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アイスバーズ京浮

注意。

アイスバーズです。

設定は適当。

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世の中には、アイスとジュースというものが存在する。
アイスの特徴は、体温が冷たいこと、体が弱いこと、もう一つはジュースと結ばれると3分以内に体が溶けてしまうこと。

ジュースはアイスに好意を抱いてしまうことが多く、アイスとジュースが結ばれることはアイスの死を意味している。

ジュースは自分がジュースであるということを知らない場合がほとんどだ。

アイスもジュースも稀なので、検査などたまにしか行われなかった。


浮竹はアイスだ。

身体が生まれつき弱く、長く生きられないとされていたが、ミミハギ様を宿らせたお陰で生き延びることができた。

浮竹の統学院からの大親友である京楽は、実はジュースだった。

浮竹は、自分がアイスであることを知っている。

京楽がジュースであることにも気づいていた。

でも、京楽に激しく惹かれながらも、ただ京楽を悲しませないために、迷惑をかけないためにずっと秘密にしてきた。


「おはよう、浮竹」

「ああ、おはよう」

同じ寮の部屋で寝起きしている浮竹と京楽は、今日も何気ない1日を過ごそうとしていた。

浮竹は京楽が好きだった。

アイスは本能的にジュースに好意を抱く。

そのせいか、同じ男性なのに京楽のことが好きになってしまっていた。

京楽は自分がジュースであることを知らない。

「今日の授業は・・・・・・・」

他愛ない会話を続け、学院に登校して授業を受けた。

昼休みになって、食堂で二人で昼食をとっていた。

「なぁ・・・・アイスとジュースって、知ってるか?」

「んー?ああ、アイスがジュースと想いが通じ合うと、アイスが溶けるってやつでしょ。知ってるけど、それがどうかしたの?」

「いや、ただ興味があっただけで」

「うん。悲劇だよね。結ばれたら、アイスは死ぬんだから」

京楽も、アイスとジュースの関係は知っていた。

今度、アイスとジュースの検査が行われることになっていた。

自分がジュースで、親友のはずの浮竹がアイスで、アイスである浮竹がジュースである京楽に想いを抱いてると知ったら、京楽はどうするのだろうか。

多分、想いあっていても、死に繋がる「好き」という言葉は口にしないだろう。

両想いであっても、好きだと口にして想いを明確にしない限り、アイスは溶けない。

だから、安堵もあった。

京楽が、浮竹のことを想っていても、多分「好き」とは言わないだろう。

それが、アイスとジュースが付き合っていける唯一の選択肢だ。

でも、ジュースは好きという言葉を言ってしまう場合がほとんどだ。だから、恐怖も覚えた。

自分がアイスとして溶けることではなく、溶けてしまった後の残された京楽のことに、恐怖を覚えた。


2週間が経ち、いよいよアイスとジュースの検査の日がやってきた。

結果、浮竹はアイス、京楽はジュースだと判明した。

その日から、浮竹は京楽を避けるようになっていた。

「どうして無視するの」

京楽が、浮竹の肩を掴み、自分のほうを振り向かせる。

「俺はアイスだ。ジュースのお前に迷惑しかかけない」

「そんなの、わかんないでしょ。それに、僕は君のことは」

「好き」とは、京楽は言わなかった。

「僕は、君のことを親友として見ているから、安心して。恋愛感情なんて抱いてないから」

「そうか」

浮竹は、落胆すると同時にほっとした。

京楽が傷つくことがないなら、友人として今まで通り過ごしていけばいいのだ。

「アイスとジュースだが、うまく付き合っていこう。俺も、お前の親友でありたい」

「うん」

握手を交わし合いながら、互いに想いを隠した。

京楽も、浮竹のことが好きだったのだ。

想いを告げることは、浮竹の死を意味するかもしれないと知って、京楽は浮竹に自分の想いをいつか伝えようとしていたが、やめた。

そうやって、アイスとジュースでありながら、二人は親友同士として学院を卒業し、死神となった。

死神になっても、交流は続いた。

お互いの想いを隠して、京楽は花街に繰り出して、浮竹に似た遊女の元に通っていた。

それを、浮竹は傷つきながら、ただ黙って見ていた。

浮竹も気づいていた。

京楽が、自分のことを好きなのだろうと。

京楽は、浮竹が自分のことを好きだとは気づいていないようだが。



「京楽、飲みすぎだぞ。さすがにこの酒は飲みすぎるとやばい」

「いいのいいの。こんなの酒のうちに入らないよ」

居酒屋で、二人で飲み合っていると、京楽が羽目を外して飲んだくれてしまった。

京楽が酔う姿が珍しくて、浮竹は甘い果実酒を飲みながら、京楽の背中を撫でた。

「アイスの俺は、いつ死んでもおかしくない。アイスは元々体が弱いから」

「うん・・・・・・」

「いつか、俺が死んでしまったら、墓参りにはきてくれよ」

「そんな、悲しいこと言わないでよ。僕はジュースだけど、浮竹のことは親友としてしか見てないから、大丈夫だよ」

本当は、大好きだけど。

想いを告げることはできない。

浮竹は、京楽を隊舎に送り届けると、自分に宛がわれた席官の家で、眠れない夜を過ごした。

京楽が欲しい。

京楽に振り向いて欲しい。

想いをつげたい。

眠れなくて、布団でごろごろしながら、悶々と悩みを抱え込む。



やがて、時は流れ二人は死神の隊長になっていた。

それでも、交流は続いた。

一度、浮竹は誘われて京楽と共に花街にでかけたことがあったが、浮竹は楽しくなさそうだったので、京楽はその一度きりの花街以外、誘うことをしなかった。

好きな相手が、遊女に手を出すのを、あまりいい気持ちで見ていられなくて、浮竹は酒をこれでもかというほど飲んで、京楽を困らせた。

「京楽のあほー」

「君、酔うと性格、少し変わるよね」

「そんなことはない。それに俺は酔ってなんかいない。京楽がアホだから、悪いんだ」

「はいはい。僕はアホだよ。好きな相手に好きとも告げれずに・・・・・・」

小声だったので、酔いつぶれた浮竹の耳には届かなかった。

浮竹を介抱して、去ろうとすると、浮竹は京楽の女ものの打掛の端を掴んだ。

「いつか、俺はお前に・・・・・・」

「しー。それ以上はだめだよ」

アイスとジュースである。

二人の想いが通じ合うことは、アイスである浮竹の死を意味していた。

「ん・・・なんでもない」

言葉にせず、好き、と口を動かした。

京楽は、浮竹の世話をいろいろとやいてから、自分の館に戻ってしまった。


「ああ。想いを告げれたらなぁ」

浮竹は、ごろりと天井を見上げながら、涙を零した。

京楽が好きだ。

好きだと告げたい。絶対に、京楽も自分のことが好きだ。

でも、それは自分の死を意味する。

「いっそ、死んでもいいかな・・・・・・・」

そんな思いを抱いて、さらに数十年が経過した。



大戦の勃発。

滅却師が攻めてきて、ミミハギ様を解放することを決めた浮竹は、京楽を呼び出していた。

「俺はミミハギ様を解放する。死ぬだろう」

「浮竹!他に方法はないのかい!?」

「ない」

ならば、せめて。

「俺がミミハギ様を解放したら、俺の元にきてくれ。死ぬ前に、伝えたいことがある」

「浮竹・・・・・・・・」

京楽は、悲痛な顔で浮竹を抱きしめた。

「分かったよ。その時がきたら、君の傍にいく」

やがて、浮竹はミミハギ様を解放して、肺の病が悪化して重篤になった。

大戦は、黒崎一護のお陰で、勝利で終わった。

けれど、浮竹の死はもう確実なもので、もってあと1週間というところだった。

浮竹は、入院せず、ただ己の死を雨乾堂で待っていた。



「浮竹、起きてるかい?」

「寝てる」

「起きてるじゃないか」

「俺はもうすぐ死ぬ。でも、その前にお前に伝えたいことがあるんだ」

「うん。僕も、君に伝えたいことがあって、ここにきたよ」

浮竹の死は明確。

もう、迷うことはやめた。

「好きだよ、浮竹」

「ああ・・・・そう言われるのを、数百年待っていたんだ。俺も好きだ、京楽。愛している」

「愛してるよ、浮竹」

ほろほろと。

少しずつ、浮竹の輪郭があやふやになっていく。

浮竹を胸に抱きしめて、キスをした。

「3分って、意外と長いんだな」

「君がいなくなってしまう」

「どうせ、尽きる命だ。こうして、京楽の想いを受けて、想いを告げれて、死ねるなら本望だ」

京楽は、ぼろぼろと涙を零した。

「ねぇ、神様は残酷だね。なんで君をアイスにしたのかな。なんで僕はジュースなんだろ」

ぎゅっと、腕の中の浮竹を抱きしめて、ただ涙を流した。

「泣くな、京楽」

浮竹は、ほろほろと溶けていく。

「逝かないで」

「俺は満足だよ。お前の腕の中で死ねて」

「僕はどうすればいいの。君を失ったこの世界で、一人で生きろと?」

「お前は強い。俺の死なんて、克服できる」

「浮竹、愛してる」

「俺も愛してる、京楽」

触れるだけの口づけをして、浮竹は溶けてしまった。

「浮竹・・・・・・・」

残された衣類を、抱きしめて、京楽は涙を零し続けた。

浮竹も、最期は泣いていた。

アイスとジュース。

決して想いを告げまいと誓っていたが、浮竹の死が近すぎて、想いを伝えた。

両想いだった。

幸せだった。

浮竹と過ごした数百年、幸せだった。

お互いを好きとは言わなかったが、想いはひそかに通じていたのだ。

アイスの死は、「好き」と告げられて愛されること。

アイスである浮竹は、京楽の好きという言葉と愛されることによって、溶けて世界から消えてしまった。

「大好きだよ、浮竹。愛してる」

13番隊の羽織を抱きしめて、京楽は目を閉じた。



愛とは、時に残酷だ。

アイスとジュースであると分かっていたから、浮竹の死が確定しない間は想いは告げなかった。

ミミハギ様の解放。

それによる、浮竹の病気の進行。

もう、助かる術はないと分かって、想いを告げた。

「僕が・・・君を、殺した。君を溶かした」

でも、不思議と後悔はなかった。

いなくなってしまった浮竹のぬくもりが完全に消え去り、京楽は顔をあげた。

「君の分まで生きるよ、僕は。だから、天国で見守っていてね」

ああ、そうだな。

そんな言葉が聞こえた気がした。

アイスの浮竹は、表向きは病死とされたが、遺体がないことで、アイスとしての死を受け入れたのだと、皆に話した。

京楽は攻められなかった。

逆に、泣いていいんだよと、総隊長でも泣いていいんだよと言われた。

もう、涙は浮竹が溶けていく間に流し尽した。

空の棺桶には、白い百合の花が添えられて、燃やされていく。


「さよなら、浮竹」

どうか、安らかに。

君の想いをもらって、僕は強くなれた。

君の死を乗り越えて、生きていく。

いつか、僕が君の傍にいったら、今度こそ一緒になろう。

さようなら、愛した人よ。

さようなら。





















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