猫でも愛してる
「おやすみ。永遠に、愛してるーーー」
浮竹十四郎がこの世を去った。
その訃報は、尸魂界中を駆け巡った。
大戦も何とか終わり、復興に向けて動き始めたばかりだった。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈に並んで、また隊長が死んだ。尸魂界はこれからという時期を迎えていたのに、亡くなった。
たくさんの人が悲しんだ。一番悲しんだのは、総隊長となった京楽だろう。
何せ、何百年も連れ添った恋人だったのだ。
だが、葬儀の時は京楽は涙を見せなかった。蒼い薔薇で満たされた棺の中に、ミミハギ様を失ったことで病が進行し、少しやせ細った浮竹の遺骸があった。
穏やかな顔をしていた。
声をかければ、今すぐ起ききそうで。
「浮竹隊長ーーー!!!」
ルキアは泣きまくっていた。京楽と一緒に最期を看取ったが、やはり涙を流した。
「おやすみ、浮竹。また、何処かで会おう」
別れは、浮竹の意識がある時にもう済ませたのだ。
泣いたところで、何かが変わるわけでもない。
でも、と思う。
棺が閉まり、火がつけられる。
その全てが灰にになるまで、京楽もルキアも、そして訃報を受けてかけつた一護も、ただじっと見ていた。
「一護、浮竹隊長が!」
泣きじゃくるルキアを抱き締めて、一護は優しかった浮竹の面影を思い出す。
「どうか、安らかに・・・・・・」
「ルキア、もう泣くな」
そう言ったのは、白哉であった。
白哉は浮竹と交流が深かった。見れば、最後まで残っていたのは日番谷に松本・・・・交流がある人物ばかりだった。
後の人物たちは、見ていられないと、灰になるまでの間に去ってしまった。
浮竹は、自分の在り方に満足して死んでいった。
神掛けをおこない、自分が死ぬであろうことも分かっていたのに。
霊王は、尸魂界の民には死んでいないことにされていた。本当は、もういないのに。偽りと真実と。生と死と。いろんなものが混ざりあい、時は過ぎていく。
浮竹の焼け残った骨と灰は、主を失ったことで取り壊された雨乾堂の下に埋められて、立派な墓石が建てられた。
京楽は、その日も浮竹の墓参りに来ていた。
「にゃーん」
猫アレルギーの京楽は、一匹の白猫を飼いだした。その猫に対してだけは、アレルギーはでなかった。
疑似愛玩動物。特別な義骸で作られた、死ぬことのない愛玩動物。その白猫に、京楽は浮竹がまだ息がある時に抜き取った記憶の一部を埋め込んだ。
猫は、浮竹の意識をもっていた。
「にゃぁ」
京楽の傍にいつもまとわりついて、隊首会の時でさえ一緒にいた。
「にゃおーん」
周囲は、浮竹が亡くなったせいで、猫を飼いだしたと思っていた。
「にゃあ・・・・」
(京楽)
「どうしたんだい、シロ」
京楽は、その猫にシロという名をつけた。
「にゃあ」
(腹減った)
記憶があるからといって、元の浮竹がいるわけではない。猫の理性を持っていて、時折浮竹がでてくる。何をいっているのか分かるように、涅マユリの作った怪しい薬も飲んだ。
「今、ご飯あげるからね」
「にゃあ」
(愛してる)
「僕もだよ、シロ」
真実を知れば、京楽は狂人であると言われるだろう。
それでも構わない。
浮竹の死を、受け入れるにはまだまだ時間がかかりそうだった。
「にゃあ」
(一緒に寝よう)
「ちょっと待ってね。湯あみしてくるから」
猫に話しかける姿をよく見る七緒は、その猫が浮竹の代わりなのだと思った。まさか、浮竹の記憶そのものと感情を、あやふやではあるが、それを持つ猫などとは思わないだろう。
「にゃーん」
シロは、七緒にもよく懐いた。
誰にでもよく懐いていた。
湯あみをして夕餉を食べ、シロとひとしきり遊んだ京楽は、シロを抱き上げて一緒のベッドに横になった。
シロは、眠る京楽の横で丸くなって眠った。
いつか、京楽が自分の死を受け入れたら、いなくなろう。そうシロは思っていたのだが、シロの中に残された、京楽へ恋慕がそれをさせてくれない。
シロは、義骸でできた猫だ。年を取らない。
京楽が刻む年を、一緒に過ごしていくが、年をとらないので、最後には1匹になってしまうだろう。その時は、京楽と一緒の棺に入って、灰になろう。
そう思いながら、今日も京楽の隣で、喉をなでられてゴロゴロとご機嫌な声で鳴いた。
「にゃあ」
(猫でも愛してる)
「僕もだよ、シロ」
「にゃーーん」
猫の玩具に、体が反応する。シロは、よく遊び、よく食べて、よく眠った。
傍らには常に京楽がいた。
「いつか、僕がそっちにいくまで、まっててね、シロ」
「にゃーーん。にゃあにゃあ」
(いっそ、お前も俺と同じように猫になったらどうだ)
「考えておく・・・・・・」
京楽は、最期を迎える時、記憶を抜き取らせ、感情と一緒ににもう当たり前になった疑似愛玩等物の黒猫の脳に埋め込みさせた。
シロは旧タイプなのでいろいろガタがきていて、脳はそのままで新しい白猫のボディをもらった。
「にゃーん」
「にゃーお」
餌をもらう時だけ、人にすりよる2匹の猫が、かつて隊長と総隊長であったとは、もう誰も知らない。
遥か未来まで、2匹の猫はじゃれあいながら生きた。
猫でも、互いを愛している。
その気持ちだけは、変わらなかった。
浮竹十四郎がこの世を去った。
その訃報は、尸魂界中を駆け巡った。
大戦も何とか終わり、復興に向けて動き始めたばかりだった。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈に並んで、また隊長が死んだ。尸魂界はこれからという時期を迎えていたのに、亡くなった。
たくさんの人が悲しんだ。一番悲しんだのは、総隊長となった京楽だろう。
何せ、何百年も連れ添った恋人だったのだ。
だが、葬儀の時は京楽は涙を見せなかった。蒼い薔薇で満たされた棺の中に、ミミハギ様を失ったことで病が進行し、少しやせ細った浮竹の遺骸があった。
穏やかな顔をしていた。
声をかければ、今すぐ起ききそうで。
「浮竹隊長ーーー!!!」
ルキアは泣きまくっていた。京楽と一緒に最期を看取ったが、やはり涙を流した。
「おやすみ、浮竹。また、何処かで会おう」
別れは、浮竹の意識がある時にもう済ませたのだ。
泣いたところで、何かが変わるわけでもない。
でも、と思う。
棺が閉まり、火がつけられる。
その全てが灰にになるまで、京楽もルキアも、そして訃報を受けてかけつた一護も、ただじっと見ていた。
「一護、浮竹隊長が!」
泣きじゃくるルキアを抱き締めて、一護は優しかった浮竹の面影を思い出す。
「どうか、安らかに・・・・・・」
「ルキア、もう泣くな」
そう言ったのは、白哉であった。
白哉は浮竹と交流が深かった。見れば、最後まで残っていたのは日番谷に松本・・・・交流がある人物ばかりだった。
後の人物たちは、見ていられないと、灰になるまでの間に去ってしまった。
浮竹は、自分の在り方に満足して死んでいった。
神掛けをおこない、自分が死ぬであろうことも分かっていたのに。
霊王は、尸魂界の民には死んでいないことにされていた。本当は、もういないのに。偽りと真実と。生と死と。いろんなものが混ざりあい、時は過ぎていく。
浮竹の焼け残った骨と灰は、主を失ったことで取り壊された雨乾堂の下に埋められて、立派な墓石が建てられた。
京楽は、その日も浮竹の墓参りに来ていた。
「にゃーん」
猫アレルギーの京楽は、一匹の白猫を飼いだした。その猫に対してだけは、アレルギーはでなかった。
疑似愛玩動物。特別な義骸で作られた、死ぬことのない愛玩動物。その白猫に、京楽は浮竹がまだ息がある時に抜き取った記憶の一部を埋め込んだ。
猫は、浮竹の意識をもっていた。
「にゃぁ」
京楽の傍にいつもまとわりついて、隊首会の時でさえ一緒にいた。
「にゃおーん」
周囲は、浮竹が亡くなったせいで、猫を飼いだしたと思っていた。
「にゃあ・・・・」
(京楽)
「どうしたんだい、シロ」
京楽は、その猫にシロという名をつけた。
「にゃあ」
(腹減った)
記憶があるからといって、元の浮竹がいるわけではない。猫の理性を持っていて、時折浮竹がでてくる。何をいっているのか分かるように、涅マユリの作った怪しい薬も飲んだ。
「今、ご飯あげるからね」
「にゃあ」
(愛してる)
「僕もだよ、シロ」
真実を知れば、京楽は狂人であると言われるだろう。
それでも構わない。
浮竹の死を、受け入れるにはまだまだ時間がかかりそうだった。
「にゃあ」
(一緒に寝よう)
「ちょっと待ってね。湯あみしてくるから」
猫に話しかける姿をよく見る七緒は、その猫が浮竹の代わりなのだと思った。まさか、浮竹の記憶そのものと感情を、あやふやではあるが、それを持つ猫などとは思わないだろう。
「にゃーん」
シロは、七緒にもよく懐いた。
誰にでもよく懐いていた。
湯あみをして夕餉を食べ、シロとひとしきり遊んだ京楽は、シロを抱き上げて一緒のベッドに横になった。
シロは、眠る京楽の横で丸くなって眠った。
いつか、京楽が自分の死を受け入れたら、いなくなろう。そうシロは思っていたのだが、シロの中に残された、京楽へ恋慕がそれをさせてくれない。
シロは、義骸でできた猫だ。年を取らない。
京楽が刻む年を、一緒に過ごしていくが、年をとらないので、最後には1匹になってしまうだろう。その時は、京楽と一緒の棺に入って、灰になろう。
そう思いながら、今日も京楽の隣で、喉をなでられてゴロゴロとご機嫌な声で鳴いた。
「にゃあ」
(猫でも愛してる)
「僕もだよ、シロ」
「にゃーーん」
猫の玩具に、体が反応する。シロは、よく遊び、よく食べて、よく眠った。
傍らには常に京楽がいた。
「いつか、僕がそっちにいくまで、まっててね、シロ」
「にゃーーん。にゃあにゃあ」
(いっそ、お前も俺と同じように猫になったらどうだ)
「考えておく・・・・・・」
京楽は、最期を迎える時、記憶を抜き取らせ、感情と一緒ににもう当たり前になった疑似愛玩等物の黒猫の脳に埋め込みさせた。
シロは旧タイプなのでいろいろガタがきていて、脳はそのままで新しい白猫のボディをもらった。
「にゃーん」
「にゃーお」
餌をもらう時だけ、人にすりよる2匹の猫が、かつて隊長と総隊長であったとは、もう誰も知らない。
遥か未来まで、2匹の猫はじゃれあいながら生きた。
猫でも、互いを愛している。
その気持ちだけは、変わらなかった。
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