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院生時代の部屋32

すんすん。

運動して汗をかいたところを、京楽が近くにきて匂いをかいでくる。

立派な変態行為であるが、慣れてしまっている浮竹は、とりあえず京楽を蹴り転がした。

「君って、汗かいてても花の香のほうが勝るんだね」

「そうなのか。自分ではわからない」

自分の肌や髪から自然と放たれる、甘い花の香に嗅覚はもう麻痺していて、かいでも何も感じなかった。

「もっとかがせてーーー」

「断る!」

京楽を踏みつけて、浮竹は寮の自室に入ると、さっと汗を流して、院生の服も新しいのに変えた。

昼休みだったので、本当に汗を流しただけだ。湯あみもしたかったが、時間がなかった。

食堂にいくと、京楽が待っていた。

「Bランチ定食で」

「同くBランチ定食でお願い、綺麗なお姉さん」

「あらやだ京楽ちゃんったら、大盛ね」

ただでさえボリュームがあるのに、大盛にされてよく食べきれるなと、浮竹は思った。

同じ席に座り、向かい合って食べる。

今日は野菜のサラダがメインの、ヘルシーな食事だったので、浮竹も残すことなく食べれた。

「え、君の食べ残しがない!?くっ、せめて使っていたそのフォークを!」

フォークをぺろぺろしだす変態の脛を蹴る。

蹴ったところで動じないので、浮竹ももうかなり慣れた。

変態京楽。その名の通り、変態である。ただし、浮竹オンリー。

京楽から変態行為を取り除けば、紳士が残るが、変態を取り除くことは不可能なので、浮竹もその対応にたまに困る。

この前は、ベランダで干していたお気に入りの下着をもっていかれた。

今は、浮竹印の抱き枕があるくらいで、浮竹グッズは封印されている。

きっと、浮竹がいない間に浮竹グッズを出して悦に浸っているであろうことは、明白である。

「授業に遅れるから、いくぞ」

京楽は、フォークをなめるのをやめて、食器類を洗いものいればに置くと、浮竹に急かされて教室へと移動した。

今日の午後は、鬼道の練習だった。一度教室に集まり、鬼道の詠唱を覚えさせられて、運動場にでて、的に向かって打つ。

「破道の4、白雷」

詠唱破棄で、的を真っ黒焦げにした浮竹に、教師も舌をまく。

「破道の4、白雷」

同じく、京楽も詠唱破棄した。的は黒焦げになった。

「さすが浮竹と京楽だ。教師でも、もう鬼道の腕は叶わんな」

「そんなことありません、先生」

他の生徒たちは、ちゃんと詠唱を行って、的がやっと焦げる程度だった。詠唱をすると、周囲に被害が出るので、わざと詠唱破棄したのだ。

「まだ教わっていない鬼道もありますし、縛道なんて半分しか使えません。回道も習いたいし・・・・・・」

「おいおい、もう縛道の半分も詠唱できるのか。凄いな」

浮竹も京楽も、鬼道が得意というわけではない。ただ突出した霊圧のお陰で、威力が他の生徒の何倍にもなるのだ。

すでに3回生にも関わらず、席官入りの話が出ていた。

「回道は・・・・得手不得手があるからな。今後の授業で学んでいくが、あまり使えなくても気落ちするんじゃないぞ」

「はい」

「ふあ~」

浮竹が教師と真面目な話をしている間、京楽は眠そうにずっと佇んでいるだけだった。

「先生に失礼だろう」

浮竹の蹴りが、京楽のけつにヒットした。

「あいた!」

「全く、お前は・・・・・」

その後も鬼道の授業は続いた。まだ学んでいない鬼道の詠唱を覚え、放つ。やはり、他の生徒の数倍の威力があった。それでも、威力を抑えたつもりであった。でも、風がおこり、他の生徒の一人が倒れて腰を打った。

すぐに、回道の得意な子が傷を癒してくれたので、大事に至らずにすんだ。

「なんだかねぇ。思いっきり、鬼道詠唱して、威力だしてやってみたいね」

「ばか、そんなことしたら授業じゃなくなるだろう!」

本当なら、高学年に移動するほどの成績なのだが、当時の学院には、スキップ制度がなかった。

一日の授業が終わり、鬼道ばかりを使っていた浮竹は、他の生徒の指導も任されて、疲れていた。一方の京楽は、授業の途中からさぼってしまい、何処かへ行ってしまった。

浮竹のお陰でみんなけっこうすんなりと破道の4白雷を覚えて、授業が早めに終わった。

湯あみをしよう。そう思って、寮の部屋に戻ってきたのだが、鍵がかかっていた。またかと思って、心を落ち着かせて、合鍵で部屋の中にはいる。

この前、盗まれた下着を、京楽は頭にかぶっていた。

「・・・・・・・破道の・・・」

「ま、待った!このまま鬼道を受けたら、僕のコレクションのパンツまで黒こげになってしまうよ!部屋中も滅茶苦茶になるよ!この前みたいに、鬼道を室内で使って怒られたくないでしょう!?」

その言葉は最もだった。

「歯をくいしばれ」

蹴りがくると身構えていた京楽の頬を、ビンタした。10往復ビンタされて、はれがあった頬を手に、京楽は嬉しそうにしていた。

「浮竹の愛を感じる・・・・・いつもの蹴りでも愛を感じるけど、今回は更に愛を感じる」

だめだ。

こいつ、変態だった。

蹴りもビンタもパンチも、愛だと感じ取れるその性分が凄い。

「はぁ・・・・誰か、部屋入れ替わってくれないかな」

退学した友人のいた相部屋は、すでに他の人が入っているので、泊まれない。

ふと、パンツを置いて、真面目な顔をされた。

トクンと、胸が高鳴る。

「君が好きだよ・・・・浮竹」

「んっ」

触れるだけのキスをされて、抱き締められた。

何度かキスしているうちに、パンツを頭にかぶっていたことがどうでもよくなってくる。

今回は、俺の負けということにしておこう。

「キスもハグももういい。湯あみしてくる」

京楽は、浮竹の裸を見れるチャンスなのでそわそわしていた。でも、浮竹もバカではない。脱衣所に鍵をかけるようになった。最初はそれを壊していたのだが、浮竹が怒るので、壊さなくなった。

浮竹が、鍵を開けて中から出てくる。
少し伸びた髪から、雫がぽたりと落ちた。

「風呂上がりの浮竹の匂い~~~」

スンスンと臭いをかいでくる京楽を無視して、ベッドに横になった。食堂で弁当を買ってきたので、夕食は後にとることにする。

「疲れた。少し眠る」

「おやすみ」

当たり前のように、浮竹のベッドに寝転がってくる京楽。最近寒いので、湯たんぽ代わりにしているので、浮竹も文句を言わなかった。

ふと、京楽は真面目な顔で、眠った浮竹に口づける。

「道化である限り、君は迷わなくてすむ・・・・だから、道化を演じる・・・・なんてね」

にんまりと笑みを零して、やっぱり京楽は京楽なのであった。


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