エンシェントエルフとダークエルフ22
それは、Aランクの緊急クエストだった。
森にトレントが住み着き、男性を襲って殺しては、肉体の一部を盗むというものだった。
すでに犠牲者の数は10人を超えており、緊急を要した。
「俺が囮になろう」
「だめだよ、危険すぎる!」
浮竹の言葉に、京楽はだめだと言う。
「でも、トレントだろう?森の精霊が、そんなに乱暴になるわけがない」
「それでも僕は反対だ。君が囮になるのなら、僕も囮になる」
「じゃあ、二人仲良く囮になろうか」
「そうだね」
結局、言い争いになる前に、二人で囮になる道を選んだ。
トレントの出るという森に、二人は手を麻の縄で繋ぎ合わせて、1人になることを避けた。
しゅるるるるる。
やってきたのが男性と分かったせいか、森が騒がしくなり、しゅるるると、蔦が這いまわる音がした。
どこからか、優しい歌声が流れてくる。
それに、急速な眠気を感じたが、皮膚に爪を食いこませることで、京楽は我慢した。浮竹は抗えず、意識を失っていた。
「うふふふふ。今度はエルフが二人・・・・そうね、あの方の右腕と左足首になってもらいましょう」
トレントが、姿を現した。
肌も露わな、緑色の皮膚をした美しい女性であった。
そのトレントの隣には、つぎはぎだらけの男の体があった。足りないのは、頭と右腕と左足首と左手。
普通なら、つぎはきだらけの肉体は腐っているだろうに、どういう処置を施しているのか、うじの一匹もわいておらず、死臭もしなくて新鮮なままだった、
「浮竹、起きて、浮竹!」
繋いでいた右手の麻でできた紐を引っ張る。
「ん・・・・・」
浮竹は意識を取り戻した。
「あら、あなたの顔は綺麗ね?あの方ほどじゃないけれど、その生首をいただきましょうか」
しゅるしゅると、蔦が這い寄ってきて、のこぎり状になった。
「く、フレイムロンド!」
「きゃああ、火は、火はいやあああ!!」
なんとかトレントは雨の魔法でスコールを降らせて、浮竹の魔法の炎を鎮火してしまった。
スコールはひどく、このままでは弱点である炎の魔法は使えなさそうだった。
「あの方を復活させるのよ。体を繋ぎ合わせれば、きっとあの方は復活して、また私に愛を囁いてくれるわ」
「愛しい、男がいたのか」
「そうよ。愛しいあの方をつくるために、その右腕を頂戴!」
浮竹は、氷の魔法を使った。
「エターナルアイシクルワールド」
こっちには這い寄ってくるトレントの体が氷つく。
しかし、死んだわけでもない。
氷はトレント全体を包み込んで、スコールが止んだ。
「ファイアフェニックス!」
京楽が炎の不死鳥を放つと、トレントが命よりも大事にしていた、つぎはぎだらけの体に火がついた。
「いやあああああ!愛しいあなたあああ!!私を、置いていかないでえええ!!」
「今度は、お前も一緒さ。ファイアフェニックス!」
「ああ・・・・あたしも、あなたの元へ行けるのね?」
「ああ、行けるとも」
浮竹は、優しい表情でトレントを灰にしていった。
灰からは、2つの芽がでていた。
「夢を見ていたんだ。トレントには恋した男がいた。男もトレントを愛していた。でも、男には婚約者がいて、逆上して男を殺してしまった。
トレントは泣き叫んだ。すると、ある男が、男の体を繋ぎ合わせて、恋人によく似た人形を作ったら、それに愛しい男の魂を宿してやると言ったんだ。
トレントは、その言葉を信じて、森を歩く旅人の男を、歌声で眠らせて殺しては、体の一部分を奪い、繋ぎ合わせた。
繋ぎ合わせた肉体に、愛した男の命が再び宿ると信じて・・・・・・」
「かわいそうな、精霊だったんだね」
「ああ。でも、人を殺した。人を殺したり殺そうとするモンスターは倒される。トレントは元々森の精霊だ。悪い存在じゃない」
「トレントを騙したそのある男というのが鍵だね」
「ああ。トレントは始末してしまったからもう聞き出しようがないが、最近謎の男が暗躍していると聞く。その男なのかもしれない」
「とりあえず、トレントの魔石を持って帰ろう」
浮竹と京楽は、なんとも言えない気分で冒険者ギルドに戻ってくると、魔石を受付嬢に渡した。
「買取り額は金貨30枚になります。緊急クエスト達成として、報酬金金貨350枚に、即日の対応だったので、報酬金が金貨50枚上乗せされます」
合計で金貨430枚になったが、二人の心は晴れないままだった。
「いやん、何そんな辛気臭い顔してるのお?明るくいきましょうよ。ああん、あたしのあそこも明るくいっちゃう♡」
「冗談に付き合っている気分じゃないんだ」
「僕もだよ。消えてくれない?」
「ひどおおい!キャシー、泣いちゃう!」
「勝手に泣け」
「酷い顔だ。ああ、元からだったかい」
浮竹と京楽は、キャサリンに事情の全てを話して、裏で暗躍しているらしい男の影を、ギルド側も掴んでいると聞いて、真剣な表情になった。
「その男の正体は?」
「まだ、分からないわ。ただ、茶色の髪と瞳で、凄く冷徹だそうよ。なんでも、自分が神になるって言ってたらしいの」
「人間が神に・・・・そんなの、なれるわけないのに」
「あら、そうでもないわよ?魔神や邪神は、人間からでもなれるわよ?なりかたは教えてあげないけれどね?♡」
浮竹と京楽は、トレントが灰になった後にでてきた芽を、鉢植えに植え替えて、帰宅した。
太陽をいっぱい浴びれる、南向きのバルコニーに置くと、一夜で成長し、次の日は花を咲かせて、小さなトレントが生まれた。
「君の名は?」
「名前なんてない」
「じゃあ、レトと名乗るといい」
「トレントだから、レト?安直ね」
「森に帰りたいかい?」
「帰りたくないわ。ここで暮らすわ」
レトは、寂しそうに笑った。
じゃあ、同居人を紹介しなくちゃな。こっちはエンシェントエルフの浮竹十四郎。君のもう一人のマスターだ。それから、ヒーリングスライムのブルン」
「くるるる」
「かわいい」
「君も、十分かわいいよ。ねぇ、浮竹も、そう思うでしょ?」
「知るか」
「ふふっ。あのエンシェントエルフ、私にあなたを取られたと思って嫉妬してるわ」
「すごいね。君、人の心が読めるのかい?」
京楽は、レトと名付けたトレントの小さな頭を撫でた。
「ある程度はね。あなたはダークエルフ。皮膚の色が違うから、種族を偽っている」
「ほんとにすごいね」
「よしてよ。あたしは、ただのレトいう名の小さなトレント。それだけよ」
「そうだね。君はレト」
京楽は、レトを手の平に乗せた。そんな小さなサイズのトレントだった。
「哀しい記憶を持っているのね」
「なんだい?」
「あなたは灼熱のシャイターンに捨てられ、迫害されてきた。でも、浮竹十四郎と出会って、全てが変わった」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、早くその浮竹って人のところに行ってあげて。凄く悲しんでる」
「分かったよ」
京楽は、レトを植木鉢に戻すと、浮竹の後を追う。
「浮竹」
「なんだ」
「僕が愛しているのは、浮竹だけだよ。あのトレントには同情しか抱いていない」
抱きしめられてキスされて、浮竹は真っ赤になった。
「な、何をする!」
「いや、君が小さなトレントなんかに嫉妬しちゃって、かわいいなぁと思って」
「嫉妬してなんか!」
浮竹は叫びかけてやめた。
「嫉妬、してた。少しだけ」
京楽は、浮竹の顎に手をかけて、ディープキスをしていた。
「んっ」
「ふふ、かわいいね。食べちゃいたい」
「まだ昼間だぞ」
「そうだね」
クスクスと、京楽が笑うものだから、浮竹も嫉妬心を忘れてクスクスと二人で笑いあった。
「ねぇ、今日いい?」
「ばか、そういうこといちいち聞くな。んっ」
またキスをされた。
エルフに欲が全くないわけではないのだ。
ただ、薄いだけで。
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「そうか、あのトレントは死んだか。呆気ないものだ」
その男は、背が高く茶色の紙に茶色の瞳をしていた。
その男は、世界を渾沌に陥れようと暗躍していた。
神になろうとしていた。
神になり、剣士の京楽を破壊神にしようともくろんでいた。
その男の名は、まだ分からなかった。
森にトレントが住み着き、男性を襲って殺しては、肉体の一部を盗むというものだった。
すでに犠牲者の数は10人を超えており、緊急を要した。
「俺が囮になろう」
「だめだよ、危険すぎる!」
浮竹の言葉に、京楽はだめだと言う。
「でも、トレントだろう?森の精霊が、そんなに乱暴になるわけがない」
「それでも僕は反対だ。君が囮になるのなら、僕も囮になる」
「じゃあ、二人仲良く囮になろうか」
「そうだね」
結局、言い争いになる前に、二人で囮になる道を選んだ。
トレントの出るという森に、二人は手を麻の縄で繋ぎ合わせて、1人になることを避けた。
しゅるるるるる。
やってきたのが男性と分かったせいか、森が騒がしくなり、しゅるるると、蔦が這いまわる音がした。
どこからか、優しい歌声が流れてくる。
それに、急速な眠気を感じたが、皮膚に爪を食いこませることで、京楽は我慢した。浮竹は抗えず、意識を失っていた。
「うふふふふ。今度はエルフが二人・・・・そうね、あの方の右腕と左足首になってもらいましょう」
トレントが、姿を現した。
肌も露わな、緑色の皮膚をした美しい女性であった。
そのトレントの隣には、つぎはぎだらけの男の体があった。足りないのは、頭と右腕と左足首と左手。
普通なら、つぎはきだらけの肉体は腐っているだろうに、どういう処置を施しているのか、うじの一匹もわいておらず、死臭もしなくて新鮮なままだった、
「浮竹、起きて、浮竹!」
繋いでいた右手の麻でできた紐を引っ張る。
「ん・・・・・」
浮竹は意識を取り戻した。
「あら、あなたの顔は綺麗ね?あの方ほどじゃないけれど、その生首をいただきましょうか」
しゅるしゅると、蔦が這い寄ってきて、のこぎり状になった。
「く、フレイムロンド!」
「きゃああ、火は、火はいやあああ!!」
なんとかトレントは雨の魔法でスコールを降らせて、浮竹の魔法の炎を鎮火してしまった。
スコールはひどく、このままでは弱点である炎の魔法は使えなさそうだった。
「あの方を復活させるのよ。体を繋ぎ合わせれば、きっとあの方は復活して、また私に愛を囁いてくれるわ」
「愛しい、男がいたのか」
「そうよ。愛しいあの方をつくるために、その右腕を頂戴!」
浮竹は、氷の魔法を使った。
「エターナルアイシクルワールド」
こっちには這い寄ってくるトレントの体が氷つく。
しかし、死んだわけでもない。
氷はトレント全体を包み込んで、スコールが止んだ。
「ファイアフェニックス!」
京楽が炎の不死鳥を放つと、トレントが命よりも大事にしていた、つぎはぎだらけの体に火がついた。
「いやあああああ!愛しいあなたあああ!!私を、置いていかないでえええ!!」
「今度は、お前も一緒さ。ファイアフェニックス!」
「ああ・・・・あたしも、あなたの元へ行けるのね?」
「ああ、行けるとも」
浮竹は、優しい表情でトレントを灰にしていった。
灰からは、2つの芽がでていた。
「夢を見ていたんだ。トレントには恋した男がいた。男もトレントを愛していた。でも、男には婚約者がいて、逆上して男を殺してしまった。
トレントは泣き叫んだ。すると、ある男が、男の体を繋ぎ合わせて、恋人によく似た人形を作ったら、それに愛しい男の魂を宿してやると言ったんだ。
トレントは、その言葉を信じて、森を歩く旅人の男を、歌声で眠らせて殺しては、体の一部分を奪い、繋ぎ合わせた。
繋ぎ合わせた肉体に、愛した男の命が再び宿ると信じて・・・・・・」
「かわいそうな、精霊だったんだね」
「ああ。でも、人を殺した。人を殺したり殺そうとするモンスターは倒される。トレントは元々森の精霊だ。悪い存在じゃない」
「トレントを騙したそのある男というのが鍵だね」
「ああ。トレントは始末してしまったからもう聞き出しようがないが、最近謎の男が暗躍していると聞く。その男なのかもしれない」
「とりあえず、トレントの魔石を持って帰ろう」
浮竹と京楽は、なんとも言えない気分で冒険者ギルドに戻ってくると、魔石を受付嬢に渡した。
「買取り額は金貨30枚になります。緊急クエスト達成として、報酬金金貨350枚に、即日の対応だったので、報酬金が金貨50枚上乗せされます」
合計で金貨430枚になったが、二人の心は晴れないままだった。
「いやん、何そんな辛気臭い顔してるのお?明るくいきましょうよ。ああん、あたしのあそこも明るくいっちゃう♡」
「冗談に付き合っている気分じゃないんだ」
「僕もだよ。消えてくれない?」
「ひどおおい!キャシー、泣いちゃう!」
「勝手に泣け」
「酷い顔だ。ああ、元からだったかい」
浮竹と京楽は、キャサリンに事情の全てを話して、裏で暗躍しているらしい男の影を、ギルド側も掴んでいると聞いて、真剣な表情になった。
「その男の正体は?」
「まだ、分からないわ。ただ、茶色の髪と瞳で、凄く冷徹だそうよ。なんでも、自分が神になるって言ってたらしいの」
「人間が神に・・・・そんなの、なれるわけないのに」
「あら、そうでもないわよ?魔神や邪神は、人間からでもなれるわよ?なりかたは教えてあげないけれどね?♡」
浮竹と京楽は、トレントが灰になった後にでてきた芽を、鉢植えに植え替えて、帰宅した。
太陽をいっぱい浴びれる、南向きのバルコニーに置くと、一夜で成長し、次の日は花を咲かせて、小さなトレントが生まれた。
「君の名は?」
「名前なんてない」
「じゃあ、レトと名乗るといい」
「トレントだから、レト?安直ね」
「森に帰りたいかい?」
「帰りたくないわ。ここで暮らすわ」
レトは、寂しそうに笑った。
じゃあ、同居人を紹介しなくちゃな。こっちはエンシェントエルフの浮竹十四郎。君のもう一人のマスターだ。それから、ヒーリングスライムのブルン」
「くるるる」
「かわいい」
「君も、十分かわいいよ。ねぇ、浮竹も、そう思うでしょ?」
「知るか」
「ふふっ。あのエンシェントエルフ、私にあなたを取られたと思って嫉妬してるわ」
「すごいね。君、人の心が読めるのかい?」
京楽は、レトと名付けたトレントの小さな頭を撫でた。
「ある程度はね。あなたはダークエルフ。皮膚の色が違うから、種族を偽っている」
「ほんとにすごいね」
「よしてよ。あたしは、ただのレトいう名の小さなトレント。それだけよ」
「そうだね。君はレト」
京楽は、レトを手の平に乗せた。そんな小さなサイズのトレントだった。
「哀しい記憶を持っているのね」
「なんだい?」
「あなたは灼熱のシャイターンに捨てられ、迫害されてきた。でも、浮竹十四郎と出会って、全てが変わった」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、早くその浮竹って人のところに行ってあげて。凄く悲しんでる」
「分かったよ」
京楽は、レトを植木鉢に戻すと、浮竹の後を追う。
「浮竹」
「なんだ」
「僕が愛しているのは、浮竹だけだよ。あのトレントには同情しか抱いていない」
抱きしめられてキスされて、浮竹は真っ赤になった。
「な、何をする!」
「いや、君が小さなトレントなんかに嫉妬しちゃって、かわいいなぁと思って」
「嫉妬してなんか!」
浮竹は叫びかけてやめた。
「嫉妬、してた。少しだけ」
京楽は、浮竹の顎に手をかけて、ディープキスをしていた。
「んっ」
「ふふ、かわいいね。食べちゃいたい」
「まだ昼間だぞ」
「そうだね」
クスクスと、京楽が笑うものだから、浮竹も嫉妬心を忘れてクスクスと二人で笑いあった。
「ねぇ、今日いい?」
「ばか、そういうこといちいち聞くな。んっ」
またキスをされた。
エルフに欲が全くないわけではないのだ。
ただ、薄いだけで。
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「そうか、あのトレントは死んだか。呆気ないものだ」
その男は、背が高く茶色の紙に茶色の瞳をしていた。
その男は、世界を渾沌に陥れようと暗躍していた。
神になろうとしていた。
神になり、剣士の京楽を破壊神にしようともくろんでいた。
その男の名は、まだ分からなかった。
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