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おちおちいちゃつけない

「あー寒いな」
 
吐く息が白い。

「確かに寒いが、夏よりはましであろう」

先を歩くルキアは、空を見上げた。

もう12月。もうすぐクリスマスの時期だ。
街路樹は夜になればイルミネーションが灯り、綺麗に点滅を繰り返してまるで星の瞬きのようだ。

「12月はクリスマス。クリスマスといえばプレゼント。一護、貴様にはチャッピー等身大人形をくれてやろう」

すでに尸魂界で買い物をした。あとはイブの日が訪れれば、ラッピングしたチャッピー等身大人形を一護に贈って、それをふりまわして一護をノックアウトさせるのだ。
一護も、きっとチャッピーのよさが分かるに違いない。
うむ。

一人自己完結をして、満足そうにルキアはマフラーの裾を風に遊ばせる。

「いらねーよんなもん。なんで等身大なんだよ!くれるならもっとましなものにしろよ」

「ふむ。ではフンドシ」

自販機で買ったホットのコーヒーを飲んでいた一護は、ふきだした。

「ぶばー!」

「ぬおお、汚い、こちらにむけてふきかけるな!」

「ふんどしだぁ!?お前、そんなもの俺につけてほしいのかよ!」

「最近の尸魂界では昔ながらのふんどしが、男性の間で流行っているとか、聞いたような?でも死神の男性の下着姿なんて見ることがないからな。分からん。ふむ、ここは兄様に」

ピポパ。

毎度ながら、このブラコンは、白哉専用の携帯を取り出して番号を押そうとする。
呼び出されてたまるかと、携帯をとりあげた。

「何をする!返せ!」

ジャンプしても届かないので、ルキアは悔しそうにしていた。

そんなルキアを抱き締めた。

「なっ」

真っ赤になるルキアがかわいくて、耳元で囁いた。

「クリスマスプレゼント、ちゃんとしたもの用意してあるから」

バイトで得た金で、アメジストの首飾りを買った。ルキアの瞳と同じアメジストはすきだった。

「よこせ」

「はぁ?まだクリスマスじゃないだろ」

「貴様、さっきから何かこそこそと隠していると思えば、プレゼントを持っているのであろう?」

図星だった。

「今ほしいのだ。クリマスマスまで待てない」

「仕方のねーやつだな。ほらよっ」

ポンとて手渡されて、危うく落としかけた。

「もっと大切に扱わぬか!」

「クリスマスには、また違うプレゼント用意しておいてやるよ」

「おおこれは・・・・・綺麗だな。値がはったのではないのか?」

きらきら光るのが綺麗で、太陽に透かして見上げているルキア。

「そういう時のためにバイトしてるんだから、別にいいんだよ」

「本当にもらってよいのか?」

「返せなんていわねーよ」

「もらうぞ。本当にもらうからな。返せと言われても返さぬぞ」

「お前もしつこいな、やるっていってるだろ。貸してみろ」

ルキアから首飾りを取り上げて、ルキアの首にかけてやった。

「お前の目の色だ。綺麗だろ」

「確か、アメジストというんだったな」

「好きだぜ、ルキア」

「私も・・・・・貴様が好きだ」

アメジストのペンダントトップをいじっているルキアを、一護が見ていた。

「来年もここにこれたらいいな」

「貴様は霊圧を取り戻した。また来年もこれるであろう」

戦いの全てが終わって、1年が経過しようとしていた。13番隊の副官になったルキアは、前ほど気軽に現世に遊びにこれなくなっていた。

クリスマスの日には遊びにくるだろうが、今日は時たま現世の虚退治で訪れていたのだ。数日の滞在を許可されてある。

ルキアのマフラーごと、体をひきよせる。街路樹の陰に連れ込まれた。
顔に落ちた影に、ルキアが目を閉じた。

吸い込まれそうな太陽のオレンジの輪郭だけが、最後にはっきりとうつった。

ルキアの桜色の唇に、一護は自分の唇を重ねた。

「んんう」

深いキス。

「んー」

唇をなめられて、ルキアは甘い吐息をもらす。

「あっ」

喉元をきつく吸われて、眩暈がした。

「おしまい」

「う、うむ」

互いに違う方向を向いて、ギクシャクとしてカクカクと歩きだす。

それから、一護の暖かい手をルキアは握り締めて、二人で歩き出す。

「見ろ、雪だ」

ちらちらと降ってきた雪に、ルキアが嬉しそうに天を仰ぐ。

同時に、一護は死神となって駆け出した

「一護?おい、どこへ・・・・」

「あああああああああああ!あああああああやっぱいたのかああああああ!!!絶対この展開になると思ってたあああああああ!!!」

全力疾走する一護。

その後を、斬魄刀をすでに抜き放ち、軽やかに一護を切り捨てようとする白哉が続く。

「あ、兄様、ごきげんよう!」

「うむ」

学校でするように、スカートの裾をもっておかしなお辞儀をしたルキアに、一度白哉は止まって、それに応えてからまた一護を追いかけだした。

「兄は、ルキアに接吻をしたな。しかも首筋に痕まで残すとは。待たぬか、塵にしてやろう」

「誰が塵になるかああ!誰がまつかああ!!」

すでに、ルキアは白哉を呼び出した後であった。その後のキスだった

目の前で、義妹が男に接吻されている姿に、白哉は斬魄刀をためらいもなく鞘から抜き放った。そしてきりつけようとした瞬間、一護はそれを察知して、死神化して逃げ出した。

「兄様、キスくらいで。私と一護はもっとすすんでおります」

ピキ。

白哉の冷たい氷のような瞳がさらに冷たさをます。

「あああああ、ルキアああああ、俺を殺すきかあああ!!!!」

脱兎のごとく逃げ出す一護と、それを追いかける白哉の姿はすぐに消えてなくなった。

「また、一人残されてしまった。まぁいいか」

マフラーを巻きなおして、ルキアは一護の自宅へと足を向ける。

そして、24日のイブには本当に、一護にチャッピー等身大人形が贈られるのであった。

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