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小説掲載プログ
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院生での想い

「好きだ」

そう言われて、こう答えた。

「知ってる」

京楽が、浮竹を好きなことは、浮竹自身知っていた。でも、と思う。ずっと長い間、親友であったのに、恋人同士になれるのかと。

「僕は本気だよ?本気で君が好きだ。愛してる」

「俺はそれを知っていた。好きなのかと聞かれると、多分好きなんだろう。でも、愛しているとまでは断言できない」

「いいよ、それでも。君が振り向いてくれるまで、ずっと傍にいるから。振り向いてくれた後も、勿論傍にいるけどね」

京楽は、その日を境に廓に行かなくなった。付き合っていた女生徒とも手を切った。

「浮竹、一緒に食堂に行こう」

好きだと言われた日から、何かが急激に変わるものでもなかった。

いつものように、一緒の部屋で寝起きして、一緒に学院に登校し、授業を受けて食堂で食事をする。

京楽が好きと言い出しのは2回生の終わりごろ。気づけば、もう4回生になっていた。

ある時、現世で虚退治の特別授業があった。

そこで出るはずの虚は、院生でも倒せるクラスのものであるはずだった。

「そんなバカな・・・・大虚(メノスグランデ)・・・いくらなんでも、無理だ!」

引率していた教師が、絶望の声をあげる。

黒腔(ガルガンタ)が開き、そこから1匹の大虚が叫び声をあげた。

「京楽、いくぞ!」

「ああ、浮竹!」


斬魄刀を始解させて、大虚に切りかかる。何度か切りつけていると、大虚が虚閃(セロ)を放った。あまりの速度に、交わしきれなくて、浮竹が目を見開く。

「危ない!」

突き飛ばされた。

虚閃を浴びて、京楽が大地へと落ちていく。

「京楽!この!」

もう一度、虚閃を浴びせられたが双魚の理で何とか吸い取って、反対側の刃から虚閃を収縮して打つとと、大虚は悲鳴をあげて黒腔の中に逃げて行った。

今の力量で、大虚を倒すことはまだ無理だ。

幸いにも、大虚は一体だけで、混乱してた教師たちも生徒も、大虚と一緒になって現れた普通の虚の退治へと移行する。

「なんとかなるか・・・・・」

様子を見て、浮竹は京楽の落ちて行った場所へ降りて行った。

「京楽、しっかりしろ!」

酷い火傷を負っていた。

「なんであんな馬鹿な真似した!」

「君が危ないと思ったら、勝手に体が動いていたんだよ・・・・ごほっごほっ」

肺に穴が開いていた。

血を吐く京楽が、まるで自分のように見えて、背筋が凍る。すぐに念のためにきていた4番隊の死神に声をかける。

「急患なんです、頼みます」

4番隊の席官が、すぐに京楽の手当てのために回道を行った。肺の傷は小さかったのでなんとか血止めがされ、致命傷に近かった火傷も少しましになった。

「あとは入院して治すしかないな。それまでもつかどうか心配だが」

「京楽、しっかりしろ!」

京楽は、すでに意識を手放していた。

「京楽・・・・・」

浮竹は、京楽がこのまま逝ってしまうのではないかと、気が気ではなかった。

その時にやっと気づいた。

涙が頬を伝う。

「お前のことを、愛している・・・・・・」

そう、自覚した。


京楽は入院し、集中治療室に運ばれた。
数日の間は危険な命の境を彷徨ったが、回道で手当てを受けていく間に、なんとか一命をとりとめることができた。

やっと集中治療室から出てきて、意識の戻った京楽に、学院の授業が終わると、浮竹は毎日お見舞いにやってきた。

「京楽、好きだ。愛している・・・・・」

「浮竹?本当に?」

「お前を失うと思って気づいたんだ。こんなに愛していることを」

病室で、抱き合ってキスをした。

「愛しているよ、浮竹」

「分かっている。だから、もうあんな無茶な真似、やめてくれ・・・・・・・」

1か月が経ち、やっと退院が許された。

まだしばらくは通院しなければいけないが、京楽は戻ってきた。

「歩けるか?」

「微妙だね」

京楽に肩をかして、一歩一歩寮の自室に向かって歩き出す。

「まだしばらくは、学校を休め。こんな体じゃあ、通学なんて無理だ」

「早めに日常生活に戻りたくて、退院を早めたんだけど、無意味だったようだね」

「退院を無理に早めただって!?このバカ!」

頭をぽかりと殴ると、京楽は言った。

「ごめんね。君に心配をかけさせたくなかったんだ」

「俺のことはもういい」

「よくないよ。君が死ぬかと思ったんだ、あの時・・・・・」

「俺は、お前が死ぬかと思った。もうあんな想いはこりごりだ」

寮の部屋につくと、抱き締めあった。

そのまま唇が重なる。

その日、初めて体を重ね合った。

告白されて、2年が経とうとしていた。


6回生になった。

お互いを大事にしあい、時には体を重ね、座学に励み、剣術や鬼道の腕を磨いた。

もう、大虚でも倒せそうなくらいの力をつけた二人の行き先は、決まっていた。

浮竹が13番隊の3席に。京楽が8番隊の3席に。

卒業する前から、席官入りが決まったのは初の例だった。

しかも3席。

卒業してからは、お互い忙しく、二人きりの時間をとることができなかった。

ある時、非番の日になった。たまたま同じ日にだ。

いつもは、非番の日でも責務に追われていたり、現世に虚退治の遠征に出かけたりと、時間をとれなかった。

その日は、一緒に過ごした。昼までいつもの疲れをとるためにゴロゴロ寝て、午後から酒盛りを始めて、夕方にはすっかり浮竹は酔っぱらっていた。

「こらー京楽ー」

「好きだよ、浮竹」

「おう、俺も好きだぞー」

そのまま、浮竹を押し倒す。

「京楽のあほー。お前ももっと飲め」」

「浮竹、飲み過ぎだよ」

杯をとりあげた。

「んう」

舌が絡み合う口づけをすると、久しぶりのこともあってか、どちらかが、というわけでもなく貪りあった。

「あ・・・・・」

酔っているせいで、世界がふわふわする。

「ん・・・・」

痕を残されたが、本当に久しぶりだったので何も言わなかった。

次の日は、浮竹は二日酔いで結局休んでしまった。京楽も、休暇が溜まっていたので休みをとった。

「いつも、こうしていられたらいいのにね」

「お前のことだ、体を重ねてくるだろう・・・・いつもは無理だ」

昨日、久しぶりだったのでかなり無茶をさせられた。数回意識を飛ばした。

「今みたいに、数日に1回あえる距離がちょうどいい」

「僕はもっと君に会いたいよ」

「じゃあ、お互い出世しないとな」

そう言って、笑いあった。


それから数年後。

二人は、若くして隊長にまで登りつめた。

くしくも、先代の隊長が戦闘によって一人は死亡し、一人は引退になるまで体を欠損した。

二人とも卍解は使えたし、能力的にも十分とされて、山本元柳斎重國に太鼓判を押された。

浮竹は、病弱であることも考えられて、雨乾堂という、隊首室と執務室を一つにした特別な建物が建てらた。

その雨乾堂に、京楽はよくお忍びで遊びにきた。

8番隊としての仕事を終えてからなので、浮竹も何も言わなかった。

「今日、なんの日か覚えてる?」

「覚えてない」

「やっぱり・・・・・」

少しがっくりした京楽に、浮竹がキスをして機嫌をとる。

「今日はね、僕がはじめて君に告白した日だよ」

「お前は、いつも好きだ好きだというから、そんな日のこと覚えていなかった」

浮竹が、京楽の腕の中で、ごろりと寝転がった。

「今日はするのか、しないのか?」

「する」

再び、唇が重なる。

そのままの関係で、数百年の時を重ねることになるなど、その時は知る由もなかったのだが。

院生時代の想いは、今も胸の中に燻っているのだ。

お互いに。

好きで愛していている。

その想いは、永遠に似ていた。

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