ツインテール
「「浮竹隊長、お似合いです!」
朽木ルキアは、チャッピーのついた髪ゴムで、浮竹の髪をツインテールに結ってしまった。
「うーん」
浮竹は、しぶい顔をしていた。
かわいいと、部下のルキアは言ってくれる。
だが、本当にかわいいのだろうか?分からない。
いい年をしたおっさんが、長い髪をツインテールにして、はたしてそれが似合うのかどうか。
だが、実年齢より100歳は若く見える浮竹に、ツインテールは似合っていた。
浮竹が自分で大嫌いな白い長い髪を、後ろで結うことはある。だが、基本は背中に流している。
「似合っているのか?」
「はい、とてもお似合いです!」
ルキアは、紫の瞳をしていた。とても珍しい色だ。
朽木家の養子になって、すぐに真央霊術院を卒業し、13番隊に入ってきた。面倒は、海燕が見てくれていたが、その海燕が亡くなって数十年が経過していた。
本当なら、ルキアは席官クラスの実力をもっている。だが、義兄である朽木白哉によって、席官にしないようにと、強く訴えられていた。いろいろ根回しがされていたせいで、ルキアは一般隊士の死神だった。
だが、浮竹はルキアのことを好んでいた。そのさっぱりした性格が好きで、よく傍においていた。
「自分ではよくわからん。暇だし、盆栽の手入れでもしてくる」
雨乾堂の外に出て、浮竹は趣味の盆栽いじりをしだした。
その腕は・・・・・・・はっきりいって、へぼい。
変な形をした盆栽に囲まれて、浮竹は少しご機嫌になった。
「やっぱり、盆栽はいいなぁ。この至高の趣味を、何故誰も分かってくれないんだろう」
親友であり、恋人である京楽も分かってくれない。
「浮竹ぇ。また、かわいい恰好してるね?ハグしていいかい?」
そう言葉がかけられた次の瞬間には、京楽の腕が浮竹の胴に回っていた。
「なんだ京楽。気配を消して、近づくなんて悪趣味だぞ」
霊圧を消して近づいて、言葉の通り軽く抱き着いて、ハグをしてくる京楽に、浮竹は弄っていた盆栽の枝を、ちょきんとはさみで切ってしまった。
「ああ、ここは切るべきではなかったか・・・・・・・」
抱き着いてくる京楽を無視して、浮竹は盆栽をいじり続けた。
「相手してくれないなら、こうしちゃうよ」
「ひゃっ」
うなじを舐めあげられて、ちょっと変な声を零してしまった。
「隊長?」
雨乾堂から顔をのぞかせたルキアが見たのは、ツインテールの髪をした浮竹を抱きしめて、浮竹のうなじにキスをしている京楽の姿だった。
「はうっ」
ルキアは、真っ赤になった。見物人であるルキアに一瞥をくれただけで、京楽の動きは止まらない。
背後から深く口づけられて、足と足の間に、膝をいれてくる京楽の動きに、貞操の危機をかんじた浮竹は、その頭をはたいた。
「部下が見ている前で、盛るな!」
「いけずー」
「あほかっ」
「京楽隊長!いいもの見せてもらいました」
ぐっと、鼻血を出しながら、OKサインをだすルキアに、京楽が声をかける。
「ルキアちゃんがしたいのかい、この髪型」
「そうです」
いつもは男みたいな口調のルキアだが、上司の前ではですます口調になる。
「最高だよ、ルキアちゃん」
褒められて、ドクドクと鼻血を垂らしながら、ルキアは言った。
「チャッピーの髪ゴム、限定販売ものなんです。今じゃ、人気がありすぎて手に入りません。兄様が、この前買ってきてくれたのです」
「あの白哉がねぇ」
ルキアの義兄である朽木白哉は、変わった。ルキアが尸魂界の双極で処刑になりそうなのを、死神代行の黒崎一護が救いだしてから、変わった。
今までは、冷たい態度をとっていたが、愛しい義妹に、静かに夢中になっていた。
「これは女性死神協会のため!」
ぱしゃりと、浮竹に抱き着いたままの京楽とのツーショットを、隠し持っていたカメラで撮影するルキア。
「朽木、写真とるなっ!」
「浮竹隊長、それではお暇させていただきます!京楽隊長、いいもの見せてくれてありがとうございました!」
瞬歩で去っていくルキアを、追いかけようにも、後ろから羽交い絞めみたいにされている。
「京楽っ、離れろ」
「無理。かわいいよ、浮竹。僕も、ルキアちゃんの撮った写真、焼きまわししてもらおっと」
「あほかっ!」
「全部、かわいい浮竹が悪い」
「やめっ・・・・・・」
浮竹の声は、京楽の口づけで、無理やり黙らせられた。
数時間後。
ツインテ―ル姿のままで、尸魂界を歩いている、浮竹の姿があった。隣には、やけに嬉しそうな、京楽が。
浮竹は、溜息を零した。
ツインテールの姿のまま、1日を過ごさないと、ルキアにもっと過激な姿を見せさせると、半ば脅しに近いことを言われて。
ツインテールがかわいいと、通りすがる死神たちが口にする。
道行く死神たちは、特に女性が、黄色い声をあげていた。
「浮竹隊長に、京楽隊長!写真、目の保養にさせてもらいますね!」
偶然通りかかった松本乱菊が、ぶんぶんと、浮竹と京楽に手を振ってくる。
「松本、やめんか・・・・・・・・浮竹隊長、どうした。その変な髪型。かわいいじゃないか」
「日番谷隊長か・・・・日番谷隊長も、ツインテール、してみるか?」
「いや、無理だろ。俺の髪じゃ、短すぎる。もっとも、長くてもそんなかわいい髪型にするつもりはないがな」
「やっぱり、かわいいのか」
自分より、何百歳も年下で、かわいいと表現できる日番谷隊長にまでかわいいと言われて、浮竹はげんなりした。
真っ白な髪には、チャッピーのぬいぐるみの髪飾りのついた髪ゴム。
「今度は、ポニーテールにでもしようね」
京楽は、かわいい姿の浮竹が見れて、それを自慢げに他人に見せれて、ご機嫌だった。
「あー。髪、切りたくなってきた・・・・・・・・」
浮竹は、ツインテールを揺らしながら、空を見上げた。
空は、どこまでも広く、青かった。
その後、情勢死神協会が発行する会員誌に、ルキアの撮った写真が掲載され、その号は飛ぶように売れて、売り切れになったらしい。
それはまた、別のお話。
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