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蒼瑠璃

「あげるよ」

そういって渡されたのは、大粒の蒼瑠璃があしらわれた髪飾りだった。

紅瑠璃と対をなす尸魂界でしかとれない、希少な石で、霊力をこめることがでる。紅瑠璃は、霊力をもつ者の力を増大させてくれる。石の意味は変わらない愛。蒼瑠璃はの石の意味は慈しむ心。護廷13隊の死神に霊力を注いでもらった物を、上流貴族はよくお守りにしていたりした。

この前、京楽に紅瑠璃をはめこんだ首飾りをあげた。拙かったが、自分で作った。細工師に見てもらいながら、心をこめて。

それを京楽はいつも首にかけていた。どうしたのだと聞くと、愛しい恋人からもらったのだと自慢げに話す。

それが酷く恥ずかしくはあったが、大事にしてくれていると思うと嬉しさが全身を支配する。

「こんな大粒の石・・・・高かっただろうに」

「何、辺鄙なところに屋敷をたてるくらいの値段しかしないよ」

「屋敷ってお前・・・・・」

こんな高価なもの、もらえない。
過去の浮竹なら、そう言って拒絶しただろう。

でも、一度離れ離れになって、花の神に愛されたことで戻ってきた浮竹には、いならいとのだと突っぱねることができなかった。

「ありがとう。大切にする」

そういうと、京楽は櫛を手に、浮竹の長い髪を結い上げて、その髪飾りをさした。

「僕がいない時でも、君を守ってくれる」

蒼瑠璃には、京楽の霊力が強くこめられていた。

守ってもらうほどやわではないのにな、と思いながら、浮竹は髪飾りをつけない時は常に懐の中にいれて大事にもっていた。



1番隊に、苺花が遊びにきた。京楽は仕事でかまってやれないので、基本仕事のない浮竹が苺花の面倒を見ることになった。

「シロさんの髪飾り、綺麗だね。蒼瑠璃っていうんだっけ。シロさん美人だからよく似合ってるね」

「ありがとう。苺花ちゃんはものしりだな。石のこと、誰に教わったんだ?」

「父様だよ。もっともっと小粒の石だけど、お守りにって母様にあげてたんだ。らぶいらぶあつあつで、妹か弟ができるかも」

その場にルキアがいたらなら、注意していたかもしれない。子供の目の前で行為に及んだのだとしたら、叱責ものだが、賢い苺花はきっと分かっているのだろう。

大人の関係というやつを。

「あたしのはじめてはね、チカさんにあげようと思うの」

ブーーーーー!

浮竹はお茶を吹き出していた。

「苺花ちゃん?意味ちゃんとわかっていってるのか?」

「分かってるよ。処女を捧げるならチカさんがいい」

億尾にも出さない苺花の様子に、浮竹がかわりに朱くなった。

「君は本当におませだね・・・・・・・・」

「父様と母様と、師匠にもいわれるの。別に普通なのに」

年端もいかないような子供は、普通自分のはじめを・・・・なんていいださない。

「何話してるんだい、浮竹、苺花ちゃん」

仕事を終わらせた、京楽が隊首室にやってきた。

茶菓子を手に苺花と談笑していたのだが、京楽も交じってきた。

「京楽総隊長のその首飾りはどうしたの?紅瑠璃でしょ?」

「これかい?いやぁね、僕のとてもとても大事で愛する人がくれたんだよ」

「シロさんのことだよね?やっぱり毎日エッチしたりしてるの?」

ブーーーーー!

浮竹も京楽もお茶を吹き出した。

年端もいかぬ少女にしては、ちょっと問題があるかもしれない。

「ちょっと浮竹!あの子、両親のせいでああなったと思うかい?」

「朽木の教育なら、あんな風にはなるはずはないと思う」

「聞こえてるよー。ぜーんぶ、チカさんから学んだの」

綾瀬川弓親。

今度、呼び出して説教してやろうと、京楽は思った。

「ねぇねぇ、やっぱり毎日してるの?父様と母様みたいに」

阿散井夫妻はほんとにアツアツだなと思いながらも、首を傾げて聞いてくる少女に、本当に何をふきこんでいるんだ弓親と、浮竹も文句をいってやろうと決めた。

「いや、流石に毎日は・・・・・・週1くらいかな?僕らは君の父様や母様のように若くないからね」

「若くなくなったら、回数へるの?」

「自然とね・・・・」

「おい京楽!何真面目に答えてるんだ」

「いいじゃない。子供の戯言だよ」

「この子は、ただの子供じゃないんだぞ」

そのまとう霊圧も、子供のものにしては高すぎる。

「隠す意味もないじゃない」

「でもな・・・・・」

浮竹の髪飾りが、チリンと音をたてる。蒼瑠璃をはめこんだ髪飾りには、純金でできた鈴がついていた。

「おじさんたちは、もう院生時代・・・そうだねとても若い時代からできていて、もう数百年も
一緒なんだ」

「・・・・・・・・・・・・・ステキ」

苺花は陶酔していた。

「何百年も、まるで永遠を愛し合うみたい。京楽総隊長の、首飾りの石の意味みたいだね」

変わらぬ愛。

京楽は、嬉しげに答える。

「苺花ちゃんも、愛する人を見つけたら、いつかこの紅瑠璃を贈ってあげればいいよ」

「でも高いんでしょ?あたしの小遣いじゃかえないなぁ。今すぐほしいのに」

「ちょっと待ってて、苺花ちゃん」

京楽は奥の寝室に入って行った。

「お待たせ」

戻ってくると、京楽の手には小さな紅瑠璃の欠片があった。

「え、もしかしてくれるの?」

「うん。欠けてるけど、ちゃんと霊力を増大してくれる効果をもつよ」

「欠片なら、いいか・・・・・」

もし、京楽は大粒の石をあげていたら、浮竹が怒っていた。子供に与える値段のものじゃないからだ。

お守り石かにされていたのが砕け散って、欠片になってしまったのだろう。

粉々ではないが、欠片になってしまっている。でも、その欠片の一つでけっこうな値段がするかもしれない。

紅瑠璃と蒼瑠璃は対をなす、希少な石だ。

浮竹が京楽のために手に入れた紅瑠璃は、浮竹の遺品として残っていたものを処分した金でかったものだ。

京楽からもらう多額の小遣いでは買わなかった。それを知っているから、京楽は余計に喜んでくれるのだ。

「ありがとう、京楽総隊長!シロさんも・・・・・・これで、チカさんに告白できる」

告白しても、多分もっと大人になったらね、で終わりそうだ。弓親との年の差がありすぎて、交際はするとしてもおままごとみたいなものになるだろう。

「どう思う、浮竹」

「まぁ、苺花ちゃんの初恋は綾瀬川3席なんだから、彼が責任をもつべきだと思うな」

「告白、成就すると思う?」

「大人になったらね・・・・・で、終わりそうだな」

「奇遇だね。僕もそう思ってたとこなんだよ」

チリンと、髪飾りが鈴の音を転ばせる。

また長くなってしまった白髪に、京楽の手が伸びる。

「いい加減、切りたいんだが」

「もう少し伸ばしてよ・・・」

膝裏まで伸びた髪が邪魔過ぎて、浮竹は髪を切りたいきもちでいっぱいだった。京楽は、浮竹の髪が寝所で乱れる様が好きで、伸ばせという。

「来月には切るぞ」

「ええ、勿体ない」

「あんまり文句いうなら、肩よりうえでばっさりいくぞ」

「浮竹の意地悪」

京楽が、くすくす笑って浮竹の体を長椅子に押し倒した。

チリン。

髪飾りが、鈴の音をたてる。

乱れていく白髪は、床まで伸びている。窓から入ってくる日の光を浴びて、銀色に輝いていた。

チリンチリン。

その白髪にさされた髪飾りは、いつまでの錫の音を響かせていた。





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