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ドラゴン族の子とミミック11

「あーんあーん」

「どうしたんだ?迷子か?」

「くすん」

小さな男の子が町のはずれで泣いていて、たまたま通りかかった浮竹が声をかける。買い物をした帰り道であった。

「お母さん、いなくなちゃった」

「じゃあ、一緒に探して‥‥‥うあ?」

小さな男の子は、浮竹の腕に注射器を打つ。

男の子の姿が揺らいで、がらの悪そうな成人した男性の姿になる。

「こりゃ、噂通りの上物だ。奴隷として売ったら金になるだろうが、やっぱり竜人族というと血の宝石のほうが高いからな」

「しまった‥‥‥京楽‥‥」

浮竹は、複数の男に囲まれて、麻酔を無理やり注射されてずた袋の中に入れられて、王都アルカンシェルのスラム街に連れ去られるのであった。



「おかしい」

時間になっても帰ってこない浮竹に、京楽がしびれを切らしそうになる。だが、浮竹とてAランク冒険者。

少々の危険は自分で回避できるだろう。

何か事件に巻き込まれて、解決しているんだろうと、その日は浮竹の帰りを待ちながら眠ってしまった。

「ポチ、浮竹が帰ってこない。匂いたどれる?」

「きしきし」

ミミックは鼻がいい。

犬と同じくらいか、それ以上の嗅覚をもっている。

リードにつないだポチに引きずられて、やってきたのは町の外れだった。

麻酔の注射器を発見して、京楽は顔を青ざめる。

「やっぱり、何かあったんだ!ポチ、このまま後を追える?」

「きしきし」

任せろ。

ポチは、王都アルカンシェルのスラム街に京楽を導く。

さて、それより数刻前。

浮竹は、縄でしばりあげられて、魔封じの首枷をされて、スラム街のある住宅に監禁されていた。

「なにが狙いだ」

「あんたの血さ。大量の血が欲しい。血の宝石にして闇ルートで販売するのさ」

「それにしても、男にしておくのはもったいないくらいの美人だな」

浮竹を取り囲んでいた男の一人が、舌なめずりをして浮竹の顎に手をかける。

「お前ら、死ぬぞ?俺の連れは、甘くないやつだからな。直に俺を助けにきてくれる」

「はぁ?ここまでなんの証拠も残してないはずだぜ?」

「俺はミミック牧場をしている。ミミックは、犬より嗅覚がいいんだ」

男たちは、ちっと舌打ちをする。

「とりあえず、血を抜けるだけ抜くぞ」

太い注射器を見て、浮竹の意識はそこで途切れた。



「よくも浮竹を‥‥‥‥」

血を抜かれまくって、その血はたくさんの血の宝石になっていた。

それを手にしながら、男たちが瞳の色を深紅に変えた京楽の、ありえない形に恐怖していた。

「きょうら‥‥く?」

「よくもボクの浮竹を傷つけたね」

京楽は、応急処置で同じ竜人族の自分の血を浮竹に与えてから、浮竹を攫った者たちを追い詰める。

半ば、ドラゴン化していた。

怒りのあまり、ドラゴン化はどんどん進行していく。

「ひぎゃあああ、化け物だああ!!!」

「ドラゴンだあああ!!」

「逃がすとでも?」

京楽が手を伸ばすと、ドラゴンのかぎ爪で男たちは次々とものいわぬ死体となっていく。

「主犯は君だね?」

「ひいいいいい」

浮竹の血を抜いた注射器をもっていた男に、京楽はブレスを吐いた。

「だめだ、京楽‥‥‥ドラゴンになったら、この平和な王都アルカンシェルを火の海に変えてしまう」

「ぐるるるるる」

すでに、京楽の姿はドラゴンになっていた。

浮竹は、幾度も意識を失いそうになりながら、ドラゴン化して暴れ出した京楽の傍に行き、人の小さな体でそのドラゴン化した京楽の大きな足に触れる。

「京楽‥‥」

「ぐるるるるる」

「きしきいしいい!!!」

ここまで案内してくれたポチが、涙を流しながら京楽の足をかじる。

その痛みに、京楽は足元を見た。

「‥‥‥うき、た、け‥‥ポ、チ」

「そうだ、俺たちだ。もう大丈夫だから。本気で暴れる前に、人の姿に戻ってくれ。お願いだ」

浮竹は、ぽろぽろと涙をこぼす。

その涙は、竜涙石というこれまた貴重な宝石となった。

「あああ‥‥‥俺は、人を殺して‥‥」

「大丈夫だ。俺でも、反対の立場なら殺してた」

「きしきし」

ポチが、わんわんと泣きまくる。

浮竹も泣いていた。

京楽は、気づくと人の姿に戻っていた。

「ボクは‥‥‥」

騒ぎで人が集まってくる。

憲兵隊がやってきて、まだ生きていた犯人の一味を捕獲する。

「竜人族の、拉致監禁暴行罪で、逮捕する!」

京楽と浮竹は、責められなかった。

憲兵隊の隊長が、浮竹と京楽に詫びる。

「この度は、このスラムの屑どもが大変な真似をしてしまって申し訳ない!本当なら、国王から謝罪が行われるべきなのだが、今遠征にでかけているので。代わりに、ツェーリッヒ公爵から謝罪があるかと」

「パスだよ。人間の社会に興味なんてない。犯人も捕まったようだし、ボクと浮竹は戻るよ」

「京楽殿、どうかドラゴンたちを呼んでこの王都アルカンシェルを火の海には」

「しないよ。ボクと浮竹は、竜人族の里を追われてやってきたんだ。今回は、怒りのあまりボクがドラゴン化してちょっと暴れちゃったけど、浮竹に感謝してね。彼のお陰で、ボクは暴走しないで済んだ。もしも暴走してたら、今頃この王都アルカンシェルは火の海になってたよ」

「浮竹殿、感謝する!」

「もういい。帰ろう、京楽」

「うん。血は足りてる?」

「ああ。血の宝石と竜涙石は、京楽が壊した建物とかの修繕費にあててくれ」

「しかし、この量の血の宝石だと高額すぎて‥‥‥‥」

「スラム街をなくして、スラム街の住人をちゃんとした国民に受け入れるのに使ってくれ。それでもおつりがくるはずだ」

「はい。では、国王と大臣とツェーリッヒ公爵にそのように通しておきます」

浮竹は、京楽にお姫様抱っこされながら、ミミックのポチを連れてリターンの魔法へ家に戻った。



「んー、今何時?」

「夕方の4時」

「もう一度寝る」

「ボクも。暴れちゃって、眠気が半端ない」

「俺も、血を抜かれすぎたせいで、休眠に入りかけている。眠くて仕方ない」

二人は、全てを放棄して、3日間眠り続けた。

「あー、よく寝たぁ」

「んー、いい朝だ」

「きしきし」

ポチが、二人が起きたことに喜んでやってくる。

「ああ、飯を食べれていなかったんだな」

浮竹は、まだ目覚めたばかりで少しぼーっとしていたので、4匹のミミックと8匹の子ミミック用にコーンフレークをあげた。

「浮竹、無理しないで寝ていて?ボクが朝食用意するから」

「ああ、任せた」

浮竹は、少しだけ仮眠した。

京楽がドラゴン化するのは数十年ぶりだった。昔は、浮竹が叫んでも元に戻らなくて、里の大きな大人の竜人族がドラゴンになって、無理やり京楽を倒して元に戻していた。

「俺のためにドラゴン化するくらい怒ってくれて、俺の声で人に戻ってくれた‥‥」

浮竹は赤くなる。

京楽は、心優しい。そんな京楽が本気で怒ることは滅多にない。

「ふふっ」

「どうしたの、浮竹?」

「いや、お前は俺にメロメロだなと思って」

「まぁ、否定はしないけど」

3日ぶりの食事だが、ちゃんと起きておくために主に肉料理が用意された。

鶏肉のソテーとか。

おいしそうに、浮竹が食べるのを見て、京楽も安心して自分も食べるのだった。


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