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エンシェントエルフとダークエルフ24

「水龍神の呪い?」

「ああ。なんでも、イリア帝国の片隅にある田舎村に、水龍神が住み着いているっていうんだ。その呪いを解いてほしいという、あやふやな依頼だ」

「ウォータードラゴンなら分かるけど、東洋の龍?」

「はっきりとは分からない」

「引き受けるの?」

京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。

「迷っている。本当に水龍神が出るなら、勝ち目はないかもしれない。でも、姿を見せないということは、人語をしゃべるモンスターが水龍神を偽っているのかもしれない。
水龍神の呪いは、ある日水龍神の住む湖の水を飲んだら、全身に発疹ができて少し熱が出る、それが村中に感染してしまって、今は封鎖されている。疫病の可能性があると検査されたんだが、どの病気でもないらしい。
ちなみに水龍神は月に女性を一人生贄によこせと言ってくるんだ。あと貢ぎものとして、毎週肉をたくさん供えるそうだ」

「ますますきな臭いね。それ、絶対違うモンスターの仕業だよ」

「引き受けたいんだが、いいか?」

「うん。生贄を欲するなんて、討伐に値する。引き受けよう」

Aランクの依頼だった。

ひっぺがして、受付嬢に依頼書を渡し、受理してもらう。

そのまま、行ったことのある一番近い町に空間転移して、そこから馬車で依頼の出ている田舎のボエナ村を目指した。

ブルンにも、念のためについてきてもらった。

「くくるーー」

ブルンは旅行だと思っているようで、はしゃいでいた。

「ブルン、今回は旅行じゃないぞ。多分だけど、水龍神になりすましているモンスターの討伐だ」

「くくるー!」

「え、任せろって?ブルンは頼むしいねぇ」

浮竹と京楽は、馬車の上でひと時の平和を楽しむのであった。


-------------------------------------------


村に到着すると、村の出入り口は封鎖されており、帝国の兵士が見張りをしていた。

「誰だ!」

「冒険者ギルドの者だよ」

「これは失礼した。村長の家まで案内しよう」

浮竹と京楽とブルンは、村の中央になるやや大きめの家に入った。

「おお、冒険者の方か。どうか、水龍神の呪いを解いて欲しい・・・・・・」

「くくるーー!!」

ヒーリングスライムのブルンは、全身に発疹のできていた少し熱のある村長に、ヒールの魔法をかけた。

「おお、体が元に・・・・」

ブルンの魔法は、神に匹敵するヒールだ。

病気でも癒してしまう。

ただ、全ての病気が癒せるわけではない。症状を緩和するくらいか回復方向にもっていくことはできた。

「ブルンで治るってことは、病気の可能性もあるけど、一番疑わしいのは毒だね。村長、見張りをしている兵士たちはどこで水を飲んでいる?」

「はぁ、湧き水のある裏山のほうの水を飲んでいます」

「ますます毒が疑わしい」

村長は、泣いて浮竹と京楽に縋りついてきた。

「水龍神の呪いを、どうか癒してください。そして、あさって生贄になる予定だった村の少女を助けてください!」

まずは、村人を全員集めて、ブルン魔法の効果範囲を広げてもらい、全員に一斉にヒールをかけた。

「ああ、発疹が・・」

「熱も下がったぞ!」

「湖の水は、飲まないようにしてください!」

浮竹がそういうと、人々は困惑した。

「でも、この村に井戸がないんです」

「浦山の湧き水を使ってください」

「わかりました。みんな、聞いたであろう。この方たちが、水龍神の呪いを解いてくださり、水龍神の討伐もおこなってくださるそうだ!」

わあああと、皆喜びあった。

「ねぇ、大丈夫、浮竹?」

「俺の感が当たっていたら、大丈夫だ」

そのまま、湖の水を調べると、微量だが毒が発見された。確かに呪いによるものだった。

少し飲むだけならいいが、ずっと飲んでいると発疹や発熱をする毒であった。毒自体は弱いが、村人たちが今後も湖の水を使えるように、ブルンにお願いして、ヒールの対象を湖に向けた。

湖全体が光り輝き、毒が消えた。

「おお、湖が、元の美しい輝きを・・・・・」

「ありがとうございます!あなたたちは村の恩人です。どうか、このまま水龍神を退治してください!」

その日は村長の家に泊まり、生贄になる少女の変わりに、浮竹が女の衣をいつもの冒険者の服の上からまとい、船に乗せられて、水龍神が住んでいるという、滝のところまでやってきた。

滾の裏側は洞窟になっており、そこに入るように促されて、浮竹だけでなく、空を飛んでついてきていた京楽も、洞窟の天井すれすれを飛んで、洞窟の中に入った。

「よくやってきた。我は水龍神である。さぁ、そのナイフで自分の首を切るのだ。汝の生命の雫はこの水龍神に宿り、村を守るであろう」

洞窟の中は、深い霧に覆われていた。

霧の奥で、うねる水龍神らしき影が見えた。

「さぁ、我が生贄となれ。汝の血肉は我のものとなり、この村を永遠に繁栄させるであろう」

「ウィンドトルネード!」

京楽が、風の魔法で霧を追い払うと、水龍神の形をした人間が作ったであろう木のはりぼてがあった。

「何をする!神の怒りが怖くないのか!」

また、霧が出てきた。

浮竹は、言われた通りに首をナイフで切ったふりをした。

モンスターは血の匂いに敏感なので、かわいそうだがかわりに息の根を止めていた鶏の血を浴びて、地面に滴らせた。

「うむ、それでよい」

霧の中から現れのは、なんとマンティコアであった。

「くくく、美味そうな女だ」

「そこまでだよ!」

「誰だ!」

洞窟の天井すれすれを飛んでいた京楽が、マンティコアを睨みつけて、浮竹の傍に降りてきて合図する。

浮竹は、隠しもっていたミスリルの剣でマンティコアのライオンの胴体を突き刺した。

「ぐおおおおお!!」

「マンティコア如きが水龍神の真似ねぇ。グラビティ・ゼロ!」

京楽は重力の魔法でマンティコアを押しつぶしにかかる。

「ぬおおおおおお!あの方に、力をもらったのだ!」

ぐぐぐぐっと、週十倍の重量が降っているのに、立ち上がる。

「ウォータースパイラル!クリエイトデッドリーボイズン!!」

水の槍に猛毒を付与して、浮竹はマンティコアを貫いた。

「があああ、毒だと!ぬああああ!!!」

ビクンビクンと痙攣して、マンティコアは動かなくなった。

「ブルン、この毒を浄化してくれ」

「くるるーー」

ブルンに、浮竹が作り出した猛毒中の猛毒を、ただの水に戻してもらった。

「湖にでも流れていくと、魚が死んで水を飲んだ人間も死ぬからな」

「うわ。浮竹また凄い毒を作ったんだね」

「エインの毒。一滴で死ぬ人間の数は数百万。もしも湖に流れたら、生態系が確実に狂う」

「うへー。エインの毒かい。またやっかいな毒を・・・」

かつて、賢者の中の賢者と呼ばれたエインの作った毒で、その毒で王国の民を死滅させてしまい、エインは自害した。

エインの毒と呼ばれ、原液はもうこの世界には存在しない。

薄めた毒が、とある王国の宝物庫に眠っているくらいだ。

「浮竹、これまた死体の毒も浄化するの?」

「もちろんだ。ブルン、頼む」

「くくう」

ブルンに浄化してもらい、マンティコアを解体して魔石だけを取り出した。

霧は、魔法を使って出していたらしい。

洞窟の奥に進むと、女性と子供のものらしい遺骨が3体分確認できて、きちんと埋葬するためにアイテムポケットに入れた。

マンティコアの体もアイテムポケットに入れる。素材にはならないが、村人たちに説明するためにもって帰ることにした。

「それにしてもこの水龍神の形をしたはりぼて、明らかに人の力によるものだね」

「そうだな。裏で暗躍しているという、あいつの仕業かもしれない」

全ギルドで指名手配されている、名も無き暗躍者のことであった。

「とりあえず、村に戻ろう」

「うん」

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「そうだったのですか・・・アンティコアが、水龍神のふりを・・・・」

「洞窟の奥で、3体分の遺骨を見つけた。ここに出す」

アイテムポケットから、遺骨と遺品らしきものとボロボロの服をだした。

「いやああ、ヨハン!」

「あああ、ミレーネ!」

「アリス・・・・・」

肉親であった者たちは、遺骨や遺品、ボロボロの服を手に泣きだすのであった。

「それにしても、何故王国軍の兵士は水龍神の退治をしてくれなかったんだ?」

「それが、上の者からそう命令されていると言われて・・・」

村人と一緒に集まった兵士たちは、ある男からそう言われたのだが、それが女帝の言葉であると信じ切っていた、今考えたらおかしいと、言い出した。

「これも、影の暗躍者のせいかな」

「多分な」


こうやって水龍神の呪いを解くクエストは終わった。

村人たちから、金はないが、たくさんの食品をもらった。

イアラ帝国の帝都アスランの冒険者ギルドで、マンティコアの魔石を鑑定してもらうと、マンティコアそのものが人工的に作られたモンスターだと発覚した。

オカマのキャサリンのギルドマスターに呼ばれて、今回のマンティコアの件は他言無用だと言われた。

「全く、ギルドもギルドで、どうして隠すのかな~?」

「無用な混乱を避けるためだろう。Bランク以上の冒険者は、一応陰で暗躍する者がいると教えているが、実際に暗躍した後にあたるの俺たちか、Sランク冒険者らしい」

「まぁ、今回報酬金ははずんでもらったから、いいけどね」

補習は金貨450枚と、マンティコアの人工的な魔石は高純度のエネルギーになるらしく、金貨100枚で買いとってもらえて、合計金貨550枚の収入になった、

「さて、エインの毒のことは他言無用だね?」

「当たり前だ。作り出せる者がいると分かると、暗殺に使われる。京楽、秘密だぞ?」

「ふふ、君と秘密を共有し合うのは、なんだか楽しいね」

「まぁ、共有する秘密はお前がダークエルフであることも含まれているが」

「それでも、秘密を共有するのは、お互いがかけがえのないパートナーってことで、安心できるよ」

「とりあえず、今日は帰って飯を食って風呂に吐いて寝よう。俺は枕が変わると眠れないタイプなんだ。さっさと寝たい」

ふあああと、大きな欠伸をして、浮竹と京楽は帰路につくのであった。


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「ふ、しょせんはマンティコア。作り出しても、脅威にすらならぬ、か」

茶色の髪の、全ギルドで指名手配になっているその男は、地下に降りていく。

地下には、いっぱい試験官が並び、そこではいろんなモンスターの幼体が、黄金に輝く液体の中で浮遊していた。

「さて、次はどれにしようか・・・・・・」




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