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黄金の鎖Ⅱ

百貨店に入ると、ルキアは見るものが全て珍しいのか、キョロキョロしていた。

「おい、はぐれるといけねーから、手を繋ぐぞ」

「ななななな!こんな人前で!」

「別にいいだろ、手を繋ぐくらい」。

尸魂界に戻ることも多いルキアと、一緒に過ごす時間も減ってきた。なんでも、ルキアは13番隊の副隊長になるんだとか---------。

離れていても心は重なっている。

でも、共にいれる時間があればそれにこしたことはない。

レストランに入って、ルキアの好きな白玉あんみをおごってやると、ルキアはとても美味しそうに食べていた。

「俺にも一口くれよ」

「いいぞ。はい、あーん」

口をあける一護に、白玉あんみつをスプーンでひとさじだけすくって、与えると、一護がこういった。

「なんか俺たち、恋人同士みたいだな」

「たたたたたたたわけ!何を言う」

真っ赤になったルキアがかわいかった。

服を中心に百貨店で一通りのものを買い込んで、一護が少し離れた隙に、ルキアがいなくなっ
た。

心配して探し回ると、宝石店でショーウィンドウごしに宝石を見ているらしかった。

「どうしたんだよ」

「いや・・・・綺麗だなと思って」

尸魂界に戻れば、宝石などいくつでも身につけれるはずなのに。

「アメジストが好きなのだ。私の瞳のようだと、兄様が・・・・・・」

「すみません、これみせてください」

「い、一護!?」

すぐに店員がやってきて、ショーウィンドウの中から、アメジストのブローチを見せてくれた。

「今キャンペーン中で、30%引きですよ」

値段を見る。

一護は、財布を取り出した。

「買います。つけるんで、包装はなしで」

「一護!?」

「欲しいんだろ?」

「だが、貴様の金が・・・・・」

「黙ってろ」

包装せずにもらったブローチに飾られているアメジストは、ごく普通だった。まだ学生である、一護のバイト代でも買えるような、お手頃のものだった。

「つけてやるから、じっとしてろ」

一護は、ルキアの心臓の位置に、ブローチをつけた。

「似合ってるぞ」

「たわけ・・・・・・」

ルキアは真っ赤になっていた。

「手を、繋ぐのであろう?」

百貨店の外に出ても、繋がれたままの手は離れない。

黙ったまま、紅葉のはじまった街路樹をぬけて、公園にまでやってきた。

「その・・・・今日は、いろいろとありがとう。・・・・一護、私は貴様のことがずっと・・・・・・・」

言葉は、口づけに飲み込まれた。

大きく見開かれたアメジストの目が、閉じていく。

「んっ・・・・・・」

舌がからまりあう。その感触に、ルキアの体から力がぬける。

「おい!」

「た、たわけ!初めてなのだぞ!もっと優しくせぬか!いきなり、舌など・・・・」

言って、真っ赤になった。

「さっきの続きだ。俺はお前が好きだ、ルキア。お前も俺が好き、で、いいんだな?」

一護の言葉に、耳まで真っ赤になって、ルキアはアメジストの目を伏せた。

「こんなたわけを好きになるなど・・・・・・」

でも、否定はしなかった。

一護は荷物をベンチに置くと、ルキアを抱き上げた。

「ひゃあっ」

「軽いな」

抱き上げて、くるくると回る。

「め、目が回るではないかっ!」

「すげー嬉しい。お前が、俺のこと好きでいてくれて」

「たわけ!私はずっとずっと前から、それこそ尸魂界で救われた頃から・・・・」

ルキアを抱き締めた。

シャンプーの甘い香りがした。

「俺は、出会った頃から好きだった」

「なななな」

「霊圧を失って、お前が見えなくなって・・・・でも、絆は断ち切れることはなくて・・・・」

一護は空を見上げた。

「貴様には、井上がおるのであろう?」

「ただの友達だ」

きっぱりと断言されて、ルキアはまた朱くなった。

「誰にでも、あのようなことを・・・・・」

「お前にだけだ。お前が好きで、お前だけを見ていたい。傍にいたい」

「たわけ・・・・私は死神で、貴様は人間だ・・・・」

「それでも、一緒にいたい。お前の答えは?」」

「たわけ、そのようなこと・・・・」

ルキアが、一護の背中に手を回す。

言葉では恥ずかしくて言えなかったけれど、背に回された手で想いは全てわかった。

「今日は、記念日な?」

「なんのだ」

「俺とお前の想いが通じた、付き合う記念日」

「付き合うなど・・・・」

「いやなのか?俺はお前が好きだ。付き合いたい」

「でも、私には任務があり、毎日のようにお前の傍には・・・・・」

「それでもいいんだよ。心が重なっていれば、少しくらい遠くても。お前は嫌なのか?」

「誰が嫌だといった!」

風がでてきた。ひらひらと、銀杏の葉が落ちてくる。

「私は誰よりも貴様のことを想っている!この想いは、誰にも負けぬ!」

「なら、いいじゃねーか。9月30日。俺たちの記念日な?」

「たわけ、勝手に記念日など作りよって・・・・」

寄り添いあう。

少し寒くなってきた。秋も深まりつつある。

一護は、着ていたコートをルキアに着せた。

「帰ろうか。家に」

黒崎家に、帰ろう。

銀杏が、また一枚、葉を落とす。

「貴様が好きだ、一護」

ルキアは、アメジストの瞳ではっきりとそう言った。

「ああ、知ってる」

「たわけが・・・・乙女の告白くらい、ちゃんと聞け」

「お前、乙女って年齢か?150歳こしてるんじゃなかたっけ」

「たたたたたわけ!私はまだまだ乙女だ!年齢など関係ない!」

「そうだな。たとえ死神と人間でも、この絆は切れない」

一度。出会いという名のもつれを経験し。再開という名のさらなるもつれを経験し。

複雑にからみあった鎖は、断ち切られることはない。

それは、黄金の鎖。







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