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それでも隊長だった

「起きろおおおおおおおおおおおお」

「いやだあああああああああああああ」

「起きやがれこのやろうおおおおおおおおお」

「絶対に起きてやるもんかああああああああああ」

朝から、浮竹と海燕は熾烈なバトルを繰り広げていた。

布団をはがそうとする海燕と、それを阻止する浮竹。

普通に見ているだけなら微笑ましいが、本人達は命をかけた戦のように、戦っているのだ。

「もう10時だ、勤務時間の9時を回ってるんですよ!起きやがれ!」

「11時に起きる!」

「はぁ・・・・全く、今日も起こせなかった・・・・・」

海燕は力尽きた。

「よっしゃ、今日は俺の勝ちだ。じゃあ、11時にまたおこしにきてくれ。ZZZZZZZZ」

「はぁ・・・・なんつー上司だ。冬になると布団にへばりついて寝過ごして・・・まぁ、1日の仕事を残りの時間でちゃんとこなすから、目を瞑る日もありますが・・・・・」

11時なって、海燕が浮竹を起こしにきた。

「11時になりました。起きろおおおおおおおおおお」

布団と毛布をひっぺがすと、浮竹はその寒さにばっと起き上がった。そして、小さく舌打ちした。

「今、明らかに舌打ちしましたね!?11時に起こせといったのはあんたでしょう!」

「そんなの、守らなくてもいいのに」

「あんたね。仮にも13番隊隊長なんですよ!少しは隊長としての自覚を持ったらどうですか!」

「俺が寝過ごすことで、誰かに迷惑をかけているでもない」

「俺が非常に、迷惑を被っています」

「運命として、諦めろ」

「あんたねぇ!」

がみがみとお説教されていたが、浮竹は欠伸をかみ殺していた。

「全然聞いてねぇな、あんた!」

「聞いていた。他の隊長たちは最低でも8時には起きる、だろう?」

「なんだ、ちゃんと聞いてるんなら、実行に移してください!」

「他所は他所、うちはうち」

そう言い出した浮竹に、海燕は噴火しそうだった。

「隊長!」

「やぁ、おはようっていうかこんにちわ。浮竹、今起きたばかりかい?」

「京楽隊長も、何とか言ってやってくださいよ!この人、8時に起きないんです!9時の死神の業務の始まりの時間なっても起きやしない」

「浮竹ぇ、だめだよ。せめて9時には起きようよ」

「えーー」

「あんまり我儘いってると、甘味屋にいくのなしにするよ?」

その言葉に、浮竹は飛び起きた。

「海燕、早く昼餉と水をいれたたらいをもってこい!」

浮竹は夜着から死覇装に着替えて、きびきびと動き出す。

「さすが、京楽隊長・・・・・・」

「甘味物を与えないって脅せば、この子大抵起きるよ」

「なるほど・・・・・」

「こらそこ、海燕に情報を与えない!」

もちこまれた水をはったたらいで顔を洗い、急いで昼餉を食べて、仕事にとりかかった。

3時間もすれば、今日1日中かかると思われていた書類仕事は片付いていた。

「よし、今日の仕事は終了だ。文句はないな、海燕?」

「はいはい。もう自由時間です。京楽隊長といちゃつくなり、甘味屋にいくなり、寝るなりなんでもしてください」

「京楽、さっそく甘味屋へ行くぞ」

「はいはい」

こうして、始まりの遅い浮竹の一日は過ぎていく。

浮竹は、4日ぶりになる甘味屋でのスウィーツに満足そうな顔をしていた。

「たまには、苦労している海燕君におはぎでも持って帰るかい」

「ああ、そうだな。すみません、おはぎ20個持ち帰りで」

「ちゃっかり自分の分まで確保する君の精神には、感服するよ・・・・・」

おはぎが20個つまったパックンの入った袋を手に、浮竹は海燕を呼んだ。

「海燕、おはぎを買ってきたんだ。食え」

「え、まじですか。隊長が自分で食べないで俺にくれるなんて・・・・・明日、槍が降るな」

「俺の分は確保してある」

皿に、15このっているおはぎを、浮竹は食べていく。

パックの残りを見る。

5個入っていた。

3個で十分だと思い、口に出す。

「あと、2個、俺の分から食べても構いませんよ」

その言葉に、浮竹が固まった。

「お前、何考えている!さては、明日俺を起こすための取引材料か!?」

「なんでそんな思考にいきつくんですか」

海燕は長い溜息をついて、浮竹の食べているおはぎの乗った皿に、2個つけたした。

「おはぎを分けてもらっても、9時にしか起きないからな!」

「9時なら、十分です。いつも11時か昼まで寝てるんだから・・・・・・」

次の日。

浮竹は、珍しく8時に起きた。

朝餉を準備してもらおうと海燕を呼ぶと、額に手を当てられた。

「隊長が8時に起きるなんて、ありえない」

熱はなかった。

「うおおおお、なんて不吉なんだ」

「おい」

「今日は槍が降るうううううう」

「おい」

「ああっ、人生の最後かも!都に遺書を渡しておくんだった」:

「おい」

浮竹は、額にいっぱい血管マークを浮かべて、微笑んでいた。

「そうか、そんなに俺に早起きしてほしくないのか。もういい、もう一度寝る!」

「ああっ、違います隊長!起きてください!起きろおおおおおおおお!!!!」

「ZZZZZZZZZZZZZ]

揺さぶってもちっとも起きやしない。

布団と毛布をひっぺがそうとするが、ひっついていてなかなかとれない。

「今日の3時のおやつ、抜きにしますよ!ちなみに外郎(ういろう)です」

がばっと、浮竹は起き出した。

「朝餉と、水をはったたらいを」

「隊長がいつも朝飯食わないんで、朝餉の用意ができていません。一般隊士のものでいいなら、すぐに用意できます」

「一般隊士のものでいい」

京楽の言葉は、本当によく効いた。

これから浮竹を起こす時は、甘味物があることを口にしようと思う海燕。

これでも、13番隊の隊長なのだ。

きちんとしていれば、申し分ない。

そう思うのだった。











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