

「そのようなことではない。もっと重要な話だ」

「なんだよ・・・・まさか、どこかの貴族と見合いして結婚するとか、そんなこと言い出すんじゃないだろうな!」

「違う。もっとルキア自身に関わる、深い問題だ」

「なんだよ」

一護は、白哉の真剣な眼差しに、一護も真剣になった。

「あれは・・・・我が泣き妻、緋真と同じ病を抱えている」

「え・・・・・・・」

「余命は、もってあと5か月」

「え・・・・うそ、だろ?」

「このようなことで、兄に嘘をついてなんになる」

だって。

だってルキアは、とても健康そうで。笑っていた。ついさっきまで、ずっと隣にいた。

「治す方法はないのかよ!何か薬とか!」

「ない。不治の病だ。だが、あれはそれを知っても、日常を兄と過ごしたいと言ってきた。4番隊で診てもらったが、もう末期だそうだ。痛み止めの薬を飲んでいるであろう」

そういえば、食後に何か錠剤のような薬を飲んでいた。

「あれが、痛み止め・・・・・・」

がらがらと、一護の中で何かが崩れていく。

「ルキアが・・・余命5カ月・・・・・」

ちょうど、高校を卒業する頃には、死ぬというのか。

あのルキアが。

とても活発で、笑い、時には涙を零し・・・一見すると健康にしか見えないルキアが。

「そんなの、ありかよ・・・・・・」

「ルキアから、兄に伝えてくれと言われたので伝えた。私からの願いだ。あれを、逝くその時まで愛してやってくれ・・・・・・」

白哉の目から、涙が零れていた。

妻に続き、義妹も白哉を置いていこうとしているのだ。

白哉にとって、生きてさえいれば、たとえ現世に嫁にいってもよかったのだ。

亡き緋真と同じ病。不治の病。薬もない。

「痛み止めさえ飲んでいれば、通常の日常を過ごせる。どうか、最後まであれを愛し抜いてやってくれ」

「うわあああああ!!」

一護は、月に向かって吠えていた。

ルキア、ルキア、ルキア。

あと5か月でお別れなんて、嘘だろう?

誰か、嘘といってくれ。



-----------------------------------------一護とルキアの、最後の冬が、訪れようとしていた。







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