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お泊り

白哉に招かれて、今日は朽木家に泊まることになった。

白哉が破面のせいで一時的に視力を失った時、介護のために四六時中傍にいたのだが、いざ白哉が視力を回復させてしまうと、もうお別れなのかと悲しくなった。

そんな恋次に、白哉はたまになら朽木家に泊まりにきてもいいと言ってくれた。

今日は、そんなことで朽木家にお邪魔していた。

「兄様、この駄犬を我が家に招くのはどうかと思います」

「誰が犬だルキア!」

「貴様以外にいないだろう。兄様の前では尻尾をぶんぶん振っているくせに」

「俺は犬じゃねぇ!」

「いや・・・・恋次は、少し犬のようだな」

「隊長まで!?」

恋次が、ショックを受けた顔になる。まさに、主人に叱られた犬のような顔だった。

「恋次、客間に泊まるか?それとも私の寝室に・・・・・」

「勿論、隊長の寝室に泊まります」

ルキアが眉を顰める。

「この駄犬、きっとやることしか考えてませんよ兄様!」

「ルキア、だから犬扱いするんじゃねぇ!しかも駄犬ってなんだ!」

「まぁいいんじゃねぇの?恋次と白哉って、できてるんだろ?」

食堂で、一人黙々と夕食を食べていた一護が口を挟む。

一護は、ルキアの夫だ。朽木家に婿入りしたのは、今から3年ほど前のことだ。

ちょうど、白哉と恋次が真に想いを通じ合わせた頃だ。

「恋次、今日はおあずけだ」

「隊長まで、犬扱いしないでください」

「恋次、お手」

手をさしだしてそう白哉が言うと、恋次は本当に犬のように白哉の手に手を乗せた。

「ぐ・・・・・」

白哉が、爆笑をこらえて眉を顰める。だが、その肩はぷるぷる震えていた。

「あはははは!恋次、本当に犬のようだな!」

夕食を食べながら、ルキアが大笑いした。

「くそ、つい・・・・・」

一護も笑っていた。

恋次は気を取り直して、夕飯を口にする。

朽木家の夕飯は豪華で美味しかった。

夜になり、恋次は枕を手に白夜の寝室を訪れた。

恋次は、枕がかわると眠りにくい体質であった。

白哉の寝室は、無駄に広かった。16畳はある部屋に、布団が2組しかれていた。

「恋次、寝るぞ」

「あ、隊長!」

夜這いをかけようとは思っていなかったが、少しだけ白哉といちゃいちゃしたかった恋次は、明かりが消されると、白哉の布団にもぐりこんだ。

「隊長、寝るにはちょっと早いです。まだ9時じゃないですか」

「深夜に起きて、散歩に出かけるのだ。だから、早めに就寝する」

「ああ、隊長夜の散歩好きでしたもんね。その時は俺も起こしてください。俺もついていきます」

白哉はすぐに眠ってしまったが、恋次はなかなか寝付けずに、自分に用意された布団にもぐって寝がえりをうっていた。

寝れたのは、夜の11時を回った頃だった。


「恋次、恋次、起きろ」

「んー。なんすか、こんな夜中に」

深夜の2時に起こされて、恋次は不機嫌そうな声をだす。

「私の深夜の散歩についてくると言ったのは、お前であろう。眠いなら、そのまま寝ていろ。私は散歩に行ってくる」

「あ、待ってください!俺も行きます!」

眠い目をこすって、白哉の後に続く。

外にでると、空気はまだ少し寒くて、白哉は上着を着ていた。いつもの死覇装に隊長羽織の上から。

恋次は寝間着のまま、歩きだす。白夜の後を追って。

「隊長・・・いつもこんな時間に、散歩してるんですか?」

「毎日ではないが・・週に二度ほど、深夜に散歩に出かけている」

子供ではないのだから、夜は危ないと言えないが辛いところだった。白夜は強い。たとえ深夜の時間に不埒な真似をする者が現れても、切り捨ててしまうだろう。

月が綺麗だった。

川の傍を歩くと、早咲きの桜を見つけた。

「隊長、この桜、もう咲いてますよ」

「知っている。いつも、この時期になると・・・3月になる前に花を咲かせるのだ」

「もう3月か・・・・4月には人事異動がありますからね。席官、また変わるんでしょうか」

「今回は変わらぬと聞いている。ただ、新人死神が20人ほど配属される予定だ。修行をつけてやってくれ」

「勿論です」

新人死神を、使えるようにするのも、副隊長である恋次の仕事の一つだった。

白哉は、人に教えるようなことが苦手だ。

斬魄刀のとの対話の精神訓練なら、得意だが。

川沿いに歩き、ぐるっと瀞霊廷を一周して、朽木家に帰還した。

時間にして約1時間ほど、散歩をした。

「寝るぞ」

「ふあ~。俺も寝ます」

恋次は、次に起こさるまでずっと寝ていた。

次に起きたのは、9時前だった。

「ぎゃあああ、遅刻する!」

白哉はすでに、6番隊の方に向かった後だった。

ルキアと一護も、すでにいない。

「なんで誰も起こしてくれないんだ・・・・・・」

そう思いながらも、顔を洗って服を着替えて、瞬歩で6番隊の執務室にやってきた。

「隊長!起こしてくださいよ!あやうく遅刻するところだった」

「よく寝ていたのでな・・・」

「隊長は、何時に起きたんですか」

「朝の6時だ」

「早いですね」

「よく寝ているお前を見ていると、幸せそうで起こしそびれてしまった」

「まあ、隊長と同じ屋根の下で眠れて幸せでしたけど」

その言葉に、白哉の頬が赤くなる。

「朝食をとっていないだろう。それでも食べておけ」

おにぎりを2つほど渡された。

わざわざ、恋次のために持ってきてくれていたのだと知って、恋次は白哉を抱き締めた。

「あんた、俺の扱いうまいですね」

「何年、一緒になったと思っているのだ」

「それもそうですね」

恋次は、おにぎりを食べた。茶が出される。

白哉の優しさに恋次の心も温かくなる。

茶の入れ方を教えたのは、恋次だ。昔、茶以外のものを入れて、それを茶として出されて激マズな思いをしたことがあったため、白哉に茶葉以外のものは入れないように教えた。

白哉は自分も茶を飲んで、少し休憩すると今日の仕事にとりかかりだした。

恋次は思う。

寝坊寸前も、悪くない、と。




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