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さよならを。

文に、想いをしたためた。

さよならを。

口ではたくさんを語れないから。

ユーハバッハの侵攻により、霊王が死んだ。

浮竹は、死神としての矜持を守り、ミミハギ様を解放し、神掛をした。

残り僅かな命。

その場で力尽きなかったことが、奇跡のようだった。

けれど、刻々と死への時間は近づいている。

「京楽・・・・愛してる」

「僕も愛してるよ、浮竹」

生命維持装置に繋がれることを拒否した浮竹は、雨乾堂にいた。

ユーハバッハは、一護が倒した。

もう、未来は明るい。

でも、京楽の未来は明るくなかった。

「俺はもうすぐ死ぬ・・・・別れをいいたい」

「だめだよ、死んじゃだめだ!」

京楽は涙を流しながら、細くなった浮竹の体を抱き締めた。

もう、食事をすることもできず、ずっと点滴に管に繋がれていた。

「京楽・・・・お前と出会えて、本当によかった」

心からの安堵の言葉に、京楽の目から涙が零れた。

「浮竹・・・・ああ、神様。どうか浮竹の命をもっていかないでください」

「伝えたいことはたくさんある・・・・でも、時間がもうないようだ」

浮竹は、京楽の手の中で深い昏睡状態に陥り、そのまま息を引き取った。


愛しい人がいなくなった雨乾堂に、今日も京楽は訪れた。

いつものように、笑ってきたのかと、微笑みかけてきてくれる麗人は、もういない。

京楽は総隊長だ。責務がある。

いつまでも、浮竹のことを引きずっていてはいけないのだと分かっていても、悲しみは治まらなかった。

雨乾堂を取り壊し、そこに浮竹の墓を作ることになった。

浮竹の遺言だった。

ある日、浮竹の持ち物を整理していると、一通の手紙が混じっていた。

京楽へ。

そう書かれてあった。

中身を読んでいく。

どれほど浮竹が京楽を愛していたのかが、そこに綴られていた。

「こんなのずるいよ、浮竹・・・・・・・もう君は、いないのに」

隻眼となった目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。

(俺はお前を愛している。たとえ先に逝くことになっても、この想いは永遠だから。永遠の愛をお前に、京楽。どうか泣くな。笑って、俺のことを懐かしむようになってくれ。どうか・・・お前が、俺のせいで狂わないように)

「すでに狂ってるよ・・・・・・」

愛に狂っている。

「大好きだよ、浮竹」

手紙を、鬼道で燃やす。

「君のいない世界は、色がない」

京楽の瞳に映る世界は、モノクロだった。

「君のいない世界なんていらない・・・と言いたいところだけど、そういうわけにもいかないからね」

本当なら、君の後を追いたいくらいには、愛に狂っている。

その日、取り壊しが決まった雨乾堂で、最後の夜を過ごそうと京楽は雨乾堂で寝た。

夢の中に、浮竹が現れた。

「俺がいないからって、くよくよするな」

「無理だよ、浮竹・・・・こんなにも愛してるのに」

「俺も愛している。でも、未来は続いている。いつかきっと、未来でお前に会えるから。いつか同じ場所に辿り着くから・・・それまで、ずっと待ってるから、俺は先に逝く。京楽も、人生をほどほどにしてこっちにこいよ。また夢の中で会いにいくから。そして、いつかきっとお前にもう一度、会いにいく」

そう言われて、ふっと心が軽くなった。

人生はまだまだ長いが、浮竹は京楽の心の中にずっと生きている。

いつか、同じ場所に辿り着ける。

また、夢の中だが、会いにきてくれると誓ってくれた。いつか会いにきてくれると言ってくれた。


雨乾堂は取り壊されて、浮竹の立派な墓ができた。

「君が僕の中にいる・・・・いつか、そっちにいくまで、待っててね」

墓石に酒を注ぐ。

さよならを。

あえて、言わない。

また、いつか。

きっとまた、巡り合える。

たとえ死神でなかったとしても。

いつか、巡り合えると信じて。



「僕は京楽春水っていうんだ。君は?」

白い髪をした少年は、浮竹そっくりだった。

「えっと・・・・春風十四郎です」

名前まで同じ。流石に苗字は違うようだが。

「会いにきた、京楽」

「十四郎・・・・愛してる」

「俺もだ、春水」



ほら。

きっと。

会える。

さよならは、だから言わない。



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