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エンシェントエルフとダークエルフ18

アリアラス=ヒウは、宗教組織を作った。

自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとした。ヒウ帝国の第二皇子の名は秘密だが、今も生きているという。実際は、名前は知らないのだが。

巨額の金が動き、その宗教組織は見る見るうちに信者を増やして、大きくなっていった。

裏では、人身売買や、人工生命体の誕生など、黒いことを行って金を稼いでいた。

信者なると、無条件で金貨10枚を与えられるので、宗教の興味のない若者なども宗教に入団した。

宗教組織の名は、神の王国であった。

緊急クエストが冒険者ギルドで持ち上がった。

宗教組織、神の王国の壊滅であった。

人身売買で得た金で、モンスターを作り出し、操ってもいたので、ロスピア王国の退治屋にも援助を要請した。

Cランク以上の冒険者で、一斉に宗教組織の裏の分まで摘発が始まった。

退治屋の剣士の京楽は、人工的に作り出されたモンスターたちを屠っていく。

『ここはボクに任せて、逃げようとしている組織の人間の捕縛を!』

今度は、剣士の京楽は冷静だったので、宗教団体の上の者たちや、人身売買に関わった者たちを殺すことはなかった。

冒険者たちに捕縛されていく宗教組織の上位の者や、人身売買に関わった者は、何かに呪われているかのように、突然苦しみだして、死んでいく。

「これも、秘密を守るためだよ。あーっはっはっは」

アリアラス=ヒウは、そう言い残して自害した。

結局、宗教組織の上にいた者たち、人身売買に携わった者たちは全て死んでしまい、普通の一般信徒が一時的に捕縛された。

こうして、神の王国は、大きな謎を残したまま壊滅した。

証拠書類などが残っていたので、犯した犯罪は明確にされた。

売られていった者たちを買っていった、貴族たちが逮捕された。大半が女性と子供で、性的な奴隷にされていた。

「ふう。とりあえず、捕縛した奴らは何かの呪いかで死んでしまって、TOPのアリアラス=ヒウも自害してしまった。今回の件は、犯人のいないまま、迷宮入りしそうだね。ヒウ帝国の第二皇子が生きているって件も、信用していいのか分からないね」

「そうだな」

売られていった女性や子供が次々と保護されていった。

中には、奴隷を買っていった者の中に、イアラ帝国の女帝の直臣もいて、イアラ帝国の内部でも、被害者がいるということで、国をあげての行方不明者の捜索がされた。

半月をかけて捜査が行われて、行方不明者は160人から15人まで減っていた。

奴隷として売られていった人間の数は約300人。そのうち助けられた数が260人。残りの40人は、殺害されたか、自害したかのどちからかだった。

行方不明の15人は、引き続き捜索が行われるが、半年を期限として、それ以上探しても見つからない場合は、哀しいが死亡したということにされた。

緊急クエストだったが、報酬はそこそこで、一人あたり金貨200枚が配られた。Cランク冒険者からの参加だったので、金貨200枚をもらったCランク冒険者たちは、喜んでいた。

Bランク冒険者も喜ぶ額であった。

ただ、Aランク、Sランクの冒険者には物足りなかったが、帝国側からの報酬金であるので、文句は言えなかった。

ランクに関係なく、今回の件で捜査をしてくれた者には金貨200枚を配るという約束だった。

冒険者ギルドのほうでも、一人あたり金貨50枚の報酬金が出ることになった。

ただ、参加した人数が多かったので、50枚が出せる額の精一杯であるらしかった。

浮竹のポケットの中に、「僕は冒険者じゃないからあげるよ」と、金貨50枚の入った袋が入っていた。

「師匠が、冒険者ギルドの者と間違われたんだな」


「うふん、うっきーちゃんも春ちゃんも、逮捕に尽力を尽くしてくれてありがとうね?♡」

通称青髭オカマ、自称キャシーのキャサリンギルドマスターは、くねくねしながら、浮竹と京楽の尻を揉んだ。

「セクハラだ!」

「そうだよ、セクハラだよ!」

「あらん、あたしがギルドマスターだから、ただの挨拶よん?」

「この青髭オカマが!」

「あらん、何か言った春ちゃん?」

京楽の首をしめあげながら、キャサリンはにこにこしていた。

「な、なんでもない、ギルドマスター!」

「やだ、キャシーって呼んで♡」

「今回は、後味が悪い事件だったね」

「ああ。真実を知る者はみんな死んでしまった」

「まぁ、そんな時もあるわ。今夜は、神の王国壊滅を祝して、酒場で飲み放題食い放題のパーティーがあるから、是非参加してね♡」

Fランクからの冒険者からも参加ができるらしく、酒場はその日、人が入りきらないほどに賑わった。

二人は、ある程度飲んで食べてから、S、A、Bランクのそれぞれの知り合いと会話をした。

皆、不完全燃焼であることが気に入らないようだった。

どのみち、生きていても処刑だったろうなので、処刑する手間が省けたとして考えることにした。

「じゃあ、僕たちは帰るね」

「くるるー」

ブルンは、生ごみをいっぱい食べて、お腹いっぱいであるらしかった。

「じゃあ、また明日」

浮竹も、知り合いたちに手を振って別れた。

マイホームにつくと、浮竹と京楽は手を握りあい、昔話をしだした。

「君が、僕に会いに来てくれたのが、全ての始まりだったね」

「ああ。ダークエルフが捕まったって、大騒ぎだったんだぞ」

当時を振り返る。

ダークエルフの子供が捕まった。すぐに牢屋に入れられて、幼い浮竹は、門番にスリープの魔法をかけて、ダークエルフの京楽と出会った。

「誰。誰か、そこにいるの?」

「君、ダークエルフなの?肌が白いよ」

「でも、ダークエルフなんだよ」

「ちょっと待ってて。お腹すいたでしょ?今、パンもってきてあげる」

浮竹は、自分の昼食用のパンとスープを、牢屋の中にいる浮竹に差し出した。

「ありがとう・・・。こんな暖かい食事をするのは久しぶりだよ。昨日まで、雑草を口にして飢えを凌いでいたからね」

「おかわりいるか?」

「欲しいけど・・・・これ、君の分の食事じゃないの?」

「俺は族長の次男だから。ある程度は融通が利くんだ」

「そう。じゃあ、おかわりほしいな」

「分かった」

浮竹は頷いて、自分の自宅の厨房からパンとスープを持ってくると、京楽の牢屋の中に入れた。

それから、浮竹は、見張りの目をかいくぐり、毎日のように京楽の元に通った。

やがて80年が経ち、12歳の見た目になった二人は、浮竹が抜け道を作ってくれた牢屋から抜け出して、冒険者登録をした。

エルフ種族は、80歳にならないと冒険者登録できないようになっていた。

度々牢獄を抜け出して、浮竹と京楽はFランク冒険者として、依頼をこなしていくが、あまり長く牢屋をあけていられないので、冒険者稼業は月に2回くらいだった。

もう、その頃には京楽は浮竹に惚れていた。浮竹も京楽を必要としていた。

120歳になり、成人した二人に待っていた運命は、京楽の処刑と、族長の長の補助をしろというがんじがらめの人生のレールだった。

二人は、手を取り合って逃げ出した。

逃げ出す直前、浮竹の父親であり、族長であったエルフから、ミスリルの剣をもらった。

餞別代りだった。

こうして、エルフの森を捨てた二人は、人間社会で暮らすようになった。

Cランク冒険者になっていたが、収入はそれほどなく、最初の頃は宿屋の厩(うまや)で、夜を過ごした。寝床は藁だった。寒かったが、文句は言っていられなかった。

やがてCランクも板につき、毎日金貨5枚程度を稼げるようになると、1日銀貨2枚の宿を利用するようになった。

宿はいろいろに荷物があったので、二部屋借りた。

浮竹と京楽は、そういう欲はあまりなかったが、Bランク昇格試験に受かった日、契りあった。

お互い、居なくてはいけない存在になっており、伴侶であった。

エルフでそういう関係に陥るのは珍しいことなので、それを知ったギルドマスターは、不幸になるかもしれないと、二人に諭したが、二人はいつも一緒だった。

今は180歳になるが、かれこれ150年は一緒にいた。

エルフの寿命は長い。

人生の5分の1を一緒に過ごしてきた。

もう、お互いに居なくてはいけない存在だった。

「懐かしいねぇ。君がパンとスープを差し出してきた姿が、今でも鮮明に蘇る」

「それなら、俺も覚えているぞ。薄汚れた格好で、暗い目をしていた。でもとても孤独な目をしていた。お腹がいっぱいになったら、少しは違う表情を浮かべるんじゃないかって、自分の分の昼食をあげたんだ」

「ああ、あの食事、やっぱり君の昼食だったの」

「おかわりは、屋敷の厨房から盗んだ」

二人して、クスクスと笑い合った。

もう、遠い日の記憶である。欲は薄いが、二人は時折契り合う。

それは子孫を残すためのものではなく、お互いの存在を確かめ合うためだった。

「今日はもう遅い。寝ようか」

「ああ、そうしよう」

すでに風呂には入った。

同じキングサイズのベッドに横になり、互いを抱きしめ合うよな恰好で眠りにつく。

ダークエルフに生まれてよかった-------------。

いつからか、京楽はそう思うようになっていた。未だに種族は偽っているが、浮竹と出会えたのは、京楽がダークエルフだったからだ。

いつか、皆にもダークエルフだと、告げれる日がくればいい。そう思いながら、眠りの底に引きずられていくのだった。




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