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小説掲載プログ
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赤い糸(2期)

甘い甘いスィーツよりも甘いティエリア。

その蜂蜜に溺れる、蝶か蜂のロックオン。

二人を結んだ赤い糸は、すでに切れてしまった。

「ロックオン・・・・・いない・・・・・」

ボロボロになったジャボテンダーを抱きしめて、ティエリアは大破したトレミーの、ロックオンの部屋だった空間にいた。

部屋の物は少ない。

すでに、大破したトレミーから出されて、新しく作られるというトレミーの二号機に移されている。衣装や日用雑貨などが、移された。

今度は制服を着ることになっている。

提案したのはティエリアだ。皆の意見を聞いてデザインした。

ティエリアが纏う色は紫。

髪の色と同じ、紫紺だ。

ロックオンは、緑色になる予定だった。ニール・ディランディは。

今はまだ、ピンクのカーディガンにズボンという、少し少女ちっくな色を取り入れた普段着の格好をしていた。

「いない・・・・・」

「いない、いない」

ハロが、ティエリアの周囲をはねている。

「なぜ・・・・・僕を置いていった?」

疑問にしかならない。

あの人が選んだ選択肢。それは、ティエリアにとって残酷なものだった。

恋人同士だったのに。彼は死を選んだ。

否、初めは死する危険があるとはいえ、生きて帰還することを望んでいたのだろう。

ティエリアの望みは叶わず、ロックオンは帰らぬ人となってしまった。

眼鏡を外して、カーディガンの裾でごしごしとふいた。

壁に亀裂の入った部屋は、もうどこにも人の生活臭というものがなかった。

涙はもう零れない。

あの人が帰ってこないことに、神経が麻痺してしまったのかのように、部屋を動けないでいた。

遺品は、柩にいれられて宇宙に葬られた。

ただ一つ、ハロだけが形見である。

形見を多く望んではいなかった。あればあるだけ、それに依存してしまいそうで。

彼がまたひょっこり帰ってくる。そんな気になりそうで。

「赤い糸か・・・・ふふ、僕らにはなかったな、そんなもの。本当にあるのなら、あなたはここにいるはずだ」

恋人同士の赤い糸があるのなら。

切れずに、まだ彼はここにいただろうか。

分からない。

これが運命というならば、受け入れるしかないのだ。

これが現実。


「さよなら」

やっと、重い足をひきずるように、部屋を出る。ハロを従えて。

ボロボロになったジャボテンダーをその部屋のベッドに置いていった。すでに新しいジャボテンターを買い込んでいる。

さよならの証のように。

花を一輪だけ室内の床に添えた。


せめてもの、レクイエム。

眠れない魂となってしまったあなたへの、鎮魂歌。

せめて、静かに眠ってほしい。

「墓参りにいこう・・・・あなたはそこにいるか?」

せめて、魂がディランディ家の墓に還っていることを望んで。


墓参りにいくのは、辛い。

だが、あなたがいないことを認める証でもある。

これからのソレスタルビーイングを導くのは自分しかいない現状、いつまでも過去のことを引きずってはいられない。

前を向いて歩かなければ。


でも。

でも、せめて少しだけあなたがいたことを思い出させてほしい。

あなたがなしえなかったことを、成し遂げてそして世界を変革へと導く。

扮装のない社会へ。

あなたが憎んだテロも起きない世界へ、導いていくのを、見守っていてほしい。


赤い糸はもうないけれど。

見えない絆がある。

あなたはもういないけれど。

あなたといた記憶がある。


あなたに毒されすぎたな、僕は。

仕方ない。


「行こうハロ。未来へ」


あなたと一緒に過ごした時間、記憶、感触。何もかも、忘れない。


だから、あなたも忘れないで。

たとえ赤い糸がなくても。もう切れていても。


忘れないで。

あなたには、僕がいたということを。


そして、これからも僕は生きて、あなたと共に歩んでいくことを。





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