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囀るは

「京楽・・・・・」

気づくと、浮竹は京楽の腕の中にいた。

「気づいた?高熱を出して倒れたんだよ」

京楽の髪や目の色は、花の神を宿したことで薄紅色になっていた。

「肺の病がなくなったとはいえ・・・俺はまだまだ弱いな」

本来なら、浮竹は死んでいた。ミミハギ様を手放したことによる神掛で、病気が進行して死ぬはずだった。

それを、花の神が助けてくれた。

代償は、京楽が花の神の器になること。

今の京楽は、死神であり、半神であった。

「まだ熱が高いから、雨乾堂に戻るよ」

「分かった・・・・・」

1番隊の執務室に遊びに行ったことまでは覚えていた。執務室で高熱を出して倒れたのだ、浮竹は。

雨乾堂は、変わらずそこにある。他の時間軸の世界では、取り壊されて浮竹の墓になっていたが、浮竹が生きているこの世界では、雨乾堂はまだ存在していた。

浮竹は霊圧をなくした。

霊圧のほぼ全てを生きるためのエネルギーに変えたせいで、肺の病は癒えたが、病弱なところは変わらなかった。

13番隊の隊長ではいられなくなり、書類仕事を主にサポートしていた。今の13番隊隊長は、ルキアだ。

京楽の腕に抱かれて、雨乾堂まで瞬歩でくると、京楽は布団をしいてそこに浮竹を寝かせた。

熱はあるが、意識ははっきりしていた。

「解熱剤、とりあえず飲んで」

「ああ」

渡された解熱剤を、コップの水と一緒に飲み干した。

普通の解熱剤ではなく、甘い味がした。

「これ、甘い・・・・」

「子供用のやつだからね」

「俺は子供じゃないぞ」

むすっとなる浮竹の頭を撫でて、京楽が浮竹の隣に寝そべった。

「鎮静剤も含んでるから、直に眠くなるよ。僕のことは気にしないで眠りなさいな。体が弱っている時は、横になるのが一番いい」

「すまない・・・・命を助けてもらったが、病弱なのが変わりなくて、こればかりはどうしようもないな」

「肺の病が癒えただけで十分だよ。君が死ぬ可能性がなくなった」

「花の神は、京楽の中で眠りについているのか?」

「そうだよ。僕は「器」だからね。今は眠っている」

学院の桜の木の下で、告白をしたりプロポーズを受けた。その桜が狂い咲く中で死んでいくはずだった浮竹の命は、花の神という、浮竹が赤子の頃捧げられた神によって、助けられた。

浮竹の両親は、浮竹が赤子の頃に花の神に捧げて、洗礼を受けさせた。この命が助かりますようにと。

浮竹からは、甘い花の香がするようになった。それは花の神に愛された証であった。

そして3歳の時、ミミハギ様を宿らせた。

子供時代は、友達と遊んだこともなく、家族としか会話をしなかった。

死神統学院に入り、そこではじめて友人ができた。

それが京楽だった。

互いに惹かれ合い、恋人同士になって、隊長になってもその関係は続いていた。今はいない山じいが、二人のことを思い、できていることを事前に知らせて、差別を起こさないようにしてくれていた。

しばらく京楽と話しをしていたが、直に睡魔に襲われて、浮竹は眠ってしまった。

そんな浮竹に触れるだけの口づけをして、京楽は一番隊の執務室に戻った。仕事があるのだ。早く終わらせて、浮竹の傍にいてやりたかった。

京楽は自分でも驚くほどのスピードで、仕事を終えた。

雨乾堂に行くと、浮竹はまだ眠っていた。

額に手をあてると、平熱まで下がっていた。

もう大丈夫だ。

「ん・・・京楽?」

「ああ、起きたのかい。お腹すいたでしょ。夕飯の時間だし、13番隊の食堂に行こうか」

京楽は、まだ少し眠そうな浮竹を伴って、13番隊の食堂にやってきた。食堂は一般隊士のためのものであり、普通は隊長は専用の食事を作ってもらえるのだが、浮竹はもう隊長ではない。

扱いの上では、一応一般隊士ということになっているが、前隊長ということもあり、浮竹は人望も厚いので、一般隊士がよく話をしにきた。

京楽は、浮竹と一緒に食事をとりながら、浮竹が一般隊士にああだこうだと話しかけられるのを見ていた。

それから、食事を終えると、ひょいっと浮竹を肩に担ぎあげた。

「京楽!?」

「死神が群がりすぎてる。君は僕のものなのに。嫉妬、だね」

そう言って、唖然とする13番隊の隊士を残して、雨乾堂に戻った。

「嫉妬だなんて、京楽らしくないぞ」

「僕だって嫉妬くらいするよ。君がみんなに笑顔を振りまくものだから、一般隊士が群がってきて・・・・君は、僕のものなのに」

噛みつくようなキスをされた。

「京楽、怒っているのか?」

「ううん。怒ってはいないよ」

「そうか」

京楽は、浮竹の13番と書かれていない、白いだけの羽織を脱がして、死覇装を脱がしていく。

「そ、その、するのか?」

「うん」

「花の神は眠っているんだろうな?」

「僕の魂の奥底で眠っているよ」

キスをしあった。

京楽は、浮竹の首筋にキスマークを残した。

「僕のものだっていう、証」

「そんなの残さなくても、俺はお前のものだ」

京楽は、浮竹の花茎を口に含んだ。

「あ!」

いきなりの刺激に、浮竹が驚く。

「最近全然していなかったからね・・・先にいってしまいなよ」

舐めあげられて、しごかれて、浮竹は呆気なく京楽の口の中に精液を吐きだしていた。

「あああ!」

びくんと痙攣する体を手で撫でて、潤滑油に濡らした指を浮竹の体内に入れる。

「んん・・・・」

くちゅくちゅと解されて、とろとろになった頃に京楽のものが入ってきた。

「ひう!」

「息すってちゃんと吐いて。そうそう」

久し振りの感覚に、体がついていかない。

京楽が突き上げると、浮竹は啼いた。

「あ・・・・ああ・あ・・」

涙が零れた。

「痛いの?」

「違う。お前のものになっているんだなと思って」

「君を、鳥かごにいれたい。誰にも見せたくない。僕だけを見て、僕だけのために囀ってほしい」

「無理を言うな・・・・・」

「うん。無理だね」

「ひあ!やっ」

突き上げる角度が変わり、前立腺を抉られて、浮竹が反応する。

「きもちいい?ここ」

こくこくと、浮竹は頷いた。

「もっと抉ってあげる」

何度も突き上げられて抉られて、浮竹は熱を放っていた。

ほぼ同時に、京楽も浮竹の腹の奥に欲望をぶちまけた。

「久しぶりだから・・・少し、がっつくよ」

「ほどほどにしてくれ・・・・・」

結局、京楽は浮竹の中で4回も放ち、浮竹も何度もいって、最後はドライのオーガズムで達していた。

「ねぇ。僕だけのために、囀って」

「京楽・・・・・・」

「君の命のある限り、僕は君だけを求める」

「俺も、お前の命のがある限り、お前だけを求める」

「十四郎・・・・・・」

「春水・・・・」

互いに、「愛している」と囁いて、深い口づけを交わした。

浮竹は、京楽のためだけに囀る小鳥にはならないが、なるべく京楽だけに囀る。

「君の命が続いていることに、感謝を」

自分の身に宿っている花の神に、感謝を捧げた。

「京楽、風呂にいこう」

「うん」

風呂に入り、身を清めて、新しい布団を出して、二人で寝そべった。

「こんな、穏やかな時間が、大戦後も来るなんて思わなかった。君を失うものだとばかり思っていたよ」

花の神の気まぐれで救われた命だが、大切にしようと思った。

「俺は、霊圧がなくなり隊長ではなくなったが、生き残れてよかったと思っている。本来なら、ミミハギ様を解放したんだから、死んでいたんだがな」

「でも、命は続いている」

「ああ」

京楽は、懐から小さな箱を出した。

「どうしたんだ?」

「翡翠細工の可愛いのを見つけてね。君にあげようと思って」

取り出されたのは、翡翠のあしらわれたヘアピンだった。

花の形にカットされていて、かわいらしかった。

「また、高そうなものを・・・・」

「石はグレードが高いけど、こぶりだから思っているほど高価じゃないよ」

京楽が、ヘアピンで浮竹の前髪をぱちりと留めた。

「君にはやっぱり、翡翠が似合うね」

院生時代から今まで、いろんな翡翠細工の装身具をもらった。使わない時も多いが、大切に雨乾堂にあるタンスの中に保管されていた。

「永久(とこしえ)の愛を君に」

「永久の愛をお前に」

浮竹の白髪が、さらりと音をたてて零れる。

「愛している・・・・・」

浮竹の、京楽にだけ向けられる囀りに、京楽は満足気に微笑んだ。

浮竹という小鳥は、京楽にばかり囀る。

そうなるように、何百年もかけられた。

薄紅色になった京楽の髪と目。

神の器となった京楽。

神に命を救われた浮竹。

時間は、ゆっくりと過ぎていく。もう、互いに失うことなどないのだ。









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