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エンシェントエルフとダークエルフ19

今回の依頼は、Aランクの依頼だった。

コカトリスが大量にわいて、村一つが石像になった。その村人の救出と、コカトリスの退治であった。

事前に、神殿で絶対に石化しないお守りを2つ買った。金貨40枚になったが、コカトリスの石化は強烈だ。経費に申請すれば、金は戻ってくるだろう。

さっそく石像にされた村にいくと、大量のコカトリスに囲まれた。

「KOKEEEEEEEE!」

コカトリスは、石化の視線を送った。

しかし、お守りの効果で何時まで経っても石化しない浮竹と京楽を見て、少し後退する。

「もう、遅いんだよねぇ!バーストロンド!」

「フレアサークル!」

爆炎と灼熱の範囲魔法を放つ。

村にいたコカトリスの3分の1が吹っ飛んで焼かれて死んでいった。

コカトリスたちは、逃げ出す。

村の外に出すわけにいかないので、京楽が網をかける魔法を唱える。

「スパイダーウェーブ!」

白い蜘蛛の糸のようなものでコカトリスは、コケーコケーと鶏の声で鳴きながら、慈悲をこうた。

そんなの関係なしに、浮竹はミスリルの剣で、京楽は魔法でコカトリスを葬っていく。

「はぁ、疲れた。もう、コカトリスはいないかな?」

「ああ、全部片づけたようだ。あっちに巣があったから、卵を全部破壊してきた」

京楽は、魔力回復のポーションを大量にもってきていた。

「くくるーーー」

ブルンにも回復魔法をかけてもらい、魔力を回復する。

これから、200人以上はいる村人の石化を解かなければいけないのだ。

「キュアストーン」

「ああ、コカトリスが!」

「キュアストーン」

「俺はどうなっていたんだ」

「キュアストーン」

「あはん、あなた・・・・あら?」

「キュアストーン」

「くけけけーーーあれ?」

「キュアストーン」

ひたすら、キュアストーンの魔法を使い続ける。状態異常回復の魔法はけっこう魔力を使うので、ブルンに常にヒールをかけてもらいながら、魔力回復ポーションを口にする。

村人200人全員の石化解除が終わった頃には、魔力回復ポーションでおなかはたぷたぷだし、精神的にも肉体的にも、疲れ果てていた。

「ほんとうに、村を救っていただき、ありがとうございます。これはほんのお礼のつもりです」

金貨の入った袋を受け取って、アイテムポケットにしまいこむ。

冒険者は、救った相手から金銭にからむものをもらうのは自由だった。

「それより、今晩は泊まっていいかな。魔力を使いすぎて、動くのもだるいんだよ」

「宿屋へ案内しますね」

宿屋のスィートルームに通されて、そのふかふかのベッドの上で京楽は横になるとすぐに眠り始めた。

夕飯まではまだ時間があるので、浮竹は村に異常がないかどうかの探索に出た。

村の少し遠くの森までいくと、コカトリスが出てきた。

巣があった。

「そうか、ここでコカトリスは増えたのか」

コカトリスたちは石化の視線を浮竹に送る。

一向に石化しない浮竹に、コカトリスたちは本能的に敵わないと分かって、逃げ出そうとするのを、炎の魔法でしとめていく。

「ファイアオブファイア!」

「くええええええ」

最後の一羽を葬り去って、巣の中にたヒナのコカトリスにとどめをさして、卵を破壊していった。

それから、森をぐるりと回ってみたが、ブラックベアと出会ったくらいで、異常はなかった。

「これでもう、コカトリスに石化されることはなくなったな」

村に戻ると、日も傾き、夕方になっていた。

「京楽、起きろ京楽。夕飯の時間だぞ」

「うーん。まだお腹がちゃぷちゃぷいってるから、少しだけ食べるよ」

「ああ、少しでも食っておいたほうが、体力の回復が早い」

ブルンに大分ヒールをかけてもらったので、魔力は半分ほどにまで回復していた。

恐るべきは、ブルンの魔力量だった。

ヒールといっても、ほぼ万能な神のヒールだ。それを何百回連発しても、魔力が尽きることなく永遠と魔法を使い続けられるのだ。

浮竹が推理するには、空気中のマナを吸っているのではないかということだった。

「ブルンもお疲れ。そとに町中のゴミを用意してもらったから、全部食べていいぞ」

「くくるーーー」

ブルンは喜んで、宿屋の裏に置かれたごみの山を全て消化してしまった。

「すいません、ゴミの処理までしてもらって」

「いや、この子はゴミが主食なんだ」

「変わった形をしていますが、色と特徴からブラックスライムですか?」

「ああ、そうだ。今はヒーリングスライムになっているが、元々はブラックスライムだ」

「そうですか・・・・・・」

宿屋の主人の目が、ぎらついた気がした。

「回復魔法も唱えられるんですよね。神クラスのヒールを」

「それはそうだが、けが人以外には滅多に使わないぞ。それと、灼熱のシャイターン一族の紋章が刻まれている。誘拐とかされたら、灼熱のシャイターンを敵に回すととってもらってかまわない」

宿屋の主人は、小さな声で舌打ちしていた。

シャイターンの紋章がなければ、攫って売り飛ばす算段でも考えていたのだろう。

ブルンは、売れば大金になる。

何せ神のヒールを無制限に使えるのだ。売れないほうがおかしい。おまけに食事はゴミでいいし。

その日は、宿屋のスイートルームに泊まって、朝早くに出発し、昼には冒険者ギルドに戻って、コカトリス65羽分の魔石を鑑定してもらい買取りをしてもらった。

村にいた50羽以外にも、森で倒した15羽分の魔石も含めれていた。

「こちら・・・金貨130枚になります」

報酬金は、金貨320枚。

まぁまぁの収入になった。

「あらん、うっきーちゃん春ちゃん、何を悩んでいるの?」

背後から尻を触られて、浮竹は蹴りを食らわせようとしたが、しっかりとガードされてしまった。

「このオカマギルドマスターが!」

「いやん、オカマじゃなくってオ・ト・メよ♡」

「おえー」

京楽が、気持ち悪そうにしていた。

「ひどい、春ちゃん!ベッドではあんなに優しくしてくれたじゃない!」

「誤解を招くような冗談はよしてくれないかな?焼くよ?」

「いやーん、こわーい」

キャサリンは、他のSランク冒険者のほうにちょっかいをかけにいった。

でも、尻はさわらない。

かわりに胸板を触っていた。

十分にセクハラの変態であったが、有能なので、セクハラだと訴えてもそれがどうしたと、上から言われるだけだった。

「浮竹、貯金も十分に貯まってきたし、別荘飼わない?」

「いいな。海辺の見える、そんなに遠くない場所にしよう」

二人は、不動産屋にいって、別荘の物件を見て回った。

「これなんてどう?ロスピア王国のアカシ海岸に近い別荘。剣士の僕の家から徒歩で1時間くらいの場所」

「お、いいな。師匠の家と近いのはいい」

「じゃあ、これに決めようか」

「ああ」

2階建ての洋館で、中古物件であったが、一度実物を見に行ってリフォーム済みだったので、すぐにでも暮らせそうだった。

さっそく家具を手配して、配置してもらった。

金貨2700枚が飛んでいったが、お気に入りの別荘になった。

剣士の京楽の家にいき、剣士の京楽と精霊の浮竹を誘い、海辺の別荘に案内した。

精霊の浮竹は、別荘の中で他に人がいないことを確認すると、人型をとった。

『いい別荘じゃないか。すごいな』

精霊の京楽は、目をキラキラさせていた。

「金貨2200枚の物件だったんだよ」

『へぇ、リフォーム済みにしては安いね。別荘まで買ちゃって、金持ちになったね』

「冒険者稼業でためた金だからな。白金貨は貯金したままだ」

『ぱーっと使っちゃえばいいのに』

「もったいなさすぎて、使えないよ」

Sランク冒険者なら、白金貨を報酬にもらうときはあるかもしれないが、Aランク冒険者ではまず白金貨を拝む機会がない。

かなり前、イアラ帝国の女帝卯ノ花の夫、更木の失った右腕をブルンで癒した時に白金貨をもたったのが最初だった。

次にはアークデーモンの討伐の時、魔王の四天王が一人、電撃のボルの妹ユンを救った時の謝礼だと、白金貨千枚をもらった。

あれには、二人はびびりまくった。

家に置いておくと危険な気がして、そのまま貯金した。

今現在、利子で少しずつ金額が増えていた。

「今日は海鮮バーベキューをしたいと思うんだ。バルコニーで焼くから、精霊の浮竹も人型のままで大丈夫だよ」

『海鮮バーベキューか。いいな。人がいると人型はとれんからな。バルコニーなら、人に見られることもないから、この姿でも大丈夫だろう』

「じゃあ、そうと決まれば市場で買い物をしてくるよ。はい、これ」

『え、なんだいこれは』

「買い物から戻ってくるまでしばらくかかるから、魚でも釣ってて」

自分の師匠を、顎で使うように、エルフの京楽は釣竿と餌を渡した。

『釣りか。いいな、俺もしてみたい』

「この時期は人がほとんどいないとはいえ、外で人型をとるのは危険だ。プルンとブルンの相手でもしてやってくれ」

こうして、エルフの浮竹と京楽は、海鮮バーベキューをするために、市場に行ってしまった。

『この僕に釣りをしろってさ』

『行って来たらどうだ?』

『じゃあ、妖刀になって。一緒に居たい』

『分かった』

精霊の浮竹は、妖刀に戻ると、京楽に連れられて海で釣りをはじめた。

これがまた、面白いようにかかった。

『お、今度はタイだ。縁起がいいね』

市場から帰ってきた浮竹と京楽は、剣士の京楽が釣りあげた獲物の数々を見て、口をあんぐりとあけたままだった。

『だてに、1500年も生きちゃいないよ』

エルフの浮竹と京楽の師匠である、剣士の京楽は、ヒウ帝国という、1500年前に滅びた帝国の生き残りであった。

女神のフレイアの子で、神人であり、不老不死であった。

どんな傷でも、たちどころに癒えてしまうのだという。

妖刀の浮竹のことも、少し知った。

いろんなことを、この前剣士の京楽、もとい師匠の家に行った時に、告白してもらったが、二人はそんなこと関係なく普通に接してくれた。

今もそうだ。

「テラスに行こう。おーい、バーベキューの用意するよー」

『ああ、分かった』

『ちょっと釣りすぎたかなぁ』

「バーベキューを焼くやつは借りものだ。師匠が釣った魚は俺が捌こう」

エルフの浮竹は、器用に魚を3枚卸にしていく。

それに塩をまぶして、串を通して火であぶり、4人は海鮮バーベキューを楽しんだ。

海老やホタテ、カニなんかも買ってあった。

カニは甲羅に切れ目をいれて、ある程度冷ましてから食べた。

『ふふ、こういうのもいいね』

『そうだな。家族が増えたみたいだ』

「師匠は、もう家族同然だ」

「まぁ、浮竹の言う通りだね」

剣士の京楽は、じんわりと胸が暖かくなっていくのであった。それは精霊の浮竹も同じだった。

「ププルウ!」

「くくるーー」

「ああ、お前たちにもごはんあげないとな」

プルンにはりんご10個を、ブルンはバーベキューで出たゴミを食べてもらった。

楽しい時間は、長くはなかったが、記憶の一ページになるくらいには続くのだった。



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