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小説掲載プログ
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エンゲージリング

大戦の傷跡は濃かった。

実に半分以上の死神が死んだ。

そんな中、護廷13隊の被害は少ないと言われれば、そうだろう。

山本元柳斎重國、卯ノ花烈、そして浮竹十四郎。

隊長クラスでは、13人中3人だけだ。

そのうち卯ノ花烈と浮竹十四郎は、道を選び死んだ。

滅却師たちにやられたわけではない。



君が死んで、1日が経ち、1週間が経ち、1か月が経ち、1年が経った。

相変わらず君を想ったまま、毎日を過ごす。

総隊長として、復興に尽力を尽くしたせいもあり、焦土と化してしまった一番隊の執務室も新しく作られた。

「はぁ・・・・君に会いたいなぁ」

1年はあったとう間だった。それからまた時間だけが過ぎていく。

2年、3年・・・・・。

ふと、君の遺品を整理していて、僕あての手紙を見つけた。

死の直前にも手紙を渡された。

その時は、先にいく俺を許してくれ、愛している、迎えにいくまで達者で生きろとか、そんな言葉が書かれてあった。

僕は、勇気をだして僕宛の手紙の封を切り、中身を読んでいく。

引退するまで、一緒に仲良くやっていこう。そんなことがつらつらと書き綴られていた。

君が死んだ時ですら、零さなかった涙があふれて、手紙の上に雫を滴らせた。

「ずるいね君は・・・・・こんな幸せそうな未来図を僕に与えておいて、肝心の君がいない」

あと500年ほど死神を続けたら、一緒に引退して、屋敷で悠々自適な生活を送り、残りの人生を謳歌しよう。

そう書かれてあった。

もう乾いていたと思っていた涙が、溢れるように流れ落ちる。

「浮竹!浮竹、浮竹、浮竹ええええええ!!!」

泣いて叫ぶと、すっきりして涙はとまった。

代わりに、無理やり傷口を塞いだ心臓からドクドクと血が流れ出ていた。

「ふふ・・・・これ、僕がはじめて君にあげたものだ・・・・・」

高いものはいらないとつっぱる浮竹のために、柘榴の色硝子でできた髪飾りをあげた。

他にもいっぱい思い出の品がでできた。

螺鈿策の櫛、翡翠の髪飾り、翡翠のペンダント、お守り石。

僕は、浮竹の瞳の色が好きだった。

翡翠だと思った。

だから、高価なものでももらうようになってくれた君に、たくさんの翡翠の装飾品をプレゼントした。

死の間際まで、君の指に光っていたエンゲージリングが出てくると、また涙が零れそうになった。

墓の下までもっていってほしいと思っていたが、浮竹は死の間際に外して、僕に言ったのだ。

「約束を守れなくてすまない。せめて、このエンゲージリングを俺と思ってくれ」

そんなこと言われても。

僕は、記憶に蓋をするように、そのエンゲージリングも浮竹の遺品の中にいれていたのだ。

道理で、探しても見つからないはずだ。

エンゲージリングを手に取り、外に出て太陽に透かせてみせた。

裏側に、UKITAKEと名前が彫られていた。

小さな翡翠の飾られたエンゲージリングだった。

自分の分の、KYORAKUと名が彫られたエンゲージリングは今も指に光っている。

僕、君のエンゲージリングを小指にはめた。

「おかえり、浮竹・・・・」

エンゲージリングにキスをした。

ああ。

今日から、またしばらくの間不眠で悩まされそうだ。

4番隊にいって、眠り薬をもらってこないと。

君が大切にしたこの世界を、僕は一人で生きる。

見えない君の影を纏いながら。

浮竹。

僕は、君を失ったけど、それでも幸せだよ。

この世界には、笑顔が溢れている。

君が守りたかったものが、守られて息づいている。


「浮竹・・・・・・・・」

その日の夜、眠り薬を飲んで寝たのに、夢を見た。

浮竹が出てきた。

院生姿で、桜の木の下で僕が告白すると真っ赤になって殴りかかってきた。

ああ、懐かしいな。

もっと見ていた・・・・・。

ちゅんちゅんと、雀の鳴き声がして目が覚めた。

「ああ、夢か・・・・おはよう、浮竹」

浮竹のエンゲージリングにキスをした。

また、総隊長としての忙しい毎日がやってくる。

せめて、朝だけはゆっくりしたい。

「また、君の夢を見たいな・・・・・」

そんなことを思いながら、一番隊の執務室にやってくる。仕事の量は多い。

君を忘れることなく、生きていく。

僕が引退するその日まで。

そして、いつか迎えにきてね。

ずっと、ずっと待ってるから------------------。


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