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海燕に怒られる京浮

春になった。

桜の花が散り出す季節。

「起きろおおおおおおおおおお」

「起きた」

冬の冬眠のような眠りとは真逆に、浮竹は自分から起き出した。

「ああああああ!冬のことが嘘みたいだああああああああ」

海燕は、嬉し泣きをしていた。

「海燕、お前はそんなに俺が一人で起きることが嬉しいのか?」

「嬉しいってレベルじゃありません。感動ものです」

だーーと涙を流す海燕に、大袈裟だと言っておいた。

8時には起きて、顔を洗い服を着替えて、朝餉をとる。

最近ちゃんと朝餉をとってくれるので、料理人は嬉しがっていた。

それは海燕もだ。

朝餉を食べず、酷い時は昼餉も食べずに寝続ける浮竹だ。

寝すぎたその日の晩には、寝れないと夜更かしすることもなくなった。

「ああ、冬はいやだなぁ。隊長が起きてくれないから。春~秋はいいですね。隊長が自分で起きてくれる・・・・・」

9時になり、仕事の始まりだった。

春~秋は、書類の作業能力は冬に比べて落ちる。

冬は、とにかく怠惰に眠りたいと、仕事をすぐに片付けてしまうのだが、春~秋は早めから起きて仕事をするので、比較的ゆっくりと仕事をした。

「海燕、ここの計算間違ってる」

「あ、ほんとだ」

冬の仕事もほぼミスはないが、間違いのチェックなど細かいところに、春~秋は気づいてくれる。

「その書類の計算がだめで、こっちもそれを応用してるからこっちも間違っている。訂正しておくから、6番隊に訂正した書類をもっていってくれ」

「朽木隊長のところか・・・・」

最近、朽木銀嶺と代替わりした、朽木白哉という若い青年が新しく隊長になって、まだ日が浅い。

「白哉は、まだひよっこだからな。書類のミスも多いだろうが、大目に見てやってくれ」

年齢にすると、海燕と同い年くらいだろうか。

ちょっと親近感がわいたが、頑なに貴族の掟を守ろうとする姿に、あまり好感をもてなかった。

「なんなんですか、朽木白哉って!4大貴族だかなんか知らないけど、態度がでかすぎる!」

ぷんすか怒って、戻ってきた海燕を宥めた。

「これから、6番隊に書類をもってくのは俺が直接行く」

「そうしてください。知り合いなんでしょう?」

「弟みたいなものだ」

「はぁ!?あんな弟、俺は絶対欲しくない・・・・」

「やぁ、やってるかい」

京楽だった。

「お前は、また気配を消して・・・普通に入ってこれないのか」

「いや、君が珍しく朝から起きてると聞いてね。僕も、珍しく仕事をこなしてきたわけさ」

「自分でいって珍しくってことは、どんだけ溜めこんでるんだ」

「さぁ。まだ半月分くらいじゃないかい」

「伊勢がかわいそうだ」

「七緒ちゃんは、これくらい慣れてるよ」

浮竹は思う。

「海燕も、伊勢も、上官に恵まれていないな」

「はぁ?何言ってるんだ、あんた」

「だって、俺は冬になるとずっと寝てしまうだろう」

「それは知ってます。病弱なことも全部ひっくるめて、俺は上官としてあんたを信用しているし、信頼していますし、尊敬しています。それは伊勢副隊長も同じじゃないんですか」

「七緒ちゃんも、海燕君みたいな考え方だったらいいな」

「そう思うなら、まず仕事を溜めこむな」

「浮竹の意地悪」

「ほら、京楽も仕事をもってきたんだろう?こっちの文机を使え」

京楽は、暇つぶしによく雨乾堂にやってくるが、時折仕事をもってきて、浮竹と同じ空間で仕事をした。

いつもは溜めこみすぎて、浮竹が手伝う羽目になるのだが、今のところまだ大丈夫なようだった。

「あーそっちの計算ミスってる」

「あ、ほんとだ」

「白哉の書類だ。まだ隊長になって日が浅いから、些細なミスをする。今度注意しておく」

そういう浮竹に、京楽がすね出す。

「朽木隊長のこと、名前で呼ぶんだ?仲いいんだね」

「この前も言っただろう。弟のようなものだと」

「どうだか・・・・」

つーんとなる京楽に、浮竹がその頬を両手で挟んで、キスをした。

「おいおい、あんたら何してるんだ」

「海燕うるさい。いいか、京楽。俺と白哉は、兄弟のような関係だ。俺が愛しているのは、京楽。お前一人だ。分かったな?」

「う、うん・・・・・」

京楽は、いきなり浮竹がキスをしてくるとは思っていなかったので、赤くなっていた。

「じゃあ、仕事続けるぞ」

昼餉の時間になり、京楽の分を用意していなかったので、京楽だけ一般隊士の食事と同じものになった。

それでも、随分質素だった頃から考えると、美味しいし、メニューも豊富になっていた。

「今日のデザートは桃か・・・・・」

「君、桃好きでしょ。僕の分もあげる」

一部のメニュー以外は、浮竹は一般隊士と同じ食事だった。ただ、隊長であるし病弱であるから、精をつけてもらおうと、一部が豪華になっていた。

「ありがたく、いただくとしよう」

カットされた桃を、爪楊枝で浮竹の口元にもっていくと、浮竹はそれをぱくりと食べた。

桃の果汁にまみれた唇を、ペロリと舐める浮竹。

京楽は、桃を口に含んで浮竹に口づけた。

「ん・・・・むう・・・・」

桃を咀嚼して、飲み込む。そのまま、ディープキスを繰り返していると、浮竹も京楽も頭をはたかれた。

「何まだ仕事が残ってるのに、盛ってるんですか!昼休みはもう終わりですよ!」

「ちぇっ・・・・・」

京楽をギロリと睨む。

「おお怖・・・・・」

「海燕、キスくらい別にいいだろ」

「だめです!あんたら放っておくと、仕事後回しにして睦みあうんだから!」

何度かそんなことがあったので、海燕も過敏になっていた。

「はいはい、大人しく仕事を片付ければいいんだろう」

「こういう時の海燕君って、七緒ちゃんなみに怖いね」

「そこ、聞こえてますから!」

「怖い怖い・・・・」

京楽はそう言いながら、仕事を片付けていくのだった。








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