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最後の冬 生きているルキア

月日が経っていくのはあっという間で。

高校生活も、残り2か月になっていた。

ルキアは、一時期病気のせいでやせ細ったが、今は小健康状態で、前より肉がついた。

ルキアの顔色がいいので、一護はいろんな場所をルキアと訪れた。

一護にも大学受験が控えていたが、今の成績でも通る普通の大学を選んだ。国際大学で、ドイツ語を第二語学で専攻しようと、一護は思っていた。

ルキアと井上と一緒に、キャンパス見学に訪れていた。

ルキアが大学に行くことはないのだが、大学がどういうところか見たいというので、同じ大学を進むと決めた井上と一緒に、見学に訪れていた。

「お、女子高校生だ。かわいー」

「かわいいなぁ。声かけようかな」

一護が、持ち前のその面の凶悪さを見せつけると、声をかけようとしていた男共は、散り散りになって逃げていった。

「けっ」

「黒崎君、警戒しすぎだよ」

「俺のルキアと、友人の井上を変な目で見る奴は許さねえ」

よく高校で、英語の分からないところを、アメリカ留学から帰ってきたと、質問されるのだが、いつも何かにつけて回答を拒んだ。

何かあると、いつも記憶置換を使っていた。

多用するのはよくないと言っている本人がこれなので、一護も何も言わなった。

あれから、ルキアと肌を重ねることはなかった。

多分、あの日が最初で最後だろう。一護はそう思った。

一護は絶対に諦めないと言いつつ、ルキアが死ぬかもしれないということを、少しずつ受け入れていた。

ルキア。

―----------------------俺の初恋の、俺の始めての彼女。

-------------------------死んでほしくない。

なんとか助かる方法はないかと、石田の父親の経営する病院で診てもらったが、病名さえ分からぬ病気で、手の打ちようがないと言われた。

その時になって、石田に知られた。ルキアが末期の不治の病であることを。茶虎にも教えた。

二人して、病気についていろいろ調べてもらったが、症例もなく、どうやら尸魂界に住まう者だけがかかる病のようであった。

4番隊から、連絡が入った。

病気になる者は、皆、流魂街出身であるということ。流魂街から瀞霊廷に入ってきた者のみがかかる病気であること。

白哉の亡き妻、緋真もそうであった。

流魂街出身で、白哉の妻として瀞霊廷に住んでいた。

流魂街に何かないかと、一護はやみくもに探してみたが、結局何も見つけれなかった。流魂街は広い。広すぎる。

ルキアの小健康状態が続くうちに、行ける場所は行っておきたかった。

冬休みに入り、クリスマスを家族で祝い、年末年始も家族で祝った。勿論、その中にはルキアも含まれていた。

一心は、一護にはお年玉をくれないくせに、ルキアには2万円のお年玉をあげていた。

遊子と夏梨は7千円ずつだった。

「一心殿、お年玉なぞいりません。どうか、このお金で家族と何か美味しいものでも・・・」

「ああ、ルキアちゃん気にしなくていいから。あの朽木家の子だと、2万なんてしけてるかもしれんが」

「いえ、お心遣いとても嬉しいです」

ルキアの笑顔に、一心も笑顔になった。

「おい一護。ルキアちゃん病気なのか?」

「なんで分かるんだ」

「あのなぁ。これでも一応、医者のはしくれだぞ」

一護は、ここまできたのだからと、隠さずに一心にルキアの現状を語った。

「流魂街か・・・戌吊が、ルキアちゃんの出身地だよな。俺は、そこになにかあるような気がするんだ・・・・」

「流魂街の、ルキアの出身地戌吊か・・・今度、尸魂界に行った時、訪れてみる」

「馬鹿野郎!時間がねーんだろ!」

「だからって、ルキアを一人にできるかよ!」

「まぁそれは分からんでもないが・・・とりあえず、明日から3泊4日で北海道いくんだろ?帰ってきたら、戌吊で何か情報でも掴んで来い!」

「わーったよ」

一護は、二人きりの北海道旅行に行った。

ルキアの小健康状態は保たれたままで、吐血することもなかった。

「ルキア、ほら薬・・・・・」

「すまぬ・・・・・」

痛み止めと、肺の薬を飲んだ。

「私が吐血するなど・・・まるで、浮竹隊長のようだな」

「あの人は病弱だったし、肺を患っていたから仕方ないだろ。お前は違う」

「そうだな。もっと酷い。死期が迫っている」

「絶対に死なせねぇ!」

ルキアを胸にかき抱いた。

札幌で本場のラーメンを食べた。ホテルでカニ鍋を食べた。お土産に送る前に、白い恋人と夕張メロンのキャンディも食べてみた。

どれも美味しかった。

「ふふ・・・・死にゆく者にしては、食い意地が張り過ぎかな・・・・」

「んなことねぇよ!」

季節は冬で、ちょうど雪まつりが開かれていた。

いろんな形の、精巧なつくりの雪像を見ていると、ふとルキアの袖白雪のことを思い出した。

「なぁ。氷雪系の斬魄刀で、生きてる者を仮死状態にすることはできるか?」

「できるが、それがどうかしたか?」

「それだ!」

一護は語った。

ルキアの命が尽きる前に、一度仮死状態にして、その間に特効薬を作らせるのだと。

「私を仮死状態にか・・・・そのようなこと、思いもつかなかった。だが、袖白雪では、所有者である私を仮死状態には・・・・」

「冬獅郎がいるじゃねぇか!」

「日番谷隊長か・・・・」

「この旅行が終わったら、すぐ尸魂界へ行くぞ!」

「分かった・・・」

その旅行では、体は重ねなかった。ルキアの体力を無駄に消耗するからだ。

そして空座町に戻り、尸魂界へと渡る。

冬獅郎に頼み込んでみたが、答えは否だった。

「俺の氷輪丸は、凍り付けた相手の命を奪う。朽木の袖白雪とは違う」

「そんな・・・・・」

一護は、愕然となった。

こうしている間にも、病魔はルキアの体を蝕んでいく。

「ぐ・・・ごほっごほっ・・・・」

ルキアは、いきなり咳込み、大量の血を吐いた。

「ルキア!」

「ふふ・・・・思ったより、病気の進行が早いようだ。私はここまでだな・・・一護、すまぬ。愛している。大好きだ。お前を残して逝くこと、どうか許してほしい・・・・・」

「だめだ、ルキア、まだ逝くな!ルキア!!」

浅い呼吸を繰り返すルキアを、最後の可能性をかけて、12番隊の技術開発局にその体を抱き抱えて移動した。

「おい、ここなら、死神を仮死状態にできる何かねぇのかよ!」

12番隊隊長である、涅マユリに食ってかかった。

「なんだネ、やぶからぼうに。おや、朽木副隊長ではないかネ。死にかけと見えるが・・・・」

「仮死状態にする何かはねぇのかって聞いてるんだよ!!!!」

「あるヨ。しかし、君にその金が支払えるのかネ?」

「朽木家が、金ならいくらでも払ってくれるはずだ!それでも足りないなら、俺を実験体にするなり好きなようにしやがれ!!」

涅マユリは、にまりと笑んだ。

「死神であり、人間であり、虚であり、滅却師の血を引いている君を実験体にか。いいネ、気に入ったヨ!ええと、ここでもないこれでもない・・・・」

「早くしやがれ!ルキア、だめだ、まだ逝くな!俺を置いて逝かないでくれ!」

一護の言葉に、うっすらとルキアは瞳を開けた。

「一護・・・貴様と在れたこの数か月・・・悪く、なかった・・・・・・・」

「おい、ルキア、ルキアーーーーーーーーー!!!1」

ルキアの呼吸が止まった。脈もなくなっていく

「どきたまえ!」

涅マユリは、どこから取り出したのか、電気ショックでルキアに刺激を与えた。

「ぐ・・・ごほっごほっ」

ルキアは、息を吹き返した。

その間に、何かの注射を打つ。

すると、ルキアの呼吸と脈が止まった。

「おい、ルキア、ルキア!!」

「うるさいネ。今、仮死状態にする薬を打ったところだヨ。即効性だから、朽木副隊長は、仮死状態だが、まだ生きているヨ」

「そうか・・・・よかった・・・・・」

一護は、冷たくなっていくルキアを抱き抱えた。

「どこかに寝かせておくとか、液体の入ったカプセルに入れるとか、そういうのはねぇよな?」

「ないネ。どこに置いておこうが、仮死状態のままだヨ。解毒薬を注射するまではネ」

一護は、朽木邸で白哉と恋次に全てを話し、仮死状態のルキアを見守ってくれるように頼みこんだ。

白哉は、ルキアがなんとか一命を取り留めている姿に、けれど現状は死んだと同じなので、悲しそうな目をしていた。

「ルキアが・・・不治の病の末期・・・くそ、ルキアの奴なんで教えてくれなかったんだよ!」

「それは、恋次に心配をかけたくなかったんだろう」

布団の上で、冷たいルキアは、本当に死んでいるようで。

でも、仮死状態なのだ。

顔色はそれほど悪くなかったが、白かった。病気独特いの青白さはなかった。





--------------------------------------------二人の最後の冬。ルキアは、生きていた。

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