エンシェントエルフとダークエルフ2
「大規模なゴブリンの拠点が発見された?」
「数が多すぎてBランクの冒険者にまで招集?」
浮竹と京楽は、冒険者ギルドでそんな話を耳に入れた。
普通、ゴブリンはF~Dの、初級冒険者が引き受ける内容のものだ。
だが、規模が大きすぎて、Bランクまでゴブリン退治に参加してくれとのことだった。
報酬金は、命を賭けにするには安すぎて、Cランクならともかく、Bランクで参加しそうな者はいなかった。
浮竹は、事態を重く見て、参加することに決めた。
「いいの、浮竹。報酬金低いよ」
「大規模な群れということは、繁殖のために人間やエルフの女性が大勢とらわれているということだ。放置しているわけにもいくまい」
あくまでモンスターの仕業なので、帝国軍は動いてくれないようだった。
だが、あまりにもCランクからBランクの冒険者の参加が少ないので、帝国から報酬金が付け足されることになった。
その報酬金目当てで、やっと他のBランクの冒険者も続々と参加を決めてくれた。
決行の日は、明後日。
馬車で、冒険者達はゴブリンの拠点がある地点よりある程度離れた距離で野営を行い、昼の時間に討伐することになった。
ゴブリンは、基本夜行性だ。
昼に活動することもあるが、夜目が効きやすい。
反対に、こちらは夜だと灯りがいる。弓手使い、アーチャーには厳しいだろう。
魔法使いも、両手で杖を持つか、自由な腕に盾をもつ。
浮竹と京楽は盾を持たずに、京楽が癒しの魔法まで使えるものだから、灯りは必要としなかったが、間違えて同士討ちになるのを避けたかったので、昼の決行には大賛成だった。
「GRUUUUUU!」
「GYAUUUUUU!!」
ゴブリンたちが大量に湧き出てきた。
それを、前衛たちが切り崩していく。
「良質な武具をもっているぞ!気をつけろ!」
前衛の声に、後衛の魔法使いや弓使いは魔法を放ったり、弓を射たりして、敵を叩いていく。
優勢だったのは最初のうちで、疲労感を覚え始めた前衛の一人が倒れ、また一人と倒れていく。
「何匹いるんだ!」
浮竹の言葉に、G~Fランクの冒険者たちは逃げ出していた。
「待て、逃げるな!」
「こんなところで命を失ってたまるか!」
武器を捨てて、続々と逃げ出していく。
「く、京楽さがれ!少し後退するぞ」
ゴブリンを統率しているホブゴブリンとゴブリンシャーマンが現れた。
「ホブゴブリンにゴブリンシャーマンか・・・Bランクが適正だな」
浮竹は、ミスリルの剣に聖属性を付与して、ゴブリンを斬り捨てていく。
だが、ゴブリンもやられっぱなしじゃない。武器を持って挑んでくるし、一番厄介なのは、ゴブリンの弓使いとゴブリンシャーマンの魔法だった。
「総崩れになる前に、ゴブリンシャーマンとホブゴブリンを倒すぞ!」
浮竹の言葉に、Cランク以上の冒険者が頷き、ホブゴブリンとゴブリンシャーマンをなんとか退治する。
統率のとれていたゴブリンの軍団が、統率者を失ったことで、ばらばらに動き出した。
「今だよ!魔法使いたちは弓手を先に倒して!ウォーターボールで窒息死させてしまえばいい!水の魔法が使えない子は火で焼いて!土属性の子は岩で押しつぶして!風属性の子は、かまいたちで首を切り落として!」
京楽が、いつの間にか指揮をとっていた。
弓手を失ったゴブリンたちは、次々に魔法で倒れていった、
「GURUUUU!」
「GYARUUUUUU!!!」
奥から、縄で繋がれた裸の女性たちが連れ出されてきた。
「人間ドモ、武器ヲ、捨テロ。ソウイシナイト女タチノ命ハナイ」
「人質作戦ときたか・・・・・」
「どうする、京楽」
「京楽さん」
「ここで引き下がっては意味がない、睡眠玉や煙玉があるから、どんどん投げて!」
ギルド側で、ある程度の物資は補給されていた。
人質を取られた時の作戦として、煙玉と睡眠玉をたくさんもってきてもらった。
それを人質のいるところ目がけて投げていくと、煙玉で目をやられたゴブリンたちは、次の睡眠玉でスリープの魔法がかけられたのと同じ状態になり、眠っていった。
人質の女性たちも眠るが、ゴブリンも眠っているので安全だった。
あらかたのゴブリンが動くのをやめたのを合図に、全軍で突撃していく。
人質の女性を解放すると、眠っているゴブリンたちにトドメをさしていく。
「京楽、よく指示を出してくれた。お陰で、脱走者はいたが、なんとかなった」
「任せてよ、浮竹。君を守るのも、僕の役目だよ」
救出された女性たちは皆裸だったので、毛布を与えられた。
「ああああ!殺して、お願い、私を殺してええ!ゴブリンの子供なんて産みたくないいい!!」
「いやあああああああ」
「きゃあああ、おなかにゴブリンの子が!」
浮竹が、透き通った声で女性たちに安静の魔法をかけた。
泣き叫んでいた女性たちが静かになっていく。
「君たちの身柄は、神殿が預かる。神殿で、ゴブリンを身籠ってしまった女性の子はおろされるから、安心してくれ。ゴブリンに汚された記憶も消される。だから、安心してくれ」
女性たちは泣き崩れた。
そんな女性たちを一人一人安心させるように、水と食料を与えていく。
浮竹は見た目が女性でも通るほどに華奢で、エンシェントエルフだけであって、顔立ちは優しく美しく整っていた。
皆、浮竹を見ていた。
京楽は、胸にちりっとする何かを感じた。それが嫉妬であると気づいたのは、冒険者ギルドに帰ってからだった。
逃走した冒険者は階級を1つ落とされた。
浮竹と京楽は、ギルドマスターに呼ばれた。
ギルドマスターは、オカマだった。
「あらやだん、浮竹ちゃん、春ちゃん、今回のゴブリン討伐では指揮をとってくれたり、騒ぎ出した女性を鎮めてくれたりしたでしょう?だ・か・ら、特別にギルドマスタ-の愛の抱擁をあ・げ・る♡」
「「謹んで辞退します」」
「あらん、ハモらなくてもいいじゃない。嘘よ、嘘。特別報酬金が出るわ。金貨10枚ね」
「ありがたい」
「うん、僕もありがたくもらうよ」
二人で合計で金貨20枚になる。今回のゴブリン討伐の報酬金が金貨8枚だったので、合計で一人18枚、二人で36枚になった。
「唐突なクエストの割には、いい収入になったな」
「うん。でも、君が女性たちに声をかけていって、縋りつかれたり抱き着かれているのを見ていいると、胸の中がもやもやした。はじめて、嫉妬という感情を知ったよ」
「俺は、お前以外にいらない」
真剣な表情で、浮竹は京楽の手を掴み、自分の胸に当てた。
「浮竹・・・・・」
「ダークエルフの京楽が好きなんだ。だから、お前以外に、親しい人はいらない」
「浮竹・・・・大好きだよ」
「俺も大好きだ、京楽」
浮竹は軽く体を伸ばしてから、京楽を誘う。
「公共浴場に行こう。今日はゴブリンの血とか脂とか浴びたから、風呂に入りたいし、服も洗濯しなくちゃ」
ちなみに、公共浴場には洗濯用のお湯があり、寒い時期でも温度が一定に保たれているため、銅貨2枚するが、よくそこを借りて服を洗った。
ある程度洗い物を溜めてかた使うのだが、今日は頭からゴブリンの血を浴びたりしたので、拭ったとはいえ、気持ち悪くてすぐに公共浴場を利用したかったのだが、念のために冒険者ギルドに顔を出したのだ。
報酬金は後日でもよかったが、宿代を払ったので、手持ちが心元なくなっていただけあって、助かった。
公共浴場で、股間は隠していれど、浮竹はエンシェントエルフであるせいか、見た目がよくて男性からのそういう意味な視線で見られるのが、京楽には耐えられなかった。
「ねぇ、君、何、僕の浮竹をじーっと見つめているのかな?」
「な、なんでもないです!」
男性は、慌てて風呂場から飛び出していった。
綺麗だなぁとただ純粋に見る視線もあったが、それを全てシャットアウトするように、京楽は視線を巡らせて、浮竹に注ぐ視線はなくなった。
「どうした、京楽。体を早く洗え」
「うん。浮竹は、いつまでも今のままでいてね」
「変な奴だな」
高めだった石鹸の泡立ちはよくシャンプーもいい匂いをさせていた。
同じ石鹸とシャンプーを使うのだが、京楽の髪は天然パーマでうねってしまう。浮竹のような長いストレートな髪に憧れた。
「浮竹はリンスも使ってね」
「そういうお前は使わないのか?」
「使ったところで、僕の髪はあんまり変わらないしね」
浮竹はリンスをしてから髪をシャワーで洗い流した。風呂に入り、伸びをする。
「はぁ、一日の疲れが癒される。ゴブリン退治はしばらくこりごりだ」
神殿に送った女性の数人から、傍に居て欲しいと泣きつかれて、別れるのにかなり時間が必要fだった。
「浮竹が、僕のものって印でもあればいいのに」
「お前からもらったブレスレット、しているだろ?」
「うん、そうだね。そんな安物じゃなくって、もっといいもの買えばいいのに」
「お前が、最初の稼ぎで買ってくれたこのブレスレットがいいんだ」
素材は銀でできており、値段銀貨3枚ほどだった。
1日の宿代になるくらいだから、そんなに安物というわけでもないが、Bランクになり金貨を稼げるようになった今から見ると、安物だろう。
翌日になって、冒険者ギルドに行こうとして、まだ道をよくわかっていない京楽とはぐれてしまった。
そして、大切なブレスレットを落としてしまい、京楽によく似た人物と会うことになる。
プルンという名のスライムにも出会った。
その日は、なんだか不思議な一日で、結局冒険者ギルドには行かず、宿屋に戻って、同じベッドで昼寝をした。
夜襲するときもあるので、寝れる時に寝れるように体がなっていた。
夕刻くらいに目覚めて、冒険者ギルドに顔を出すと、Sランク冒険者がドラゴンを退治したという話でもちきりだった。
「俺たちも、早くドラゴンを倒せるくらいにまで、なりたいな」
「まだまだ当分先の話だね。まだAランクへの昇格も見えない」
「そうだな。ドラゴンを退治したSランク冒険者のパーティーは5人か。俺たちもパーティーメンバーを増やすべきなのだろうが」
「そんなの、いらないよ!僕がサポートするから!」
「ああ、分かっている。お前の種族がばれてしまう可能性もあるしな」
京楽はダークエルフだ。
ダークエルフは血を好み、破壊活動ばかりする。ある時はモンスターを率いて町を滅ぼそうとしたり、ある時は邪教徒となって、生贄に人間を攫い、殺したりする。
全てのダークエルフがそうではないが、ダークエルフで冒険者稼業をやっていこうにも、仲間になってくれる者はいないので、相当難しいだろう。
京楽は、肌が白いのをいいことに、普通のエルフであるウッドエルフと種族を偽っていた。
種族を偽ることは罪ではないが、真実を知られたら、きっと冒険者ギルドの知り合いの仲間たちも京楽を見捨てるだろう。
なのに、浮竹はいつでも京楽の傍にいてくれた。
エンシェントエルフの者たちに発見され、同胞から見捨てられた京楽は、牢に入れられて暮らしていた。
しかし、外に抜け出せる道を浮竹が知っていて、よく遊びにきてくれた。
冒険者登録できる12歳・・・エルフでいう、100歳くらいになった時に、冒険者登録をした。
奇遇なことに、浮竹と京楽は生まれた年が同じだった。フレイア歴2050年。
今は2230年になる。
エルフは種族によって寿命が違うが、エンシェントエルフとダークエルフはほぼ同じで、千年以上を生きる。
まだ年若いエルフに入るので、浮竹には見合い話とかが何度か舞いこんできたが、全部浮竹が断った。
京楽がいるからとは、言えなかった。
言えば最後、京楽は処刑されるだろう。
長たちに気まぐれで、たまたま生きていることを許されている身分だった。
浮竹が捨て去ったエルフの森には、浮竹が京楽にかどわかされたということになっていた。
今更、帰りようがない。
身分保障の人間もいないので、一応何かあった場合はギルドマスターが身分証明者になることになっていたが、家を借りたりするのはもっと親族などがいないとだめだった。
「お金を溜めて、二人で暮らせる家を買おう」
「うん、いいね。庭付きの一戸建てがいいね」
「まずは、そのためにも依頼を受けまくって達成しまくって、Aランク冒険者にならなくてはな」
「そうだね」
いつもは二人は別々の部屋に宿屋で泊まっているが、時折同じ部屋で寝た。
荷物が多いので、一人部屋の部屋は狭すぎるし、二人部屋は高くて、一人部屋を2つ借りた方が安かった。
「明日は、Aランク向けの仕事を受注してみよう」
「そうだね。何があるかわくわくだね」
ランクは適正があり、BランクだとF~Cの依頼も受けれるし、Bランクはもちろん、一つ上のAランクの仕事も受けれた。
二人は夢を見た。
浮竹が妖刀の精霊になっていて、京楽が不老不死の主になっている夢だった。
朝起きると、そんな夢の内容は忘れてしまっていた。
「さぁ、冒険者ギルドに行くぞ」
「ちょっと待ってよ。まだ朝食の途中なんだけど!」
「きりきりさっさと食え!」
「無茶言わないでよ!」
彼らの冒険はまだ始まったばかり。
目指せ、Sランク冒険者!
「数が多すぎてBランクの冒険者にまで招集?」
浮竹と京楽は、冒険者ギルドでそんな話を耳に入れた。
普通、ゴブリンはF~Dの、初級冒険者が引き受ける内容のものだ。
だが、規模が大きすぎて、Bランクまでゴブリン退治に参加してくれとのことだった。
報酬金は、命を賭けにするには安すぎて、Cランクならともかく、Bランクで参加しそうな者はいなかった。
浮竹は、事態を重く見て、参加することに決めた。
「いいの、浮竹。報酬金低いよ」
「大規模な群れということは、繁殖のために人間やエルフの女性が大勢とらわれているということだ。放置しているわけにもいくまい」
あくまでモンスターの仕業なので、帝国軍は動いてくれないようだった。
だが、あまりにもCランクからBランクの冒険者の参加が少ないので、帝国から報酬金が付け足されることになった。
その報酬金目当てで、やっと他のBランクの冒険者も続々と参加を決めてくれた。
決行の日は、明後日。
馬車で、冒険者達はゴブリンの拠点がある地点よりある程度離れた距離で野営を行い、昼の時間に討伐することになった。
ゴブリンは、基本夜行性だ。
昼に活動することもあるが、夜目が効きやすい。
反対に、こちらは夜だと灯りがいる。弓手使い、アーチャーには厳しいだろう。
魔法使いも、両手で杖を持つか、自由な腕に盾をもつ。
浮竹と京楽は盾を持たずに、京楽が癒しの魔法まで使えるものだから、灯りは必要としなかったが、間違えて同士討ちになるのを避けたかったので、昼の決行には大賛成だった。
「GRUUUUUU!」
「GYAUUUUUU!!」
ゴブリンたちが大量に湧き出てきた。
それを、前衛たちが切り崩していく。
「良質な武具をもっているぞ!気をつけろ!」
前衛の声に、後衛の魔法使いや弓使いは魔法を放ったり、弓を射たりして、敵を叩いていく。
優勢だったのは最初のうちで、疲労感を覚え始めた前衛の一人が倒れ、また一人と倒れていく。
「何匹いるんだ!」
浮竹の言葉に、G~Fランクの冒険者たちは逃げ出していた。
「待て、逃げるな!」
「こんなところで命を失ってたまるか!」
武器を捨てて、続々と逃げ出していく。
「く、京楽さがれ!少し後退するぞ」
ゴブリンを統率しているホブゴブリンとゴブリンシャーマンが現れた。
「ホブゴブリンにゴブリンシャーマンか・・・Bランクが適正だな」
浮竹は、ミスリルの剣に聖属性を付与して、ゴブリンを斬り捨てていく。
だが、ゴブリンもやられっぱなしじゃない。武器を持って挑んでくるし、一番厄介なのは、ゴブリンの弓使いとゴブリンシャーマンの魔法だった。
「総崩れになる前に、ゴブリンシャーマンとホブゴブリンを倒すぞ!」
浮竹の言葉に、Cランク以上の冒険者が頷き、ホブゴブリンとゴブリンシャーマンをなんとか退治する。
統率のとれていたゴブリンの軍団が、統率者を失ったことで、ばらばらに動き出した。
「今だよ!魔法使いたちは弓手を先に倒して!ウォーターボールで窒息死させてしまえばいい!水の魔法が使えない子は火で焼いて!土属性の子は岩で押しつぶして!風属性の子は、かまいたちで首を切り落として!」
京楽が、いつの間にか指揮をとっていた。
弓手を失ったゴブリンたちは、次々に魔法で倒れていった、
「GURUUUU!」
「GYARUUUUUU!!!」
奥から、縄で繋がれた裸の女性たちが連れ出されてきた。
「人間ドモ、武器ヲ、捨テロ。ソウイシナイト女タチノ命ハナイ」
「人質作戦ときたか・・・・・」
「どうする、京楽」
「京楽さん」
「ここで引き下がっては意味がない、睡眠玉や煙玉があるから、どんどん投げて!」
ギルド側で、ある程度の物資は補給されていた。
人質を取られた時の作戦として、煙玉と睡眠玉をたくさんもってきてもらった。
それを人質のいるところ目がけて投げていくと、煙玉で目をやられたゴブリンたちは、次の睡眠玉でスリープの魔法がかけられたのと同じ状態になり、眠っていった。
人質の女性たちも眠るが、ゴブリンも眠っているので安全だった。
あらかたのゴブリンが動くのをやめたのを合図に、全軍で突撃していく。
人質の女性を解放すると、眠っているゴブリンたちにトドメをさしていく。
「京楽、よく指示を出してくれた。お陰で、脱走者はいたが、なんとかなった」
「任せてよ、浮竹。君を守るのも、僕の役目だよ」
救出された女性たちは皆裸だったので、毛布を与えられた。
「ああああ!殺して、お願い、私を殺してええ!ゴブリンの子供なんて産みたくないいい!!」
「いやあああああああ」
「きゃあああ、おなかにゴブリンの子が!」
浮竹が、透き通った声で女性たちに安静の魔法をかけた。
泣き叫んでいた女性たちが静かになっていく。
「君たちの身柄は、神殿が預かる。神殿で、ゴブリンを身籠ってしまった女性の子はおろされるから、安心してくれ。ゴブリンに汚された記憶も消される。だから、安心してくれ」
女性たちは泣き崩れた。
そんな女性たちを一人一人安心させるように、水と食料を与えていく。
浮竹は見た目が女性でも通るほどに華奢で、エンシェントエルフだけであって、顔立ちは優しく美しく整っていた。
皆、浮竹を見ていた。
京楽は、胸にちりっとする何かを感じた。それが嫉妬であると気づいたのは、冒険者ギルドに帰ってからだった。
逃走した冒険者は階級を1つ落とされた。
浮竹と京楽は、ギルドマスターに呼ばれた。
ギルドマスターは、オカマだった。
「あらやだん、浮竹ちゃん、春ちゃん、今回のゴブリン討伐では指揮をとってくれたり、騒ぎ出した女性を鎮めてくれたりしたでしょう?だ・か・ら、特別にギルドマスタ-の愛の抱擁をあ・げ・る♡」
「「謹んで辞退します」」
「あらん、ハモらなくてもいいじゃない。嘘よ、嘘。特別報酬金が出るわ。金貨10枚ね」
「ありがたい」
「うん、僕もありがたくもらうよ」
二人で合計で金貨20枚になる。今回のゴブリン討伐の報酬金が金貨8枚だったので、合計で一人18枚、二人で36枚になった。
「唐突なクエストの割には、いい収入になったな」
「うん。でも、君が女性たちに声をかけていって、縋りつかれたり抱き着かれているのを見ていいると、胸の中がもやもやした。はじめて、嫉妬という感情を知ったよ」
「俺は、お前以外にいらない」
真剣な表情で、浮竹は京楽の手を掴み、自分の胸に当てた。
「浮竹・・・・・」
「ダークエルフの京楽が好きなんだ。だから、お前以外に、親しい人はいらない」
「浮竹・・・・大好きだよ」
「俺も大好きだ、京楽」
浮竹は軽く体を伸ばしてから、京楽を誘う。
「公共浴場に行こう。今日はゴブリンの血とか脂とか浴びたから、風呂に入りたいし、服も洗濯しなくちゃ」
ちなみに、公共浴場には洗濯用のお湯があり、寒い時期でも温度が一定に保たれているため、銅貨2枚するが、よくそこを借りて服を洗った。
ある程度洗い物を溜めてかた使うのだが、今日は頭からゴブリンの血を浴びたりしたので、拭ったとはいえ、気持ち悪くてすぐに公共浴場を利用したかったのだが、念のために冒険者ギルドに顔を出したのだ。
報酬金は後日でもよかったが、宿代を払ったので、手持ちが心元なくなっていただけあって、助かった。
公共浴場で、股間は隠していれど、浮竹はエンシェントエルフであるせいか、見た目がよくて男性からのそういう意味な視線で見られるのが、京楽には耐えられなかった。
「ねぇ、君、何、僕の浮竹をじーっと見つめているのかな?」
「な、なんでもないです!」
男性は、慌てて風呂場から飛び出していった。
綺麗だなぁとただ純粋に見る視線もあったが、それを全てシャットアウトするように、京楽は視線を巡らせて、浮竹に注ぐ視線はなくなった。
「どうした、京楽。体を早く洗え」
「うん。浮竹は、いつまでも今のままでいてね」
「変な奴だな」
高めだった石鹸の泡立ちはよくシャンプーもいい匂いをさせていた。
同じ石鹸とシャンプーを使うのだが、京楽の髪は天然パーマでうねってしまう。浮竹のような長いストレートな髪に憧れた。
「浮竹はリンスも使ってね」
「そういうお前は使わないのか?」
「使ったところで、僕の髪はあんまり変わらないしね」
浮竹はリンスをしてから髪をシャワーで洗い流した。風呂に入り、伸びをする。
「はぁ、一日の疲れが癒される。ゴブリン退治はしばらくこりごりだ」
神殿に送った女性の数人から、傍に居て欲しいと泣きつかれて、別れるのにかなり時間が必要fだった。
「浮竹が、僕のものって印でもあればいいのに」
「お前からもらったブレスレット、しているだろ?」
「うん、そうだね。そんな安物じゃなくって、もっといいもの買えばいいのに」
「お前が、最初の稼ぎで買ってくれたこのブレスレットがいいんだ」
素材は銀でできており、値段銀貨3枚ほどだった。
1日の宿代になるくらいだから、そんなに安物というわけでもないが、Bランクになり金貨を稼げるようになった今から見ると、安物だろう。
翌日になって、冒険者ギルドに行こうとして、まだ道をよくわかっていない京楽とはぐれてしまった。
そして、大切なブレスレットを落としてしまい、京楽によく似た人物と会うことになる。
プルンという名のスライムにも出会った。
その日は、なんだか不思議な一日で、結局冒険者ギルドには行かず、宿屋に戻って、同じベッドで昼寝をした。
夜襲するときもあるので、寝れる時に寝れるように体がなっていた。
夕刻くらいに目覚めて、冒険者ギルドに顔を出すと、Sランク冒険者がドラゴンを退治したという話でもちきりだった。
「俺たちも、早くドラゴンを倒せるくらいにまで、なりたいな」
「まだまだ当分先の話だね。まだAランクへの昇格も見えない」
「そうだな。ドラゴンを退治したSランク冒険者のパーティーは5人か。俺たちもパーティーメンバーを増やすべきなのだろうが」
「そんなの、いらないよ!僕がサポートするから!」
「ああ、分かっている。お前の種族がばれてしまう可能性もあるしな」
京楽はダークエルフだ。
ダークエルフは血を好み、破壊活動ばかりする。ある時はモンスターを率いて町を滅ぼそうとしたり、ある時は邪教徒となって、生贄に人間を攫い、殺したりする。
全てのダークエルフがそうではないが、ダークエルフで冒険者稼業をやっていこうにも、仲間になってくれる者はいないので、相当難しいだろう。
京楽は、肌が白いのをいいことに、普通のエルフであるウッドエルフと種族を偽っていた。
種族を偽ることは罪ではないが、真実を知られたら、きっと冒険者ギルドの知り合いの仲間たちも京楽を見捨てるだろう。
なのに、浮竹はいつでも京楽の傍にいてくれた。
エンシェントエルフの者たちに発見され、同胞から見捨てられた京楽は、牢に入れられて暮らしていた。
しかし、外に抜け出せる道を浮竹が知っていて、よく遊びにきてくれた。
冒険者登録できる12歳・・・エルフでいう、100歳くらいになった時に、冒険者登録をした。
奇遇なことに、浮竹と京楽は生まれた年が同じだった。フレイア歴2050年。
今は2230年になる。
エルフは種族によって寿命が違うが、エンシェントエルフとダークエルフはほぼ同じで、千年以上を生きる。
まだ年若いエルフに入るので、浮竹には見合い話とかが何度か舞いこんできたが、全部浮竹が断った。
京楽がいるからとは、言えなかった。
言えば最後、京楽は処刑されるだろう。
長たちに気まぐれで、たまたま生きていることを許されている身分だった。
浮竹が捨て去ったエルフの森には、浮竹が京楽にかどわかされたということになっていた。
今更、帰りようがない。
身分保障の人間もいないので、一応何かあった場合はギルドマスターが身分証明者になることになっていたが、家を借りたりするのはもっと親族などがいないとだめだった。
「お金を溜めて、二人で暮らせる家を買おう」
「うん、いいね。庭付きの一戸建てがいいね」
「まずは、そのためにも依頼を受けまくって達成しまくって、Aランク冒険者にならなくてはな」
「そうだね」
いつもは二人は別々の部屋に宿屋で泊まっているが、時折同じ部屋で寝た。
荷物が多いので、一人部屋の部屋は狭すぎるし、二人部屋は高くて、一人部屋を2つ借りた方が安かった。
「明日は、Aランク向けの仕事を受注してみよう」
「そうだね。何があるかわくわくだね」
ランクは適正があり、BランクだとF~Cの依頼も受けれるし、Bランクはもちろん、一つ上のAランクの仕事も受けれた。
二人は夢を見た。
浮竹が妖刀の精霊になっていて、京楽が不老不死の主になっている夢だった。
朝起きると、そんな夢の内容は忘れてしまっていた。
「さぁ、冒険者ギルドに行くぞ」
「ちょっと待ってよ。まだ朝食の途中なんだけど!」
「きりきりさっさと食え!」
「無茶言わないでよ!」
彼らの冒険はまだ始まったばかり。
目指せ、Sランク冒険者!
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