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エンシェントエルフとダークエルフ39

依頼はSランクだった。

帝都アスランで夜な夜な出没するヴァンパイアロードを退治せよ。

最近、ヴァンパイアロードに血を吸われて死ぬ人間や亜人が後を絶たないのだという。

緊急クエストだった。

浮竹と京楽は、早速調査に乗り出した。

帝都アスランは、主要都市であるのでかなり広い。

が、被害者は南の位置に固まっていて、浮竹と京楽は、夜になるとヴァンパイアロードが現れるという地域を巡回した。

「ほお、エンシェントエルフか。珍しい。見た目も悪くない」

浮竹と京楽は、お互いソロで警戒に当たっていた。

そのヴァンパイアロードは魅了(チャーム)の力をもっており、それに浮竹が罠にはまってしまい、ヴァンパイアロードに血を吸われてしまった。

血を吸われた者は、死ぬかヴァンパイアロードのものになるかの2択だ。

浮竹は、後者だった。

「あ・・・マスター」

京楽の目の前に、ヴァンパイアロードに抱かれる浮竹の姿があった。

「浮竹を離せ!」

「この子は私のものだ。私の血族になってもらう」

「そんなの、許さない!」

京楽は、ワールドエンドの魔法を放った。

すると、浮竹がヴァンパイアロードを庇い、自らもワールドエンドの魔法を使う。

「ごめんね、浮竹」

京楽は、まず手刀で浮竹を気絶させると、ヴァンパイアロードから奪い取り、距離をとった。

「私のものを奪うというのか」

「この子は、僕のものだよ」

「貴様、ダークエルフであろう。闇の眷属同士、仲良くしようではないか」

「まっぴらごめんだね」

京楽は、手加減なしの闇の火を放つ。

「ダークフレア!」

「この程度・・・・」

ヴァンパイアロードは、結界を張った。

しかし、京楽のダークフレアの魔法の方が強くて、ヴァンパイアロードの結界の中に闇の炎が侵入してくる。

「ばかな、私の結界が破れるだと!?」

「目覚めろ、エンシェントエルフ!そのダークエルフを殺してしまえ」

意識を失っていた浮竹は、ふらりと立ちあがった。

操られているのは、見てすぐに分かった。

「マスターを傷つける者は、許さない・・・・」

「浮竹、しっかりして!僕だよ、京楽だよ」

「マスターを・・・マスター?」

「マスターは私だ。さぁ、そのダークエルフを殺してしまえ」

「ダークエルフ・・・」

浮竹は、ふらふらと京楽の元に向かって歩き出す。

「・・・・京楽?」

「そうだよ。よく、ヴァンパイアロードの支配下から脱出できたね」

京楽は、浮竹の頭を撫でて、セイントヒールで浮竹の傷を癒し、ヴァンパイアの出す絶対命令に背く浮竹の精神力に感嘆した。

「何故だ!何故、私が支配できない!私はヴァンパイアロードだぞ!?」

「浮竹のほうが力が強かった証だね。上位のものを支配下にはできない」

「くそ、こうなれば二人とも殺してくれる。出でよ蝙蝠ども!こいつらの血を一滴残さず吸い取るのだ!」

吸血蝙蝠が、湧き出してきた。

「クリエイトアークエンジェル、クリエイトロードオブサタン、3重詠唱【テトラボックス】」

「ぎゃあああああああ!!」

浮竹の放った魔法で、吸血蝙蝠たちは全て屠られて、ヴァンパイアロードの右手も吹き飛んでいた。

「浮竹、とどめは僕にさせて。一時でも、君を自分のものにしたあのヴァンパイアロードガ憎い」

「京楽・・・・・」

「ブラックホール!」

「私はヴァンパイアロードだぞ!たかが冒険者如きにやられるはずが・・・・・」

「残念。僕ら、Sランク冒険者なんだ」

「Sランク・・・・・くそおお」

断末魔の悲鳴を残して、ヴァンパイアロードはブラックホールの中に吸収されてしまった。

器用に魔石だけを取り出す。

「浮竹、念のために一度家に戻ろう。ブルンに、神ヒールかけてもらわなくちゃ」

「ああ・・・まだ、洗脳が解け切っていないようだ。お前を殺したいという欲求がある」

「君になら喜んで殺されるけど、君の意思じゃないなら嫌だね」

帝都アスランの中央に近い家に、空間転移魔法で戻ると、置いてきたいたブルンに頼みこんで、浮竹に神ヒールをかけてもらった。

「ああ、もう大丈夫だ。すまん、京楽。お前に刃を向けてしまった」

「操られていたんだから、仕方ないよ」

「それでも、自分が許せない」

「僕が許すから。だから、この件はもうおしまい」

「分かった」

冒険者ギルドに魔石を提出して、魔石だけで金貨200枚になった。

緊急クエストだったため、報酬金は大金貨千枚であった。

「うっきーちゃん、ヴァンパイアロードに噛まれたって本当?」

「ああ。魅了の罠にはまってしまってな」

「あたしが、メロメロにしてあげるわ~~」

「くるな、このドブス!」

「ああん?」

「青髭けつ顎オカマ!どブサイク!」

「うっきーちゃん、いい根性してるわね」

「師匠の剣士の京楽が、黙っていないぞ」

「ぐ・・・・・・」

剣士の京楽の名を出されて、キャサリンはそれ以上何もできなかった。

「うっは、浮竹すごい毒舌だね。よくもあのオカマにケンカを売れるね」

「あいつの弱点は師匠だ!」

かつて、キャサリンがSランク冒険者昇格試験で、剣士の京楽にボコボコにされながらも、かろうじて一本とってSランクになれたのだが、キャサリンにとって剣士の京楽は恐怖の象徴であった。

「報酬金ももらったし、帰るか」

「そうだね。最近の魔王の存在も気にかかるけど、僕らの出番はないしね」

Sランク冒険者の中で、魔王に勝てるものは多分いない。

「師匠、大丈夫だろうか」

「浮竹、僕らの師匠だろう。大丈夫さ」

「そうだな」

自宅に戻り、ブルンに大量のゴミをお礼に食べさせて、しかし京楽は行方不明と言われている母親である灼熱のシャイターンのことを思うのだった。

実際は生きて無事だったのだが、それを京楽が知るにはまた後にことである。


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