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さくらあやかしと共に29

浮竹は、気づくと額にツノを生やして桜色の瞳に、桜色の漢服を着ている姿になっていた。

「なぜ‥‥」

桜鬼になって、自分を失った後で、元に戻ったのだが、妖力のコントロールが難しくなっており、朝起きると桜鬼の姿になっていた。

それを察知したのか、京楽が浮竹の部屋をノックする。

「十四郎?入るよ?」

「京楽、くるな!」

桜鬼の姿を見られたくなくて、浮竹は叫ぶ。

「十四郎、ボクは君がどんな姿になっていても愛しているよ」

「京楽‥‥‥」

浮竹は、そっと鍵をかけていた扉を開いた。

「朝起きたら、この姿になっていたんだ。桜鬼に。俺は昔、人やあやかしの血をすすって養分にしていた」

「うん。でも、やめたんでしょう?」

「そうだな。人間の食事の味とそれでエネルギーをとれるようになったから」

「十四郎は、桜鬼の姿でも綺麗だよ。桜そのものみたい」

浮竹は、そういってもらえてうれしくて、少しだけ泣いた。

「桜鬼‥‥嫌いだったけど、お前のおかげで少し考え方が変わりそうだ」

「十四郎はいつだって綺麗だよ?バカみたいに笑ってる時も、夜刀神をハリセンでしばいてる時も、料理を作っている時も、寝ている時も」

「春水」

「心配しないで?桜鬼の姿、今戻してあげるから」

京楽は、札に力をこめて、それを浮竹の背中にはった。

ちらちらと桜吹雪が室内で舞い、浮竹は元の人の姿に戻っていた。

「桜色の瞳も綺麗だけど、ボクはボクの知る翡翠色の十四郎の瞳の色のほうが好きかな」

「桜鬼なったせいで、今まで封印していた力が使えるようになったようだ」

「お、すごいね。どんな力?」

「よいものじゃない。都市一つの人間を養分に、桜を咲かせたり、他人をただの桜にしてしまったり‥‥」

「うん。使わない方向で、いいじゃないかな」

「そうだな。ただ、夜刀神には桜になる術をかけてみたいな。絶対に効かないだろうから」

クスリと、浮竹が笑う。

浮竹が元気を出してくれたみたいでよかったと、京楽は思った。

「白哉は?」

「もう起きて、朝食待ってるよ」

「すまん。すぐ作る」

「あ、十四郎」

「ん?」

振り返った浮竹に、京楽は触れるだけのキスをさした。

「おはようのキス」

「ばか」

浮竹は真っ赤になって、キッチンに去っていく。

「桜鬼か‥‥‥‥また厄介な問題を抱え込んだね、シロ。いや、十四郎」

「白哉、またせたな。今日は和食にした」

出汁卵焼き、味噌汁、鮭の焼いたもの、それに白ごはんだった。

「和食とは、兄にしては珍しいな」

「まぁ、白哉は和食のほうが好きだろう?」

「そうだが」

「待たせた詫びだ」

「それほど待ってはいないのだがな」

「京楽、早く来い。朝飯が冷めるぞ」

「はいはい、今いくよ」

浮竹、京楽、白哉の3人は、何か事情でもない限り、なるべく一緒に食事をとっていた。

家族のような関係である。

「食べ終わったら、京楽は俺と一緒に、術者の俺と夜刀神の元にいくぞ。けがをさせてしまったからな。白哉、多分今晩は泊まって帰る」

「分かった。ルキアのいるネモフィラ畑で過ごすことにする」

「いつもすまないな」

「兄と200年以上もつきあっているのだ。慣れた」

白哉は、朝食を食べ終わると、35階のベランダから飛び降りていった。

「だから、何故玄関を使わないの。帰ってくる時は玄関使うのに」

「細かいことは気にするな」

浮竹は、京楽と白哉と自分が食べ終えた食器を洗ってから、異界を通って、術者の浮竹と夜刀神のところにやってくる。

「いるか?」

『はーい。いらっしゃいませ‥‥って、精霊の俺か。便利屋の京楽まで。どうした?』

「この前は、すまなかった。桜鬼になって、我を忘れた」

『ああ、俺も力暴走したことあるから、別に謝らなくていいぞ』

「夜刀神はどうしている?」

『ここにいるよー』

術者の浮竹の服に、こうもり姿でしがみついていた。

『おっと、落としたら大変だ』

術者の浮竹は、こうもり姿の夜刀神を両手で抱きしめる。

「治癒の術はかけてもらったんじゃないのか」

『君の桜鬼の力が強すぎて、完治してないんだよ』

「すまん」

『いいよ。腐れ縁だしね』

「そういってもらえると、助かる。京楽と一緒に、詫びをかねて家事をしにきた」

『わ、精霊の俺の手料理がまた食えるのか?』

術者の浮竹ははしゃぐ。一方、京楽たちは微妙な顔をしていた。

二人きりになりたいのだ。

『ボクは傷が癒えてないから、ハリセンではたかないでね』

「それくらい、承知している」

結局、その日は夕飯はビーフシチューだった。

夜刀神は、人間の姿になって、包帯だらけで術者の浮竹から食べさせてもらっていた。

「十四郎‥‥‥‥」

「言っとくが、しないぞ」

「クスン」

その日は泊まり、朝食を浮竹が作っていると、術者の浮竹の悲鳴が聞こえた。

「なんじゃこりゃあああ!!またかあああ!!」

皆で駆けつけてみると、白い狐がいた。尾は2本だ。

『治癒術使いすぎたみたいだ』

「じゃあ、今日の治癒はボクがしておくよ」

こうもり姿の夜刀神に、京楽は治癒術を施こす。

『そうか。「春」と一つになったことで、治癒術や浄化の術を使えるようになったんだね』

「うん、そうだよ。全部「春」のおかげだね」

京楽は、「春」でもあるので、自分を卑下したりしない。

「さて、術者の俺。元に戻れない間暇だろうヵら、遊ぼうか」

『なになに?おいかけっこ?』

「フリスビーだ」

なぜかフリスビーをもってきていた浮竹は、空き地に場所を変えて、思い切りフリスビーを投げる。

それを、狐なのに犬のように口でキャッチして、術者の浮竹は浮竹のところにもっていく。

『おもしろい!もう1回』

「何度だって投げてやるぞ」

夜刀神は、こうもり姿でベンチにいた。隣には、京楽の姿もあった。

「はぁ。かわいいけど、二人きりになりたい」

『同じく、二人きりがいい:』

珍しく意見が一致して、互いの顔を見合って、ため息をついた。

『京楽も投げてくれ!』:

術者の浮竹は、2本の尻尾をぶんぶんふっていた。

『病み上がりだけど、仕方ないねぇ。犬じゃないんだからって言いたいとこだけど』

人の姿になり、包帯だかけの恰好で、フリスビーを投げる。

ちゃんとキャッチして持って帰ってくる術者の浮竹がかわいすぎて、夜刀神はもふもふしだした。

『こそばゆい』

『浮竹はボクのものでしょ』

『うん』

『かまってくれないと、すねちゃうよ。すでに、便利屋のボクは拗ねてるけど』

浮竹が全然かまってくれないので、京楽は式を作って空を飛ばせたりしていた。

「ああ、京楽すねていたのか。一人遊びしているのかと思った」

「浮竹がボクを構ってくれないから、新しい式を作ってたよ」

「今日は、この辺で帰ろうか」

「うん、帰ろう!」

今なら、白哉もまだ帰ってきていないはずだと、京楽は浮竹と二人きりになれると嬉し気だった。

「術者の俺、これをやる」

『なんだ?』:

「俺の妖力の結晶だ。使えば、人の姿に戻れるだろう」

『そうなのか”!ありがとう!』

さすがに、白い珍しい2本の尾の狐と、こうもり姿の京楽だけでは不便だろうからと、浮竹なりに気を利かせたつもりだった。

『ボクが人型に戻ればいい話だけどね:』

「そう言いながら、狐姿の術者の俺の背中にしがみついてても、迫力もなにもないぞ」

『ふん、桜鬼のばか』

「ハリセンで殴られたいか」

『ごめんなさい』

謝罪は即答だった。

浮竹と享楽が去っていったのを見とどけてから、術者の浮竹は、浮竹にもらった結晶を粉々に砕き、自分に使ってみた。

『お、人の姿に戻れた』

『浮竹、耳がでてるよ』

『あれ。引っ込めるの難しいな。まぁいいか』:

『いいんかい!』

たまらず、ツッコミを入れる夜刀神だった。



一方、異界渡りで帰宅した浮竹と京楽は、久しぶりに二人きりなのだから、しっぽりしようとしていた寸前で、白哉が帰宅してきたので、京楽は突き飛ばされて、ベッドから転げ落ちた。

浮竹は、乱れた衣服を整えて、なにくわぬ顔で白哉に夕飯は何がいいのか聞きにいくのだった。


「あーーー。またおあずけええ。いつになったら、抱けるのお」「

京楽のため息交じりの泣き言が、空しく響くのだった。

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