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あふれ出る想い

一護と付き合いはじめて、4か月が経とうとしていた。

ルキアはその間に一度尸魂界に戻り、13番隊の副官として忙しく勤務していた。先の大戦で浮竹隊長をなくした13番隊だけが、隊長がいなかった。

「もう現世には戻れぬのであろうか」

執務をこなしながら、ふと思う。

ただ忙しい毎日があるだけで。

一護に会いたい---------------。

気づけば、その心だけが大きく動いていて、執務にも支障をきたしていた。

「これは重症だな・・・・」

義兄である白哉に相談してみた。恋次に相談すれば、「会いに行けばいいじゃねーか」と、ただそれだけを言われそうで。

「兄様・・・・・・」

「ルキア。時は有限だ。幸せをつかみたいのであれば、私は邪魔をしない」

白夜の言葉は、思っていたのと違った。

「もっと死神としての誇りと責務を持て」

きっと、こう言われると想像していたのだ。

「兄様。兄様は、私が現世にいって一護に会うのを、ダメとは言わないのですか」

「ルキア。時は有限だ。私が緋真を愛したように、お前に愛する者ができたのなら、その者と結ばれてほしいと、私は思う」

「兄様!」

気づけば、白哉に抱き着いて涙を零していた。

「行ってまいります、兄様。またすぐに戻ってくるでしょうが・・・・・・時間は有限であることを、体験しにいってまいります」

白哉はただ静かに

「そうか」

と頷いただけだった。


穿界門をあけて、現世への道をたどる。2月ぶりになる。早く早く、一護に会いたい--------------。

変わらぬ、空座町に降り立って、一護の霊圧を探す。

黒崎医院に、一護の霊圧があった。だが、その隣に知っている霊圧があった。

「井上・・・・?」

とにかく、会いたくて会いたくて。

伝令神機で一護の携帯とやり取りはできるのだが、それさえも絶っていた。

仕事に支障をきたすと。

こんなことなら、もっと早くから連絡をとればよかった。

「一護!」

一護の部屋の窓ガラスをあけて、その小さな体で部屋の中に入ると、その光景に言葉を失った。

一護は、井上と抱き合っていたのだ。

「一護・・・・すまぬ、邪魔をしたな」

アメジストの瞳からたくさんの涙を流して、ルキアは部屋を後にした。

「おいまて、ルキア!勘違いすんな!」

一護が何かを叫んでいたが、もう聞こえなかった。



「一護の大ばか者!うつけが!」

近くの公園に降り立って、子供のように泣きじゃくった。

「私より、井上をとるのか?私たちは、付き合っているのではなかったのか?私のこの思いはただの自惚れなのか?」

泣くだけ泣くと、すっきりした。

段々腹が立ってきた。

こんなにも愛しく思っているのに、あろうことか井上に抱きつくなど・・・・これは、蹴りではすまさぬ。



コンコンと、窓をたたいた。

窓はすぐにあけられて、部屋には一護しかいなかった。

「井上はどうしたのだ」

「帰ってもらった」

「たわけ、貴様は私という者がありながら、井上と浮気するなどいい度胸だな」

まずは、一護の頭を蹴った。

「いてててて。だから、違うって」

「何が違うのだ」

ルキアは、一護のベッドに腰かけた。

「前から、井上に好きだっていわれてたんだ」

「え」

思ってもいなかった言葉に、アメジストの瞳に涙がたまっていく。

「でも、俺にはルキアがいるからって断った。最後に抱きしめてくれっていうから、さっき抱き締めてた。俺なりに、井上とけじめをつけたつもりだったんだ。でも、お前が泣くくらいなら、止めておればよかった」:

「貴様は、井上を好いておらぬのか?」

「俺にはルキアがいる」

アメジストの瞳から、ポロポロと大粒の涙が零れた。

「お前が今でも私を想っていると、そう考えてもよいのだな?」

「ああ、当たりまえだろ」

暖かな一護の腕に中に包まれて、ルキアは涙をふいた。

「このたわけ!」

一護の頭をまた蹴った。

「さっきから、頭蹴るなよ!」

「公園で泣きまくったのだぞ。貴様を井上にとられたと思って」

「だから、誤解だって」

ルキアを抱き締めて、泣きはらして朱くなった目元に口づけられた。

「おかえり、ルキア」

「ああ・・・・ただいま」

滞在許可は3日。

でも、これからは伝令神機を使って一護とやり取りをしようと決めた。

「これが私の伝令神機・・・・いわゆる携帯の番号で、これがメルアドだ」

「死神って、思ってたよりハイテクなんだな」

「たわけ!虚の位置を把握したりするのに、伝令神機のようなものがないと不便であろう!」

「そのアメジストの首飾り・・・・まだ、してくれてるんだな」

「たわけ。貴様からもらった大切なものだ。私が手放すわけがなかろう」

「好きだぜ、ルキア」

「私も貴様が好きだ」

唇と唇を重ねると、一護の唇が首に移動した。

そのまま、死覇装の襟元をはだけさせられる。鎖骨の位置にキスマークを残していく。

「んっ、一護・・・・・・」

「もう少し、お前に触れていいか?」

「好きにしろ・・」

井上に比べれば、貧乳でしかない胸に、一護の手が落ちてくる。やわやわともみしだかられて、甘い声をあげていた。

「ああっ、一護っ!」

胸の先端をはじかれると、背中に電流が走ったような刺激がやってきた。

「んっ・・・・・これ以上は・・・・・・」

「分かった」

一護とて、辛いだろうに、また我慢を強いらせてしまう。

でも、体を繋げるのが怖いのだ。
死神と人が結ばれるなど、ありえないことで。

「待ってるから。お前が、俺のものになってくれる日を」

顔から、火が吹き出そうなくらい恥ずかしかった。

乱れた死覇装を整えて、3日間滞在するのだと告げると、大学生である一護は学校もバイトも休むといいだした。

何度いっても聞かないので、好きにさせることにした。

それからの3日間は、今まで会えなかった分を補うかのように過ごした。

「愛している一護」

「俺も、お前を愛している」

一つのベッドで、抱き合いながら眠った。

買い物にも出かけたし、季節外れだが海にもいった。

3日は、あっという間に過ぎてしまった。

「またな、一護」

「ああ、またな」

穿界門を通って、尸魂界に戻ってきた。

(一護、これからはメールで連絡をとる)

そう送信すると、すぐに着信がきた。

(たとえ離れていても、俺たちの絆は消えない)

(たわけ、当たり前であろう)

(恋次がお前のことを好きなのは知ってるな。俺がいないからって、恋次とできるんじゃねーぞ)

(たわけ、私には一護、貴様がいる。恋次のことは好きだが、恋愛対象としては見ていない)

(ほんとだな?その言葉信じるからな?)

(そういう貴様も、井上と浮気するなよ)

(しない。俺には、ルキアがいるから)

「ふふ・・・・・・もっと早くから、こうしていればよかった」

二か月も音沙汰もなくしているより、メールでいいからやり取りをすればよかったのだ。

「覚悟していろ一護・・・・・私も、もう心に決めた。次に貴様と会う時は・・・私の、「初めて」をくれてやる」

それが、たとえ禁忌だとしても。

もう、動きだした時は止まらない。

体を重ねることで、何かを失うとしても。

もう、あふれ出た想いは、とまらない-----------------------。






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