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翡翠は誘う

朝起きると、腕の中に浮竹がいてびっくりした。

そうだ、昨日一人で眠るのが怖いという浮竹と同じベッドで眠ったのだった。

「おはよう、浮竹」

揺さぶっても、返事はなかった。

苦しそうに呼吸をしていて、おかしいとおもって額に手を当てると、すごい熱だった。

「浮竹!」

「きょうら・・・く・・・・・?」

「どうしたの!誰かに薬でも飲まされたの!?」

「違う・・・俺、病弱で・・・・肺を患っていて発作おこしたり・・・熱出したり・・・・」

そういえば、出会ってしばらくすると浮竹は言っていた。自分は病弱で、肺の病を患っているせいで吐血することがあると。

全然そんな様子を見せないので、忘れていたのだ。

「厨房にいって、氷もらってくる。薬はあるかい?」

「棚の奥に・・・・・」

「分かった」

京楽は、急いで厨房に行って氷をもらってくると、それを砕いてビニール袋にいれてタオルで包み、それを浮竹の額の上に置いた。

浮竹は、それが気持ちいいのか、翡翠の瞳を閉じていた。

「薬、一人で飲めるかい?」

「ん・・・飲める・・・・ごほっごほっ」

浮竹が咳をしだした。

苦し気に身を捩っているので、背中をさすっやっていると、浮竹は何かを言おうとしていた。

多分、ありがとうと。

「ごほっ!」

ごぼり。

音を立てて、浮竹が大量に吐血した。

「浮竹!」

服が血で汚れるの構わずに、浮竹の細い体を抱き上げて、医務室まで駆け足で運んだ。

「先生いますか、浮竹がーーー!」

運のいいことに、その日医務室を担当していたのは4番隊の死神だった。

「そこに寝かせて。回道でなんとかしてみよう」

回道で手当てを受けて、青白くなっていた浮竹の頬に、赤みがさしていく。それにほっとしていると、死神は言った。

「この子は浮竹君だね。肺を患っての発作は、学院にきて初めてのようだが・・・残念ながら、病自体の完治は無理だ」

「そんな・・・・・」

「この子も発作には慣れているようだし・・・・発作自体はもう大丈夫だ」

とりあえず、ほっとした。

「ここで寝かせてもいいけど、薬とかあるなら自室のほうがいいだろう。すまないが、この子を部屋まで運んでやってくれるかい?」

「はい」

「ああ、君!京楽君だっけ・・・・浮竹君もだけど、衣服にすごい血がついているから、ちゃんと着替えておくように。君は同室だったね?浮竹君の着替えもできればお願いするよ」

「はい・・・・・・・」

浮竹を抱き上げて、自分の部屋まで戻る。

「すまない・・・・・」

発作から回復した浮竹が、弱弱しく謝ってきた。

「いいから、全部僕に任せて」

まず自分の衣服を着替えた、それから浮竹の着ている服を脱がせて、新しい、学院で至急されている服に着替えさえていく。

浮竹の裸体をみていると、その艶めかしい白さに、驚くと同時に唾を飲み込んでいた。

いけない。

相手は病人だ。

それに、この想いを知られてはならない。

知られたら、きっと傍にいられなくなる。

着換えおわらせて、浮竹のベッドに横たえた。板張りの床や壁に飛び散った浮竹の血を、ぬれたタオルでぬぐっていく。

「すまない・・・・」

「いいから。まだ熱が高いようだし、寝てなさい」

京楽は、浮竹に解熱剤も含む薬を飲ませて、ベッドに横にさせた。

結局、その日は浮竹だけでなく、京楽も学院を欠席した。京楽が無断欠席するのはいつものことだが、優等生の浮竹が欠席をするなんて珍しくて、連絡を入れたにも関わらず、知人がお菓子をもっておしかけてきた。

それに、京楽が激怒した。

「相手は病人だよ!遊びにくるな!」

「おお怖い。まるで、浮竹が自分のものと思っているみたいな怒り方だ」

「あははは。門倉のやつの気持ち、わからないでもないからなぁ。浮竹は綺麗だから」

「色子と間違われたんだって?傑作だな」:

浮竹の周りでも、あまり評判のよくないグループの戯言だったが、気づけば京楽は、浮竹を侮辱した男たちを殴り倒していた。

「いってぇ、何するんだ」

「こいつ、きっと浮竹にホの字なんだよ」

「うあーまじかよ、いこうぜ、ホモがうつる」

男たちは、散々悪態をついて去っていた。

「二度とくるな、屑が・・・・・・」

吐き捨てると、薬を飲んで熱が少し下がった浮竹が起きていた。

「好きなように言わせておけばいい。俺は慣れてるから」

「でもね、君・・・・・・」

「いいから。京楽こそ、不快な思いをさせてしまったな・・・・・・すまない」

「まだ熱あるんだから、寝てなさい!」

浮竹をベッドに追いやると、浮竹が抱き着いてきた。

「浮竹?」

「京楽・・・・・・・俺を、嫌いにならないでくれ」

「何言ってるんだい!好きになることはあれど、嫌いになんてならないよ!」

「そうか・・・・よかった・・・・・」

もう一度、浮竹は解熱剤を飲んだ。

安心したのか、浮竹は処方されている解熱剤に含まれる睡眠薬の成分のせいで、スースーと静かな眠りについてしまった。

「君を好きになることはあれど・・・・・」

熱で潤んだ瞳と、熱のせいで上気した頬で嫌いにならないでと言ってくる浮竹に、欲情している自分に気づいた。

「くそ」

浴室にいって、手早く処理するが、まだ足りなかった。

京楽は、色街に出かけた。

そしていつもの蒼を買った。

「好きだ、浮竹・・・・」

「ああん、もっと」

「愛してる、浮竹」

「もっと奥まできてよ、京楽の旦那」

遊女の手練手管で、京楽はあっという間に精を搾り取られた。

「京楽の旦那、金余ってるんでしょ?あたしを身請けしてよ」

「その気はないよ・・・・・」

「けち。今度から、あたしを抱かせてやらない」

「いいよ、それでも。新しい子、見つけるから」

「ああん、嘘だよ京楽の旦那!また、あたしを買いにきておくれ」


すっきりした気分帰宅した。


部屋に戻ると、完全に熱の下がった浮竹が待っていた。

「色街にいっていたのか?」

「そうだよ

「そうか・・・・・」

何処か寂しく、悲しそうに見えるのは僕の気のせいだろうか。

ねえ、浮竹。

君は太陽のような翡翠だ。

その翡翠の瞳で誘ってくるのは、やめてくれなかい?

「京楽?」

気づくと、浮竹の顎に手をかけて、口づけしていた。

かっと、浮竹の頬が朱色に染まる。

「俺をからかうな!」

「本気だっていったら?」

「京楽!」

浮竹を、ベッドに押し倒していた。

翡翠の瞳が誘ってくる。

潤んだ翡翠の瞳の輝きに、何も考えられなくなる。

もう一度唇を重ねると、浮竹に頬をたたかれていた。

「俺は、色街の女じゃない!」

そういって、部屋を出て行ってしまった。





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