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院生時代の部屋25

「お見合いすることになった」

「そうか。お幸せに」

京楽の言葉に、興味なさげに返すと、その手をとられた。

「逃げないで。ちゃんと僕の目を見て」

「お見合いするんだろうが。俺じゃなくて、その上流貴族の姫君の写真でも見てろ」

「ちゃんと僕を見て」

京楽に顔を見られたくなくて、手をふり払った。

「浮竹!」

「お見合いするんだろう!俺とのことは遊びだったんだろう!もう、行け!」

そういって、荷物をまとめると浮竹は、相部屋の相手の部屋があいている友人の部屋に逃げた。

「浮竹、京楽と喧嘩したのか?」

「どうして?」

「だってお前・・・・・泣きはらした目をしている」

図星をさされて、浮竹はあいている方のベッドに倒れこんだ。

「あのバカ、散々俺を好きだの愛してるだの言っておきながら、見合いすると言い出した」

「想いを、きちんと告げたほうがいいんじゃないか?このままだと、京楽のやつ本当に結婚してしまうぞ?」

すでに、大半の友人たちが気づいていた。

浮竹は、京楽に毒さて、墜ちてきていると。相思相愛になるのも時間の問題だと。

「知るかあんなバカ。結婚するなり廓にいくなり、好きにすればいい」

「でも、友人として言わせてもらうが、京楽のお前への愛は本物だぞ?お前も、だから京楽の傍にいたんじゃないのか」

「もういいんだ・・・・・・・」

「よくない!」

友人は立ち上がった。

「京楽呼んでくる」

「おい、待て!」

友人を伴って、京楽がやってきた。

「ごめん、少し手荒になるよ」

そう言って、浮竹の体を肩に乗せる。

「京楽!」

「浮竹・・・・・たまには、素直になったほうがいいよ」

見透かされていた。かーっと、顔中が朱くなる。

「お前なんかさっさと結婚してしまえ」

「うん。浮竹と結婚する」

「あの上流貴族の姫は・・・・・」

「伝書鳩飛ばして、バーカバーカ誰がお前の夫になるかこのくそ女って文章を、ね」

そんな文章、上流で貴族なくとも見合いの相手がみたら破談になるだろう。

「ばか・・・・・このばか・・・・」

浮竹の、翡翠の瞳から涙が零れ落ちた。

自室に戻り、ホットココアを入れられた。

「少しは落ち着いた?」

泣きはらした目をしている浮竹は、痛々しかった。

「ごめんね、不安にさせて」

その目元に何度もキスされた。

浮竹は、京楽に自分からディープキスをした。

「はぁっ・・・・・・・」

「どうしたの。君からなんて、珍しいね」

「約束しろ。俺を置いてどこにもいかないと」

「!」

真剣な表情の翡翠の瞳と黒曜石の瞳が混じり合う。

浮竹の翡翠の瞳は、光彩にオパールの虹色の輝きを放っていて、とても綺麗だった。

甘い花の香がする。

「約束する・・・・・君を置いて、どこにもいかない」

「共に学院を卒業して、護廷13隊に入り、いつか隊長にまで上り詰めるんだ」

「約束するよ。その時も、変わらず君の傍にいることを」

また、ぽろりと翡翠の瞳から涙が零れ落ちた。

「どうしたの?」

「安心したら、涙腺が決壊した」

ぽろぽろ流れる涙を吸い上げて、京楽は浮竹を押し倒す。

「大好きだよ・・・・・十四郎」

「京楽・・・・」

そのまま、二人は丸くなって眠った。

浮竹は、結局想いを告げないままだった。

今はただまどろむ。このぬるま湯のような関係のままで。


いつか、互いがいなければいけない比翼の鳥になる。

そんな予感がした。

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