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え、生きてる?

「京楽、よくがんばったな」

「浮竹?」

「俺は神掛をしてよかった。この世界が守られたんだから」

浮竹は、長い白髪を風に揺らしながら、京楽に微笑んだ。

「浮竹!」

抱きしめると、そこで目覚めた。

「あ・・・夢・・・・・・」

ぽたぽたと、自分が涙を零しているのに京楽は気づく。



1番隊隊舎につくと、伊勢が大慌てで知らせてきた。

「そ、その、浮竹隊長の幽霊が!」

「は?浮竹の幽霊?」

「その、墓の前で浮竹隊長を見たという者がいまして。幽霊ではないかと、憶測が飛び交っていて、死神たちの間に動揺が広がっています」

「浮竹は死んだよ。ちゃんとこの腕の中で冷たくなっていくのを見届けた」

伊勢は、言いにくそうに京楽を見る。

「とにかく、浮竹隊長の墓の前に行ってください!」

「幽霊でも、浮竹に会えるなら喜んでいくけどね」

雨乾堂のあった場所に、立派な墓石をたてて浮竹の墓を作った。

1週間に一度は、そこに言って報告をして、酒を墓石に注ぐのが日課だった。

「よお、京楽」

「はぁ?」

京楽は目が飛び出そうになった。

浮竹が、幽霊でもなんでもなく、その墓石の前にいたのだ。

「ちょ、どうなってるの!」

「俺にも分からん。地獄に落ちて、もう一度やり直してこいと追い出された」

「う・・・浮竹ええええええ」

京楽は、浮竹をかき抱くと、わんわん泣いた。

京楽の頭を優しく撫でて、浮竹は京楽が落ち着くのを待った。

「君は、幽霊?」

「それも分からん。一応肉体はあるし、腹が減っている」

「とりあえず、僕の屋敷にいって何か食べようか」

「すまんな。助かる」

浮竹は、自分が一度死んでいることを覚えてるようだった。

最初涅がつくったクローンか何かかとも思ったが、まとう霊圧も浮竹のものそのものだった。

この浮竹は、確かに京楽の腕の中で死んでいった浮竹だった。



「お、これうまいな」

「どんどん食べて。甘味ものも用意してあるから」

「おはぎはあるか?」

「あるよ。ふふ、浮竹ほっぺにご飯つぶついてる」

それをとって食べると、浮竹は真っ赤になった。

「俺が生き返ると、やはりいろいろ都合が悪いよな」

「そんなことないよ!確かに13番隊隊長はルキアちゃんになったけど、君は僕の傍にいればいい。僕の傍で、僕を支えて」

「ああ、いいぞ。それにしても朽木が13番隊隊長か。思っていた通りになって、嬉しいな」

浮竹は、自分のことのように喜んだ。

「僕は、今君が生きて僕の目の前にいることがとても嬉しい」

「霊王の残滓が、俺に残っているんだそうだ。だから、地獄を追い出された」

「地獄って、卯ノ花隊長や山じいもいるの?」

「ああ、いたぞ。みんな元気にしている」

浮竹は朗らかに笑った。

「うーん、なんか死後の世界もあるようで、死が全てを無に返すわけじゃないんだね」

「そうだな。それに、俺は一度地獄に落ちた。だが、地獄には先生と卯ノ花隊長がいて、地獄のバランスがとれないし、俺には霊王の残滓が残っていて完全に死んでいないから、尸魂界に戻れと、地獄の管理人がな」

「浮竹、抱いてもいい?」

「う・・・・・いいぞ」

ご飯を食べて、風呂に入り、数年ぶりに睦みあった。

体温を共有しあいながら、まどろむ。

起きてしまうと、全て夢だったのではないかと思いたくなくて、京楽は浮竹を抱きしめて眠った。



「ふあ~、いい朝だ」

「浮竹、おはよう」

「ああ、おはよう。俺の存在なんだが、皆に話してくれ。俺はお前の傍で、仕事の補佐をしようと思う」

「うん。太陽が昇り切ったら、伝令神機で死神全員に伝えるよ」

何故、浮竹が生きているのかはまだ謎が多かったが、浮竹が生き返ったことは本当で、死神としての霊圧ももっていて、けれど肺の病は癒えているらしく、でも病弱なことには変わりないそうだった。

「浮竹。愛してるよ」

「ん・・・・」

深い口づけを交わし合い、浮竹は京楽の背中に手を回す。

「俺も愛している、京楽」

たとえ神様の悪戯でもいい。

地獄を追い出されたというのなら、大歓迎だ。

霊王の残滓というのが気になったが、京楽は浮竹を抱きしめた。

「死が二人を分かつときまで・・・・傍に、いてね?」

「なんか結婚式の言葉みたいだな。いいぞ。再び俺の命が尽きるまで、お前の傍にいる」

浮竹は、1番隊隊長補佐になった。

皆、喜んで酒宴を開いたりした。

「先生、卯ノ花隊長、今度そっちにいくのは随分先になりそうだ」

「浮竹、死んじゃだめだよ」

「分かっている。もう、神掛は終わったし、俺の中に霊王の残滓が残っているせいで、生きなければならない」

今の世界の霊王の代わりは、ユーハバッハである。

ユーハバッハの亡骸を、霊王の代わりにしていた。

「霊王の残滓って、なんだろうな?」

「さぁ。ミミハギ様じゃないの?」

「いや、ミミハギ様は俺の中から完全に出ていった」

「霊王の残滓があるから、生き返ったんだよね。じゃあ、そのままでいていいんじゃない?」

「まぁ、悩んだところで始まらないからな。第2の人生でも、謳歌するか」

二人は、深夜まで酒を飲み合った。

ふと気づくと、浮竹の姿がなくて京楽は慌てた。

「浮竹、浮竹!!」

「なんだ?ただ、月を見ていただけだぞ」

「僕の傍から、勝手にいなくならないで。心配しちゃうじゃない。全て夢だったって」

「これは現実だ。夢なんかじゃない」

「うん、そうだね」

お互いを抱きしめあい、体温を共有する。

ああ。

神様、ありがとう。

ボクに、もう一度浮竹と会わせてくれて。

いもしない神に、京楽は感謝をした。

「もう遅い。明日の仕事に支障が出る。寝るぞ」

「あ、うん」

浮竹は、1番隊隊長補佐として、主に書類任務をこなしていた。

ルキアや白哉、冬獅郎などがよく浮竹の元を訪れた。

浮竹は、京楽が過保護なまでに心配するので、一人で出歩くことを禁じられた。

「京楽・・・・甘味屋にいきたい」

「ちょっと待ってね。この仕事だけ終わらすから」

浮竹の我儘を、京楽は聞いてくれる。

今幸せかと聞かれると、幸せと答えるしかない。

一度終わった命なのだ。

続くのなら、足掻いて引退まで生きてやろうと思うのだった。




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