わかめ大使Ⅱ
「わかめ大使が食べたい」
確かに、あの時白哉にそういった。わかめ大使は白屋の屋敷で作られており、一般販売をしていないので、入手するには百哉かルキアに言う必要がある。
「兄の心はわかった。近いうちに、わかめ大使を届けよう」
そう言った、白哉の顔が何処か嬉し気だった。
せっかく考案して、尸魂界に広げようとしても、全然売れないので不良在庫がたまっていた。
それを全て白哉は雨乾堂にもちこんできた。
「白哉!こんなにいらないから!」
「兄のために用意したのだ、ありがたくちょうだいするがよい」
「白哉!」
「では、さらばだ」
朽木家の家人まで用意して、荷車でやってきた白哉は一足先に瞬歩で自分の屋敷まで戻ってしまった。
「誰か~」
いつもなら仙太郎と清音がいるのだが、今日はあいにく学院の生徒に虚退治をさせるための指導係として現世に立ってしまった。
「わかめ大使に埋もれて死ぬとか、洒落にならん」
ゆらりと霊圧をあげる。察知してほしい人にわかるように特殊な霊圧を。
「どうしたの、浮竹」
瞬歩で京楽が現れた。
「助けてくれ~京楽~」
京楽が見たのは、わかめ大使の山につぶされている浮竹の姿だった。
「このわかめ大使・・・・・・どうしたんだい?」
「白哉に欲しいといったら、喜々としてこれだけの数を渡された」
「いくらなんでも限度があるでしょ」
京楽は、少し怒って、そして呆れていた。
「君も君だよ。瞬歩で逃げるなりしないと」
「いや、呆気にとられて・・・・すまない」
浮竹をわかめ大使の山から救い出して、京楽はわかめ大使の山をみる。
「こんな数・・13番隊の死神に配ってもいいんだろうけど、食べてもらえるかもあやしいしねぇ」
「どうやって処理しよう?」
浮竹が困った顔で、京楽を見てきた。
「俺の分はとっておいて・・・・あとは日番谷隊長の分と、京楽の分と・・・それでも、余り過ぎるな」
「そうだ。学院の食堂に寄付するのはどうだい。デザートにつけてもらうとか」
「それだ!」
「わかめ大使を広める絶好の機会になるよ」
「でも、どうやって運ぶんだ?」
「部下の死神がいるでしょ」
京楽がそう口にすると、浮竹は渋い顔をした。
「でもこんな私的なことに・・・・・」
「僕は、現世に買い物にいってもらったり、いろいろこき使ってるよ」
京楽の答えに、浮竹は驚いたが、たまには部下に動いてもらおうという気になった。
「そうか・・・じゃあ、今13番隊にいる部下たちに手伝ってもらおう」
そうして、13番隊の死神の群れと浮竹と京楽は学院にやってきた。視線を集めてしまうのは仕方ないことだが。
食堂にいくと、大量のわかめ大使を渡す。
「これを、食堂のデザートに使ってほしい」
「浮竹隊長・・・・なんですか、これ?」
「わかめ大使だ。朽木白哉のトレードマークだ」
「はぁ・・・・朽木隊長の?」
「何も言わずに食べてみろ」
食堂の厨房係の職員の口に、わかめ大使をつっこむ。
「これは・・・・!美味しい!?」
「そうだろう。見た目は変だが、味はいいんだ」
「分かりました、今日のデザートの冷凍ミカンを後日にまわして、このわかめ大使を今日のデザートにします。余った分は持ち帰り自由ということで」
冷凍ミカンという言葉に、浮竹の耳がピクリと動く。
「その冷凍ミカン、いくつかもらってもいいか?」
「ええ、構いませんが」
浮竹は、学院の食堂で冷凍ミカンを食べていた。
「んーこの味、懐かしい」
キーンとする冷たさの中に甘味があって。
京楽も一緒になって食べていた。
「学院時代を思い出すねぇ」
13番隊の死神にはもう下がっていいと、解散を命じているので、今食堂にいるのは京楽と浮竹と、厨房係だけだった。
「ついでだ、ここで昼飯食っていこう」
「いいのかい?僕たち、学院の生徒じゃないよ」
「大丈夫だろう」
日替わりのAランチ定食を注文すると、ハンバーグ定食だった。
それを、浮竹と京楽は懐かしそうに食べていく。
「なんだか、院生時代に戻った気分だね」
「ああ、そうだな」
案の定、食の細い浮竹は全部を食べきれずに残していた。学院時代もいつもそうだった。
安くてボリュームのある食堂で食事をするのは好きだが、食べきれなくて困っているのを、京楽が浮竹が残した分まで食べてくれた。
「かしてごらん」
京楽は、見かけによらずけっこう食う。
浮竹が残した分を平らげて、お茶をすすった。
「はぁ。本当に懐かしいなぁ。学院時代に戻ったようだ」
「なんなら、生徒としてもう一度入学するかい?」
京楽の悪戯めいた声に、浮竹が笑う。
「俺たちが入学したら、即卒業だな。そして13番隊と8番隊の隊長として、任命されるんだろうな」
二人、手を繋ぎあって学院を出た。
途中何人かの生徒とすれ違ったが、敬意の眼差しで見られた。
「なんだかんだで、白哉には感謝しなきゃな」
こんな意外な懐かしい一日を過ごせたのだから。
京楽と浮竹は、雨乾堂まで歩いて帰った。手は繋いだままだった。
瀞霊廷の死神が、二人のことをとやかく言う者などない。すれ違う人は微笑ましそうに、また羨望と畏怖の眼差しで二人を見ていた。
女性死神は一部が黄色い声をあげていたが。
雨乾堂に戻ったが、懐かしい気分のままで仕事をする気力がおきなかった。急ぎの仕事はないので、明日に回すことにした。
「また、学院に遊びにいこうか」
「今日みたいに、休暇がとれたらね」
正確には、浮竹は非番ではなったのだが。京楽は今日は非番だった。浮竹の仕事をする姿を見守りながら、酒でも飲もうと思っていたのだ。
肝心の酒を、呼び出されるような特殊な霊圧を放った浮竹のせいで、もってきそこねた。
「今日はごろごろしよう」
「そうだね」
二人して、院生時代の話に花を咲かせた。
こんな一日も悪くないと、浮竹と京楽は思うのだった------------。
確かに、あの時白哉にそういった。わかめ大使は白屋の屋敷で作られており、一般販売をしていないので、入手するには百哉かルキアに言う必要がある。
「兄の心はわかった。近いうちに、わかめ大使を届けよう」
そう言った、白哉の顔が何処か嬉し気だった。
せっかく考案して、尸魂界に広げようとしても、全然売れないので不良在庫がたまっていた。
それを全て白哉は雨乾堂にもちこんできた。
「白哉!こんなにいらないから!」
「兄のために用意したのだ、ありがたくちょうだいするがよい」
「白哉!」
「では、さらばだ」
朽木家の家人まで用意して、荷車でやってきた白哉は一足先に瞬歩で自分の屋敷まで戻ってしまった。
「誰か~」
いつもなら仙太郎と清音がいるのだが、今日はあいにく学院の生徒に虚退治をさせるための指導係として現世に立ってしまった。
「わかめ大使に埋もれて死ぬとか、洒落にならん」
ゆらりと霊圧をあげる。察知してほしい人にわかるように特殊な霊圧を。
「どうしたの、浮竹」
瞬歩で京楽が現れた。
「助けてくれ~京楽~」
京楽が見たのは、わかめ大使の山につぶされている浮竹の姿だった。
「このわかめ大使・・・・・・どうしたんだい?」
「白哉に欲しいといったら、喜々としてこれだけの数を渡された」
「いくらなんでも限度があるでしょ」
京楽は、少し怒って、そして呆れていた。
「君も君だよ。瞬歩で逃げるなりしないと」
「いや、呆気にとられて・・・・すまない」
浮竹をわかめ大使の山から救い出して、京楽はわかめ大使の山をみる。
「こんな数・・13番隊の死神に配ってもいいんだろうけど、食べてもらえるかもあやしいしねぇ」
「どうやって処理しよう?」
浮竹が困った顔で、京楽を見てきた。
「俺の分はとっておいて・・・・あとは日番谷隊長の分と、京楽の分と・・・それでも、余り過ぎるな」
「そうだ。学院の食堂に寄付するのはどうだい。デザートにつけてもらうとか」
「それだ!」
「わかめ大使を広める絶好の機会になるよ」
「でも、どうやって運ぶんだ?」
「部下の死神がいるでしょ」
京楽がそう口にすると、浮竹は渋い顔をした。
「でもこんな私的なことに・・・・・」
「僕は、現世に買い物にいってもらったり、いろいろこき使ってるよ」
京楽の答えに、浮竹は驚いたが、たまには部下に動いてもらおうという気になった。
「そうか・・・じゃあ、今13番隊にいる部下たちに手伝ってもらおう」
そうして、13番隊の死神の群れと浮竹と京楽は学院にやってきた。視線を集めてしまうのは仕方ないことだが。
食堂にいくと、大量のわかめ大使を渡す。
「これを、食堂のデザートに使ってほしい」
「浮竹隊長・・・・なんですか、これ?」
「わかめ大使だ。朽木白哉のトレードマークだ」
「はぁ・・・・朽木隊長の?」
「何も言わずに食べてみろ」
食堂の厨房係の職員の口に、わかめ大使をつっこむ。
「これは・・・・!美味しい!?」
「そうだろう。見た目は変だが、味はいいんだ」
「分かりました、今日のデザートの冷凍ミカンを後日にまわして、このわかめ大使を今日のデザートにします。余った分は持ち帰り自由ということで」
冷凍ミカンという言葉に、浮竹の耳がピクリと動く。
「その冷凍ミカン、いくつかもらってもいいか?」
「ええ、構いませんが」
浮竹は、学院の食堂で冷凍ミカンを食べていた。
「んーこの味、懐かしい」
キーンとする冷たさの中に甘味があって。
京楽も一緒になって食べていた。
「学院時代を思い出すねぇ」
13番隊の死神にはもう下がっていいと、解散を命じているので、今食堂にいるのは京楽と浮竹と、厨房係だけだった。
「ついでだ、ここで昼飯食っていこう」
「いいのかい?僕たち、学院の生徒じゃないよ」
「大丈夫だろう」
日替わりのAランチ定食を注文すると、ハンバーグ定食だった。
それを、浮竹と京楽は懐かしそうに食べていく。
「なんだか、院生時代に戻った気分だね」
「ああ、そうだな」
案の定、食の細い浮竹は全部を食べきれずに残していた。学院時代もいつもそうだった。
安くてボリュームのある食堂で食事をするのは好きだが、食べきれなくて困っているのを、京楽が浮竹が残した分まで食べてくれた。
「かしてごらん」
京楽は、見かけによらずけっこう食う。
浮竹が残した分を平らげて、お茶をすすった。
「はぁ。本当に懐かしいなぁ。学院時代に戻ったようだ」
「なんなら、生徒としてもう一度入学するかい?」
京楽の悪戯めいた声に、浮竹が笑う。
「俺たちが入学したら、即卒業だな。そして13番隊と8番隊の隊長として、任命されるんだろうな」
二人、手を繋ぎあって学院を出た。
途中何人かの生徒とすれ違ったが、敬意の眼差しで見られた。
「なんだかんだで、白哉には感謝しなきゃな」
こんな意外な懐かしい一日を過ごせたのだから。
京楽と浮竹は、雨乾堂まで歩いて帰った。手は繋いだままだった。
瀞霊廷の死神が、二人のことをとやかく言う者などない。すれ違う人は微笑ましそうに、また羨望と畏怖の眼差しで二人を見ていた。
女性死神は一部が黄色い声をあげていたが。
雨乾堂に戻ったが、懐かしい気分のままで仕事をする気力がおきなかった。急ぎの仕事はないので、明日に回すことにした。
「また、学院に遊びにいこうか」
「今日みたいに、休暇がとれたらね」
正確には、浮竹は非番ではなったのだが。京楽は今日は非番だった。浮竹の仕事をする姿を見守りながら、酒でも飲もうと思っていたのだ。
肝心の酒を、呼び出されるような特殊な霊圧を放った浮竹のせいで、もってきそこねた。
「今日はごろごろしよう」
「そうだね」
二人して、院生時代の話に花を咲かせた。
こんな一日も悪くないと、浮竹と京楽は思うのだった------------。
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