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え、生きてる?4

「霊王様。今日も食事を召し上がらないのですか。いくら霊王様となられたとはいえ、今も生身の肉体。食事をしなければ、体に差支えがあります」

「いい。食事はいらない。放っておいてくれ」

「霊王様・・・・・そんなに、京楽春水が恋しいですか?」

「お前、京楽と俺のこと・・・・・」

長い黒髪の美しい娘は、零番隊のリーダーであり、浮竹の身の回りの世話を率先して行っていた。

「存じております。霊王様の恋人であった方でしょう。でも、それも過去の話。霊王様はもう、下界へは戻らない」

「俺は、諦めていない。霊王になっても、京楽に会う」

「特別召還をなさいますか?」

黒髪の娘は、淡く微笑んだ。

「なんだ、それは」

「お気に入りの者を、傍に置くことです。人形のようになりますが、特別に意思を与えて動くようにすれば、霊王様も満足でしょう?」

「いや・・・・・それは、しない」

京楽が傍にいてくれるなら心強いが、京楽は総隊長だ。おまけに、人形のようになるのに、特別に意思を与えるとか、まるで生きた人形を侍らすようで、気が引ける。

それに、京楽がいなくなれば、瀞霊廷は混乱に陥る。

「では、一度きりの特別召還ができる術を授けましょう」

浮竹は、目を輝かせた。

「その術、もらい受ける」

術を自分のものにするのに、半月かかった。半月も、京楽と別れて過ごした。



京楽は、霊王宮にあがるための方法を探し続けていた。

そして、特別召還を知る。

伝令神器は奪われたので、特別な地獄蝶を飛ばして、浮竹のところまでメッセージを送った。

「ボクを、特別召還してほしい。君を奪う」

「京楽・・・・」

浮竹は、そのメッセージを受けて、涙を零した。

そして、誰もが寝静まった深夜に、特別召還を行った。

「浮竹!!!」

「京楽、会いたかった!」

「ボクもだよ!」

お互いを抱擁しあい、京楽は眉をしかめた。

「痩せた?」

「ああ。ほとんど食事をとっていないから。それでも、霊王は死なないそうだ」

京楽は、浮竹を胸にかき抱いた。

「逃げるよ」

「どこへ?」

「虚圏へ」

京楽は、浮竹を連れて虚圏へと渡った。

「しばらくの間は、ここに身を隠して。君は自害したと思わせるために、開発局で君の霊子からうみだしたクローンを、自害させる」

「でも、俺は霊王だ。霊王がいなくなると、世界は・・・・」

浮竹は、言いづらそうにしていた。

「それについては、詳しく調べたんだよ。今だに、ユーハバッハの亡骸は霊王として存在している。正当なる霊王が欲しくて、零番隊は霊王になった君を迎えにいったんだ。君は、霊王であるけれど、死神のままだ」

「俺は・・・霊王じゃなくても、いいのか?」

「そうだよ。君が霊王として存在しなくても、霊王はユーハバッハの亡骸でなんとかなってるんだよ」

「騙されたのか」

「そうなるね」

京楽は、虚圏のラスノーチェスに、浮竹を匿った。

瀞霊廷は、零番隊が霊王が自害したと騒いでいた。

「作戦は、うまくいったみたいだね」

結局、零番隊は浮竹十四郎を諦めて、次の霊王となる子を選び、霊王とした。

そうなるまで、半年ほどかかった。

浮竹は、京楽がちょくちょく様子を見にきてくれるので、寂しくはなかった。

アランカルと出会うこともあったが、比較的交友関係を築けた。

新たなる霊王の即位祭が開かれた時、京楽は浮竹を尸魂界へと戻した。

「れ、霊王様!?」

「ばかな、霊王様は自害なされたはず!」

「俺は霊王じゃない。霊王には、新しい子を選んだのだろう。俺の中には、もうミミハギ様も霊王としての霊圧も存在しない。ただの、浮竹十四郎だ」

「おのれ、京楽春水・・・・謀ったな」

零番隊に囲まれる京楽。

「京楽に傷をつければ、俺は次の霊王を殺す」

「霊王・・・・浮竹様!」

「浮竹様、今ならまだ霊王として復活できます。お考えなおしを」

「俺は、霊王になんてなりたくない。自由がほしい。京楽の傍で、一人の死神として生きて、死んでいきたい」

浮竹は、翡翠の瞳で零番隊を威圧した。

次の霊王に選ばれた子はまだ子供で、一護なみの霊力をもっているが、何せまだ子供なので力の使い方を知らない。浮竹でも、殺害できた。

「皆、今の霊王様を守れ。先代の霊王様は、自害なされた」

その言葉に、浮竹はほっとする。

京楽を囲んでいた零番隊も退いていった。

「京楽!」

「浮竹!」

二人は、再び一緒にいられるようになった。

浮竹の中にはまだ霊王の残滓が残っているが、もう霊王として世界に必要されることはなかった。

京楽と浮竹は、手を繋いで寄り添いあいながら、京楽の屋敷に帰る。

そこが、浮竹の居場所だった。

京楽の隣が、浮竹の居場所だった。


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