比翼の鳥Ⅳ
「ああ、また散らかして・・・・・・・」
海燕は、雨乾堂でばらばらになった書類を、片付けていく。
ハンコはもう押されてあった。
後は、次の隊に回すだけの書類だ。
「またこんな場所で・・・・・」
浮竹と、京楽が寝ていた。
畳に敷いた布団の上で、京楽は、浮竹を抱きしめていた。京楽の腕の中で、浮竹はすーすーと眠っている。二人とも、よく眠っているようだ。
いくら京楽の手の中だからといっても、あまりにも無防備だ。
「隊長・・・・」
海燕は、浮竹のやや薄い桃色の唇に指で触れる。
起こすまいと、優しく。
「んー・・・・・・」
京楽が、身じろぎした。
自分の今しでかしたことに気づかれたのかと、ぎくりとなった。
浮竹は、変わらずスースーと眠りに入っている。京楽のほうが、眠りは浅いようだった。
真っ白な長い髪が、布団の上で乱れている。
その髪に、そっと触ってみると、サラサラと指の間から零れ落ちた。
「ん・・・京楽の、あほ・・・・」
眠っていた浮竹が、少しだけ動いた。
また、気づかれたのかと、ぎくりとなる。
自分には、都という名の妻がいる。浮竹と出会う前から、結婚していた。もし、妻帯していなかったら。もし、浮竹に京楽がいなかったら・・・。
敬愛する上官に抱いてしまった劣情に、海燕は首を振って想いを抑え込んだ。
「二人とも、風邪ひきますよ」
かけ布団を二人にかぶせて、拾い上げた書類を手に、海燕は雨乾堂を後にした。
「・・・・・・・・・」
ゆっくりと、京楽が目を開ける。
残っていた霊圧に、眉をしかめる。
愛しい浮竹の霊圧に触れるように、少しだけ霊圧の名残があった。
それは、浮竹が京楽の他に最も信頼しているはずの、副官のものだった。
確か、名前は志波海燕。妻帯者で、浮竹の世話をよくやいてくれる、京楽も頼りにしている相手だった。
「ちょっと、まずいんじゃないの・・・・・・」
もしも、浮竹を取られでもしたら、嫉妬で身が滅びそうだ。
「君は、僕だけのものだからね」
腕の中で眠る、白い髪の麗人を抱きしめる腕に、力を籠めると、僅かに翡翠色の瞳が開いた。
「ん・・・きょうら・・・く?」
交わったわけではない。だが、ぐずぐずになるように、甘く甘く、耳元で囁くように浮竹に接した。
何度も口づけして、体のラインを確かめた。
「まだ、眠い・・・・・・」
浮竹は、京楽のもじゃもじゃの胸毛のはえた胸筋に、頭をこすりつける。
浮竹の白い髪や体からは、甘い花の香りがした。
いつもそうだ。
香水も使っていないのに、甘い香りがする。花のような香りだ。
さらさらと零れ落ちていく、白い長い髪を、手に取る。
「誰にも、渡さない・・・・・・・」
やや乱暴に、口づける。
「んー・・・・・・きょうら・・く・・・・」
「どうしたんだい、十四郎」
下の名前で呼ぶと、ぴくりと浮竹の体が反応した。
「春水・・・・・・」
触れ合うだけのキスをする。
「浮竹は、甘いねぇ」
とろけるようなキスも、触れるようなキスも、甘くて甘くて。
まるで、果実のようだ。
「春水・・・・・・・愛してる・・・・・・」
「僕もだよ、十四郎」
その甘さを貪るように、覆いかぶさって、深く口づけた。
「誰にも、渡さない」
もしも、浮竹に自分以外の愛しい人ができたら、きっと相手を殺してしまう。
狂気じみた愛だ。
比翼の鳥の片割れは、貪欲だった。欲しいだけ貪る。
もう片方の比翼の鳥は、貪られて啼くことを覚えた。
優しく甘い時間は、あっという間に過ぎていく。
比翼の鳥は、お互いを抱きしめあいながら、熱を孕んで飛び立っていく。
休息を何度も取りながら。
ただ、真っ白な世界へと。
海燕は、雨乾堂でばらばらになった書類を、片付けていく。
ハンコはもう押されてあった。
後は、次の隊に回すだけの書類だ。
「またこんな場所で・・・・・」
浮竹と、京楽が寝ていた。
畳に敷いた布団の上で、京楽は、浮竹を抱きしめていた。京楽の腕の中で、浮竹はすーすーと眠っている。二人とも、よく眠っているようだ。
いくら京楽の手の中だからといっても、あまりにも無防備だ。
「隊長・・・・」
海燕は、浮竹のやや薄い桃色の唇に指で触れる。
起こすまいと、優しく。
「んー・・・・・・」
京楽が、身じろぎした。
自分の今しでかしたことに気づかれたのかと、ぎくりとなった。
浮竹は、変わらずスースーと眠りに入っている。京楽のほうが、眠りは浅いようだった。
真っ白な長い髪が、布団の上で乱れている。
その髪に、そっと触ってみると、サラサラと指の間から零れ落ちた。
「ん・・・京楽の、あほ・・・・」
眠っていた浮竹が、少しだけ動いた。
また、気づかれたのかと、ぎくりとなる。
自分には、都という名の妻がいる。浮竹と出会う前から、結婚していた。もし、妻帯していなかったら。もし、浮竹に京楽がいなかったら・・・。
敬愛する上官に抱いてしまった劣情に、海燕は首を振って想いを抑え込んだ。
「二人とも、風邪ひきますよ」
かけ布団を二人にかぶせて、拾い上げた書類を手に、海燕は雨乾堂を後にした。
「・・・・・・・・・」
ゆっくりと、京楽が目を開ける。
残っていた霊圧に、眉をしかめる。
愛しい浮竹の霊圧に触れるように、少しだけ霊圧の名残があった。
それは、浮竹が京楽の他に最も信頼しているはずの、副官のものだった。
確か、名前は志波海燕。妻帯者で、浮竹の世話をよくやいてくれる、京楽も頼りにしている相手だった。
「ちょっと、まずいんじゃないの・・・・・・」
もしも、浮竹を取られでもしたら、嫉妬で身が滅びそうだ。
「君は、僕だけのものだからね」
腕の中で眠る、白い髪の麗人を抱きしめる腕に、力を籠めると、僅かに翡翠色の瞳が開いた。
「ん・・・きょうら・・・く?」
交わったわけではない。だが、ぐずぐずになるように、甘く甘く、耳元で囁くように浮竹に接した。
何度も口づけして、体のラインを確かめた。
「まだ、眠い・・・・・・」
浮竹は、京楽のもじゃもじゃの胸毛のはえた胸筋に、頭をこすりつける。
浮竹の白い髪や体からは、甘い花の香りがした。
いつもそうだ。
香水も使っていないのに、甘い香りがする。花のような香りだ。
さらさらと零れ落ちていく、白い長い髪を、手に取る。
「誰にも、渡さない・・・・・・・」
やや乱暴に、口づける。
「んー・・・・・・きょうら・・く・・・・」
「どうしたんだい、十四郎」
下の名前で呼ぶと、ぴくりと浮竹の体が反応した。
「春水・・・・・・」
触れ合うだけのキスをする。
「浮竹は、甘いねぇ」
とろけるようなキスも、触れるようなキスも、甘くて甘くて。
まるで、果実のようだ。
「春水・・・・・・・愛してる・・・・・・」
「僕もだよ、十四郎」
その甘さを貪るように、覆いかぶさって、深く口づけた。
「誰にも、渡さない」
もしも、浮竹に自分以外の愛しい人ができたら、きっと相手を殺してしまう。
狂気じみた愛だ。
比翼の鳥の片割れは、貪欲だった。欲しいだけ貪る。
もう片方の比翼の鳥は、貪られて啼くことを覚えた。
優しく甘い時間は、あっという間に過ぎていく。
比翼の鳥は、お互いを抱きしめあいながら、熱を孕んで飛び立っていく。
休息を何度も取りながら。
ただ、真っ白な世界へと。
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