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きっといつか

「どうか、止めてくれるなよ」

ミミハギ様、つまりは霊王の右腕を解放することを決めた浮竹を見て、京楽はそれでも、と思った。

「君は僕を置いて、先に逝ってしまうのかい?」

「最終的にはそうなるな。だが、この命、元より尸魂界に捧げている。護廷十三隊のために死なば本望」

もう、浮竹を止めることはできないだろう。

浮竹は、強い。

その心は、すでに世界をつなぎとめるために命を落としたとしても、本望なのだという。

「霊王が・・・・」

霊王という存在が、この世にいなければ。

でも、そうなると浮竹は3歳の時に死んでいて、京楽と巡りあうこともなかっただろう。

ああ。

もどかしい。

京楽は、隻眼の鳶色の瞳で浮竹を見つめると、胸にかき抱いた。

「京楽?んんっ・・・・・・・」

深く、深く口づけた。

啄むように、時に舌を絡め合い、互いの唾液を流し込んで、嚥下していく。

「きょうら・・・・く・・・・」

クタリとなる浮竹を抱きしめて、京楽は溢れてくる涙を止めることができなかった。

「このまま、君をさらって、違う世界へいきたい」

「だめだ・・・俺が神掛をしないと、世界は滅ぶ」

もうすぐ、霊王は殺される。

ユーハバッハさえいなければ。

ぎりりと、殺意を覚えた。

けれど、ユーハバッハを倒すのは、一護に任せている。きっと彼なら、ユーハバッハを倒せる。

「俺が逝って世界が平和になったら、お前は俺のことを忘れて、妻をもって子をなして、幸せに暮らしてくれ」

「無理だよ・・・・」

「お願いだ、京楽。俺のことを、忘れくれ」

「無理だ。君のことを忘れることなんてできない。君を忘れるくらいなら、死んだほうがましだ」

「京楽・・・・・」

「愛してるよ。自分でも、どうしようもないほどに君を愛しているんだ」

「俺も、京楽を愛している」

この瞬間が永遠であればいいのに。

一緒に過ごしてきたこの数百年を振り返る。

院生時代から、今までを。

何度も交じりあった。

何度も愛を確かめ合った。

何度も愛を囁いた。


もう、終わりにしないといけないのか。

運命とは、かくも残酷である。

何故、僕から浮竹を奪う?

命より大切な、浮竹を。


「もう、行く・・・・」

「浮竹!」

「棺桶の中には、白ユリで飾ってくれ」

茶かすように、微笑んだ。

その微笑みが悲しくて寂しそうで、また涙が溢れそうになった。

でも、こらえる。

浮竹。

こんなにも愛しているのに。

君のためなら、世界を手放したっていい。

この総隊長の地位すら、いらない。


でも、そういうわけにはいかないのだ。

京楽は、もう総隊長なのだから。

個の感情で、動いてはいけない。


ああ、僕は。

僕は、なんて非力なんだろう。

愛した人の最期を見届けることになるなんて。

助けられないなんて。


「またな、京楽。いつか、どこかでまた会おう」

そう言って、浮竹は去ってしまった。



さよなら、僕の愛した人。

いつか、時が来たら僕は君の元へいくよ。


きっと、いつか。

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