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エンシェントエルフとダークエルフ16

その組織は、1500年前の大昔に滅んだヒウ帝国の末裔と、科学者たちでできていた。

人間や亜人種が住む、ウッドガルド大陸の一番端にある、レイサ共和国に研究所はあった。

モンスターを捕まえて、人工的に手を加えたり、人工的にモンスターを生み出す研究所であった。

その研究所のことを知っているのはごく一部であったが、中にはおしゃべりな者もいて、研究所があることは、近くの農村では知られていた。

だが、自分たちに害になるわけでもないので、共和国の上の者に直訴する者はいなかった。

ヒウ帝国の末裔も、科学者たちも、自分たちが世界を革命へと導いていると信じていた。

組織の名は、ヒウの翼。

今はまだ影の存在で、培養されたモンスターが野に放たれることはあったが、それが冒険者ギルドの者に倒されて、魔石が鑑定されて、人の手で生み出されたモンスターであることがばれるなど、夢にも思わないのであった。

緊急収集には、浮竹と京楽も出た。

人がモンスターに手を加えたか、人工的に作り出した可能性が高いということで、その組織を見つけるためにも、討伐したモンスターの魔石は、必ず鑑定してもらうことになった。

各地で情報収集をしてると、レイサ共和国でモンスターを捕まえては培養している謎の組織があることが分かった。

ロスピア王国の退治屋に今回の研究所のことは任せられた。

「なんか、モンスターの培養とか、きな臭くなってきたね」

「そうだな」

「剣士の僕と精霊の浮竹の出番だね」

「師匠もいることだし、あの二人なら組織を壊滅に追い込んでくれるだろう」

浮竹と京楽は、施設の完全なる壊滅を祈るのだった。


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レイサ共和国の研究所では、京楽が狂ったように、すでに死体となった人間を何度も妖刀でさしていた。

まだ、研究員は生きている者もいた。

『あはは、はは』

剣士の京楽は、狂った笑い声をだしながら、逮捕するための研究員を斬ってしまった。

他のSランク冒険者たちのうちの一人が、殺戮をしていく剣士の京楽に向かって叫んだ。

「化け物!!」

すると、剣士の京楽は、狂ったように笑った。

『そうだとも、僕は「化け物」さ』

全てが終わった。

モンスターも人も、剣士の京楽一人で殺してしまった。

「師匠・・・・・」

エルフの浮竹が、剣士の京楽を心配して、青白い顔の京楽に声をかける。

「大丈夫か、師匠」

『大丈夫だよ・・・・・』

とてもそうは見えなくて、せめて返り血をどうにかしてやりたくて、魔力消費は多いが、身が綺麗になるリフレッシュの魔法を使って、返り血や人の脂などをとってあげた。

京楽と妖刀の浮竹を、エルフの浮竹と京楽はロスピア王国の家まで送り、一時的に冒険者ギルドに戻った。

「施設は当たりだったようだわ。ロスピア王国の退治屋に依頼したら、壊滅してくれわ。ただ、科学者の一人が研究資料をもって逃げたみたいで、みんな血眼になって探しているの。アリアラス=ヒウっていう名前の男よ」

「組織名はヒウの翼だったな。やはり、滅んだヒウ帝国と関係ある人物なのか?」

「そうよ。帝国の皇族の端にいた人物みたい。代々ヒウの名を継がせて、いつかヒウ帝国の復活のために組織を立ち上げたみたいね」

「厄介だな」

京楽の頭の上で、ブルンがぽよぽよとはねた。

「そうだね、心配だね。ロスピア王国のもう一人の僕の家に、もう一度向かってみようか」

ブルンがあの二人とプルンが心配だという言葉もあって、浮竹と京楽は、ロスピア王国に向かうことにした。

馬車に揺られること3時間。

ロスピア王国の端にある、魔物退治の専門の店に、剣士の京楽と精霊の浮竹はいた。

ただ、とても顔色が悪かった。

「大丈夫かい?」

エルフの京楽が、精霊の浮竹に話しかけると、青い顔をしていた。

『少し、気分が悪い』

「師匠、大丈夫か?」

『ああ、大丈夫だよ・・・・・』

「ププルー」

プルンが心配して、飛び跳ねていた。

「ブルン、一応ヒールを。精神的なものでも、少しは楽になると思う」

「くくるーー」

ブルンは、二人に回復魔法をかけた。

まだ顔色は悪かったが、少しだけましになった気がした。

「今日は、俺たちで飯を作ろう。師匠もそんな気分じゃないようだし」

「僕も手伝うよ」

エルフの二人は、簡単にエビピラフと中華スープを作った。

「ほら、食欲はないかもしれないが、少しは食べてくれ」

『うん・・・・・』

精霊の浮竹は、のろのろとスプーンを動かして、食べていく。

「ほら、師匠も」

『ボクはいらない』

「そんなこと言ってると、精霊の浮竹にキスしちゃうよ?」

エルフの京楽の言葉に、剣士の京楽はギロリと睨んできた。

『食べる。あと、そんなことしたら、消し炭だからね』

「おお、怖い怖い」

エルフの浮竹と京楽は、ご飯を食べてすぐに横になった二人に毛布をかけてやりながら、疑問を口にした。

「師匠は、何かを隠しているんだろうな」

「そうだね。でも、まだ教えてもらえる段階じゃないと思う」

「うん、俺もそう思う。いつか、師匠が自分から話してくれるのを待とう」

「プルルゥ」

「くくるーー」

プルンとブルンは、飼い主たちの心配や体調を少しは気にしているようだったが、久しぶりに会ったので、プルンがブルンを頭の上にのせて、そこら中をはねていた。

「プルン、ブルン、二人が寝ているから、静かにな?」

「ププル~~」

「くるる~」

二匹のスライムは、分かっているのか分かっていないのか、鳴き声のボリュームを落としながら、ぽよんぽよんと跳ねていた。

「プルンもブルンも、こっちへおいで」

「ププウ?」

「くくるー?」

エルフの浮竹と京楽は、修行中にも借りていた隣の空き家に入り、食事や風呂をすませると、置きっぱなしにされたったべッドで横になって眠った。

プルンにはリンゴ10個、ブルンには生ごみを大量に与えてやった。

プルンとブルンも、満足して寝てしまった。


『やぁ』

次の日、剣士の京楽の家にいくと、朝食の用意をしていた剣士の京楽と鉢合わせた。

「精霊の浮竹は?」

『まだ眠ってる。起こさないであげてね』

「ああ、分かった、師匠」

「昨日の塞ぎこみようが嘘のようだね」

『こっちにも、いろいろ事情があってね。まぁ、気持ちの区切りはついたよ』

「式から知らせがあって、逃げた研究員の一人は、結局見つからなかったそうだ」

『そうかい・・・・・』

剣士の京楽は、もう興味はないのだと、朝食にトーストを4枚焼いて、バターを塗っていく。

『朝ごはん、食べていくでしょ?』

「ああ、師匠気を遣わせてしまったか。ありがとう。ほら、京楽も礼を言え」

京楽はぶすっとなって、剣士の京楽に礼をを言った。

「ありがとう」

『プルンは?』

「ああ、昨日うるさいと眠れないだろうと思って、一夜だけ預かった。隣の家、使わせてもらったけど、平気だよね?」

『ああ、それは問題ない』

「プルン、ブルン、お互いに離れたくないって我儘をいってな。引きはがすのに時間がかかった・・・」

「ププルーーー!!」

剣士の京楽の足元で、プルンは跳ねた。

ブルンは、エルフの浮竹の頭の上で跳ねていた。

「くくるーー」

「また引き離してしまうが、また会えるから。なぁ、ブルン」

「くくるう」

「プルル」

またねぇ、お兄ちゃん。

またね、弟よ。

そう挨拶をしてから、朝食だけ食べて、エルフの二人はイアラ帝国に帰ってった。

ブルンがいなくなり、プルンは吸恋寂しそうにしていたが、りんごを10個食べてもいいと並べられて、食欲のことでブルンの存在を一時忘れてしまうのであった。


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「はぁはぁ。ここまで逃げてくれば、安全だろう」

アリアラス=ヒウは、研究資料と巨額の金をもっていた。

そして、こともあろうか、イアラ帝国で自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとして、宗教組織として発展していき、裏では人身売買や人工生命体の存在などに手を出すのだった。

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