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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます24 椿

朽木邸に来ていた。

寒椿が見頃で、少しだけ分けてくれと白哉に京楽が訴えると、好きなだけ持って行けと言われた。

珍しく、浮竹は実体化したまま、京楽と散歩に出た。

白哉のいる朽木邸にまできて、浮竹が驚く。

「ここは白哉の家だぞ」

「許可はもらってあるから。こっちだよ」

浮竹の手を引っ張って、歩いていく。

寒椿の見事な紅の花が、咲き狂うようにそこにはあった。

「綺麗だな・・・・・」

1つ手折って、浮竹の髪に飾る。

「やっぱり、君には紅色がよく似合う」

「ばか、椿がかわいそうだろう」

「そんなことないよ。散る前に氷室で補完させるから」

「京楽・・・・」

今日は、1日中実体化していられる日だったが、珍しく睦み合わずに外に出ていた。

そのまま、しばらく椿を鑑賞してから、貴族街の宝石店に行く。

「注文していたものはできているかい?」

「あ、京楽様。ちょうど先日、出来上がったばかりです」

「京楽、何を・・・・」

店員が出してきたのは、椿を象ったガーネットでできた髪留めだった。

「じゃあ、いつもの口座に振り込んでおくから」

「毎度、ありがとうごいます!またご贔屓にしてください」

「うん。君のところ、よい出来のつくってくれるから、また頼むよ」

「京楽・・・・」

浮竹は、京楽の思いに気づいて、潤んだ瞳で京楽を見ていた。

京楽は、浮竹の長い白い髪を一房手にとると、椿の形をした髪留めで留めた。

耳元には、本物の椿。反対側の髪には、ガーネットでできた椿を象った髪飾り。

「椿は、6番隊の隊花だからねぇ。朽木隊長とかにも似合いそうだけど、あの子はこういうの好まないでしょ」

「俺は、ただの椿だけでもよかった。またお前に散財させてしまった」

「まぁそう言わないでよ。去年は忙しくて、君の誕生日を祝えなかったから、その代わりだよ」

「でも、特注品だから高かっただろう?」

「うーん。石がガーネットだから、そこまで飛びぬけて高いわけでもないよ。まぁ、注文した品だからそこそこはしたけどね」

「今日は、君の誕生日を祝えなかった代わりの日だよ。君の好きな場所に行こう」

「じゃあ、壬生の甘味屋にいきたい」

「あそこ、カードでポイント制ができたんだよね。もう会員カード作ってあるから、行こうか」

少し足を伸ばして、壬生の甘味屋にまで出かけた。

「おはぎを10こ、ぜんざいを3人前、白玉餡蜜を3人前、あと団子4つと、羊羹5つ」

「僕は、抹茶アイスとぜんざいを1つ」

注文される量の多さに、給仕係は大変そうだった。

少ししてから、注文した品がやってくる。

浮竹は美味しそうにそれらを食べた。

「ねぇ、生身で食べている時は、実体化するエネルギーにはならないの?」

「いや、そうでもないぞ。ただの食事と一緒で、今ここにいるエネルギーに変わる」

「なるほど」

「次にどこに行きたい?」

「俺の墓参りにいきたい」

「雨乾堂にあった場所に行こうか」

「ああ」

甘味屋を出て、会計をすます。かなりのポイントがたまって、次回から割引ができるようだった。

雨乾堂にあった場所まで、花と酒を手にやってくる。

「俺は幽霊だけど、ここに眠っていることには変わりないからな」

菊の花を添えて、酒を墓石に注いだ。

「あとは?」

「元柳斎先生と、卯ノ花隊長の墓参りがしたい」

「分かったよ」

菊の花を追加で買って、お茶を買った。

山本元柳斎重國は、酒より茶を好んだ。

山本元柳斎重國の墓は立派だった。たくさんの供え物がされていて、墓の管理者が花が枯れたり、食べ物が腐ったりすると、処分してくれた。

「元柳斎先生・・・・俺だけ、生きているように近いかんじなってすみません。どうか、安らかに」

「山じい、まぁ気楽にやっててよ。そのうち、そっちいくから」

墓石に茶を注いだ。

近くに、卯ノ花隊長の墓もあった。

こちらも綺麗に手入れがされてあり、まだ枯れていない花が活けてあった。

「虎鉄隊長のものかな?」

「多分ね」

「卯ノ花隊長・・・・あなたに続くはずだったのに、俺だけこうして幽霊なのに実体化までできて、すまない。どうか、安らかに」

「卯ノ花隊長の死に顔はとても綺麗だったのを、今でも思い出すよ。血をぬぐうと、今にも微笑んででくれそうで。そういえば、君の死に顔も満足したかんじだったね」

「そうなのか?」

「うん。死神としての矜持を果たしたってかんじで。微笑んでくれそうな顔ではなかったけど、卯ノ花隊長と同じくらい綺麗な死に顔だったよ」

「なんか複雑だな。死に顔を見られているのに、今こうしてお前の傍にいれる」

京楽は、嬉し気だった。

「神様の悪戯か何か知らないけど、僕はとても嬉しいよ。君を失った世界は色がなくなった。色のない世界だ。君が幽霊として僕に憑いてくれてから、世界に色彩が戻った」

「その、すまない。お前を置いて逝ったりして」

「君の手紙を読んだよ。いつか引退して一緒に歩んでいこうってくだりには涙腺が決壊して、涙が止まらなかったんだよ」

「あれは・・・あの手紙は、まだ持っているのか?」

浮竹の問いかけに、京楽は首を横に振る。

「持っていても、とても悲しいものだから、読んだ後に鬼道で燃やしたよ」

「そうか。でも、そうしてもらったほうが俺も楽だ」

浮竹と京楽は、手を繋ぎあいながら、1番隊の寝室にやってきた。

そのまま、睦み合うことはせずに、ベッドに横になった。

髪に飾っていた椿は、京楽の氷室で保管するとのことで、帰り道の途中で京楽邸に一護立ち寄った。

「くすぐったい・・・」

背後から抱きしめられて、浮竹はなんともいえない感覚を味わう。

一言でいえば幸せの気持ちだ。

でも、一度死んだ身でありながらという、後悔に似たものもあった。

「今日は、君を抱かない。だけど、こうやって一緒に眠ろう」

「ああ、分かった」

夕飯をとり、湯浴みをすませて、椿の髪飾りを大切にタンスにしまいこんで、ベッドに横になる。

京楽と一緒に眠るので、ベッドはとても広いものだった。

始めはシングルサイズだったが、京楽がベッドをキングサイズに変えたのだ・

体温を共有し合う。

それだけで、安心できた。

「京楽・・・キスしていいか?」

「どうしたの。君からなんて珍しいね」

「なんとなくな・・・・・」

唇を重ねる。

触れるだけのキスは、いつしか貪りあうような深いものにかわっていた。

「好きだ、京楽・・・」

「僕も大好きだよ、浮竹」

抱き締める腕に力がこもる。

「もう、置いていったりしない。ずっと一緒だ」

「うん」

そのまま、眠った。

朝起きると、浮竹はまだ実体化したままだった。

「おはよう」

「おはよ」

京楽は、浮竹の髪を螺鈿細工の櫛で梳いて、椿の髪飾りをつけてやった。

「うん、今日もかわいいね」

「そろそろ、霊体に戻る。無駄に実体化し続けるよりはいいだろうから」

「あ、待って!」

「?」

キスをされた。

「ん・・・んんっ・・・・・」

舌が絡み合う。

「ふ・・・・」

朝から濃厚のなキスをした。

「もぅ、霊体に戻るぞ」

「うん」

すーっと、浮竹の体が透けていく。髪飾りも透けて、霊体の一部になってしまった。

取り外すと、実体化するが。

「君の実体化できる貴重な1日をありがとう」

「そういう俺こそ、俺の我儘に付き合ってくれてありがとう」

新しい朝が始まろうとしている。

不変の愛を奏でながら、二人は寄り添いあうのであった。

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